ブロードな発光スペクトルを持つ広帯域光源は,ファイバージャイロスコープや光干渉断層撮影装置(Optical Coherence Tomography: OCT)などの低コヒーレント光源として用いられている.特に,OCTにおいては光源のスペクトルの半値幅が大きいほど,分解能が向上するという特徴を持つ.我々は,量子ドットからの発光がサイズや組成に依存することに着目し,サイズや組成に分布を持つ分散量子ドットからの広帯域発光の実現を目的とした.成長法には,液滴ヘテロエピタキシー法を用いた.この手法は,歪みを必要としないため材料選択の幅が広く,さらに,サイズ制御も比較的容易であるという特徴を持つ.これまでに,InP基板上に形成したInAs分散量子ドットにより1.6μmを中心波長とする半値幅400nmの超広帯域発光を得ることに成功した.また,材料を変えてGaAs基板をベースとしたGaInP上にInPドットとInAsPドットを形成した.その結果,それぞれ中心波長760nm,845nmで半値幅55nm,100nmの広帯域発光を得ることにも成功した.特に,InAsPドットから得られた発光は,既存のOCT装置の分解能を数倍向上させる光源として期待できる.
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