環境化学
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6 巻, 4 号
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  • 今川 隆, 山下 信義
    1996 年 6 巻 4 号 p. 495-501
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    底質中に検出されるポリ塩素化ナフタレン (PCNs) の異性体組成を3~6塩素化物についてそれぞれ分析し, 発生源での組成を示すと考えられる試料と比較することによってその起源を推定した。ここで分析した鶴見川, 京浜運河, 洞海湾の底質では, いずれも化学合成されたハロワックスとの類似度が高い組成を示したが, 一部の異性体が例外的に減少していた。この原因はこれらの異性体が構造的に生物分解を受けやすいためと説明できる。一方, 廃棄物焼却起源のPCNsは, 一部の流動床炉でハロワックス類似の組成の6塩素化物異性体が生成するケースを除き, ハロワックスおよび底質試料との類似度は低く, 化学合成起源のものと区別ができることが分かった。
  • 東海 明宏, 長屋 圭治, 湯浅 晶
    1996 年 6 巻 4 号 p. 503-510
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    環境中化学物質は, 全国的に定点観測がなされてはいるもののそのデータについては必ずしも十分に活用されているわけではない。本研究では, 化学物質環境濃度水準を推定するための統計モデルの適用について検討した。手法としては, 数量化分析II類を用い, 説明変数として使用形態, 消費形態, 水溶解度, n-オクタノール/水分配係数, 生分解性, 流入負荷を取り上げた。公表されたデータの一部を使って水中ならびに底泥中化学物質濃度水準を判別する式を導出した結果, 水中化学物質濃度の判別においては, 水域への流入負荷, 使用形態, 消費形態がきいており, 底泥中化学物質濃度水準の判別にはn-オクタノール/水分配係数がきいていることがわかった。得られた判別式を用いて残りのデータの推定を行ったところ, 観測値と推定値の比は1から2オーダーの範囲にかけてばらついた。
  • 鈴木 茂, 金子 竹男, 土屋 正彦
    1996 年 6 巻 4 号 p. 511-520
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    タールに含まれるC12からC45の多環芳香族炭化水素 (PAH) 及び縮合複素環化合物 (FHC) について, 複数の質量分析法により成分組成を求めた。半揮発性のPAH及びFHCは, GC/MSにより検索した。液体イオン化 (LI) 質量分析法により, タール中のC45までのPAH及びFHCのMH+を測定した。LIスペクトルにおけるPAHとFHCの識別には, LIイオン源にメタノールを気相マトリックスとして導入して得られたスペクトルと比較する方法が有効であった。構造の確認されたPAH及びFHCに, それらから6員環の増加する原理を適用して分子量マップを作り, LIスペクトルのピークの大部分を帰属した。
    上記と同様にして大気粒子状物質の抽出物のC37以下のPAH, FHC, フタル酸エステル, 脂肪酸エステル, 脂肪酸, 農薬に相当するイオンをLIスペクトルで確認した。
  • 寺口 智美, 沖田 智, 尹 順子, 岩島 清
    1996 年 6 巻 4 号 p. 521-532
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    農薬, 有機リン酸トリエステル類, 合成香料等15種類の化合物について, 多摩川水系における河川水中濃度を, 1993年から1995年の期間に8回調査した。
    水田農薬の濃度は明らかに夏期において上昇したが, 合成香料では夏期に若干減少した。また, OPEや合成香料, 一部の農薬は, 拝島橋 (S7) から関戸橋 (S10) の間で顕著な濃度上昇を示した。
    S7からS10の区間における主要な供給経路からの負荷量を見積もったところ, この区間における化合物の増加量は, 流入河川, 下水処理場放流水, 都市下水からの負荷量の合計で概ね説明された。また, TCEPやTDCPP, TPP, CAT, ガラクソリド, ムスクケトンについては, 下水処理場放流水からの負荷が主要な流入河川からの負荷より大きいと算出された。
  • 大久保 忠利, 後藤 純雄, 遠藤 治, 林 哲仁, 渡辺 悦生, 遠藤 英明
    1996 年 6 巻 4 号 p. 533-540
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    有機塩素系化合物のうち, ベンゼン環を主骨格とする含酸素有機塩素系化合物27種を集め, その変異原性検索を行った。その結果, クロロ安息香酸, クロロベンゾアルデヒド, クロロフェニル酢酸が変異原性を示さず, ベンゾイルクロライド等の酸塩化物がS.typhimuriumTA100及びTA104株のS9mix添加条件下で強い変異原性を示し, E.coliWP2uvrA/pKM101株でもS9mix添加条件下で変異原性を示した。
  • 金 鍾国, 鈴木 規之, 益永 茂樹, 中西 準子
    1996 年 6 巻 4 号 p. 541-549
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    霞ヶ浦の魚類について非2, 3, 7, 8-置換体を含む4塩素化以上のPCDDs/PCDFsについて分析を行い, 魚類中のPCDDs/PCDFsの汚染レベルと底質から生物体への生物濃縮を調べた。また, 生物の種類による濃縮パターンの差を, クラスター分析を用いて解析した。
    魚類中のPCDDs/PCDFs濃度は4.19~247.07pg/g (wetweight) で, TEQ濃度は0.18~9.85pgTEQ/9であった。全ての試料で1, 3, 6, 8-TCDDと1, 3, 7, 9-TCDDの濃度が特に高く, この2つの化合物はTCDDsの90%以上を占めた。PCDDs/PCDFs濃度中2, 3, 7, 8-置換体の割合は12.7~49.5%の範囲であり, TEQ濃度とPCDDs/PCDFs濃度の比率から底質に比べ魚類に2, 3, 7, 8-置換体が選択的に濃縮されていることが分った。また, 2, 3, 7, 8-置換体は, 食物連鎖の上位の生物により濃縮しやすいことが観察された。底質から魚類への濃縮係数は, 2, 3, 7, 8-置換体が非2, 3, 7, 8-置換体より高く, 低塩素化の方が高塩素化より高かった。また, 濃縮係数はlog Kowの増加と共に減少した。クラスター分析により, 底質からの生物濃縮パターンが魚類と甲殻類によって異なることが示された。
  • ―培養株ヒト白血病細胞HL60への適用―
    白石 不二雄, 佐野 友春, 彼谷 邦光
    1996 年 6 巻 4 号 p. 551-557
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    培養株細胞のHL60細胞に化合物との混在下でエレクトロポレーション処理を行う細胞毒性スクリーニング法の開発を試みた。このスクリーニング法により培養株細胞には通常の処理法では細胞内に取り込まれないペプチド化合物のDHBmicrocystin-RR及びmicrocystin-LRの細胞毒性を検出することが可能となった。一方, 通常の処理法で細胞毒性を発現する2- (2-Furyl) -3- (5-nitro-2-furyl) acrylamideは, エレクトロポレーションの処理, 非処理にかかわらず細胞毒性への効果に差は認めらず, 能動的に細胞内に取り込まれない化合物に対して有効な手法であることが示された。本スクリーニング法は初代培養肝細胞による毒性試験法や動物実験: の代替法の一つとして有効であることが示唆された。
  • 田中 博之
    1996 年 6 巻 4 号 p. 559-565
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    北部北太平洋で採集した7種の海鳥類の胸筋に残留するPCBsの濃度, 及び肝ミクロソーム中のチトクロームP-450f度, 薬物代謝酵素活性を測定した。PCBs濃度は0.010~2.8/zg/gで, 主要残留成分はIUPACNo.153, 118, 138, 180, 99であった。これら5化合物で全体の約70%を占めた。P-450濃度は0.36±0.09nmol・mg-1proteinで, 薬物代謝酵素活性 (nmol product formed・min-1・mg-1protein) はERODが0.08~1.20, AHHが0.01~0.36, ALDEが0.11~1.63であった。重回帰分析の結果, 酵素活性はPCBsの残留パターンと重相関係数0.89を越える高い相関を示した。
  • 森 育子, 岩坂 泰信, 西川 雅高, 全 浩
    1996 年 6 巻 4 号 p. 567-573
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    少量の試料で簡単・迅速に分析できるエアロゾル中の水溶性成分の分析結果を用いて, 黄砂エアロゾル飛来の判定ができるかどうか検討した。その結果, 黄砂時に採集したエアロゾル試料中の水溶性カルシウムとストロンチウムの濃度が, 平常時と比較して相対的に高くなることがわかった。また, 黄砂時のエアロゾル中の非海塩性ストロンチウムとカルシウムの比が黄砂発源地付近の表層土中の水溶性ストロンチウムとカルシウムの比の平均値に近い値をとることがわかった。これらの特徴は, 従来から指摘されてきた黄砂時のエアロゾルの特徴と同様に, 黄砂エアロゾル飛来の有効な指標となることが示された。
  • 松本 寛, 酒井 茂克, 中嶋 敏秋, 佐藤 洋
    1996 年 6 巻 4 号 p. 575-581
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    冬期の比較的汚染の著しい日に2~3時間間隔で採取した札幌市の大気浮遊粉じんを用いてTA98, TA98NR, TA98/1, 8-DNP6, YG1021およびYG1024株による直接変異原活性の経時 (日内) 変動とその要因, および活性への芳香族ニトロ化合物からの寄与などについて検討を行った。
    各菌株による変異原活性の経時変動は, 自動車走行, 暖房などの人間活動や大気安定度などの気象因子を反映し, 最低値に対して最高値は4~6倍の大きい幅を示すとともに, 朝方および夜間にピークを有する相互によく似たパターンを示した。TA98株での変異原活性の最高値は131rev/m3であり, バックグラウンド地域 (0.5rev/m3) と比べて, 都市住民は時間帯によってはかなり多量の大気中変異原活性物質に曝露されていることが判った。
    変異原活性は、全ての試料についてYG1024>YG1021>TA98>TA98NR>TA98/1, 8-DNP6の順であり, NRaseによって活性化される物質よりも0-ATaseによって活性化される物質の直接変異原活性への寄与が大きいことが強く示唆された。また、TA98株と比べたTA98NRおよびTA98/1, 8-DNP6株での変異原活性の大幅な減少から, 直接変異原性物質に占める芳香族ニトロ化合物の重要性が明らかとなった。
  • 城山 二郎, 松浦 洋文
    1996 年 6 巻 4 号 p. 583-592
    発行日: 1996/12/16
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
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