動物心理学年報
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38 巻, 2 号
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  • 北岡 明佳, 藤田 統
    1989 年 38 巻 2 号 p. 93-106
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    オガクズと脱脂綿を混合した新しい土材と, Tsukuba 情動系ラットと活動系マウスを用いて, 穴掘り行動に及ぼす情動性, 性および照明条件の効果を調べた。
    情動性の高いTHEラットに, 掘った土材を積み上げることで地上を「傾斜」と呼ぶべき独特の形状 (Photo 1) に変えるという特徴が見られた。HAマウスは巣部屋を多く作った。性差はマウスで少なく, ラットで多かった。ラットの〓は〓より多くの入り口を作り, トンネルの全長も長かった。ケージの地下部分を覆って暗くした場合と覆わなかった場合の穴掘り行動にはあまり差がなく, ケージの地上部分を覆った場合だけが異なるものであった。すなわち, 地上を暗くすると, 観察開始時に被験体が地上にいることが多かった。
    穴掘り行動における情動性の影響に関しては, 従来の研究結果に沿うものであった。すなわち, THE は早く穴を掘る傾向にあり, 観察時には穴の中にいることが多く, 土材掘り行動のオペラント水準が高い傾向にあった。
  • 星野 聖
    1989 年 38 巻 2 号 p. 107-120
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    ザリガニを被験体として3種類の回避実験を行った。その目的は, 第1 に, ザリガニという比較的下等な動物において回避反応が形成され得る可能性を検討するため, 第2に, キンギョのシャトルボックスにおける回避反応との比較により, ザリガニにおける回避学習の構造を検討するためであった。
    実験Iでは, USを回避し得るか否か, CSが終結するか否か, に従って4つの実験群を構成し, 回避条件づけを試みた。その結果, 典型的なオペラント/パヴロフ型条件づけの事態により回避反応が形成された。
    実験IIでは, USの有無, CSの有無に従って4つの実験群を構成し, CS に対する反応の鋭敏化が生じる可能性を検討した。結果は, ザリガニの回避反応形成がただ単に CS のみ, US のみ, あるいは CS と US との独立提示によって生起した CS に対する反応の鋭敏化ではないことが証明された。
    実験IIIでは, 前半が回避随伴性により, 後半はそれとは逆の, 罰 (刺激-強化) の随伴性により回避反応形成を試みた。結果は, 回避随伴性と同様に, 刺激-強化随伴性のもとでも高い水準で反応を生起させ続けた。
    これらの実験結果により, ザリガニの歩脚伸展回避反応の形成・維持には, オペラント随伴性ではなくパヴロフ型随伴性が主に関与していることが示唆された。さらに, ザリガニの回避学習事態には非常に反射性の高い完了行動が関与している, と考察された。
  • 水原 幸夫
    1989 年 38 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    本実験では, ラットに走路内の走行反応を行わせない事態でも, 系列パタンの法則性の学習が可能であるかどうかを, 目標箱直接強化手続きを用いて検討した。この手続きによる系列パタンの学習は, その後の通常の走行事態を用いた転移期の走行反応を測度として判定した。その結果, 目標箱直接強化手続きを用いた原学習期に単調減少系列を受けた群は, そこでランダム系列を受けた群に比べて, 転移期の単調減少系列についての学習が優れていた。これは法則間に正の転移が生じたことを示すものであった。この実験では, 予測された単調減少系列から非単調減少系列への負の転移はみられなかったものの, 目標箱直接強化手続きによっても系列パタンの法則性の学習が可能であることが明らかになった。
    以上の結果は, この学習においては連合的要因ではなく, 認知的要因の作用が大きいことを示し, ラットの系列パタン学習における認知的側面をより強調できるものであると考察した。
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