日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
10 巻, 3 号
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原著
  • 大東 真理子, 藤田 大樹, 足達 尚美, 中川 直人
    原稿種別: 原著
    2021 年10 巻3 号 p. 337-345
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル フリー

    薬剤師が保険薬局で処方監査を行う際、腎機能評価の指標として体表面積未補正eGFR(個別化eGFR)の使用が推奨されるが、後期高齢者に多いフレイル・サルコペニア症例では、推算クレアチニンクリアランス(推算CCr)を使用すると個別化eGFRよりも過大評価されにくく、予測精度が高くなることがあるという意見がある。しかし院外処方箋には体表面積補正eGFR(標準化eGFR)が記載されることが多く、また処方箋に検査値が全く記載されていない患者では腎機能評価に苦渋することが多い。そこで、後期高齢者の腎排泄型薬剤処方監査時に要注意患者を把握するため、体重・年齢の指標の算出を試みた。

    2019年3月~8月にあすかい病院の処方箋をすこやか薬局に持参した標準化eGFR:40 mL/min/1.73m2以上の後期高齢者の中で、あすかい病院の診療録調査により血清Cr値・体重が判明した1026名において、推算CCrが40 mL/min未満となる症例(男性42人、女性121人)の体重・年齢の指標をROC曲線を用いて算出したところ、男性51.9 kg以下・83歳以上、女性48.6 kg以下・84歳以上となった。

    他施設のeGFR:40 mL/min/1.73m2以上の症例にて検証したところ、体重・年齢非該当群の推算CCr(mean±SE(mL/min):男性57.0±2.4、女性66.5±5.4)はすべて40 mL/min以上となり、体重・年齢該当群(mean±SE(mL/min):男性43.9±4.4、女性39.5±3.9)より有意に高かった。

    よって、本研究で求めた体重・年齢の指標に該当する後期高齢者の推算CCrは40 mL/min未満となる可能性が高く、腎排泄型薬剤の投与量が適正でないと考えられる場合、腎機能が不明であっても疑義照会やトレーシングレポートの活用等何らかのアプローチを行う必要があると考える。

  • 小林 豊, 飯干 茜, 渡邉 博文, 井出 和希, 堀内 祐希, 手島 麻美子, 中川 喜文, 山口 安乃, 小林 伸一郎, 谷口 幹太, ...
    原稿種別: 原著
    2021 年10 巻3 号 p. 347-355
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル フリー

    CKDシールは、腎機能情報共有により患者に有効かつ安全な薬物療法を提供することを目的に各地で検討されている。CKDシールに対する病院・薬局薬剤師のニーズに関する調査は存在するものの、患者が腎機能情報共有の必要性をどのように理解しているかは不明である。静岡県富士宮市でCKDシール貼付システムを構築するとともに、富士宮市立病院でシールを貼付した患者のニーズと、同地域における腎機能情報共有の現状と課題を調査した。2019年7月10日からの3か月間にお薬手帳にCKDシールの貼付を提案した228名の患者全員より同意を得た。医師と作成したプロトコルに基づく貼付を行った患者は62名(27%)であった。アンケートは入院患者、腎臓病教室受講患者、維持透析患者74名中67名(G3b/G4/G5/G5D=7/12/11/37、回答率91%)及び、腎臓病薬物療法の研修会に参加した薬局薬剤師20名中19名(回答率95%)から回答を得た。保険薬局で薬を貰った経験は患者51名(76%)が有したが、51名のうち腎機能を伝えた患者は10名(20%)のみであり、薬局薬剤師から腎機能を聞かれた患者は15名(29%)のみであった。一方、薬局薬剤師16名(84%)は検査値を入手できた時にのみ腎機能を確認していた。腎機能により薬を調節することへの患者の認知度は29名(43%)と低く、CKDシール貼付開始を全ての患者と薬局薬剤師が期待すると回答した。薬局薬剤師のCKDシール活用方法は用法用量等の確認だけでなく、患者とのコミュニケーションや生活指導が挙げられた。患者は薬局薬剤師に腎機能情報が必要との認識が低く、腎機能の共有はされていなかった。CKDシールが薬物療法適正化につながるだけでなく、腎機能情報共有の意義を患者に説明し理解を得ることで、CKDシールが貼られたお薬手帳の活用と薬剤師による腎臓病療養指導につながる可能性が示唆された。

症例報告
  • 森本 健幹, 高橋 雄也, 長島 裕樹, 米田 託成, 森本 泰子, 徳山 尚吾
    2021 年10 巻3 号 p. 357-365
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル フリー

    今回、アドレナリンβ2刺激薬とテオフィリンの併用で低カリウム(K)血症が増悪し、薬剤性のQT延長を合併したギッテルマン症候群(Gitelman syndrome; (GS))の症例を経験した。患者は、20歳代 女性で、感冒症状にてツロブテロール貼付剤、テオフィリン、クラリスロマイシン(CAM)等が処方された。これらの服用後、倦怠感、四肢脱力の症状が出現した。服用を継続し、倦怠感、四肢脱力等の症状が悪化した。その後当院に救急搬送され、低K血症(2.3mEq/L)、QT延長(QTc 0.523sec)にて入院となった。身体所見、血液検査等から低K血症の原因はアドレナリンβ2刺激薬とテオフィリンの併用によって増悪したGSによるものとされた。また、服用歴よりQT延長は薬剤性が疑われ、被疑薬としてCAMが挙げられた。CAMを含めた持参薬を全て中止後、QT延長は改善した。GSの治療について、退院後もK製剤の服用を継続している。低K血症は様々な原因でおこり、QT延長を契機とした重篤な不整脈の原因となりうる。本症例を踏まえて、低K血症患者に対する取り組みも行ったので報告する。

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