日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
9 巻, 3 号
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総説
  • 朴 鑽欽, 家永 和治, 川添 和義, 横澤 隆子
    原稿種別: 総説
    2020 年 9 巻 3 号 p. 337-343
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    クレアチニン(Cr)は、主要な内因性ヒドロキシルラジカル(•OH)スカベンジャーの1つである。ヒトとラットで、Crがどの程度•OHをスカベンジするのかについて概算し、Crと類似した作用を示すデオキシグアノシン(dG)と比較した。毎日生成する•OH量を概算するために、•OHと反応する生成物の尿中に排泄される量で評価した。そのために、我々はCrの•OHアダクトで、Cr関連代謝産物のクレアトール(CTL:5-ヒドロキシクレアチニン)とクレアトール代謝産物のメチルグアニジン(MG)、そしてCTLとMGのモル合計を用いた。ところが、よく知られている•OHマーカーの8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)は、Cr代謝産物より1,000倍も低く、取るに足らない量であった。健常人と正常ラットでは、スカベンジする•OH量は安定しており、スポット尿あるいは24時間尿では、Crは健常人で約20-25 μmole、正常ラットで約200 pmoleの•OHをスカベンジし、(CTL + MG)/Crは約2.2と3.0 mmole/moleで、0.2と0.3%のCrが、•OHをスカベンジするのに使われていた。慢性腎不全(CRF)やステージ3~5(糸球体濾過量が60 ml/min/1.73 m3以下)の慢性腎臓病(CKD)患者では、•OHレベルはCKDの重症化とともに上昇し、•OHをスカベンジするのに毎日約3%のCrを使用していた。さらに、5-ヒドロキシ-1-メチルヒダントインやマグネシウムリソスペルメイトBのような新規で内因性の、そして天然の•OHスカベンジャーは、ラットの•OH量を減少して、CRFの進展を抑制していた。

原著
  • 野々内 裕紀, 眞継 賢一, 王 宏維, 濱口 良彦
    原稿種別: 原著
    2020 年 9 巻 3 号 p. 345-353
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者では全身性の筋萎縮を伴うために血清シスタチンC(CysC)による推算糸球体濾過量(eGFRcys)のように筋肉量に依存しない腎機能評価方法が好ましいが、eGFRcysは血清クレアチニン(SCr)による推算糸球体濾過量(eGFRcreat)や推算クレアチニンクリアランス(eCCr)に利便性が劣る。本研究の目的は、ALS患者を対象にeGFRcreat及びeCCrを推算する腎機能評価方法の中で最も未補正eGFRcysに近似する方法を決定することである。2014年5月から2019年11月の期間でSCrとCysCが測定されたALS患者を対象とし、modified Rankin Scale(mRS)2以下群14名とmRS3以上群7名に分けた。各群に対して(a)eGFRcreat及び次の(b)から(f)の方法で求めたeCCrをeGFRcysと比較した。(b)酵素法:酵素法SCrにより推算、(c)+0.2補正法:SCr値に0.2mg/dLを加えて補正、(d)ラウンドアップ法:SCr値0.6 mg/dL未満の場合0.6 mg/dLに補正、(e)古久保法:男性はSCr値0.8 mg/dL未満の場合0.8 mg/dLに、女性はSCr値0.6 mg/dL未満の場合0.6 mg/dLに補正、(f)Dooley法:SCr値0.06 mmol/L未満の場合0.06 mmol/Lに補正し推算した。予測精度をeGFRcreatとeCCrの値がeGFRcysの値の±30%以内にある患者の割合として比較した結果、mRS2以下群及びmRS3以上群の両群において(c)がそれぞれ100%、71.4%と最も高かった。よって、ALS患者の腎機能評価方法として酵素法SCr値に0.2 mg/dLを加えたSCr値を用いることで、eCCrとeGFRcysとの一致性がより高いことが明らかとなった。

  • 中野 敬太, 石郷 友之, 野々山 雅俊, 藤居 賢, 北川 学, 木明 智子, 中田 浩雅, 宮本 篤
    原稿種別: 原著
    2020 年 9 巻 3 号 p. 355-361
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    リバーロキサバンにはワルファリンにおけるPT-INRのようなモニタリングの指標がないため、プロトロンビン時間(PT)と腎機能がリバーロキサバンのモニタリングの指標として有用であるかを検討した。

    対象は2013年11月1日から2018年4月30日の期間にリバーロキサバン10mgを入院前より服用中の症例とした。主要評価項目は出血の有無とPT、クレアチニンクリアランス(CCr)、血清シスタチンCに基づく推算糸球体濾過量(eGFRcys)の関連性とした。対象となった症例は40例(女性14例)、平均年齢は71.5±8.1歳であった。便潜血陽性を出血有りと定義し、40例中9例で出血が認められ、出血群では非出血群と比較して有意にPTが延長し(平均 ±standard deviation:17.0±2.1 s vs 15.3±1.9 s、p=0.031)、腎機能は低値であった (CCr:44.6±15.7 mL/min vs 59.5±20.1 mL/min、p=0.047、eGFRcys:39.4±12.6 mL/min vs 57.6±18.5 mL/min、p=0.009)。出血の有無とPT、腎機能との関連について、ROC解析から求めたカットオフ値はそれぞれPT:16.1 s(感度 :77.8%、特異度 :61.3%)、CCr:42.1 mL/min(66.7%、77.4%)、eGFRcys:46.1 mL/min(77.8%、74.2%)であった。

    本研究結果より、リバーロキサバン服用症例ではCCrに加えてPTとeGFRcysが出血のモニタリング指標となる可能性が示唆された。

  • 森住 誠, 本間 暢, 石原 美加, 松田 光弘, 浦田 元樹, 辻本 雅之
    原稿種別: 原著
    2020 年 9 巻 3 号 p. 363-370
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠 (ST合剤)は、ニューモシスチス肺炎 (PCP)予防の第一選択薬である。ST合剤は、尿細管上皮細胞のトランスポーターを阻害し、Scr値および血清カリウム (K)値を上昇させることが知られている。しかしながら、これらの検査値が、腎機能低下患者において、どのように変動するかを調査した報告はない。そこで、本研究では、腎機能低下患者へのST合剤予防投与による有害事象評価の基準を明らかにすることを目的として、PCP予防目的のST合剤投与後のScr値および血清K値の変動と投与開始時の腎機能との関連性について検討した。

    2016年4月から2018年3月に、ステロイド治療におけるPCP予防目的でST合剤が開始された患者をeGFR(mL/min/1.73m2)により、腎機能正常群(eGFR≧60, n=34)、中等度腎機能低下群(30≦eGFR<60, n=23)、高度腎機能低下群(eGFR<30, n=9)に群分けし、投与開始日(day1)と13-15日目 (day14)のScr値および血清K値の変化量を調査した。さらに、重回帰分析により、それぞれの変化量に影響する因子を検討した。

    ST合剤の予防投与は、腎機能正常群でScr値および血清K値を有意に上昇させたが、高度腎機能低下群では有意な変動を示さなかった。また、ST合剤投与によるScr値の変化量は投与前のeGFR(mL/min/1.73m2)に正の影響を受け、血清K値の変化量はeGFRに影響を受けなかった。さらに、重回帰分析により、Scr値変化量に対してeGFR(β=0.16)、ST合剤の週あたりの投与量 (β=0.24)、並びにレニン—アンジオテンシン—アルドステロン系(RAAS)阻害薬の併用 (β=0.12)が、血清K値変化量に対しては腎疾患 (β=0.20)並びにRAAS阻害薬の併用 (β=0.23)がそれぞれ有意な因子として検出された。

    以上の結果から、Scr値の上昇は、腎機能低下患者において極めて軽微(むしろ低下傾向)であることが示された。ただし、Scr値や血清K値の変動は、ST合剤の投与量、原疾患や併用薬の複合的要因に大きく影響されるため、ST合剤の予防投与時は腎機能によらず腎障害や高K血症の出現に留意する必要があると考えられた。

症例報告
  • 古久保 拓, 吉田 拓弥, 和泉 智, 寺田 隆久, 青山 加代子
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 9 巻 3 号 p. 371-375
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    ホスレノールOD錠が一時的に食道の中部に付着した疑いのあるHD患者の症例を報告する。症例は70歳代の女性(透析歴28年)。血液透析を目的に来院した後に食事を摂取し、炭酸カルシウムOD錠(カルタンOD錠500 mg 2錠)と炭酸ランタンOD錠(ホスレノールOD錠250 mg 1錠)を服用した。当日はHD前の胸部X線検査の実施日であり、撮影後に食道中部に円形の陰影を認めた。医師は患者の着衣や皮膚に異物付着がないことを確認後、再度胸部X線撮影を行い、錠剤が徐々に崩壊していると思われる像を認めた。医師は患者に追加飲水を指示し、座位を10分保持した後、再度胸部X線撮影を施行したところ陰影は消失していた。今回認められた錠剤様の陰影は炭酸ランタンOD錠によるものと推測された。口腔内で崩壊させずにOD錠を服用する際には、錠剤が食道に付着することを防ぐために少なくとも普通錠と同程度の飲水量が必要と思われた。

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