日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
選択された号の論文の855件中401~450を表示しています
経営部門
  • 上野 操子, 田中 和博, 長島 啓子
    セッションID: P1A022
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    近年、単木レベルでの解析が可能となるLiDARデータの活用が注目されている。単木抽出において既往の研究ではLMF法を適応した研究が行われているが、この手法ではフィルタリングサイズを手動で決定する必要があり、またそのサイズによって抽出結果が左右されてしまう等の問題が生じる。そこで本研究では、フィルタリングサイズに抽出精度が左右されない新しい手法として、LiDARデータから得られる樹冠の傾斜角に着目した。具体的には、研究対象地である貴船山国有林の、スギ・ヒノキ人工林にそれぞれ10×20mの調査区を設置し、1点/0.5㎡の航空機LiDARデータよりDSMを作成した。次に現地調査より得た樹冠傾斜角の95%信頼区間を求め、この角度をDSMに適応させ単木抽出を試みた。LMF法やwatershed法ではスギの本数抽出率が100~150%となったが、ヒノキの本数抽出率はどちらの手法でも約30%となりヒノキ単木抽出の過小評価が目立った。一方傾斜角を利用した方法では、スギの本数抽出率は180%と前者の手法よりも精度は衰えたが、ヒノキの本数抽出率は147%となりヒノキの単木抽出精度が向上した。
  • 梅藤 幸太郎, 山本 一清, 吉田 夏樹, 都竹 正志
    セッションID: P1A023
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    これまでの多くの研究例が示すように、航空機LiDARを用いた立木個体レベルの森林情報取得の有用性は非常に高い。しかし、高密度な日本の人工林では、林分内の全立木を完全に把握できるわけではないことも示されてきた。これは林冠面に樹冠が到達していない被圧木や介在木等の抽出が困難であることに起因していると考えられるが、一方で樹冠内の凹凸を梢端として誤認識することが多いという報告もある。そのため本研究では、これら航空機LiDARデータを用いた単木検出法の改良による検出精度の向上を目的とし、従来の方法では検出できなかった立木(未検出木)を新たに検出し、過剰に検出した個体を除去する方法を検討した。未検出木検出では、航空機LiDARから算出されたDSM(Digital Surface Model)と抽出木の樹頂点位置、樹冠モデルから算出した推定DSM、及び現地調査により作成した立木位置図を比較し、未検出木検出に一定の可能性が考えられた。また過剰検出木は、樹冠サイズと関係する検出樹冠内の点群数と緒条件の関係から、過剰検出木除去の可能性についても検討した。
  • 浅香 俊紀, 山本 拓也, 竹中 悠輝, 長岡 貴子, 加藤 正人
    セッションID: P1A024
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    日本の広域や奥地林での森林調査では人手不足を原因とした調査精度の低下や労力と費用を要するといった問題が生じている。近年では、調査の効率化を図れるとしてリモートセンシング技術の利用に期待が寄せられている。しかしながら、人工衛星や航空機から撮影された画像からは林内の情報を取得することができない。この課題を解消するものとして地上レーザ(TLS)が注目されている。TLSは地上に機械を設置することで、取得した膨大な点群データから個々の立木の詳細な情報化を行うことができる。本研究ではフィンランド式のTLS測量を日本で試み、日本の森林に適した方法を検討していくことを目的とした。調査地である上高地は中部山岳国立公園に含まれ、日本屈指の景勝地である。その上高地を流れる梓川のケショウヤナギ林で調査を行った。現地で設置したプロット(20m×20m)でTLS測定を行い、解析することで単木毎のデータと3Dモデルを取得できた。これらを現地調査から得られた毎木データと比較し、検証した。日本ではTLSの導入は広まっていないが、本研究をさらに進めていくことで森林管理においてTLSに大きな役割を与えられると考える。
  • 村松 康介, 光田 靖, 加治佐 剛, 世見 淳一
    セッションID: P1A025
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    近年、森林所有者の高齢化などにより森林境界の確定が難しくなっている。境界がわからない状態では、所有者が不明なため森林整備を行うことができない。そこで、本研究においては時系列航空写真と地籍調査データを用いて、境界確定作業を支援する情報を提供できるか検証することを目的とした。今回用いるデータは平成25年、平成6年、昭和54年、昭和36年、昭和22年の5時期の航空写真と対象地の地籍調査のデータである。時系列の航空写真にオルソ加工を行った後、平成25年のオルソ写真と対象地の地籍調査データを比較し、地籍調査データ上で隣接する林分同士の境界がオルソ写真上で確認できない林分を検出した。それらの林分に対して、時系列のオルソ写真を用いて過去の植栽時期や土地利用の違いから境界を確認することができるか検証した。
  • 伊藤 一樹, 溝上 展也, 吉田 茂二郎
    セッションID: P1A026
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    日本の森林施業は拡大造林政策以降、その画一的管理の容易さと生産性の高さから大面積皆伐一斉更新を主流としてきた。しかし、大面積皆伐は効率的である反面、土壌流出や地力の低下、景観の悪化等の問題があると報告されている。このことを受けて70年代後半から森林施業の多様化などを目的とし、一斉人工林の複層林化が推進されてきた。しかし、複層林の代表的な林型である二段林では、伐出時の下木の損傷や下木の成長不良、光環境を適切に保つため施業が非常に集約的になることなどが問題となっている。そこで、二段林施業と皆伐施業の折衷案として群状・帯状複層林施業が提案された。この施業方法は、二段林施業よりも作業効率が良く、皆伐施業よりも環境に配慮されているため、近年注目を浴びている。しかしながら、群状・帯状複層林施業は比較的新しい施業方法であり、成長量や施業方針についての知見がまだ不十分である。そこで、本研究では、宮崎県椎葉村住友林業社有林の群状択伐地に植栽されたスギ・ヒノキを用いて、群状択伐地における成長特性を明らかにした。
  • 平井 幹人, 光田 靖, 北原 文章, 杉田 久志, 酒井 敦
    セッションID: P1A027
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    高知県東部に分布するスギ天然生林に関しては、これまで天然更新施業の確立を目的として成立過程の究明、択伐施業の導入試験、天然下種更新などの調査・研究が行われている。天然林を管理していくうえで約90年もの間、固定試験地の長期調査をしている試験地は全国でも珍しく重要である。高知営林局魚梁瀬営林管内の千本山天然更新試験地はスギ、ヒノキ、モミ、ツガ、広葉樹からなる天然生林分に設置されており、この林分に対してスギを主とする択伐林に誘導するための様々な更新補助施業が行われてきた。天然生林分の動態と施業の効果を明らかにするために1925年(大正14年)から2014年(平成26年)まで13回にわたり定期調査が行われており、今回は2014年(平成26年)に行った継続調査の結果を報告する。過去の調査データおよび今回の調査結果から林分構造の推移とともに林分生長量、枯死率などを明らかにした。試験地設置時から継続して調査している個体は良好な成長を示すものもあったが枯死する個体もあった。このような解析結果から過去の施業の効果について考察を加えた。
  • 石橋 早苗, 長島 啓子, 田中 和博
    セッションID: P1A028
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    平成24年に森林計画制度が見直され、市町村が主体となる市町村森林整備計画が新たに求められている。しかし昭和30年代からの林業の衰退により、主体的に動こうとする市町村は少なく、地域の事業体は施業計画に地域の実情を反映できていないのが現状である。地域の主体性を引き出すためには、その地域の事業体の能力等の情報を収集、解析し、問題点等を明示する必要がある。そこで本研究では、京都府京丹後市内の人工林を対象に、ネットワークアナリストを用いたコストシミュレーションを行い、採算性の観点から同市の人工林施業の生産性向上の可能性を探る事を目的とする。まず、京丹後市で行われた人工林施業をビデオで記録し、各作業の処理時間と処理された材積から各作業の生産性を求めた。そして同市の森林簿と路網の幅員から、山土場、山土場兼本土場、本土場の各候補を決定し、ネットワークアナリストを用いて各土場候補の材の集積量を算出することで最終的な土場を全24ヶ所決定した。求めた生産性と土場の集積量から、各土場における作業時間及びコストを算出したところ、木寄が施業時間の約6割を占め、コストも最大でありボトルネックであることが分かった。
  • 河瀬 麻里
    セッションID: P1A029
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    本報告では、わが国で長年問題となっている花粉症について、一般市民に対するアンケート調査を通じて、花粉症対策に対する意識および森林に対する意識について検討する。調査地は京都市とし、都市部の例として中京区、山間部の例として右京区京北地域を取り上げた。2014年3月~4月にアンケート調査票を配布・回収し、SPSSを用いて分析した。回収率は、都市部で25.3%、山間部で36.7%であり、山間部の方が高かった。一部の質問を除く全質問に回答した358名(都市部148名、山間部210名)を有効回答とし分析に使用した。社会が重視すべき花粉症対策について複数回答で質問したところ、花粉を飛散する植物を減少させる花粉発生源対策は全回答者の62.3%と最も多く選ばれ、現在広く行われているテレビ等での花粉飛散量の予報は42.2%、どちらの対策も選ばなかった人は24.0%であった。各対策を選んだ比率について都市部と山間部で有意な差は見られなかった。発表では、他の質問や、意識に影響を与えていると考えられる項目についても報告する予定である。
    本研究はJSPS科研費13J02417の助成を受けたものである。
防災部門
  • 山本 浩之, 鶴田 健二, 勝山 正則, 奥村 智憲, 小杉 緑子, 松尾 奈緒子, 青木 万実, 渡邉 哲弘, 谷 誠
    セッションID: P1A030
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    土壌及び植物体に含まれる水の安定同位体比から植物の吸水深度を推定し,水利用戦略を明らかにする研究が行われている.しかし,抽出法の1つである低温真空蒸留は土壌内で植物が利用できない圧力で保持された水も抽出するという問題点がある.また植物体から抽出した水のδ2Hが土壌の値と異なることが報告されており,抽出水中の有機物の影響と考えられている.本研究では低温真空蒸留法による土壌及びヒノキからの水抽出について上記の問題点を中心に調査を行った.2014年9~12月に滋賀県南部桐生水文試験地で表層土壌とヒノキの枝を採取した.土壌サンプルは遠心分離機で植物が利用できる水を,低温真空蒸留法で植物が利用できない水を抽出した後,それらの同位体比を比較した.枝サンプルから抽出した水は活性炭による有機物除去前後の安定同位体比と有機物量の変化を比較した.調査の結果,土壌中の植物が利用できる水はできない水より同位体比が大きいこと,炭素数の比較的大きい有機物に関しては元々抽出水にほとんど含まれておらず,活性炭処理による同位体比の変化は小さいことが分かった.本発表ではより詳細な結果を基に適切な水抽出について議論する予定である.
  • 長野 龍平, 勝山 正則, 辻村 真貴, 芳賀 弘和, 正岡 直也, 榊原 厚一, 池田 隼人, 谷 誠
    セッションID: P1A031
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    山地源流域における地下水・湧水の滞留時間決定機構を解明することを目的とし、滋賀県桐生水文試験地、滋賀県不動寺試験地、岡山県鳥取大学蒜山試験地、岐阜県京都大学穂高砂防観測所ヒル谷流域において、それぞれ12、1、4、4地点で採水を行い、サンプル中のフロン類濃度から滞留時間を推定した。ピストン流を仮定した各流域の滞留時間は、24から32年、27年、16から22年、28から31年であった。既往の研究では滞留時間は地形要素で規定されるという報告がある。4流域を通して滞留時間と地表面地形との関係をみると、集水域平均勾配と正の相関、地形指数(=Ln(A/tan(θ) A:集水域面積、θ:勾配))と負の相関があったが、その他の地形要素とは相関がみられなかった。流域ごとにみると、滞留時間、勾配、地形指数に顕著な違いがなく、相関がみられないことから、滞留時間は地形要素のみで規定されないことが考えられた。採水地点の溶存イオン濃度をみると、滞留時間が長い地点のCa2+濃度が基岩地下水と同等の高い値であることから、基岩地下水の寄与により滞留時間が長くなると考えられた。滞留時間決定には、地形だけでなく基岩以深の地下水動態も影響を与えると考えられる。
  • 鷹木 香菜, 勝山 正則, 正岡 直也, 芳賀 弘和, 申 基澈, 中野 孝教, 谷 誠
    セッションID: P1A032
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    均質な田上花崗岩からなる滋賀県桐生水文試験地(5.99ha)及び不動寺試験地(2.34ha)において,ストロンチウム安定同位体比 (87Sr/86Sr)を用いて集水構造を比較した.桐生では風化した岩塊からゆっくり浸出する 87Sr/86Srの高い基岩浸出水が,不動寺では更に風化した岩盤内の亀裂から湧出する,更に高い87Sr/86Srをもつ基岩湧水が河道近傍に存在した.両試験地で,河道近傍から湧出した水が流域末端渓流水の半分程度を占めることが流量観測から確認された.この水の 87Sr/86Sr推定値は基岩浸出水と同程度であり,両試験地において流域末端渓水に占める基岩浸出水の割合が大きいことがわかった.また,この2流域を含む大流域(桐生:236ha,不動寺:427ha)では本流渓流水の 87Sr/86Srは支流の影響をあまり受けず,上記推定値付近で安定していたことから,大流域においても渓流水に占める基岩浸出水の割合が大きいと考えられた.桐生・不動寺とは異なる地質条件をもつ鳥取大学蒜山試験地(117ha)、京大穂高砂防観測所ヒル谷流域(85.1ha)では,面積拡大とともに地下水の寄与の増加が観測された.
  • 豊泉 恭平, 加藤 拓人, 大類 和希, 瀧澤 英紀
    セッションID: P1A033
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    多雪地域である奥利根上流部における融雪流出は、降水量が少なくなる4月から5月にかけて貴重な水資源となっており、奈良俣ダム等の人工ダム群によって管理されている。この地域において適切に水資源を管理するためには、源流部である森林流域にて実測に基づいた融雪期の流出特性を把握することが重要である。本研究では奥利根上流部藤原湖西岸に位置する森林小流域の流出特性を明らかにすることを目的とし、2010年11月から流量と一般気象の観測を継続的に行っている。2011年および2014年の融雪期(3月~4月)における積雪深と気温の変動は、類似した季節変化を示したが、融雪流出の波形は各年で明瞭な違いが見られた。その要因を明らかにするため、融雪期における気温上昇の日単位および時間単位の違いに着目し、Degree-day法により推定した融雪量と、流量および気温との関係について解析した。その結果、積雪深が80cmを下回るまでの流量と融雪量は類似した波形となり、高い相関を示した。また、融雪流出のハイドログラフについては、気温が0℃以上になる日が連続すると一つの大きなピークとなり、それが断続すると複数のピークとなる傾向が見られた。
  • 國分 美華子, 掛谷 亮太, 野澤 佳司, 村津 匠, 篠宮 和暉, 阿部 和時
    セッションID: P1A034
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    神奈川県丹沢山地では、1923年の関東大震災や1972年の豪雨などにより多くの場所で斜面崩壊が発生した。その後、治山砂防事業が積極的に行われたが、脆く風化しやすい地質であることやシカの食害などにより崩壊地の植生回復が進んでおらず、未崩壊地でさえ荒廃化している箇所が見られる。そのため、丹沢山地の多くの斜面では多量の土砂が生産されているものと推察される。本研究では、このような崩壊跡地や荒廃斜面からの土砂生産の実態を解明することを目的とした。調査地は神奈川県西丹沢地区の中川支流西沢流域内の最上流部に位置する面積0.59haの小流域を対象とした。この小流域には2箇所の崩壊地があり、左右両岸には基岩が露出した荒廃斜面が形成されている。調査方法は、土砂生産量を実測するため、崩壊地には末端部に土砂受けを設置し、荒廃斜面には生産土砂捕捉箱を20個設置した。測定間隔は約30日である。データ解析の結果、崩壊地からの土砂生産量は最大日雨量との相関が高いことが示された。荒廃斜面からの土砂生産量は降雨との相関性が見られなかったが、冬期には夏期の土砂生産量よりも多い6.5kg/m/monthという期間があり、凍結融解が関係していると考えられた。
  • 野中 翔平, 小坂 泉, 阿久津 瞳, 芦葉 弥生, 高木 麻衣子, 松井 拓実, 山口 由乃, 瀧澤 英紀, 阿部 和時
    セッションID: P1A035
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    陸域生態系における熱・水・炭素循環を解明することは、地球規模での気候変動が生態系に及ぼす影響等を把握する上で重要である。近年、大気-植生間における熱・水・CO2フラックスを高い精度で求められる渦相関法を用いた連続測定が、様々な気候帯の森林において実施されている。しかし、気候変動に伴う気温の上昇により分布確率の低下が推測されている本州のブナ林について、群落スケールで継続的にフラックス観測を実施しているサイトは極めて少ない。本研究ではブナが優占する冷温帯落葉広葉樹林における顕熱(H)・潜熱(λE)・CO2フラックスの季節変化の特徴を明らかにすることを目的とし、群馬県利根郡みなかみ町に位置する日本大学水上演習林内の山頂に建設された観測塔において、渦相関法に基づく熱・CO2フラックス観測を実施した。また、葉量の連続的な季節変化を把握するために、樹冠を透過する波長別の光量子を測定した。その結果、HλEの和に対するλEの比率は葉量の増減に伴った変化を示した。しかし、夏季における日中の下向きCO2フラックスは、葉量の増減はみられないが、緩やかに減少する傾向を示した。
  • 山田 純司, 太田 岳史, 小谷 亜由美
    セッションID: P1A036
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    遮断蒸発現象は樹冠構造に大きな影響を受けると言われているが、樹冠構造が遮断損失量に与える影響に関しては未だ不明な点が多い。本研究では樹冠構造の変化が遮断損失量に与える影響を評価するため、人工降雨装置を用いて室内実験を行った。樹高約1mのレイランディーを対象木とし、単木における遮断損失量を測定した。遮断損失量は水収支法に基づいて計算する。剪定を行うことでPAIを変化させていき、複数の降雨強度でのPAIと遮断損失量の変動の相関を調べた。また、微気象要素(飽差、風速、正味放射量)の測定を行った。室内実験であったため風速は0であった。降雨実験を行った結果、0~7%の遮断率が観測できたが、PAIと遮断損失量の間で明確な相関は見られず、飽差と遮断率の間にも相関は見られなかった。風速が0であったため空気の攪乱が生じておらず、葉に貯留された雨滴がほぼ蒸発しなかったことが原因と考えられる。以上のことから、風速は樹冠遮断を考えるうえで重要な要素であり、飽差が存在するだけではPAIによる樹冠遮断への影響はほぼ見られないことが分かった。空気の攪乱が起きることで水蒸気移動が促進され、遮断が進行すると考えられる。
  • 田中 洋太郎, 勝山 正則, 岩﨑 健太, 長野 龍平, 鷹木 香菜, 谷 誠
    セッションID: P1A037
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    降雨時渓流水中の溶存有機態炭素(DOC)の質的変動メカニズムを解明するため、滋賀県南部に位置する桐生水文試験地の流域本流と複数支流において、月に一度の降水、地下水、渓流水に加え降雨イベント時の渓流水を採水した。三次元蛍光分析の結果から多変量解析(PARAFAC)を行い、DOCをタンパク様物質と二種類の腐植様物質の三成分に分離した。降雨イベント時の変動として、全てのDOC成分の蛍光強度は流量増加に伴い増加し、流量減少に伴い低下した。これは、基底流は蛍光強度の低い地下水の寄与が大きいが、洪水時は蛍光強度の高い降雨、土壌水の寄与が増加するためと考えられる。また、イベント前半と後半において全てのDOC 成分は2次谷の本流では後半に増加したが、1次谷支流では前後の変化がなく、0次谷支流では逆に低下した。Iwasaki et al. (2014)は本流域での観測から、空間スケールの違いと流域ごとの流出特性の関係を明らかにしているが、各流域で見られた降雨イベント期間中のDOC成分の変動はこれと対応している。以上より、降雨時渓流水中のDOCの質的変動要因として、流域内の降雨継続による流出起源の変化と流域空間スケールごとの流出特性の違いが考えられる。
  • 佐野 仁香, 五味 高志, 佐藤 貴紀, 平岡 真合乃, 恩田 裕一
    セッションID: P1A038
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    スギ・ヒノキ人工林の強度間伐が、水流出量に及ぼす影響を評価するために、栃木県南部佐野市に位置する東京農工大学FM唐沢山で間伐施業前後の水流出観測を行い、短期水収支法で損失量を推定した。40~50年生スギ・ヒノキ混交人工林のK2流域(17.1 ha)では、2011年7月から12月にかけて2残2伐の列状間伐(本数間伐率:50%,材積間伐率:46%)を行い、K3流域(8.9 ha)は対照流域として2013年1月まで施業は行わなかった。間伐前(2010年8月と9月)の日損失量は月平均でK2流域では3.1 mm/日 と3.1 mm/日、K3流域では2.6 mm/日 と3.0 mm/日 と推定された。間伐後のK2流域における同期間の平均日損失量は、間伐前のおよそ2.8~6.7%と見積もられた。これに対し、K3流域では間伐前後の違いはほとんど見られなかった。今後は、さらに流出観測データの解析を進め、現在まだ推定されていない期間の損失量を短期水収支法で推定していくとともに、間伐後の損失量の経年変化を把握していく。さらに、間伐による森林の損失水量の変化の要因を考察していく。
  • 中坪 稔, 太田 岳史, 小谷 亜由美
    セッションID: P1A039
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    タイガ林は、現在地球温暖化の影響が顕著に現れており、森林と地球温暖化の関係を考える上で重要である。本研究では、東ユーラシアにおけるタイガ林の代表的な樹種であるカラマツが優占する森林の観測データを用いて、潜熱フラックスと環境要素の結びつきの強さの時間変化についての解析を行った。解析の手法としてウェーブレット変換を利用して、日内変動から年々変動までの複数の時間スケールにおいてスペクトル解析を行い、日本、東シベリア、モンゴル北部の森林で地点比較を行った。
     全地点において日内変動以下のスケールでは短波放射、大気飽差の影響が大きく現れ、長期の時間スケールになるにつれ気温の影響が大きくなるという共通の結果が得られた。しかし、それぞれの環境要素の動態は地点ごとに大きく異なるものであったため、潜熱フラックスへの影響の大きさや時間変動に地点間で違いが見られ、特に日本の森林とそれ以外においてその違いは顕著なものであった。これは、東シベリアやモンゴル北部が大陸性の気候であり、日本のものと大きく異なることやそれにより生じる環境条件の違いが反映されたものであると考えられる。
  • IDI SHAH RIZAL IDRIS, 芝 正己
    セッションID: P1A040
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    Time series analysis and forecasting has become a major tool in different applications in hydrology and environmental management fields. In this study, hydrological characteristics include precipitation, river flow and water level of the subtropical Yambaru forest was examined. The 10 years of hydrological data from 10 sites obtained from AMeDAS (Automated Meteorological Data Acquisition System) was analysed. Water level and river flow showed a comparable trend by years, peak in June due to the East Asian rainy season. Time series analysis and forecasting using ARIMA (Autoregressive Integrated Moving Average) model was employed to predict monthly rainfall for upcoming years. An intervention time series analysis could be used to forecast peak value of rainfall data and it could help decision makers to establish priorities in managing water demand in Okinawa Island.
利用部門
  • 臼田 寿生, 和多田 友宏
    セッションID: P1A041
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     既設作業道を再利用する際の安全性の評価方法を検討するため、路体保全を目的とした木製構造物(施工後7年経過)の腐朽状況と路体の支持力を調査した。木製構造物の腐朽状況は、部材の腐朽部分の厚さをレジストグラフにより計測し、健全部の残存率を算出した。また、路体の支持力は、路肩部と中央部において簡易貫入試験を行いNd値を計測した。
     調査の結果、木製構造物に使用されている部材の健全部の残存率は9~88%であった。路体支持力については、中央部に支持力が低い箇所は見られなかったが、路肩部については、全ての測点においてNd値5未満の軟弱な層が部分的に検出された。
     これらの結果から、この作業道を再利用する際の安全性を確保するためには、木製構造物の補強などによる路肩部分の補修が必要であると考えられた。
  • 森 大記, 後藤 純一, 鈴木 保志
    セッションID: P1A042
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在、日本の林業は機械化が進み、多くの高性能林業機械が利用されている。それらの普及に伴い、森林作業道、林業専用道等のいわゆる土構造の強度が注目されている。路体の強度の推定は、現場のニーズでもある。現場での強度の推定は、簡易貫入試験を用いられることが多い。吉永・大貫らが貫入抵抗値(Nd値)と乾燥密度には相関関係があるとしたが、これは主に北関東で行われた試験結果であり、他の地質や土質を考慮したものではない。そこで本研究では、特定の地質や土質に対応した簡易貫入試験による路体の乾燥密度を推定し、簡易貫入試験の基礎的なデータの蓄積を目的とした。【方法】本研究では、高知県土佐町の路線と、嶺北地域の路線の2路線と高知県香美地域でサンプルを採取した。採集したサンプルの細粒分割合を変化させ、細粒分割合が大きいものと小さいものとを用意した。それらを直径30cm深さ30cmの円柱形の穴に入れ、簡易貫入試験を行った。その際、含水比や突固めエネルギーを変化させた。また、現場密度試験と含水比測定を行った。【結果】Nd値と乾燥密度に正の相関が見られ、地質の違いや土質の違いによって、Nd値と乾燥密度の関係に相違が見られた。
  • 篠原 慶規, 増田 治美, 久保田 哲也
    セッションID: P1A043
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    近年,森林管理における路網の重要性が見直されてきており,その整備が進みつつある。しかし,作業道において,長期的な路面侵食量やその要因を調べた研究はほとんどない。本研究では,放置された年数や地形条件などが異なる,福岡県内の作業道7路線で路面凹凸を比較した。それぞれの路線の8~25横断面,計101横断面で計測を行い,平均侵食深(dave)と最大侵食深(dmax)を算出した。各路線のdaveの平均値(Dave)は,比較的放置年数が短い路線ではばらつきが大きかったものの,比較的放置期間が長い路線では,放置期間が長いほうが,その値は大きくなる傾向があった。また,路線内で各横断面のdaveの違いを生み出す要因を調べたところ,比較的放置年数が長い路線では,各横断面の路面傾斜とdaveの間に正の関係が見られた。路面傾斜と年平均dave(dave /放置年数)の関係は,これらの路線で大きな違いはなかった。このことから,長期的に見ると,年平均の路面侵食量は,作設方法によらず路面傾斜によって一義的に決まる可能性がある。今後は,本研究とは異なる地形・地質学的条件,気象条件で同様のことが検証されることが望まれる。
  • 宗岡 寛子, 鈴木 秀典, 山口 智, 田中 良明, 陣川 雅樹, 和多田 友宏, 臼田 寿生, 古川 邦明
    セッションID: P1A044
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、横断溝間隔と縦断勾配に応じた林道路面侵食発生リスクを検討した。林道路面では一般に、縦断勾配が大きいほど、また、前の横断溝からの距離が長くなるほど侵食が進行しやすい。従って路面侵食の防止には、縦断勾配に応じた適切な間隔で横断溝を配置することが重要である。これまで、侵食発生に至る流下距離を明らかにし、それを横断溝間隔の目安として提案する研究が数多く行われてきた。しかし、侵食の発生には縦断勾配以外にも様々な条件が影響を及ぼすため、その流下距離は一つの路線の中でも場所によってばらつく。従来の横断溝間隔の目安は、路線全体で侵食を防止するため、路線の中でも侵食が進行しやすい場所に合わせたものとなっていたと考えられる。しかし、林道開設の低コスト化が求められる近年、そのような厳しい目安が現実的でない場合もあり、より緩やかな目安を採用することも選択肢となり得る。その際、路線全体のうちどの程度の区間で路面侵食が発生し補修が必要となるか把握しておくことが重要となる。そこで本研究では、複数の林道路線について横断溝配置と侵食の実態調査を行い、流下距離と縦断勾配に応じた侵食発生リスクを検討した。
  • 毛綱 昌弘, 山口 浩和, 伊藤 崇之
    セッションID: P1A045
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    スイングヤーダは搬器を先山方向へ移動させる空走行と材をスイングヤーダへ引き寄せる実走行を繰り返すことで集材作業を行っている。索移動時には、ホールラインおよびホールバックラインの二つのドラムを巻取方向へ回すことで索の緊張を保ちながら、片方のドラムの回転力を大きくすることで、搬器の移動を行っている。このとき、巻き出されるドラムは、外力によって回される状態となっているため、動力回生可能な状態であるといえる。実走行時では、ホールバックラインの張力を大きくするほど、材が浮き上がり集材はしやすくなるが、機体の安定が損なわれるとともに、ホールラインの索張力も要することになる。実走行時にホールバックラインドラムで動力回生を行い、空搬器移動時の動力として使用可能となれば、油圧ショベルの消費エネルギーを削減できることになる。このため、スイングヤーダのけん引負荷およびホールバックラインの張力を変化させて、集材作業の模擬試験を実施し、動力回生可能なエネルギー量を計測するとともに、回生に有利な作業条件を検討した。
  • 古川 邦明, 臼田 寿生, 和多田 友宏, 近藤 稔, 松本 武
    セッションID: P1A046
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     大型自走式搬器であるウッドライナーとタワーヤーダとの組み合わせによる全木集材の作業生産性を調査した。ウッドライナー純正仕様から軽量なダイニーマ製繊維ロープに交換してある。荷かけにはオートチョーカーを使用した。タワーヤーダはコンラッド社製KMS-12-U(牽引仕様)、タワー高は地表面から11.48mである。このシステムにより全木下げ荷集材の作業状況をビデオ3台で撮影して、時間観測調査を行った。その結果、集材作業の1サイクル平均で約400秒であった。荷かけ索の引き込みから、荷かけ・線下への木寄せまでの横取り時間は平均で200秒ほどあり、集材時間の約50%を占めた。ウッドライナーの走行速度は、空走行で平均158.4m/分、実走行で平均96.0m/分、走行に要した時間は、作業時間全体の約18%であった。
     オートチョーカー使用の有無による作業効率の比較を行った結果、オートチョーかを使用した場合は1サイクル平均14.1秒、使用した場合は同様に39.6秒であった。オートチョーカーの使用により、1サイクル当たり約26秒間短縮、率にして約6.3%の効率化できることが分った。
  • 長島 啓子, 笛木 まな美, 田中 和博
    セッションID: P1A047
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    三重県大台町では立地環境評価に基づくスギ,ヒノキの適地抽出と,路網からの距離をもとに森林を長伐期施業適地,短伐期施業適地,短伐期施業可能地,林相転換候補地にゾーニングを行っている。しかし,急峻な地形を有する大台町ではH型架線も導入しており,H型架線架設可能地ではこれまでのゾーニングで林相転換候補地となっている林地が施業適地に変化する可能性がある。このため本研究では森林ゾーニングに資するため,H型架線架設可能地をGISを用いて抽出することを目的とした。まず,架線架設面を抽出するために,大台町全域の5mDEMをもとに山地の尾根部を抽出し,尾根部の標高値を用いて主索延長を加味した異動平均面を算出した。得られた架線架設面からDEMを減算し,架線下高を確保できる場所を抽出し,集材用の林道の有無を加味してH型架線架設可能地を抽出した。得られた結果の精度検証のため,抽出結果と実際にH型架線による集材が成された場所の面積を比較したところ,前者は12.7ha,後者は9.2haと3.5haの誤差が見られた。実際の支柱の設置位置により集材範囲に誤差が生じたと考えられるが,広域的に架設可能地を抽出する上では十分な精度が得られたといえる。
  • 山口 浩和, 近藤 稔, 毛綱 昌弘, 渡辺 亮介, 伊藤 崇之, 白井 漸, 谷川 誠
    セッションID: P1A048
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    アームを接地式スイングヤーダは機体が転倒しにくく安定した集材作業が可能であるが、専用のポストを有する機種などでは元柱を高く設置できる反面、索に過大な張力が作用した際には接地しているアームに大きな転倒モーメントが発生し、それに応じて車体が前方へ滑る、あるいはアームが接地している路肩が崩れる等の危険性がある。アームに作用する力とその方向は索張力および索傾斜角度(斜面傾斜)によって変化する。そこで、それぞれの条件下においてアームおよび車体にどのような力が作用するのか解析し、アーム接地型のスイングヤーダを安全に使用するための条件等について検討した。試験車両には、南星機械が開発した8tクラスの油圧ショベルをベースマシンとする主索式スイングヤーダ(IWS-20DY1)を使用した。試験の結果、索張力が大きく、索傾斜角度が緩いほどアームに大きな転倒モーメントが作用し、車体を前方へ引っ張る力が強くなる一方で、車体が前方へ滑り出す大きな要因は、ベースマシンの接地荷重が減少することによる履帯と地面との接地摩擦力の低下とアームの転倒を防止するアームシリンダ内の油圧がリリーフ圧を超えることによるものと推測された。
  • 石川 知明
    セッションID: P1A049
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    集材架線は,急峻な地形に適している,大量の木材を効率良く搬出できるなどの利点がある一方,架設撤去費が大きいため少量の木材の搬出では経費が高くなる,単木あたりの材積が小さいと効率が悪いなどの欠点がある。しかし,チェーンソーで伐採,架線で全木集材,土場でのプロセッサによる造材,トラック運搬という作業システムは,急傾斜地であっても,林道や土場が計画的に配置されている地域では作業能率が高いこと,さらに,土場で造材するため,枝条や端材を木質バイオマスとして搬出できることなどが期待される。そこで,本研究では,エンドレスタイラー式を対象に,既存の標準功程表を用いて,平均集材距離,平均横取り距離,搬出材積を変数とし,材積あたりの搬出経費を求めた。この経費をもとに,採算のとれる作業条件を明らかにし,集材架線を導入すべき箇所を選定する基礎資料を得ることとした。
  • 渡邊 優美, 長谷川 尚史, 新永 智士, 白澤 紘明
    セッションID: P1A050
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    人工林の齢級構成をみると、その多くはいまだ間伐等の施行が必要な育成段階にあるものの、木材として本格的に利用可能と成るおおむね50年生以上(高齢級)の林分が年々増加しつつある。高齢級の人工林は、現状のまま推移した場合、平成29(2017)年には、人工林面積の6割に増加すると見込まれている。今後、森林資源の充実に伴う伐採木の大径化が見込まれる中で、このような変化に対応できる林業機械の開発が望まれている(林野庁,2013)。しかし、先進林業機械の導入への投資は大きい。
     本研究では、DBH平均39.1 cm、密度340本/haの林分0.4haに対して2014年10月30日に行われた択伐施業を調査した。伐採木はDBH21.1 cm~55.4 cmの12本である。この施業は、伐木・造材にチェーンソー、木寄せ集材にウィンチ付グラップルを使用した。この施業をビデオ観測によって作業時間を調査し、分析結果をもとに作業要素ごとに経験式の作成を行った。
     本研究の目的として、同じような条件の択伐施業において、造材作業にプロセッサを導入した場合とチェーンソーの場合のコストを比較し、大径材搬出において各方法が成立する条件を検討する。
  • 杉本 和也, 白澤 紘明, 新永 智士
    セッションID: P1A051
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     林業における伐出作業システムは、伐採、造材、搬出など各工程が連動するものであり、各工程間の生産性のバランスや、土場容量などの制約条件が全体の生産性を左右する。従来、伐出作業システムの評価は、各工程の時間観測や1事業地を想定したシミュレーションモデルにより行われてきたが、複数事業地を想定し、機械や人の配置をスケジューリングして検討した例は少ない。そこで報告者らは、複数事業地への機械や人の配置を決める工程計画を、スケジューリング理論により定式化・自動作成し、システムの評価を行った。本研究における伐出作業システムは、作業道開設、チェンソー伐採、プロセッサ造材、フォワーダ搬出、トラック運搬という5つの工程からなるものとした。また、定式化においては、機械に対する作業員の割り当てや事業地間の機械回送についても考慮することで、より現実的な工程計画の作成を可能とした。
     各工程の機械数、各機械の生産性、土場の容量、作業員数などを変更可能なパラメータとして設定し、各種の感度分析を行ったところ、必要な土場容量や、最適な作業員数と機械数、生産性の高い機械を導入した際の効果等について評価することが出来た。
  • 山場 淳史, 桐林 真人, 石井 利典, 佐野 俊和, 涌嶋 智, 與儀 兼三, 中村 裕幸
    セッションID: P1A052
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    地上型3次元レーザースキャナ(TLS)を用いた森林計測・解析システムにより,従来の毎木調査より低コストで立木位置・形状を正確に把握すると同時に微細な地形情報も取得できるようになった。このシステムに立木状態での非破壊的品質評価手法が統合されれば,市場ニーズに合わせた形状および品質の丸太を効率的に生産でき,結果として戦略的販売計画によって山元の収益性が高まることが期待される。そこで本研究では次の方法で収穫前の立木の形状および品質の総合的評価手法を検討した。①伐採前の FAKOPP計測の際にセンサーを定式配置し定力打撃装置を用いる計測手法 (MM法)および角度補正による再現性向上について丸太の縦振動ヤング係数との比較で検証,②(株)woodinfoの「Digital Forest」により提供された立木位置・形状データ,高解像度DEMおよび立木強度データをGISデータに統合,③GIS上で地形状況や立木配置状況を適宜参照し生産現場や販売計画で想定される活用場面を検討。なお,試験地は広島県廿日市市吉和の民有林におけるTLS計測済み林分(スギおよびヒノキ,46~50年生)であり,立木サンプルには各樹種15本計30本を利用した。
  • 佐々木 達也, 上村 巧, 吉田 智佳史, 中澤 昌彦, 岩田 若菜, 屋代 忠幸, 中郡 雅一, 須藤 博
    セッションID: P1A053
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    現在造林費用の低コスト化が各地で試みられており、緩斜面では地拵え作業に車両系機械を用いることで低コスト化が可能であることが明らかにされているが、急斜面については明らかにされていない。茨城県、福島県の伐採跡地において、車両系機械を用いた地拵え作業(刈払い作業を含まない枝条整理作業)を行い、人力のみの枝条整理と人力・車両系機械を併用した枝条整理について能率およびコストを比較した。数種類の車両系機械①0.16m3、②0.45m3、③ロングリーチグラップルを用いて調査した。急斜面で①、②、③、緩斜面では②を用いた。その結果、急斜面では①4.3人日/ha、②3.4人日/ha、③2.2人日/ha、緩斜面では4.0人日/haとなった。今回人力作業は急斜面では8~10、緩斜面では16人日/haであったため、機械を用いた地拵えはかなりの省力効果があると考えられる。機械・人力併用と人力のみのコストを比較した結果、急斜面では機械ではブーム・アームの届く範囲でしか作業できないが両者とも変わらなかった。緩斜面では機械併用が有利になった。
  • 斎藤 仁志, 千代 苑加, 守口 海, 白澤 紘明, 井上 裕, 植木 達人
    セッションID: P1A054
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    現在、長野県の人工林は他県と同様にその齢級構成が現在9~13齢級に集中しており、伐期を迎えつつある。しかし、長野県の素材生産量は約30万m3で蓄積量に対して少なく、素材生産が活発ではない。そこで、需要の喚起による素材生産の増加と未利用資源の有効活用を目指し、大規模製材工場と木質バイオマス発電施設稼働計画(F・POWERプロジェクト)が立ち上げられた。このプロジェクトの製材工場ではアカマツを中心とした製材を行う予定で、大型の需要先に応えるため、積極的な木材搬出を行うことで県内の林業の活性化を図ることや、アカマツを伐出することでマツ枯れ対策としてアカマツ林の樹種転換を推進していくことなどの効果が期待されている。これまでにない大規模需要を成立させるためには、受け入れ側が提示する木材の買取価格が、素材生産費に比べ高くなることが望ましい。そこで本研究では、アカマツにおける製材用原木の買取価格の妥当性を、素材生産側から検証する。そのため、高性能林業機械を利用したアカマツ小規模皆伐地の生産コスト調査結果と最適運材費用から搬出可能材積をシミュレーションにより算出した。
  • 中澤 昌彦, 鈴木 秀典, 上村 巧, 山口 浩和, 倉本 恵生, 津山 幾太郎, 佐々木 尚三, 宇都木 玄, 斉藤 丈寬
    セッションID: P1A056
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究の目的は、伐出後の造林作業の効率化も考慮して、労働生産性が18m3/人日以上を達成するような伐出作業システムを開発することである。【方法】北海道下川町有林内のカラマツ53年生とトドマツ56年生の緩傾斜地林分において、欧州から導入されたホイール式の林業専用機型およびクローラ式の建設機械をベースマシンとした従来型ハーベスタとフォワーダを用いたCTL(Cut to Length;短幹集材)システムによる帯状皆伐作業を実施し、各工程の作業内容を時間観測して生産性を求めた。【結果】専用型および従来型機械のサイクルタイムや走行経路・速度、伐倒木と機械との距離関係などの作業特性が明らかとなり、労働生産性は専用型の方がハーベスタでは約1.9倍、フォワーダでは約1.4倍、システム全体では約1.5倍と、従来型より高いことが明らかとなった。一方、従来型においても単木材積や林内集材距離、土場の位置などの作業条件が満たせば労働生産性18m3/人日以上を達成できることが示唆された。
  • 猪俣 雄太, 鹿島 潤, 伊藤 崇之, 山田 健, 山口 浩和, 今冨 裕樹, 旗生 規
    セッションID: P1A057
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    植栽作業は機械化が困難で重労働な人力作業である。そのため、林業従事者の労働安全衛生の向上には、このような植栽作業の軽労化が必要になる。人力作業の軽労化に向けたこれまでの研究は、心拍数を計測し、代謝量を算出する手法であったが、この手法では身体の一部に負荷がかかっている場合の局所的疲労を評価することは難しい。しかし、近年ケーブルレスモーションセンサが開発され、各関節の角度を計測できるようになり、そこから関節にかかる負荷を推定できるようなった。そこで、本研究は植栽作業の軽労化のために、ケーブルレスモーションセンサを用いて、植栽作業中に関節にかかる負荷を推定し、その推定値を用いて、植栽作業の労働負荷を評価することを目的とする。被験者は5名で、植栽道具は唐クワ、スペード、ディブルとする。得られた関節の角度から、椎間板にかかる負荷を推定した結果、唐クワやスペードを使用した穴あけ作業は、作業姿勢の改善が必要となる重作業と分類され、ディブルは要素作業、作業者にかかわらず、普通作業であった。このことから、唐クワやスペードの穴あけ作業はより椎間板に負荷がかからないように改良する必要がある。
  • 堀尾 健, 吉岡 拓如, 井上 公基
    セッションID: P1A058
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、着用防護服の違いが歩行時の筋負担に与える影響を明らかにするために、チェーンソー用防護服を着用して歩行した際の下肢にかかる筋負担量を計測することである。
    調査対象とした防護服及び作業服は、オールシーズン用防護服、夏用防護服、チャップス及び作業服の4種類である。筋負担の計測部位は、MARQ-MEDICAL社製のMQ8筋電計を用い、大腿四頭筋、ハムストリングス、腓腹筋の3箇所とした。歩行条件として、Life Fitness社製トレッドミルT5-5を用い、歩行速度を2.0km/hと4.8km/h、歩行傾斜を0度と10度とした。それに加え、チェーンソーを保持する場合と保持しない場合の計8通り設定した。被験者は男子学生5名である。
    その結果、大腿四頭筋では、チャップスを着用した際に作業服と比較して筋負担が増加する傾向があった。ハムストリングスでは、ほとんどの条件で各防護服の間に顕著な差は見られなかった。腓腹筋では、各防護服は作業服と比較して筋負担が増加する傾向があった。計測部位によって違いはあるものの、防護服を着用すると筋負担は増加したが、各防護服の間での筋負担の顕著な差は見られなかった。
  • 中島 千嘉, 舩坂 雪那, 山田 容三
    セッションID: P1A059
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    高性能林業機械の普及や路網整備等の進展による労働負荷の軽減や、法令の整備とそれに伴う安全衛生活動の推進、その他労働力の推移等の影響もあり、林業労働災害発生件数は長期的には減少傾向にあるといえる。しかしながら、労働災害発生率は依然として高く、平成25年度森林・林業白書によれば、平成22年の死傷年千人率の値は林業が27.7となっており全産業平均の約13倍程度である。森林資源が充実し林業労働者の多くが高齢となってきている昨今、新規就業者の安定的な確保や育成が喫緊の課題となっているが、そのためにはまず労働者にとって安全な職場環境を確保することが必要である。労働災害減少のためには、その発生要因や災害の特徴、傾向をつかむことが重要となる。特に災害要因や傾向、防止策には、災害の経年変化と同時に、日本の林業をめぐる情勢の変化といった背景的な影響に対する考慮も必要である。そこで、本研究では主に重大災害に着目し、社会的変化との関連を踏まえつつこれまでの林業労働災害の特徴や変化傾向を明らかにし、災害防止のための基礎資料と為すことを目的として、過去十数年の死亡災害について統計分析を行った。
  • 三木 敦朗, 斎藤 仁志
    セッションID: P1A060
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     林業の効率化のために機械化が求められているが、自然的条件や経営上の条件から大型機械の導入に適さない場合もみられる。そうした場合に、小型機械装置を用いて効率化することはできないだろうか。本研究では、複数人での作業時の安全を確保することを目指して、マイコンとGPSセンサー・通信システムを用いて作業者間の距離を測定し、接近を警告する簡易な装置を開発・試作し、この精度と課題を検証した。
  • 渡辺 靖崇, 鈴木? 保志, 後藤 純一, 酒井 寿夫
    セッションID: P1A061
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】簡易土砂受け箱を使用し,将来木施業を行っている林内の土砂流出量を計測し,既往研究と比較することで施業方法の違いによる流出量の変化を調査した。本研究は2014年9月までの調査を渡辺ら(2013,2014a~c)にて報告しており,2014年11月まで調査結果を加えたものである。【方法】調査は将来木施業を行うスギ林とヒノキ林の2ヶ所で行った。土砂受け箱の設置箇所の要因は,樹種,開空度,傾斜,地形の4要因の組み合わせである。また,箱の直上の植生の被度を測った。開空度の違いについては立木位置から簡易的に判定していたが,今回全天空写真の撮影を行い,より正確な判定を試みた。【結果】土砂流出量に関して,単要因では回収期間が最も寄与率が高く,降雨強度の変化の影響や下層植生の被度の変化の影響であると考える。下層植生の被度は,スギ林では調査開始から現在まで回復があまり見られなかったが,ヒノキ林では回復が見られた。これはヒノキ林のほうが間伐率が高かったことが原因であると考える。本研究と列状間伐を行った林内の流出量を調査した他の研究と比べると,スギ林では同程度であり,ヒノキ林では高い結果となった。
  • 大塚 大, 斎藤 仁志, 植木 達人
    セッションID: P1A062
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    漸伐施業は皆伐施業と比較して,生産事業を行いつつ各種の公益的機能の発揮が見込まれるなど,近年の国民の森林への要望に対応できる施業方法である。このため,各地で導入がなされ,現在は一斉林と同じく収穫の時期を間もなく迎える段階にある。しかしながら,この作業法は十分な研究がなされておらず,特に,労働条件が大きく変化した現在において過去の事例をそのまま復元することは現実的ではない。そこで本研究では,漸伐林において現在の生産システムの主流となる車両系高性能林業機械が伐出システムに導入された生産事業を調査し,次世代の主林木となる更新木の損傷について考察することによって漸伐作業の体系化の一助とすることを目的とした。上木の伐出により,更新木のおよそ半数に損傷が発生した。しかし,今後の経年変化による回復などを考慮すると約5,000本/haの立木密度で今後の主林木が確保された結果となった。
  • 遠國 正樹, 中川 雄治, 平田 雅和, 井上 崇, 露木 聡, 尾張 敏章
    セッションID: P1A064
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    VRS(仮想基準局方式)RTK-GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite System)は,位置情報サービス事業者が配信する補正データを携帯電話の通信回線を使用して受信することによって,GNSS受信機1台でリアルタイムかつ高精度に位置決定が可能な測量手法である。本研究では,VRS対応のGNSS受信機(Trimble Proシリーズ 6H)を対象として,2014年5月から8月に東京大学北海道演習林内で測位試験を行い,測位条件の違いが測位誤差に及ぼす影響を一般化線形混合モデルにより分析した。分析の結果,立地条件と測位方法,両因子間の交互作用の全てが採択され,測位誤差は補正データを使用しない(VRSではない)場合の同機種と比較して有意に減少した。また,交互作用の推定値からVRSを尾根・開放区で使用すると測位誤差が小さくなると推定された。一方,北斜面・閉鎖区では尾根・開放区よりも測位誤差が有意に増大した。VRSを利用することで,森林内でも条件によってはリアルタイムの測位精度が大きく改善することが期待される。
  • 松村 哲也, 三木 敦朗, 斎藤 仁志, 中西 弘充, 小西 哉
    セッションID: P1A065
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     林業の効率化のために機械化が求められているが、大型機械による生産の効率化だけでなく流通の効率化も重要な課題となっている。そうした場合に、小型機械装置を用いて流通の効率を図ることはできないだろうか。
     本研究では、近年増加しつつある直送化への対応を考慮し、山土場での検尺作業を効率化することを目指して、末口直径の計測値を自動で電子的に記録する装置(以下、装置K)を開発・試作し、これを用いた場合の効果を測定した。
     その結果、(1) 1人工での手作業(検尺してから野帳に記録)と装置Kを用いた作業を比較した場合、平均22%時間短縮できること、(2) 2人工での手作業(検尺と記録を並行しておこなう)と装置Kを用いた作業を比較した場合、作業時間が平均15%増となるが人工は削減できることが明らかとなった。現在のところ装置Kの目盛り部にはコンベックスほどの柔軟性がないため、それに起因する取り回しの難しさがある。さらなる効率化のために、今後はこの点の改良が必要であることが示唆された。
  • 山口 智, 鈴木 秀典, 宗岡 寛子, 田中 良明, 陣川 雅樹
    セッションID: P1A066
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    林道や作業道の維持管理で必須な路面排水を目的として,近年,無秩序な増殖が問題になっているモウソウチクを割った竹粗朶を素堀にはめ込んだ排水方法を試行し,有用性を確認している。しかし,当初は結束材料として帯鉄を用いて試作したため,林道に設置した際に帯鉄の断裂が発生した。これはタイヤのパンクの原因となる。そこで,耐候性のある他の結束材料を選定するために曝露試験を行った。
    結束材料として,クレモナロープ,PPロープ,ナイロンロープ,ポリエステルロープ,KPロープ,綿ロープを使用し,これらの材料で結束した試験体を森林総合研究所構内で日照条件の異なる2ヶ所の試験地に設置した。設置して9ヶ月後,2年前と同様にバネ秤を用いて最大196Nの力で引っ張った結果, 日なたと日陰の両方において,全試験体で伸びに違いはあったが、引張による断裂はなかった。ただし,日なたのPPロープの表面に劣化が確認された。また,単位長さあたりの結束材料の価格は材質によって数倍の価格差があり,これは竹粗朶の製作コストに影響する。以上の結果から結束材料の強度とコストについて考察を行った。
造林部門
  • 阿部 葉月, 吉田 俊也
    セッションID: P1B001
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    樹木の腐朽は、木材生産において利益の損失をもたらす反面、野生生物が営巣などに使用する樹洞の形成につながる現象である。このため、腐朽が発生する要因の解明は、生物多様性の保全を考慮した森林管理を実行する上で重要である。本研究では、北海道北部に位置する北海道大学研究林において、択伐によって得られた木材の生産記録をもとに、天然生林から伐り出された材の空洞の出現傾向について解析した。およそ12箇所のデータを用いて、丸太 (材長1.9m~3.65m)に空洞が出現する確率を樹種・材径・箇所ごとにまとめた。全体でみると、空洞を持つ丸太の比率は、約5%であった。樹種ごとにみると、トドマツ、イタヤカエデ、ミズナラ、ダケカンバは比率が高かった。材径に関しては、大材径ほど空洞出現率が高い傾向にあったが、ミズナラは比較的小さい材径においても高い値を示していた。また、空洞出現率は伐採箇所によっても2%~10%と幅があり、講演ではその地形条件との関連性についても報告する。
  • 原澤 夏穂, 小林 誠, 紙谷 智彦
    セッションID: P1B002
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    多雪地にはかつて薪炭林として利用された広葉樹二次林が成熟してきている。なかでも家具材などに利用されるブナの活用が課題となっている。箒状樹形のブナは周囲木の存在によって枝下高などの樹形が影響を受けるとされているために, 用材林として管理するには密度が重要となる可能性がある。本研究は新潟県十日町市松之山とその周辺の地域における旧薪炭林のブナ二次林を対象に, 林分密度が樹形に及ぼす影響について単木と林分の両スケールで評価することを目的とする。
    単木スケールでは約16,000m2の林分で1444本の立木位置測量を行い, ArcGISで全立木の半径2m, 4m, 6mのバッファ内本数を算出した。その結果, 胸高直径と全てのバッファ内本数との間に負の相関, また枝下高比は4m, 6mバッファ内本数との間に正の相関がみられた。林分スケールでは26林分に各800m2のプロットを設置し, 林分密度が樹形に及ぼす影響を調べた。その結果, 胸高直径, 枝下高比, 形状比, 樹冠サイズの林分平均値は林分密度, 相対幹距との間に有意な相関があった。したがって, ブナ二次林を用材林として活用するためには単木, 林分の両スケールで好適な樹形に誘導するための密度管理が必要である。
  • 川井 祐介, 八巻 貴裕, 水永 博己
    セッションID: P1B003
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    植物群落内は光獲得効率や光利用特性が異なる様々な種が混交することで光が不均一に分布しているが、このことが生産量にどのように寄与しているかは不明である。本研究では種ごとの生産能力を定量化し、光獲得効率と光利用特性が植物群落の生産量に与える影響を明らかにすることを目的とした。
     ヒノキ人工林ギャップ地に発達した低木群落を対象に光の三次元分布測定、層別刈り取り調査を行った。これらの調査は秋葉山、富士山、静岡大学天竜フィールド演習林内にて計43か所行った。さらに種ごとの光の獲得効率を知るため、演習林内において、3D レーザースキャナを用いて主要な群落構成種から20cmの枝を採取し、枝単位での構造と個体全体の枝葉構造を測定した。また光の利用特性を調べるため、測定機器を用いて40種71個体の最大光合成速度と暗呼吸速度をそれぞれ測定した。
    構成する植物の葉の大きさや節間長によって光の分布パターンが決定されており、葉の重なり合いの指標であるSPARの値が種によって大きく異なることが分かった。発表では統計モデルを用いて種ごとの特性を整理し、光の不均質性がどのように群落の生産量に貢献しているのかについて論じる。
  • 渡辺 花観, 藤田 早紀, 孟 凡康, 玉井 裕, 斎藤 秀之, 渋谷 正人, 小池 孝良
    セッションID: P1B004
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    マツマツ材線虫病により海岸林クロマツは激害を受け、機能低下が危惧されて久しい中、その耐病性の知見収集が必要である。健全な水分生理状態が保たれるクロマツは潜在的抵抗性が高いことが報告されている。水分維持には水分吸収を助ける菌根形成が影響するため、菌根形成を促進させ、耐性を高め被害を軽減できる可能性が考えられる。
     クロマツの菌根形成には、土壌の富栄養化やpH低下をもたらすニセアカシア落葉(阻害因子)と、細根誘引やpH上昇の効果がある炭(促進因子)の影響が示唆されている。本研究では、ニセアカシア落葉と炭が菌根形成及び水分生理状態に与える影響を明らかにすることを目的とし、操作実験を行なった。
    温室環境下にて4処理(対照、落葉、施炭、落葉及び施炭)を設けクロマツ苗木を植え付け、約一年生育させた。施炭を行った二つの処理で有意に針葉の水ポテンシャルが高かった。しかし菌根形成率は全ての処理で98%以上と、差は見られなかった。相対細根量(細根乾重/全乾重)と水ポテンシャルで相関分析を行った結果、高い正の相関がみられた。施炭により細根の発達が促進され、菌根量増加によって良好な水分維持がみられたものと思われた。
  • 米山 隼佑, 紙谷 智彦
    セッションID: P1B005
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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     海岸砂丘の保安林樹種として高木性常緑広葉樹が植栽される機会が増えているが,植栽1年目の活着不良が問題になっている。新潟海岸では,マツ枯れが進行し落葉高木が侵入しつつある多様な林冠下に,クロマツ代替種としてシロダモとタブノキが 2014年3月に試験植栽された。本研究は,これら植栽木480本を対象に,植栽位置で測定した光環境と土壌環境が1年目の活着に及ぼす影響を明らかにした。光環境は全天空写真による林冠植被率と光量,土壌環境は 9月上旬の高温日における地表下10cm の地温と土壌水分を測定した。林冠植被率・光量・地温は,シロダモ・タブノキともに生残と枯死の間で有意な違いがあった。標準化したデータから得られた環境要因ごとのGLMMの係数を比較したところ、生残に及ぼす効き方の順位は,シロダモで光量>林冠植被率>地温>土壌水分,タブノキで地温>光量>林冠植被率>土壌水分であった。土壌水分は,タブノキのみで有意な違いがあった。また、タブノキはシロダモよりも地温の影響を受けやすかった。以上の結果から,両樹種ともに樹下植栽が有効であり,特にタブノキはシロダモよりも裸地での高温障害を受けやすい傾向にあった。
  • 高橋 あかり, 林田 光祐
    セッションID: P1B006
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    里山は近年の管理放棄による生物多様性の低下やナラ枯れ被害が問題になっており、新たな保全管理の方法が課題となっている。本研究では、林床の多様性回復のための常緑低木除去や落ち葉掻きが木本実生の更新に及ぼす影響を日本海側の多雪地帯である山形県寒河江市のコナラとアカマツが優占する二次林で検討した。225m2の調査区を9つ設定し、常緑低木除去と落ち葉掻きの両方を行う落葉掻き区、常緑低木除去のみを行う刈払い区、無処理区を3つずつ設け、林床処理を2011年とコナラの結実が豊作だった2012年の秋に行い、コナラ実生と処理後に発生したその他の樹種の実生を区別して2年間の追跡調査を行った。コナラ実生の生存率は1年目の52.5%に比べ2年目は76.6%と高かった。1年目の死亡要因は菌害が最も多かったが、2年目は動物害が大半を占めた。2年間の生存率を処理ごとに比較すると、刈払い区で最も高く、一番低かった落葉掻き区とは有意な差が認められた。また、実生出現種数は無処理区より処理区の方が有意に多く、林床処理が実生の多様化を促した。処理ごとに実生数を比較したところ、コシアブラとアカマツの実生数が落葉掻き区で有意に多かった。
  • 荒井 美香, 大久保 達弘, 逢沢 峰昭
    セッションID: P1B007
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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     針葉樹人工林皆伐後に造成された広葉樹人工林では、皆伐後に生じる雑草木が成林の妨げとなることが懸念される。本研究では、栃木県の針葉樹人工林皆伐跡地に造成された、幼齢コナラ人工林3林分(大月沢、原沢、株次)において、コナラ植栽木の成長および周囲の植生の量・組成について調査した。大月沢と原沢では年1回、それぞれ3年間と5年間、株次では年2回、7年間の下刈りが完了している。コナラ植栽木の残存密度は、大月沢、原沢、株次の順で大きくなった。植生調査の結果、株次ではコナラ植栽木が優占していたが、大月沢ではクマイチゴやヤマグワ、原沢ではリョウブやクズなどの他種が優占しているプロットもみられた。大月沢上部ではコナラ以外の低木種が優占していた。コナラ植栽木の樹冠長率は各調査地で概ね70?80%であったが、大月沢では40%以下の個体もみられ、これらのコナラはより自然高の大きな競争種に被圧されていた。以上のように、コナラ植栽木の残存密度および優占度には下刈りの回数が影響していると考えられる。また、コナラの残存密度が低い林分では他種との競争のため、コナラは水平方向へ樹冠を広げており、伸長成長が抑制されていると推察された。
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