近接場光学顕微鏡を用いてc面InGaN/GaN量子井戸及びマイクロファセット構造上半極性(112^^-2)InGaN/GaN量子井戸の発光マッピング測定を行った.青色発光c面InGaN量子井戸では,量子井戸面内における発光強度分布と貫通転位の場所との間に,全く相関が見られなかった.この原因は,量子井戸面内におけるエネルギー準位の不均一により生じた局所的なポテンシャル極小領域にキャリアが局在し,非発光中心である貫通転位への捕獲確率が低減されているためであった.一方,緑色発光c面InGaN量子井戸では,発光強度分布と貫通転位の場所との間に明確な相関が見られた.これには,In組成の多い領域に貫通転位が存在することと,大きな内部電界に起因した長い発光寿命により,キャリアの拡散長が長くなり,非発光中心へのキャリアの捕獲確率が増加したことの2つの要因が寄与していることが分かった.(112^^-2)InGaN量子井戸では,c面InGaN量子井戸で見られるような島状の発光強度分布が見られず,比較的均一な発光強度分布像だった.この原因は,内部電界の低減に伴う発光寿命の高速化により,キャリアの拡散長が短くなったためであることが分かった.さらに,(112^^-2)InGaN量子井戸の最大内部量子効率は,波長520nmにおいて約50%と,c面InGaN量子井戸よりも60nm長波長側に位置していた.この結果は,(112^^-2)InGaN量子井戸が高効率緑色発光デバイス材料として適していることを示唆している.
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