ノンプロフィット・レビュー
Print ISSN : 1346-4116
11 巻, 1 号
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研究論文
  • ―スウェーデンのLETS組織を事例として―
    中里 裕美, 平本 毅
    2011 年 11 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    近年隆盛を見せていた地域通貨活動は,実態としては思ったような成果を上げられず,現在はやや停滞期を迎えている.本稿では,地域通貨組織のパフォーマンスが所属会員の実践コミュニティへの参加の構造によって左右されると考え,スウェーデンのLETS組織を対象にした聞き取り調査,質問紙調査,取引関係の社会ネットワーク分析の結果から二者の関係を検証し,その実践的インプリケーションを示す.
  • ―個票データを用いた定量分析―
    永冨 聡, 石田 祐, 小藪 明生, 稲葉 陽二
    2011 年 11 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    これまでに個人の社会経済的属性と社会活動参加の関係,もしくは地域集団そのものの研究がなされてきたが,他者との対面でのつながりと社会活動参加の関係については必ずしも十分に明らかにされてこなかった.そこで本稿では,個人の生活空間における他者との対面でのつきあいが,地縁的な活動への参加に与える影響について定量的な分析から検討を行うこととした.全国を対象としたアンケート調査データを用い,ロジット・モデルによる推定を行った.その結果,次の2点が示唆された.一つは,地縁的な活動への参加には近所づきあいだけでなく,親戚・親類づきあい,スポーツ・趣味・娯楽活動を通じたつきあいの活発さが影響を与えている可能性があること,もう一つは,地縁的な活動への参加の影響要因と同様の対面づきあい要素が,ボランティア・NPO活動への参加の促進に対しても正の有意性を持つ可能性があることが示唆された.これらを踏まえると,今後は地縁的な活動,ボランティア・NPO活動への参加を一体的に高める取り組みの方向性を模索し,その制度化や具体化を進めていくことが一つの方向として望まれよう.
  • 八木 匡
    2011 年 11 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,移動性の状態を明らかにした上で,格差感及び幸福感がどのような要因によって決定されるかを明らかにする中で,コミュニティ機能が与える影響について分析した.その結果,コミュニティの相互扶助機能の向上は,格差感に対しては大きな影響を与えないものの,幸福感を増大させることが分析結果から確認された.これは,格差感が格差の公平性に関する認識によって大きく決定されているのに対し,幸福感については生活の安定感が大きな決定要因になっていることを示唆している.コミュニティ機能の向上をもたらすソーシャル・キャピタルは,人々の地域社会での助け合いといったリスク回避能力を高め,幸福感に影響を与えると考えられる.経済成長に伴う所得の上昇が,雇用の不安定化とかコミュニティ機能等の社会構造を変化させる場合には,本稿の分析結果は,幸福感を逆に引き下げる可能性を示唆している.
  • ―精神医療分野のNPOの事例分析をもとに―
    竹端 寛
    2011 年 11 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
    本稿では,NPOのアドボカシー機能の「小さな制度」化とその課題について考察するために,ある精神医療分野のNPOの事例分析を行った.精神医療オンブズマン制度は,NPO団体の活動実績と提言に基づき大阪府で制度化された,アドボカシー機能の「小さな制度」化の実例である.これは一定の成果があったが,財政削減を理由に廃止された.この事例分析を行う中で,NPOの企画提案に基づく行政とNPOの「協働事業」としての制度化プロセス自体がNPOの一つのアカウンタビリティであったこと,アドボカシー機能の「小さな制度」化は府の政策と実践に具体的な事業改善をもたらしたこと,NPOには制度の成果や地方政府との「相補」性の意義等を事業委託主である地方政府にだけでなく政治家や広く市民にも果たすアカウンタビリティが求められていること,の三つが明らかになった.
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