韓国で採取された人体脂肪から検出された残留性有機塩素系化合物のうち, 一番高い残留レベルを示したDDTsは平均828ng・g
-1, 濃度範囲は118~7800ng・g
-1で検出された。DDTの代謝産物の中で, 総DDTsの濃度に対する
p,
p'-DDEの寄与は90%以上を占めている-方,
p,
p'-DDTと
p,
p'-DDDの寄与はそれぞれ5.8%と0.7%であった。
p,
p'-DDE/
p,
p'-DDTの比率は15と計算され, 今後, 韓国人体内のDDTs濃度は次第に減少することが予想された。-方, HCHsの総平均濃度は143ng・g
-1で検出されており, そのうちβ-HCHが占める割合は98.6%であった。総HCHs濃度に対するα-HCHとγ-HCHの寄与はごくわずかであり, それぞれ0.9%と0.4%を占めていた。また, 諸外国の総HCHs濃度に対するβ-HCHの割合との比較から韓国内のHCHsの使用禁止の事実を間接的に検証することができた。本研究の対象化合物の中, 最も低い残留レベルを示したHCBは平均19ng・g
-1そして濃度範囲は7.3~86ng・g
-1で検出された。体内脂肪組織中PCBsの検出濃度範囲は61~810ng・g
-1であり, 主に残留している異性体はIUPACNo.153, 138, 180であることが確認できた。地域による濃度差の検討によってソウルと晋州地域から採取された体脂肪中のHCHsとDDTsの濃度の間に有意な濃度差が見られたが, これは居住地域による違いより試料の年齢組成の差から起因したものと判断された。
馬山地域から採取した母乳試料中の人工有機塩素系化合物の濃度順位は, DDTs (平均; 287ng・g
-1) >PCBs (220ng・g
-1) >HCHs (57ng・g
-1) >HCB (12ng・g
-1) の順であり, その濃度順位とレベルは脂肪組織と比べて大差なかった。また, 出産による濃度の減少傾向は若干見られたが, 有意ではなかった。他方, 母乳の摂取による乳児の一日摂取量を検討した結果, HCHsは0.27μg/kg/day, DDTsは1.38, HCBは0.06及びPCBsは1.06と見積もられた。これはFAO/WHOによるADI (一日許容摂取量) 以下のレベルであり, NOEL/一日摂取量の比率の検討の結果, 韓国人の母乳中の有機塩素系農薬やPCBsの残留レベルはある程度安全な水準であることが確認できた。
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