ザリガニを被験体として3種類の回避実験を行った。その目的は, 第1 に, ザリガニという比較的下等な動物において回避反応が形成され得る可能性を検討するため, 第2に, キンギョのシャトルボックスにおける回避反応との比較により, ザリガニにおける回避学習の構造を検討するためであった。
実験Iでは, USを回避し得るか否か, CSが終結するか否か, に従って4つの実験群を構成し, 回避条件づけを試みた。その結果, 典型的なオペラント/パヴロフ型条件づけの事態により回避反応が形成された。
実験IIでは, USの有無, CSの有無に従って4つの実験群を構成し, CS に対する反応の鋭敏化が生じる可能性を検討した。結果は, ザリガニの回避反応形成がただ単に CS のみ, US のみ, あるいは CS と US との独立提示によって生起した CS に対する反応の鋭敏化ではないことが証明された。
実験IIIでは, 前半が回避随伴性により, 後半はそれとは逆の, 罰 (刺激-強化) の随伴性により回避反応形成を試みた。結果は, 回避随伴性と同様に, 刺激-強化随伴性のもとでも高い水準で反応を生起させ続けた。
これらの実験結果により, ザリガニの歩脚伸展回避反応の形成・維持には, オペラント随伴性ではなくパヴロフ型随伴性が主に関与していることが示唆された。さらに, ザリガニの回避学習事態には非常に反射性の高い完了行動が関与している, と考察された。
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