安全教育学研究
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21 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 杉山 高志, 矢守 克也
    2022 年21 巻2 号 p. 3-14
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2025/07/09
    ジャーナル フリー
    本研究は、1995年1月17日に発災した阪神・淡路大震災の「前日」についての語りについて分析したものである。具体的には阪神・淡路大震災の発災以後の経験談ではなく、発災する前日(1995年1月16日)に関する経験談、すなわち、筆者らが「Days-Before」と呼ぶスタイルの語りに焦点を当てた。「Days-Before」という新たな語りのスタイルに注目して被災経験談を分析することで、被災経験談を用いた防災教育の新たな可能性を模索することを目的に、阪神・淡路大震災の前日の経験談をインターネット上で公募した神戸新聞NEXTのウェブ・サイト『震災の前日』に投稿された436個のエピソードの記述内容を対象に、質的・量的な内容分析を行った。その結果、『震災の前日』のエピソードは、これまでよりも多様な人々から『震災の前日』にウェブ投稿されており、かつ、発災直後から始まる典型的な被災経験談とは異なる、「前兆証言」を含む3種類の語りのカテゴリーに分類できることが明らかになった。すなわち、『震災の前日』の試みが、「被災者」や「被災経験談」の枠組みの幅を広げる機能をもっていることが示唆された。
  • ― 2011年 東北地方太平洋沖地震及び福島第一原子力発電所事故における福島県立高校のサテライト校の設置と廃止を例に ―
    鈴木 久米男
    2022 年21 巻2 号 p. 15-26
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2025/07/09
    ジャーナル フリー
    重大な災害や事故の発生において、教育活動の継続のためには、教育行政や学校管理職、教員等が状況を適切に判断し、具体的な行動をとる必要がある。このような状況における教育活動継続のための危機管理の実態を、2011年東北地方太平洋沖地震及び福島第一原子力発電所事故により開設された福島県立高等学校のサテライト校の取り組みを踏まえて明らかにする。このことにより、重大な災害や事故における学校の危機管理の在り方を検討する。 2011年の東北地方太平洋沖地震及び福島第一原子力発電所事故において、福島県内の避難指示区域にあった県立高等学校の学習機会確保の手立てとしてのサテライト校は、福島県教育委員会(以降、県教委と略記する)が中心となって設立され、そして集約化を経て、最終的には廃止となった。サテライト校の運営においては、文部科学省との連携を図るとともに、関係する保護者や生徒に趣旨を説明する等して、理解に基づいて実践していった。 本稿の成果は、重大な災害や事故における学校教育継続のための取組について、東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故による福島県の事例を踏まえて検証したことである。本研究により、部分的ではあるが、教育活動の継続のための校長や県教委及び県等の各関係機関との連携による危機への対応を検討できたと考える。
  • 藤本 一雄
    2022 年21 巻2 号 p. 27-35
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2025/07/09
    ジャーナル フリー
    本研究では、アクティブ・ラーニング型授業の技法の一つである「看図アプローチ」を防災教育に適用し、その教育的な効果を確認するため、東日本大震災の被災地の写真を用いた看図作文づくりの授業を、兵庫県神戸市内の高校1年生に対して行った。その結果、看図作文づくりを体験することにより、「思考力」や「表現力」の必要性に気づかせたり、さまざまな「感じ方」があることに気づかせたりする効果があることを確認した。さらに、被災者が写っている写真(ビジュアルテキスト)を用いた看図作文づくりを体験することにより、その被災者の視点で物事を考えることを通じて、防災を「他人事」としてではなく、「自分事」として捉える意識を醸成する効果も期待できる可能性が示唆された。
  • ― 児童・生徒と大人が共に学んだ体験活動を通して ―
    森 康成, 中野 晋
    2022 年21 巻2 号 p. 37-45
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2025/07/09
    ジャーナル フリー
    本稿の目標は南海トラフ地震発生時の犠牲を減少させる方策の一つを提示するものである。 実際に発生した2015年徳島県南部地震の調査や、その後の徳島県牟岐町での調査事例で、緊急地震速報が人々の間で、特に大人で十分に理解され活用されていないことが分かった。もし、緊急地震速報により、適切に身を守る行動を取ることができれば、南海トラフ地震による人的被害を軽減できると考えられる。そこで、徳島県内で防災教育に取り組む小学校に緊急地震速報の活用方法を提案し、小学校の運動会で種目の一つとして実施した。その結果、地元の自主防災組織も一緒に取り組み、保護者も含めた大人も子供も参加して地震波の仕組みや南海トラフ地震時の対応について理解できた。地域と学校が一体になって取り組む防災教材として成果があったと考えられる。さらにカウントダウン方式の緊急地震速報機器を導入している学校での地震への対応状況で児童が身を守る行動を取っていることも確認できた。今後南海トラフ地震の発生を視野に入れると、実際の地震時に緊急地震速報が活用できるかどうかは児童生徒と大人のその理解と活用にかかっていると考える。
  • 髙橋 教義
    2022 年21 巻2 号 p. 47-57
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2025/07/09
    ジャーナル フリー
    本調査は、仙台市中学校長会が平成23年に発生した東日本大震災後に、仙台市立中学校の全教員(校長、教頭、教諭)を対象に、防災教育の目的や内容、防災教育の現状と今後に係る意識変容等の調査を実施した分析結果である1)。校長は平成25、27、28年の3年間、教頭と教諭は平成27、28年の2年間に調査を実施した。調査結果の分析から、これからの仙台市立中学校の防災教育では、中学生が災害時に支援者になるため、その人材を育成する防災教育を実施し、このことにより災害に強い地域づくりに資することを目指すことが示唆された。そして、防災教育を実施する際には、必要となる教材開発や指導法の工夫と改善を進展し、このための時数が確保されることが必要不可欠であると示された。さらに防災教育の推進と拡充には、学校と地域や行政、他校種との連携・協働が重要かつ必要であり、このことによる防災教育の成果や効果の向上に期待をかけていることが調査で明かされた。
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