日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
選択された号の論文の855件中451~500を表示しています
造林部門
  • 小多 祥基, 高嶋 敦史, 芝 正己
    セッションID: P1B008
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    沖縄島北部に広がるイジュ人工林では、保育管理に関する基準の設定が進んでいない。そこで本研究では、施業履歴の違いがイジュの樹冠幅と直径成長に及ぼす影響について検討した。調査区は2箇所設け調査区A、Bとした。調査区Aは1988年に4400本/haで植栽され12年生時に除間伐が行われた。調査区Bは1980年に同密度で植栽され除間伐は行われていない。測定対象は胸高直径4cm以上の木本植物とし、樹高、枝下高、4方向の樹冠半径、胸高周囲長、立木位置を記録した。イジュの平均胸高直径、胸高断面積密度を比較すると、いずれも調査区Aが調査区Bを上回り、除間伐による効果が表れていると考えられた。しかし、近年の年平均直径成長量を比較したところ両調査区で大きな差は無く、除間伐の効果が小さくなり、2回目の除間伐の時期に達していると考えられた。平均胸高直径は調査区Aが調査区Bを上回ったが、平均樹冠投影面積は大きな差が無く、樹冠投影面積と直径の関係性は確認されなかった。また、一般的に間伐強度は樹冠幅を基準にして決定されるが、イジュについては適用できない可能性が示唆され、新たな樹冠の評価方法を検討する必要性が考えられた。
  • 加藤 幹大, 斎藤 秀之, Gaman Sampang, Yuda Prawira, Penyan Sandan, 渋谷 正人
    セッションID: P1B009
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    東南アジアの熱帯泥炭湿地林では農地転換や焼き畑、土地開発等のため、荒廃地が増加している。それにともなう生態系サービス低下は深刻であり森林修復は急務である。短伐期の早生樹種を用いて行われる産業造林は事業体主導のもと行われ成功している。しかし熱帯泥炭湿地では立地特性からアカシア類を育成するには環境負荷の大きな施業法が必要であり、近年は新規造林が敬遠されている。さらに、産業造林で生産される木材は主にパルプ材であり、建材を得るため天然林伐採は依然として行われている。よって建材生産を目的とした人工林造成も今後は必要とされると考えられる。本研究では現地に自生するフタバガキ科の高木類Shorea balangeranを対象樹種とする。この種は高いストレス抵抗性や力学的強度、経済価値などの性質から造林樹種として有望視されている。造林樹種を選抜する際に成長特性は重要な基準となる。しかし経時的な成長データは乏しい。そこで本研究はShorea balangeranの成長速度を明らかにすることを目的とした。植栽後10年で樹高は平均8.8m、最大17.0m、DBHは平均8.1cm、最大20.5cmとなりShorea blangeranは初期成長速度の高い種であることが示された。
  • 岩本 麻里, 伊藤 哲, 加治佐 剛, 平田 令子, 光田 靖, Vuthy Ma, Heng Sokh
    セッションID: P1B010
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    カンボジアでは1994年にコミュニティフォレスト(CF)が開設され、現地住民がその運営を行っている。CFの多くは過剰伐採等で劣化した二次林であるため、用材生産に向けて間伐等による質的改善が必要とされている。間伐は一般的に種間や幹間の競争緩和や不良形質木の除去を目的として実施されるが、天然生林の間伐では、それによって有用樹種のみが残され、結果的に多様性が低下する恐れがある。そこで、有用樹種以外の中でNTFPとして利用される樹種を積極的に残していくことができれば、種多様性を比較的高い状態で維持した間伐が実施できると予想される。そのためには、まず現地住民の間伐に対する考え方を知る必要がある。本研究では、カンボジアの間伐の実態を知るとともに、現地CF運営委員の選木基準と、それに伴う林分構造変化について明らかにすることを目的とした。CFにおいて樹種および胸高直径の毎木調査を行った。同林分で現地CF運営委員6名に伐採木・保残木を選定してもらい、同時に選木理由を記録した。これらの調査結果を基に、間伐における選木性向を解析した。また、選木結果から予測される林分構造を評価し、種多様性の変化について考察した。
  • Mochamad Candra Wirawan Arief, Akemi Itaya, Yayat Dhahiyat, * Parikesi ...
    セッションID: P1B011
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    The Indian Ocean tsunami on December 26th 2004 completely devastated the coastal region of Banda Aceh and severely damaged the coastal ecosystem, including mangroves. The damage and recovery of the coastal vegetation was assessed using time series remote sensing data on Google Earth; the progress of vegetation recovery after the tsunami was also examined. Mangrove distribution was observed using visual interpretation of high spatial resolution images taken in June 2004, in January 2005, in June 2009, in May 2011 and in May 2013. The area covered by mangroves in 2013 was 60.35% of that in 2004. The vegetation has slowly but steadily recovered from the disaster. Although the area of mangroves near estuaries was relatively large (26.83 ha) before the tsunami, it was still only 15.23% of that area in 2013.
  • 山崎 寛史, 上條 隆志, 五味 高志, 恩田 裕一
    セッションID: P1B012
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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     本研究は、2伐2残の列状間伐が行われた栃木県唐沢山において、強度間伐がスギ・ヒノキ人工林の下層植生の変化に与える影響を明らかにすることを目的とした。225m2~300m2の調査プロットを4か所に設置し、植生調査を行った。出現種数(5m×5m)は、間伐前で12種~38種であり、間伐後3年目で50種~72種と増加した。植被率も、間伐前で8.9%~63.3%、間伐後3年目で92.0%~99.6%と増加した。木本については、ヒサカキ、アラカシ、ニワウルシ、タラノキなどが主要樹種であり、前者2種は間伐前から存在していた株が間伐後に再生し、後者2種は埋土種子ないし森林外からの散布種子により、間伐後に新たに出現したと考えられる。一方、草本については、ダンドボロギクなどの一年生草本、オカトラノオなどの多年生草本があり、前者は間伐後1年目に新たに出現し、間伐後2年目には大きく減少した。後者は間伐後1年目に新たに出現し、間伐後2年目以降に大きく増加した。これらのことから、強度間伐は短期間で下層植生の種組成、特に草本の種組成を大きく変化させることが明らかとなった。
  • 溝口 拓朗, 山岸 極, 平田 令子, 伊藤 哲
    セッションID: P1B013
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    【目的】ヒノキ林では林冠が閉鎖しやすいこと、リターが流亡しやすいことなどから林床の裸地化とそれに伴う表土の侵食が起きやすいと言われている。侵食の軽減には林床の植生やリターによる表土の被覆が重要である。林床被覆は間伐によって増加することが報告されているが、間伐および間伐の際の下層刈払いがリター被度も含めた林床被覆に与える短期的影響についてはあまり調べられていない。そこで本研究では、ヒノキ人工林における列状間伐時の下層刈り払いが雨滴侵食および表面流侵食に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】調査は熊本森林管理局熊本営林署管内の城山国有林1146林班のい小班の50年生ヒノキ人工林で行った。ヒノキ人工林の下層を列状に刈り払い、2014年5月~12月にかけて林床被覆率、土砂移動量、リター移動量、雨滴侵食量、林内雨量を測定して無処理区と比較した。【結果】下層刈り払いを行うことで、林床被覆率が高くなったが侵食量も多くなった。これは下層刈り払いにより林床植生が回復したものの侵食抑制には不十分であり、被圧解除の効果よりも下層木による雨滴遮断を失う効果の方が大きいことを示していた。
  • 福本 桂子, 寺岡 行雄, 加治佐 剛
    セッションID: P1B014
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    下刈り回数の省力化を検討する目的で,鹿児島大学農学部附属高隈演習林内の9年生スギ林分を対象として,下刈りを毎年実施,隔年実施,未実施等の下刈り実施回数とパターンの異なる7試験区を設定した。各試験区の雑草木の侵入状況とスギの成長を比較した結果,下刈りが終了した時期が早いほど,スギと雑草木の競合は顕在化していた。また,繰り返し下刈りを実施することによって雑草木の群落高は低くなっていた。スギの樹高とDBHの成長については,植栽後2年間下刈りを実施しなかった試験区が他の試験区と比較して有意に小さかったことから,植栽後2年間の下刈り省略はスギの成長に大きな影響を及ぼすことが示唆された。植栽後1年目の下刈りを省略した場合でも,2年目から連続で下刈りを実施することによって,スギの成長に与える影響は軽減されることが明らかになった。
  • 新保 優美, 平田 令子, 高木 正博, 伊藤 哲
    セッションID: P1B015
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     コンテナ苗は培地と一体化した根系を持つことから、植栽時にストレスを受けにくいとされている。このような特徴を持つコンテナ苗は植栽時期を選ばず、夏季の植栽も含めた伐採-植栽一貫作業への適用が期待されている。本研究では、夏季植栽苗の植栽直後の水ストレス、植栽当年の成長および物質分配の解析により、コンテナ苗の優位性の検証を試みた。2014年9月に宮崎市、宮崎大学田野演習林の人工林伐採地に挿し木コンテナ苗(当年生および1年生)と裸苗(当年生)を植栽し、植栽直後の水ストレス(水ポテンシャル・ETR・葉温)を比較したところ、コンテナ苗の方が水ポテンシャルは高く、ストレスが小さいことが分かった。しかし裸苗の水ポテンシャルの低下も光合成活性や蒸散の抑制までには影響しておらず、致命的なストレスは受けていなかった。植栽4週間後には苗種間で差はみられなくなった。生育期終了時までの当年の成長は伸長成長・肥大成長、共に当年生コンテナ苗で最も大きく、1年生コンテナ苗および裸苗に勝っていた。講演では、冬季の生残率および物質分配特性の解析結果を加えて、夏季植栽した苗の初期成長特性を苗種間で総合的に比較した結果を報告する。
  • 田和 佑脩, 武田 博清
    セッションID: P1B016
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    窒素は多くの森林生態系において樹木成長の制限要因となっている。森林斜面において、斜面上部から下部にかけて利用可能な窒素の供給量は減少していく傾向が見られる。そこで本研究では、スギの人工林において、土壌の無機態窒素の供給性の違いが、細根の形態特性に与える影響を明らかにすることを目的とした。
     調査は大阪府と京都府の県境に位置する大原野森林公園のスギ人工林にて行った。50mある斜面の上部15mを上部プロット、下部15mを下部プロットと設定した。各プロットで細根系を採取し、比根長(Specific root length:SRL m/g)や分枝率(Branching ratio:Rb)などの形態特性を測定した。また、土壌を採取し、30日間培養したのち、窒素の無機化速度を測定した。
     全体の無機化速度は斜面での違いはなかったが、斜面下部では硝化速度が大きく、硝酸態窒素が主に生成され、斜面上部ではアンモニア態窒素が主に生成されていた。SRLやRbは斜面下部に比べて上部で有意に大きかった。これらの結果から、土壌に供給される無機態窒素の形態に応じて、細根の形態特性が変化していることが示唆された。
生態部門
  • 小林 昂太, 野堀 嘉裕, 武田 一夫
    セッションID: P1B017
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    モンゴル北部フブスグル県ヒルビスト山では永久凍土層の上にタイガ林が形成されている。また標高2300mは森林限界となっており、温暖化の影響を観測しやすい場所と言える。モンゴル国において、温暖化による森林動態の変化は明らかではない。そこで本研究ではヒルビスト山カラマツ林の樹幹解析を行い、カラマツの成長過程を把握することによって、温暖化がどのようにタイガ林に影響を及ぼしているのか確かめることを目的とした。ヒルビスト山の標高1700m,1850m、2000m、2100m、2200m、2300m地点からそれぞれカラマツ10個体、合計60個体を採取し、樹幹解析を行うことによって各個体における樹高成長量を算出した。樹幹解析の結果、標高1700m、1850m地点の樹高成長量は2000年付近で増加していたが、標高2000m、2100m、2200m地点では樹高成長の大きな変化は確認できなかった。標高2300m地点では1990年まで樹高成長量は僅かであったが、1990年以降になるとどの個体も樹高成長が他の標高と同等の成長量へと変化することが確認された。標高1700mと1850mではフブスグル湖による逆転層の影響で、標高2300mでは温暖化による気温ストレスの緩和によって成長量が変化したと考えられる。
  • 名取 史晃, 石田 清
    セッションID: P1B018
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     樹木の年輪には個体の成長に影響を与えた様々な環境要因の情報が記録されている。中でも、気象要因は成長量を大きく変動させることが分かっている。本研究では、青森県八甲田連峰のブナ二次林においてブナ林冠木のGBH(胸高周囲長)の大きさにより受ける気象要因の影響の程度や質が異なるか検証した。ブナ林冠木83個体から成長錐を用いてコアサンプルを採取し、その中からGBH昇順上位19個体をLグループ、同降順上位18個体をSグループとして区分した。解析には主に当年年輪幅とその翌年の成長量の平均値(2年移動平均)、当年・翌年・翌々年の成長量の平均値(3年移動平均)を用いた。気象要因は酸ケ湯アメダスの月平均気温、月降水量、月最大積雪深の各データを使用した。解析の結果、月平均気温と月最大積雪深においてSグループがLグループよりその影響の程度が低い月が存在することが明らかになった。また、2年移動平均と3年移動平均では月平均気温・月最大積雪深で有意となる月が一致しなかった。これらから、GBHの小さいブナ林冠木は気象要因から受ける影響が相対的に小さくなる傾向にあり、気温と積雪深とではその影響が続く年数が異なる可能性が示された。
  • 望月 貴治, 水永 博己
    セッションID: P1B019
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    樹木の葉分布は樹冠内の光環境を介して個体の物質生産に大きく影響する。一方で樹高や樹冠サイズ等の樹冠構造は立地条件や林齢によって異なることや林分内でも変異が大きいことが知られており、樹冠内の詳細な葉分布特性も環境によって変化すると考えられる。そこで、本研究の目的は、林分間の立地条件の変異と林分内の微環境の変異に対するブナ成木の葉分布の応答とその受光機能への影響を明らかにすること。立地条件の異なるブナ林で三次元レーザスキャナを用いて葉分布を測定し、一辺20cmの立方体セルごとに葉面積密度を推定した。4つの林分から5個体ずつを抽出し、葉密度の空間自己相関を比較したところ、最も平均樹高の高い林分において葉の集中度が高く、標高が高く最も老齢な林分で個体間の葉の集中度の変動が大きかった。林分の立地条件によって葉分布特性が異なること、また、それが林分内での葉分布の変異にも影響を与えていることが示唆された。発表当日は、環境要因(林分間の立地条件:林齢・地形・標高 林分内の微環境:光環境・樹高・樹冠突出度・樹冠占有面積)が葉分布特性に与える影響を評価した結果を示す。また、受光機能に与える影響の評価を加える。
  • 福井 忠樹, 鳥丸 猛, 赤田 辰治
    セッションID: P1B020
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    機能形質とは環境との相互作用に影響する生物の形質のことであり、群集の生態系機能を特徴づけるために有効である。標高傾度にそった森林群集・樹木個体群の機能形質の空間パターンは、気候の温暖化が地域スケールにおける森林生態系の機能の多様性に及ぼす影響を予測する上で重要な知見を提供する。本研究は、異なる標高に成立する冷温帯落葉広葉樹林の主要構成樹種であるブナとハウチワカエデの物理・化学特性を比較し、標高傾度にともなう環境条件の変化と機能形質の多様性の関係について検討することを目的とした。青森県白神山地内に設置された2箇所の固定調査区(高倉森とサンスケ沢)において、2014年の6月下旬から10月上旬までにブナとハウチワカエデの葉をサンプリングし、単位面積当たりの葉重量(LMA)、葉内に含まれる物質(葉緑素、縮合タンニン、リグニン)量を計測した。LMAは調査区内の種間、および同種の異なる調査区間のいずれにおいても有意な差は認められなかった。さらに、本発表では葉内に含まれる物質量について種間および種内の調査区間で比較する。
  • 白井 誠, 才木 真太朗, 石田 厚, 丸山 温
    セッションID: P1B021
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    小笠原諸島は、似た緯度にある沖縄と比べおよそ半分ほどの年降水量しかなく、また海底火山が隆起してできた島のため地質は溶岩性で、特に尾根部では土壌が非常に浅くなる。小笠原の父島では、湿った谷筋から乾燥する尾根部にかけて立地環境傾度が著しく大きく、微地形に応じた樹種の分布は環境耐性への適応に左右されていると考えられる。海岸性樹種であるオオハマボウは、小笠原の山地の乾燥環境に適応することで、固有種テリハハマボウという種に進化・発現したことがわかっている。本研究では、オオハマボウとそこから進化してきた近縁種テリハハマボウを対象に、木部の解剖学的構造や水分通導機能、葉のしおれにくさ(P-V特性)などから環境耐性を比較し、乾燥適応への進化の仕方がどのようになっていたかを検討した。枝の木部キャビテーション(水切れ)耐性は、オオハマボウとテリハハマボウの間に有意差が無かった。枝の通水性は、テリハハマボウでより高い傾向が見られ、葉のP-V特性は、両種で類似していた。このことから、テリハハマボウは、オオハマボウより枝の通水性を上げることによって、小笠原の乾燥環境に適応していったことが示唆された。
  • 深井 暁雄, 楢本 正明, 角張 嘉孝, 王 権
    セッションID: P1B022
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    水ポテンシャルは、植物の水分状態に関する重要な指標であるが、この水ポテンシャルを測定する場合、主に使われるのはPsychrometric法、Pressure chamber法であり、いずれも破壊試験である。一方、分光反射率による解析はリモートセンシングにも用いられる技術であり、非破壊で計測できる。また簡便で迅速なため、連続的、長期的データが得易く、スケールアップすることで広域的に測定することも可能になると考えられる。
    本研究では1日に複数回の分光反射率測定に併せてPressure chamber法による水ポテンシャル測定を行うことで、分光反射率のデータから水ポテンシャルが推定できないか考察する。試験地は中国の新疆ウイグル自治区阜康ステーションであり、タマリクスを対象樹種とした。
    総当たり法を用いて解析を行った結果、最も相関が得られた型はR693-R624であり、R=0.468であった。他の型も693、624又は625nmの反射率で相関が高いことから前述の波長域が水ポテンシャルに関わっていることが示唆される。この波長域を基に更なる解析を進めることで水ポテンシャルを推定する指数の開発を目指す。
  • 増井 悠人, 石田 清
    セッションID: P1B023
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    東北地方では、山地帯にミズナラが生育し、日本海側の山地帯上部(偽高山帯)にはミヤマナラが生育する。両変種については、分布の不連続性や葉身長、葉裏毛密度の変異との関係が報告されているが、知見は蓄積されておらず、ミヤマナラの生態やミズナラとの系統関係は未解明な点が多い。本研究では、形態比較に基づいてミズナラとミヤマナラの分化をもたらした生態的・進化的背景を推定した。青森県八甲田連峰と新潟県巻機山のミズナラ集団とミヤマナラ集団を対象に葉の形態比較と樹高の分析を行った。環境ストレスを表す指標である最大樹高を用いて集団の生育地をタイプ分けすると、調査集団は1)最大樹高が高い集団、2)最大樹高が地形によって連続的に大きく変化する集団、3)最大樹高が低い集団という3つのエコタイプに分かれた。垂直分布によって各エコタイプを分類すると、タイプ1がミズナラでタイプ2,3がミヤマナラとなった。しかしながら、タイプ2には葉裏毛密度がタイプ1と類似している集団が見られ、エコタイプと変種は対応していなかった。このことから、垂直分布によって定義されるミヤマナラの中には形態の分化が進んでいない集団があるものと推定される。
  • 小畠 祥由, 武田 博清
    セッションID: P1B024
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     森林生態系における養分動態を解明するにあたり、地上部からの有機物とともに、地下部の細根現存量、成長量、枯死量などから細根の動態を研究することが重要視されている。本研究では、土壌薄片法を用いてヒノキ林土壌中の細根を調べ、細根を分解過程毎に分類し、細根の動態と、土壌中における細根の空間利用様式を明らかにした。
     調査は、京都大学農学部上賀茂試験地のヒノキ林土壌において土壌ブロックを採取し、土壌深度4cmまで、深度1cmごとに1×1cmの薄片を6枚作成し、計696個の細根を調べた。分解過程毎で細根を分類したところ、生きた細根が約7割を占めた。直径は0.3mm以下が約7割を占め、1mm以上の肥大成長をした細根は1割未満で僅かであった。土壌深度毎の細根の個数分布は深度1?3cmに約6割が存在しており、深度0?1cmでは約1割と、特に分布の割合が少なかった。成長方向は土壌表面に対して水平方向に成長する細根が約8割を占めた。また、縦と斜め方向へ成長する細根は、水平方向と比べ、生きている細根の割合が多かった。
  • 佐藤 開, 安宅 未央子, 檀浦 正子
    セッションID: P1B025
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    落葉の分解呼吸は、土壌呼吸に占める割合が大きいことと環境因子の影響を受けやすいことから、土壌呼吸変動の一要因と推定されているが、呼吸の主体である微生物のバイオマスとの関係に着目し解析した例は少ない。本研究では、京都府南部の落葉広葉樹二次林に優占するコナラを対象とし、最適な水分・温度条件下での分解呼吸速度(基礎呼吸)とSIR(基質誘導呼吸)法による微生物バイオマス(以下SIR)とを、月に1回の頻度で1年に亘って測定した。L ・F層、並びに尾根・谷でその落葉を4類型に区分し、各類型について、基礎呼吸とSIRの季節変動並びに各類型の違いを定量評価するとともに、相関を検定した。結果、SIRは冬にはL・F層で差が無かったが、春~秋にはL層の方が高くなった。また、春のSIRの著しい上昇は谷よりも尾根の方で早く生じた。一方基礎呼吸は、各類型の差がSIRほど明瞭には観測されず、季節変動も比較的緩やかであった。更に、基礎呼吸とSIRとの関係は、尾根Fで弱い相関が検出されるに留まった。環境や基質の分解段階の違いにより微生物のバイオマスや季節に対する反応は顕著に異なるが、基礎呼吸の変動は小さく、微生物相の重要性が示された。
  • 内之宮 光紀, 巌佐 庸
    セッションID: P1B026
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     植物とその根につく菌類(菌根菌)との共生は最も普遍的な共生の1つである。植物は光合成により二酸化炭素から炭水化物を作り出して菌類に与える。一方の菌類は土壌中のリン酸や窒素などを取り込んで植物に供給する。
     本研究では、植物が炭素だけを獲得でき、菌はリンだけを獲得できると仮定し、数理モデルを使って最適な資源分配について議論する。植物と菌類が資源の分配を自ら調節できるとすると、取り込んだ資源を全て相手に与えるような戦略も最適となる場合がある。これは、取り込んだ資源の全てを相手に与えて相手の成長を促し、将来的に相手から受け取る資源を増やす事ができるためである。
     また、資源の一部を相手に渡す場合について、より詳しい解析を行なった。成長がリービッヒの最小律に従う、すなわち、成長がより少ない資源によって制限されるような場合では、自分で獲得できない資源が重要な場合には双方が相手への資源分配を増やす。一方、自分で獲得できる資源が重要な場合には、自分自身は相手への分配を減らすが、相手はより多くの資源を渡すようになる。
  • 榊原 菜々, 長島 啓子, 田中 和博
    セッションID: P1B027
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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    ナラ枯れの拡大に加えてシカの食害問題が広がり、ナラ枯れ被害地の植生回復は困難を極めている。そこで、ナラ枯れ被害地の植生回復とシカの食害の関係を明確にするため、本研究では被害地において林内環境やシカ防護網の有無が実生発生に与える影響を明らかにした。京都市宝ヶ池公園内の西向き及び東向き斜面にそれぞれ毎木調査プロットを設置した。その中で落ち葉掻きをした後、シカ防護網を設置した実生調査区と設置していない対照区を3~5箇所ずつ設置し、全天空写真撮影及び土壌硬度調査を行った。毎木調査の結果、西向き斜面では21種、512本の樹木を記録し、そのうちの8本がナラ枯れにより枯死していた。東向き斜面では18種、237本のうちの12本がナラ枯れ枯死木であった。胸高断面積合計割合は両斜面でコナラ属樹木が60%前後を占め、その他西向き斜面ではコバノミツバツツジやタカノツメ等が、東向き斜面ではアカマツやリョウブ等が確認された。実生調査より、両斜面ともに調査区では対照区よりも個体数の増加が顕著に見られ、増加数が斜面位置によって異なっていた。斜面位置の違いにも注目し、空隙率等の光環境や土壌硬度と実生発生の関係を考察する。
  • 佐藤 優, 望月 翔太, 箕口 秀夫
    セッションID: P1B028
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年,かつての狩猟圧や積雪などにより分布域が制限され,シカ被害の報告が無かった地域へシカの分布域が拡大しつつある。そこで,積雪地帯において不成績造林地における結果としての広葉樹林化,さらには積極的な資源管理を意識した広葉樹林化に対し,シカの生息復帰によってどのような影響が及ぶのかを明らかにする。【方法】新潟県上越市名立区のスギ人工林を調査地とした。その他の景観要素として落葉広葉樹林,カラマツ人工林,農地が点在している。カメラトラップ法と植生・被害調査を実施し,林分スケールでのシカの利用する環境,その環境に及ぼしている影響を検証した。また,GISを用いて景観スケールでの土地利用形態の影響についても検討した。一般化線形混合モデルを用いて,林分スケール・景観スケールにおけるシカの撮影頻度と周囲の環境との関係について解析を行った。【結果】解析の結果,景観スケールでは広葉樹林の面積率がシカの撮影頻度に正の影響,畑地の面積率がシカの撮影頻度に負の影響を及ぼしていることが明らかとなった。林分スケールでは高木層のDBH,標高が正の影響,低木層の総本数が負の影響を及ぼしていることが明らかとなった。
  • 西川 祥子, 尾崎 嘉信, 久保 満佐子
    セッションID: P1B029
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    ナラ類集団枯損は、ブナ科樹木萎凋病によってブナ属を除くブナ科樹木が大量枯死することである。島根県では1986年に初めてナラ枯れが確認され、島根大学三瓶演習林のコナラ二次林では2007年に初めて萎凋病による枯死が確認された。ナラ枯れによって大量にコナラが枯死した後の森林構造を考える上で、進行中のナラ枯れの状況を明らかにすることは重要であると考える。そこで本研究では三瓶演習林における萎凋病による枯死個体の樹種や径級、分布、枯死率を調べることにより、ナラ枯れの状況を明らかにした。2013年と2014年に演習林内19haを踏査した結果、2014年までに萎凋病により枯死した個体は226個体で樹種は個体数順にコナラ、クリ、クヌギ、アベマキであった。さらに演習林内1haプロットでの2001年から2014年の毎木調査により、ブナ科樹木の枯死率は2001年から2006年が9.9%、2006年から2012年が12.2%、2013年が8.1%、2014年が12.5%であった。1ha内の健全個体は20~40cmの個体が多いのに対し、2014年までに萎凋病により枯死した個体は径級に偏りが見られなかった。本演習林では、萎凋病が最初に確認されてから7年経過した2014年に枯死率が最大となった。
  • 岩下 幸平, 松井 理生, 服部 力, 梶村 恒
    セッションID: P1B030
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
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     ブナ科樹木萎凋病 (以下、ナラ枯れ) は森林の環境を変化させ、様々な生物群に影響を与える。本研究では、枯死木の創出、腐朽菌の発生、菌食性昆虫の利用という連鎖に注目した。愛知県瀬戸市の東京大学赤津研究林で、コナラ樹幹上の多孔菌を確認・同定し、それを摂食しているミノガ科の一種 (以下、キノコヒモミノガ) の幼虫の頭数を記録した。そして、子実体の存在量と状態、ナラ枯れの被害履歴も調べ、キノコヒモミノガの発生との関係を推察した。また、キノコヒモミノガの化性や生活環、子実体の季節消長についても検討した。
     その結果、キノコヒモミノガはタコウキン科のハカワラタケのみを餌とし、枯死翌年に最も多かった。ハカワラタケは枯死してから2~3年後にも存在したが、子実体が劣化し、キノコヒモミノガの幼虫は少ない、あるいは確認されなかった。また、関東ではキノコヒモミノガの年2化が示唆されていたが、本調査地では年1化であった。さらに、卵の孵化時期は、ハカワラタケの子実体が成長する8月上旬~中旬であり、本種のハカワラタケに対する季節的な同調性を示していると考えられた。この現象は枯死2年後も見られた。
  • 松本 哲也, 三木 直子, 娜 布其, 廣部 宗, 張 国盛, 王 林和, 吉川 賢
    セッションID: P1B031
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    中国内蒙古自治区の毛烏素沙地において、半乾燥地の緑化に利用されているキク科の落葉半灌木Artemisia ordosicaの群落構造に、土壌表層の環境条件と、同所的に分布する匍匐性のヒノキ科の常緑針葉樹Juniperus sabinaの存在が与える影響について調査を行った。固定砂丘から半固定砂丘上に50個の調査区を設置し、株サイズ(樹高、樹冠投影面積(CPA))、結実状況、表層土壌の養分量とJ.sabinaの被覆度等を測定した。固定砂丘上の1調査区では株の位置も測定した。一般化線形モデルによる解析の結果、固定砂丘から半固定砂丘上では大型の株(樹高25cm以上)は土壌養分量が多いほど株密度やCPA合計が減少し、小型の株(25cm未満)も株密度が減少していた。また、大型の株の密度はJ.sabinaの有無に影響を受けていなかったが、小型の株の密度とCPAの合計および結実株の密度はJ.sabinaの存在により高い値を示した。これらの結果から、固定砂丘から半固定砂丘ではA.ordosicaの養分要求量を満たすほど土壌が肥沃であると考えられた。また、J.sabinaによる湿潤な土壌深層から乾燥した土壌表層への水の再分配や流砂防止がA.ordosicaの定着を促進している可能性が示唆された。
  • 阿部 美聡, 玉井 裕, 宮本 敏澄, 矢島 崇
    セッションID: P1B032
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    砂丘海岸では、その立地条件から独特の植生が形成される。強風による海塩の輸送と飛砂、地表の不安定性に加え、高温、貧栄養、乾燥状態になりやすい。このような環境には一般の植物は適応できず、海浜環境に適した植物が群落を形成する。本研究では、海浜植物群落の種構造とその変化を把握することを目的とした。調査地の石狩海岸において汀線とほぼ直角に5m×5mの連続した植生調査区をカシワ林に到達する地点(275m)まで設置し、調査区ごとに出現種およびその被度を記録した。全出現種は36種で、そのうち最大被度2以上の種は18種、最大被度4以上の種は5種だった。汀線側ではハマニンニクやハマヒルガオを主とし、その中にコウボウムギ等が点在する海浜植物群落が形成されていた。ススキなどの普遍的な種は内陸に向かって徐々に優占的になった。汀線からカシワ林に至るまでハマニンニク帯、ハマヒルガオ・ススキ帯、ハマナス・ススキ帯、クマイザサ帯というように、50m~75m間隔で優占種が変化する帯状構造が見られた。
  • 北村 亮, 戸田 浩人, 山田 祐彰, ベリングラート 木村 園子 ドロテア, 及川 洋征, 永井 沙知, 堤 剛太, 崔 東壽
    セッションID: P1B033
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     ブラジル・パラー州のアマゾン川河下流低湿地では、地域住民の経済的基盤作物(果実)を生産する天然生アサイー(Euterpe oleracea)以外の樹種を除伐することにより、植生の単一化が急速に進んでいる。一方、水位変動や地形などの立地条件がアサイーの生育に与える影響についての知見は少なく、アサイー生産の量や質の持続性が危ぶまれている。本研究では、浸水時の冠水高が異なるアサイー生産地に調査区画(20m×20m)を設置し、混生樹種の同定と樹高測定を行い、同時に塩ビ管を設置し、地上・地下水位を測定し、Barcarena市Vila do Conde港の潮汐表と照合した。
     10月~11月にかけては、大潮時の潮位上昇に伴い地上水位(冠水高)が上昇し、11月~12月にかけては、潮位低下に伴い地上水位が低下した。冠水の深い調査区画に比べ、浅いか中位の区画では、ミリチーヤシ(Mauritia flexuosa)(株元の髭根にリターが堆積し、作物の生育に適した肥沃で水はけの良いマウントを形成する)や木本数が多く、アサイーの生育も良好であった。生態系保全を考慮しアサイーを持続的に生産するためには、冠水が浅いか中位の立地が適していることが示唆された。
  • 佐原 奈々美, 逢沢 峰昭, 大久保 達弘
    セッションID: P1B034
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    林冠疎開規模の異なるイヌブナ天然林の長期再生過程を影響明らかにするため、東京大学秩父演習林内に1984年に設置された天然林区(0.35ha)と1990年の皆伐後に設置された皆伐区(0.16ha)において、2014年に毎木調査の再測を行い、種組成と林分構造の変化を調べた。また秩父地域ではシカの生息数が増加しているため、シカの剥皮状況も調べた。天然林区においては、30年間で種組成や林分構造に大きな変化はみられなかった。2004年の調査時にみられた林冠ギャップ(小規模林冠疎開部)は、周囲のイヌブナ萌芽幹などの成長によって10年間でほぼ閉鎖していた。一方、皆伐区(大規模林冠疎開)では皆伐後24年目の現在、2004年の調査時同様にウダイカンバが高木層から亜高木層にかけて優占していた。ウダイカンバはBAの増加がみられたものの、枯死幹数の増加と相対優占度の低下がみられた。2004年に優占度の高かったミズキはシカ剥皮を受けて枯死した個体が多く、ほぼ消失していた。イヌブナは亜高木層に伸長成長しており、2004年時点よりもBAおよび相対優占度の増加がみられたことから、長期的には皆伐区ではイヌブナの優占が増すことが示唆された。
  • 友成 美咲, 中桐 恵利華, 音田 高志, 赤路 康朗, Uyanga Ariya, 廣部 宗, Baatarbileg Nachin, 坂 ...
    セッションID: P1B035
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    モンゴル国北方林では近年人為的火災が大規模化し、森林が劣化しつつあることが指摘されている。そのため、火災跡地での森林再生過程を明らかにする必要があるが、火災後には違法伐採を伴うことが多く、その影響には不明な点が多い。そこで本研究では、大規模火災に違法伐採が加わることが森林再生に与える影響を明らかにすることを目的とし、大規模火災跡地で違法伐採されたサイトとされていないサイトで稚樹の出現状態を調査した。火災跡地に出現するのはシラカンバとカラマツであり、硬質土壌上に多くみられた。火災後シラカンバは地上部が燃えて枯死し火災跡地での種子供給源は無くなるが、種子散布範囲が広いため残存林からの種子供給に依存して更新するのに対し、カラマツは種子散布範囲が狭いが、高い火災耐性を持ち火災跡地に残存できた林冠木からの種子供給で更新することが分かった。このような両樹種の火災後更新戦略から、違法伐採によりカラマツの種子供給源が除去され、また火災の大規模化によりシラカンバでも種子が届かないサイトが現れることで、違法伐採を伴う大規模火災跡地では森林再生の遅延、あるいは草原化の危険性があることが示唆された。
  • 矢川 健太, 齋藤 大, 城田 徹央, 岡野 哲郎
    セッションID: P1B036
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    ササ型林床において、マウンド・ピットの形成は実生の定着を促進するため、風雪による根返りは森林の維持機構において重要なプロセスである。これに対し、幹折れは土壌の攪乱を伴わないため、相対的に更新への寄与は小さい。一方で、樹幹内に腐朽を有する樹木は脆弱となり、腐朽比率の増加に伴い、被害形態は根返りから幹折れにシフトする。したがって、ササ型林床における実生更新の機会を考察する上で、林冠木の腐朽状態は重要な因子である。そこで本研究では、九州大学北海道演習林内の老齢ミズナラ天然林に設置された2haの固定調査区において、林冠木の腐朽程度の評価を目的とした。2014年9月にラインプロット(10m×180m)を3箇所設定し、ミズナラ各個体の腐朽率(樹幹断面積に対する腐朽面積比率)をレジストグラフ(IML社製RESI PD500)を用いて判定した。その結果、73個体中17個体(23.3%)に腐朽が確認されたものの、そのうち13個体では腐朽率5%以下であり、最も高い腐朽率は35%であった。腐朽率がおよそ50%を超えると、幹折れとなる比率が大きく増加することが知られているため、本調査地において風雪による被害形態は、ほとんどの個体で根返りになると推察される。
  • 齋藤 大, 矢川 健太, 城田 徹央, 岡野 哲郎
    セッションID: P1B037
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    九州大学農学部附属演習林北海道演習林(十勝支庁足寄町)のナラ学術参考保護林内において,ミズナラ天然林の長期動態を明らかにするために,1999年に2haの調査区が設定され,2014年まで5年おきに調査が行われている。本研究の目的は,15年間のサイズ構造と空間分布の変遷を解析し,樹木個体間の相互作用の影響を論じることである。
    この林分の上層はミズナラ,下層はイタヤカエデが優占する。個体数でみると調査期間に下層に分布するミズナラで高い枯死率が示された。RipleyのK関数を用いて空間分布を解析した結果,1999年ではミズナラは3~37m,イタヤカエデは3~50mの集中斑を示したが,2014ではミズナラの集中斑が4~17mに縮小し,イタヤカエデでは変化がなかった。
    このミズナラの集中斑の細分化はミズナラ下層木の枯死によるものと考えられる。ミズナラ下層木の枯死の要因として攪乱等の影響はほとんどないことから,ミズナラ同士の種内競争,イタヤカエデとの種間競争の影響が示唆される。今後の課題としては,ミズナラ下層木の生存や成長に及ぼす隣接個体の効果を明らかにする必要があるだろう。
  • 村井 敦史
    セッションID: P1B038
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    岡山県蒜山地域では,少なくとも700年前にはすでに人間活動による火の攪乱が起こっており,カヤ刈りや堆肥のために,毎年春に火入れが行われてきた.蒜山地域で現在も火入れされている地域では,コナラやクリなどの樹種において地際部に肥大化した根株がみられ,毎年の火入れによる攪乱を受けても肥大化した根株からの萌芽により地上部の再生を繰り返している.この器官は攪乱後の初期遷移において,地上部再生資源として重要な影響を及ぼすと考えられる.しかし,この器官が地上部再生資源としてどのような影響を及ぼすかはかは不明であり,また火入れ草原において樹木が更新する要因について研究した例はない.そこで本研究では,岡山県真庭市の火入れ草原(標高約500 m)においてブナ科樹種の生存・生長について調査し更新の要因について考察した.生存については2.5 m×2.5 mあたりの出現数と環境条件を測定し,また生長については個体当たりのシュートバイオマスと肥大根株サイズを含む環境条件を測定した.データは一般化線形モデルで解析を行った.
  • 田畑 早紀, 小山(中井) 亜理沙, 鳥丸 猛, 万木 豊, 木佐貫 博光
    セッションID: P1B039
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    動物の摂食や自然撹乱が渓谷林に生育するチドリノキの株の萌芽更新に与える影響を,2004年から2014年までの10年,6回にわたって調べた。株数,株あたりの幹本数ともに減少傾向にあった。枯死幹はのべ189本で,立枯れ幹が最も多く,続いて動物の摂食や地表撹乱によって枯死した幹が多かった。新規加入幹はのべ28本で,いずれも萌芽によるものであった。渓谷林では渓流の流路にそって地表撹乱が起こり,堆積していた礫が移動した際に損傷を受けて倒伏する幹や,水流によって洗掘がおこり根返りする株がみられた。動物の摂食痕は主に直径4cm以下の小径幹でみられた。その多くが幹を折られていた一方で,摂食や角こすりによって幹を傷付けられた後に腐朽して折れる幹もみられた。株ごとの幹直径の変動係数は減少傾向にあった。小径幹の成長を支える大径幹の幹本数が立枯れや地表撹乱によって徐々に減少し,動物による摂食が小径幹の成長と新規加入を阻害しているため,株における幹の更新が滞っている。今後も摂食の繰り返しで幹の新規加入が阻害されれば,個体群の維持に影響が及ぶ可能性がある。
  • 柴田 昌俊, 森本 淳子, 志田 祐一郎, 中村 太士
    セッションID: P1B040
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    植生復元を目標とする放棄牧草地では、農地転換及び長期の農地利用により、湿生植物種の種子供給源が減少し、対策として土壌シードバンク(以下SB)が注目されている。①湿地植生復元におけるSB利用の有用性、②水分条件やサンプル採取深度の変更によるSBの効率的な利用方法、の二点を解明することを目的とした。北海道東部、標津川流域及び当幌川流域で、営農中及び耕作停止後6年、13年、15年、26年が経過した牧草地・残存湿地を対象とし、0~5㎝及び5~10㎝の土壌を採取した。湿潤条件と湛水条件下で播きだし実験を行った。実験の結果、牧草地のSBと残存湿地SBは種組成が大きく異なり、営農活動による影響が明らかになった。牧草地SBにおいて最も種数、密度が出現する組み合わせは休耕年数6年、0~5㎝深度のサンプルを湿潤状態で発芽させることであった。また、SB中に牧草種は確認されず、SBの活用により湿生植物種を導入し、湿地植生の復元を期待できることが示唆された。しかし、一部の希少種は異なる水分条件、深度のサンプルで発芽した。実際にSBを活用する際には異なる土壌を利用し、多様な水分条件を設定することが多くの湿生植物種の導入に重要である。
  • LI HAO, KAWADA KIYOKAZU, OHASHI HARUKA, KAMIJO TAKASHI, UNDARMAA Jamsr ...
    セッションID: P1B041
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    モンゴルの北部には草原と森林のエコトーン域がある。本研究はシベリアカラマツ林と草原のエコトーンにおける樹木の年齢構造を明らかにすることを目的とする。調査地のテレルジはウランバートルの北東部に位置する。エコトーン4ヶ所(No1~4)において、100mのラインを設置し、毎木、実生調査をした。4ヶ所の森林面積はそれぞれ異なりNo4の森林面積最も大きい。シベリアカラマツのサイズ構造は全体的に一山型の分布を示した。またNo4で草原側から森林内にかけて種構成の変化が見られ、50mと100mの地点でPinus sibiricaがやや多く出現した。年齢構造は更に一山型になり、No1は28~38才、No2は38~49才、No3は65~80才、No4は51~65才ピークがあった。No2、3、4では少数ではあるが、100才以上の個体が見られた。これらの老齢個体は、森林のより内部で多かった。以上のことから、エコトーン域のカラマツは火事などの攪乱後一斉更新していると考えられる。また攪乱頻度はエコトーンからの距離で異なり、森林内ほど攪乱頻度が低く、このことが森林種構成(Pinus sibiricaが多い)にも影響している可能性がある。
  • 山田 亜樹人, 酒井 暁子
    セッションID: P1B042
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    森林バイオマスに大きな影響力を持つ大径木の空間分布がどのような地形要因によって規定されているかを、西丹沢の温帯域47haの集水域においてDBH50cm以上の全木を対象に調査・解析した。LiDARによる高精度DEMを用いて、集水域全域の標高、斜面傾斜、斜面方位および半径15-180mの様々な評価範囲でのラプラシアン(地表凸度)を求め、大径木全体と代表的樹種について、出現確率およびサイズを説明する地形変数をモデル選択によって抽出した。出現確率に対しては、半径90-180m程度の範囲での凸度が高いほど増すとの共通傾向に加え、緩傾斜(全体、モミ)、急傾斜(ミズナラ)、南向き(ブナ)、低標高(ミズナラ)のように樹種によって異なる変数が選択された。またその中でより大サイズとなる場所は、低標高がほぼ共通し、加えてブナでは大範囲での凸度がより高い・東向き、イタヤカエデでは狭範囲では凸度が低い・東および南向きのように異なっていた。以上より大径木は、集水域の中で地表が安定し、生育環境の良い尾根筋に偏在しており、その中でもよりストレスの弱い環境で大きくなる傾向があると言えるが、樹種により地形との関係は様々であることが示された。
  • 佐々木 崇徳, 清和 研二
    セッションID: P1B044
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     植物群集の種多様性維持メカニズムを説明する有力な仮説として、植物と土壌微生物との相互作用を仮定したPlant-Soil Feedback(PSF)仮説が近年注目されている。PSFには、親木近傍で菌根菌を介し同種実生の定着を助ける正のPSFと、親木近傍で病原菌を介し同種実生の定着を妨げる負のPSF がある。近年,草本群集で優占度の高い種は正のPSF、低い種は負のPSFを示すことが報告されており、森林でもこの傾向が見られるかを空間分布構造の解析から、以下の仮説を検証する。
    (1) 成木の分布は、優占種で正のPSFにより集中分布し、集中斑も大きくなる。一方、非優占種で負のPSFにより離散分布し、集中班も小さくなる。
    (2) 優占種は正のPSFにより成木と稚樹が同所的に分布する。逆に非優占種は負のPSFにより稚樹の生育初期の同所的分布から、成長に従い排他的分布を示す。
     老熟落葉広葉樹林に6haの調査区を設置し、DBH≧5cmの全樹木、ならびに主要5種の全個体のサイズと位置を調査した。分布構造はL関数(Besag 1977)で解析した。
     結果:成木では優占度の高い種ほど集中分布し、低い種では離散分布する傾向が見られた。また、主要5種のサイズ間分布相関についても解析する。
  • 藤野 大河, 水永 博己, 飯尾 淳弘, 宇佐美 敦, 米持 紗希子, 青井 夕貴
    セッションID: P1B045
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    森林群落における光資源の分配パターンは物質生産やガスフラックスに大きく関わっている。一方で、多様性の高い森林は生理特性、特に光―光合成特性も多様であることが予想される。このような群落では、光がより不均一な状態であることで、光資源がそれぞれの種に分配されていると考えられる。しかし、種の多様性と光環境の不均一性との関係を樹木の受光器官である葉の分布から明らかにした研究はない。そこで、本研究では種の多様性と、樹冠内の光の分布の不均一性を枝葉スケールと樹冠スケールの二つの異なる空間スケールでの葉分布構造を用いて明らかにすることを目的とする。
    調査は、オオイタヤメイゲツが優占する多様性の高い太平洋側の冷温帯林である静岡大学南アルプスフィールド(標高1400m、南東側斜面傾斜10°~25°)内の1.5haプロットで行った。プロット内の多様性の高い場所(H’=3.83)と低い場所(H’=0.40)にそれぞれ観測タワーを設置し、枝葉の受光特性を示すSPARおよび葉群分布 を3Dレーザースキャナを用いて測定した。また、群落および種ごとのLAIをリタートラップの結果から算出し、光環境ごとの葉の出現頻度から光の不均一性を評価した。
  • 堀田 佳那, 隅田 皐月, 石井 弘明, 黒田 慶子
    セッションID: P1B046
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    自然回復緑化は、都市開発等により失われた二次林の復元を目的として行われる緑化であるが、まだその歴史は浅いため、様々な手法が乱立している。また、緑化目標の達成度は、植栽木の生存率や植被度で評価されることが多い。本研究では、周辺二次林との生態的連続性を目的として10年前に植栽された神戸市の緑化地において、緑化目標の達成度を生態学的な観点から評価した。その結果、緑化地は二次林と比べて垂直構造が未発達であること、目標林形である周辺二次林が遷移したこと、などが明らかになった。二次林の構造を再現するためには、遷移の方向を予測する必要があると考えられる。そこで、緑化地近隣の二次林の植生データ(個体数・胸高断面積)をもとに、多次元尺度構成法(MDS)による解析を行った結果、二次林の植生変化は同一林分内でも多様であり、小面積の調査データをもとに緑化目標を設定すると、緑化地の植生は将来的に目標林とはかけ離れたものになる恐れがある。さらに、個体数は年変動が大きいため、設計時には周辺林分の構造(胸高断面積等)を参考にするべきであると考えられた。
  • 横山 翔一, 戸田 浩人, 崔 東壽
    セッションID: P1B047
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    宮城県では2011年3月の震災による津波で大きな被害を受けた海岸林の造成が進められている。宮城県では従来広く用いられてきたクロマツに加え、広葉樹を用いた造成方針が計画されている。海岸林は強い潮風による飛来塩分の影響などにより、樹木にとって生育の厳しい環境である。しかしながらクロマツと比べ、広葉樹の耐潮性に関する見識は十分ではなく、特に落葉広葉樹に関する知見は乏しい。そこで本実験では宮城県で海岸林の植栽候補樹である広葉樹苗木(クリ、ケヤキ、コナラ、サクラ、タブノキ)と、クロマツ苗木を用い、塩水吹付実験によって各樹種の耐潮性を調査した。実験は2014年6月中旬から10月上旬にかけて東京農工大学のキャンパス内で行い、塩水吹付処理は約2週間ごとに実施した。実験の結果、クロマツは生長量、生理障害、可視被害、葉内塩分量においても影響がほとんどみられず、次いでタブノキは影響が小さかった。クリ、ケヤキ、コナラ、サクラについては各調査項目で大きな影響が確認された。中でもサクラはいずれの調査項目も対照区(塩水にかえイオン交換水吹付処理)との有意差が早い段階で生じ、塩分の影響が最も受けやすいと考えられた。
  • 木村 絵里, 星野 義延, 大橋 春香
    セッションID: P1B049
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    福島第一原子力発電所事故による山菜への影響を評価することを目的に,山菜種の潜在生育地と高空間線量率域の重なりの程度を調べた。調査は福島県中通りの二本松市東和地区で行った。対象地の植生を把握することを目的に,1/5000縮尺の植生図の作成と植生調査を102地点で行った。植生タイプごとの出現種の常在度階級値を用いてDCAによる序列化を行った。また128地点で対象とした山菜15種の在・不在と,エアカウンターを使用した地上1m高の空間線量率を記録した。そして山菜の在不在を目的変数にしたロジスティック回帰分析と,空間線量率を目的変数にした重回帰分析を行った。説明変数は標高,傾斜角度,斜面方位,TPI,道脇か否か,植生データを使用し,AIC基準でベストモデルを決定した。植生データには植生図凡例を使用した場合とDCA第1~3軸のスコアを使用した場合で予測精度の比較を行った。その結果,空間線量率は高標高の南東側斜面と北側斜面の谷部で高くなった。山菜は4種について高い精度のモデルが得られ,高標高の尾根部と5つの森林タイプで在となったコシアブラは高空間線量率域との重なりが大きく,尾根部の道脇と草地で在となったワラビは重なりが小さかった。
  • 加藤 大輔, 稲永 路子, 戸丸 信弘
    セッションID: P1B050
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    ヒトツバタゴは長崎県対馬と愛知県から岐阜県にかけての東濃地方に隔離分布をしており、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている。東濃地方では孤立した自生地に127個体が自生するのみである。ヒトツバタゴは機能的にも雄性両全性異株であるかは明らかになっていない。雄性両全性異株の多くは機能的には雌雄異株であり、機能的にも雄性両全性異株であると報告されている種は11種のみである。雄性両全性異株の維持には雄株が両性株と比較して2倍以上の繁殖適応度を持つ必要があるとされる。ヒトツバタゴの交配パターンを明らかにすることは保全策を検討する上で必要不可欠である。本研究では、ヒトツバタゴが機能的にも雌雄両全性異株であるかどうか、またどのような交配が行われているのかを明らかにするため、東濃地方の8自生地25種子親553種子を対象にマイクロサテライトマーカーを用いた父性解析を行った。その結果、ヒトツバタゴは機能的雄性両全性異株を示し、種子段階の雄株の繁殖適応度は両性株の約3.57倍であり、自殖率は約3.1%だった。花粉散布距離はほとんどが100m以下であり、また植栽木からの花粉散布が示唆された。
  • 秋保 開祉, 紙谷 智彦
    セッションID: P1B051
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     近年、マツ枯れの進行する海岸林で樹種転換が試みられている。本研究は、海岸クロマツ林内でパッチを形成する常緑高木シロダモを対象として、結実に効果的なパッチサイズを明らかにし、天然更新への応用について検討する。シロダモはハナアブなどの双翅目昆虫が花粉媒介を行う雌雄異株植物であるため、雌への訪花と結実は周辺の雄のみならず、競合する雌の分布や花数の影響を受けると考えられる。
     マツ枯れが進行しつつある新潟市の海岸クロマツ林に60×60mの調査区を設置し、135個体のシロダモの位置図を作成した。2013年にすべての個体の花数とその後の結実数を調査した。翌年には粘着性トラップによる訪花昆虫数と花数の調査を行った。これらのデータをもとに、GLMMを用いて周辺雌雄が雌の結実と訪花数に与える影響を解析した。
     その結果、雌個体の結実・訪花数には周辺の雄花数が正に効いていた。一方周辺の雌花数は半径7m以下のパッチサイズで負の効果があり、雌個体同士が競争関係にあった。しかし、7m以上になるとパッチサイズの増大により雌個体同士が扶助関係にあった。これらの結果をもとにシロダモの結実特性を考慮した天然更新施業の可能性について考察する。
  • 森本 彩夏, 沼田 真也, 保坂 哲朗, Mazlan Hashim, 谷 尚樹, 佐竹 暁子, 市栄 智明, Nashatul Zaima ...
    セッションID: P1B053
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    東南アジアの熱帯雨林では、数年に一度、フタバガキ科を中心に様々な樹木が同調して開花・結実を行う一斉開花という現象が知られている。この現象を通じて多くの林冠木が世代交代するため、森林管理においても極めて重要な現象といえる。しかし、どのような種が、どのような繁殖フェノロジーを示し、一斉開花現象に寄与しているのかは明らかになっていない。本研究では、マレーシア森林研究所の見本林に生育するフタバガキ科112種を対象とし、35年の開花・結実のデータを用いて、繁殖頻度と同調性の種間比較を行った。その結果、繁殖頻度は種によって大きく異なっていたが、1976年から2010年の間に16回の繁殖同調が見られ、種数や種構成に違いがあった。さらに、気象要因と繁殖フェノロジーの関係を議論するため、1990年から2010年までの低温(日最低気温20℃以下)と乾燥(30日間積算降水量40mm以下)の発生状況を調べたところ、繁殖同調前に、乾燥と低温のどちらか、もしくは両者が見られたことが明らかになった。また、繁殖前に乾燥が見られた種、低温が見られた種があり、これらの環境応答の違いが繁殖フェノロジーの種間変異に大きく関わっているものと考えられた。
  • 蘇 彰宏, 鶴田 燃海, 向井 譲
    セッションID: P1B054
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    戦後の拡大造林のために、毎年春にスギやヒノキの花粉が大量に飛散している。これらの花粉を他のヒノキ科樹種の胚珠が受粉してしまうと、同種花粉との受粉を妨げられ、繁殖干渉が起きる可能性がある。天然林内で実際に繁殖干渉が起こっているかを確かめるためには、空中花粉および胚珠内に取り込まれた花粉の樹種判別を行う必要がある。そこでコピー数の多い葉緑体DNA領域を対象として花粉1粒からの樹種判別可能なマーカーの開発を試みた。
    DNAデータベースに登録されているヒノキ科樹種の葉緑体DNAのtrnL~trnF領域の塩基配列より、種特異的な多型領域を探索した。ギャップの長さが異なるtrnLのイントロンを増幅するようにnested PCRプライマーを設計した。
    ヒノキ科の複数樹種の葉から抽出したDNAを鋳型とし、開発したマーカーを用いてPCR増幅を行ったところ、期待される増幅断片長の違いを変性アクリルアミドゲルによる電気泳動により確認できた。またスギ、ヒノキ、サワラの雄花より集めた花粉を1粒ずつ単離し、プロテアーゼKを用いた手法により花粉1粒からDNAを抽出した。開発したマーカーは、花粉1粒から抽出したDNAからも増幅が確認され、3樹種の判別が可能であった。
  • 吾妻 直彦, 齊藤 陽子, 井出 雄二
    セッションID: P1B055
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     調査地は富士山北西部の鷹丸尾溶岩流上の天然林で、かつてトウヒ属ハリモミの純林だった。しかし、100年以上前の山火事や近年のハリモミ枯死により、現在では林相が大きく変化している。本研究では調査地における植生の時系列的変化と生育するハリモミの遺伝的多様性を明らかにした。
     まず、1959-2007年の空中写真6枚を用い、調査地を100mメッシュに分割してハリモミ、広葉樹、アカマツなど計7つの林相に分類した。複数の林相から選んだメッシュの中心地点8カ所で植生調査を行った。さらに、ハリモミ林とアカマツ林内のそれぞれ異なる3階層のハリモミを用いて核SSRマーカー5座による遺伝解析を行った。
     結果、ハリモミ林相のメッシュは46.3%から6.8%まで減少し、広葉樹を含む林相に変化していた。植生調査の各地点の胸高断面積合計による優占種はハリモミ、アカマツ、モミまたはコナラであった。ハリモミが優占する地点の亜高木層は広葉樹が発達し、ハリモミの稚樹はハリモミが優占する地点よりアカマツが優占する地点で多かった。また、全ての階層で遺伝的多様性の指数は同程度で、FISは0から有意にずれていなかった。
  • 湯村 昂広, 岩本 麻里, 平田 令子, 光田 靖, 伊藤 哲
    セッションID: P1B056
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    日向夏は宮崎県を代表する柑橘類であり県の特産品である。日向夏は自家不和合成であるため栽培において人工授粉を行っている場合がほとんどであるが、人工授粉の作業は大変な労力と時間を必要とし、一般的な柑橘類に比べて栽培コストが高くなるという問題がある。そこで栽培コストを引き下げる一つの方策として生態系サービスの一つである送粉サービスを利用した人工授粉の省略化が考えられる。これらより本研究において昆虫の豊富さとランドスケープ構造の関係・日向夏の結実量の関係を明らかにすることを目的とした。
    宮崎県東諸県郡綾町内に存在する5ヶ所の日向夏農園において、日向夏の開花期である5月上旬に訪花昆虫の個体数調査を行った。各農園に2から4本の調査対象木を設定し、訪れた昆虫の個体数を4つの分類に分けてカウントした。一方で11月下旬にそれぞれの調査地において調査木とその周囲木の写真を撮影し、それぞれ結実数のカウントを行った。また、H25年度の航空写真を用いて農園周辺の土地利用図を作成し、ランドスケープ構造を定量化した。これらの解析から得られたデータを利用し、訪花昆虫数、ランドスケープ構造、結実量の関係を解析した。
遺伝・育種部門
  • 袴田 哲司, 山本 茂弘, 池田 潔彦, 藤澤 示弘, 齋藤 央嗣, 斎藤 真己
    セッションID: P1B057
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    多数の国民を苦しめているスギ花粉症の林業的側面からの対策として,雄性不稔スギの植栽は有効な手法であると考えられる。全国的にも無花粉苗の作出は進められ,系統数も増えつつあるが,造林や木材利用の観点からは成長や材質に優れた系統の作出が求められる。そのため,雄性不稔遺伝子(ms-1)をヘテロ型で保有する静岡県産精英樹大井7号と神奈川県産精英樹中4号の交配によりF1を作出し,それらの初期成長と材質を評価した。交配によって得られた個体のうち雄性不稔個体は22.9%で,分離頻度は理論値に近かった。2ケ所における植栽個体の樹高成長量では,雄性不稔個体と可稔個体とに有意差が認められなかった。雄性不稔個体を母樹とした挿し木苗を育成したが,4年生母樹と2年生挿し木苗のいずれにおいても相対的な成長が良好なクローンの中には,同時期・同所に植えた他の精英樹挿し木苗よりも成長が優れるものが存在した。4年生母樹の応力波伝播速度法とタッピング法でヤング率を測定したところ,雄性不稔個体と可稔個体とに有意差が認められなかった。
  • 柳原 尚貴, 坪村 美代子, 平岡 裕一郎, 栗田 学, 平尾 知士, 高橋 誠, 渡辺 敦史
    セッションID: P1B058
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    El-Kassabyら(2006)は、林木育種においてBreeding without Breeding(BwB)を提唱した。BwBとは、DNAマーカーを用いて個体の両親を推定し、自然交配実生後代を人工交配後代と同義とみなす考え方である。スギではほとんどの精英樹を網羅したSSRマーカーによるデータベースが整備されているため、BwB の実施に向けた準備段階にあるものの、現在使用しているマーカーセットには個体識別が容易でないものも存在する。従って、円滑に個体識別を行うためにも新たなマーカーセットのスクリーニングが必要となる。そこで、現在利用しているマーカーの整理に加え、最近公表された約30マーカーのスクリーニングを行った。これに伴い新たなSSRマーカーセットによる精英樹データベースを作成する必要があり、関東育種基本区選抜精英樹を中心とした取り組みを開始した。更に花粉親の正確な判定と外来花粉の存在を考慮して次世代シーケンサーによる少花粉スギ精英樹の葉緑体DNA中に存在するSNP探索も行っており、実際の試験地におけるBwB実施例と併せて報告する。
  • 三嶋 賢太郎, 平尾 知士, 田村 美帆, 井城 泰一, 平岡 裕一郎, 能勢 美峰, 坪村 美代子, 花岡 創, 藤原 健, 黒田 克史, ...
    セッションID: P1B059
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    材質形質および成長形質の改良は針葉樹の育種を進めていく上で最も重要な目標の一つである。そのため、森林総合研究所林木育種センターにおいては、精英樹の形質を評価するために検定林に植栽されたスギを中心に材質および成長に関わる諸形質を順次評価している。また、これら取り組みに加え、ゲノム情報を利用したマーカーや遺伝子そのものを利用した早期選抜手法についてもアプローチしている。現在までに、スギの各器官から時系列に沿ってサンプリングを行い、部位特異的cDNAライブラリーの作成およびマイクロアレイ解析を行ってきた。これに加え、構築した各器官のcDNAライブラリーをアッセンブルしてリファレンス配列とした上で、新たに数個体からリシーケンスすることよって、大量のSNP情報を蓄積してきた。得られたSNP情報及びマイクロアレイ解析によって明らかとなった発現情報を基にマーカーを作成し、複数家系の連鎖地図作成を行った。本発表では、作成した連鎖地図及び、約60の形質データを用いてQTL解析を試みたので報告する。
  • 西原 寿明
    セッションID: P1B060
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】愛媛県に生育する野生のサクラ(バラ科サクラ属サクラ亜科)のうち、栽培個体の多くは天然記念物に指定されているなど、その存在は広く知られているが、これらの野生のサクラの個体についての記録や遺伝的な検討を行った報告は少ない。今回、愛媛県で初めて確認したカスミザクラの無毛型を野生のエドヒガン、栽培されている有毛型カスミザクラと比較することでその系統を分子レベルで解析した。***【材料と方法】愛媛県に生育する野生エドヒガン84個体及び今回初めて確認した愛媛県の野生無毛型カスミザクラ22個体、四国内の野生有毛型カスミザクラ7個体、栽培と思われるカスミザクラ19個体の葉からDNAを抽出した。SSRマーカーには、モモの核SSRマーカー4座及びEST-SSRマーカー8座を用い、DNAシーケンサーとGeneMapperでジェノタイピングを行ない、系統樹を作成した。比較対象として、すでに収集・分析してある、野生ヤマザクラ集団及び栽培オオシマザクラを用いた。***【結果と考察】用いた12のSSRマーカーですべての個体識別が可能であった。野生株と栽培株、愛媛無毛型と四国有毛型でクラスターが分かれる傾向が見られた。
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