日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
4 巻, 3 号
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原著
  • 高山 慎太郎, 福野 和治, 出内 秀樹, 小林 龍, 井藤 達也, 宮越 貴之, 佐藤 秀紀, 武田 清孝, 小林 道也, 齊藤 浩司
    2015 年4 巻3 号 p. 3-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/02
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    以前に札幌腎と薬剤研究会(現、北海道腎と薬剤研究会)では、札幌市内の5病院で血液透析を受けている331名の患者から血清中カルシウムとリンの濃度に関するデータを収集した。これらのデータを用いて本研究では、慢性腎臓病に関連するこれらのミネラルのコントロールに対する性差と年齢の影響について再調査した。カルシウムの平均血清中濃度は9.1 mg/dLであり、調査した患者の71%が日本透析医学会のガイドラインに示されている目標管理値の範囲内にあった。一方、リンの平均血清中濃度は5.4 mg/dLであり、ガイドラインで設定された目標管理値の範囲内にあった患者は61%だった。ガイドラインの目標管理値に基づいて331人の患者の血清リン値を3群(高値群、適正値群、低値群)に分けてみると、高値群における患者分布数が低値群の患者分布数よりも約5倍多かった。さらに、血清リン値は高年齢層透析患者よりも低年齢層透析患者で有意に高いことが示された。カルシウムとリンのいずれにおいても血清中濃度に性差は認められなかった。本研究における結果は、リンのコントロールがカルシウムのコントロールよりも困難であること、そしてこの傾向が低年齢層患者で顕著であることを示唆している。低年齢層患者ではリン吸着薬の服用に対するアドヒアランスが重要となるので、薬剤師はリン吸着薬の適切な使用について正確な情報を提供しなければならない。

  • 志内 敏郎, 楠藤 梨恵, 村上 真也, 小松 まち子, 宮 恵子, 野間 喜彦, 島 健二
    2015 年4 巻3 号 p. 13-19
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/02
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    目的:血液透析糖尿病患者に対するdipeptidyl peptidase-4(DPP-4)阻害薬テネリグリプチンの有用性について検討する。対象と方法:維持血液透析中の2型糖尿病患者16名(DPP-4阻害薬未投与群9名およびアログリプチンからの切り替え群7名)にテネリグリプチン20mgを1日1回3ヶ月間経口投与し、テネリグリプチンの有効性と安全性を評価した。結果:DPP-4阻害薬未投与群(テネリグリプチン単独投与6名、ミチグリニドへの上乗せ投与3名):3ヶ月後に透析前血糖値およびGA値は有意に低下し(開始時から3ヶ月後:血糖値185±44から153±28mg/dL、p<0.05;GA値23.4±3.8から19.7±3.0%、p<0.01)、GA値20%未満の血糖コントロール良好群の割合は開始時11.1%から3ヶ月後55.6%へ有意に増加した(p<0.05)。アログリプチンからの切り替え群:透析前血糖値およびGA値は、テネリグリプチン投与後3ヶ月間有意の変動を認めなかった。観察期間中、自・他覚症状の異常はなく、血液検査値の悪化および低血糖は認めなかった。結論:1)テネリグリプチンは、血液透析患者に対して有効かつ安全に投与できる薬剤である。2)テネリグリプチン20mgの血糖降下作用はアログリプチン6.25mgとほぼ同等である。

  • 志野 訓之, 内田 享弘, 吉田 都, 野村 泰生
    2015 年4 巻3 号 p. 21-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/02
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    カルバペネム系抗菌薬(メロペネム(MEPM)、ドリペネム(DRPM))の使用において最適な用法用量を提案するために、モンテカルロ法を利用し、高齢者個々の腎機能に応じて80%の確率で%TAM≧40を達成する投与量・投与間隔を提案できるノモグラムを作成した。市中肺炎で入院した高齢者において、ノモグラムを用いて介入したMEPM投与群35人、DRPM投与群29人とノモグラムなしに治療を実施したMEPM投与群33人、DRPM投与群26人について40%TAM達成率、1日投与量、投与間隔、投与期間、臨床効果、副作用をレトロスペクティブに比較検討した。介入前に較べ介入後は、1日1回投与の患者数が有意に減少し(MEPM;9人→3人 p=0.04、DRPM;8人→0人p<0.01)、また平均1日使用量は、有意に増加した(MEPM; 0.92±0.28g→1.10±0.40g p=0.04、DRPM; 0.46±0.17g→0.53±0.09g p=0.01)。40%TAM達成率も有意に増加した(MEPM;75.8%→94.3% p=0.03、DRPM; 61.5%→90.7% p=0.01)。介入の結果、投与期間が短縮した(MEPM;10.0±3.7日→8.5±3.8日 p=0.04、DRPM; 10.7±3.7日→8.4±3.2日 p=0.03)。体温37度以下が持続するまでの期間は、有意に短くなった(MEPM: 4.5±1.6日→3.9±1.7日p=0.04、DRPM: 4.8±1.7日→4.1±1.6日p=0.04)。また介入後、臨床的失敗も減少した(MEPM; 5人→3人 p=0.4、DRPM; 7人→2人 p=0.04)。介入前後において副作用の発現の頻度に、有意な差は認められなかった。高齢者個々の腎機能に基づき投与量、投与間隔を決定できるノモグラムは、有効であることが示唆された。

  • 小林 豊, 吉岡 雅代, 稲葉 達也, 鈴木 豊秀, 榊間 昌哲, 井出 和希, 川崎 洋平, 山田 浩, 北村 修, 米村 克彦
    2015 年4 巻3 号 p. 31-38
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/02
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    高リン血症は血管石灰化や生命予後に関連した病態であり、保存期慢性腎臓病(CKD)から血清リン値の管理が重要である。一方、保存期CKDに使用可能なリン吸着薬である沈降炭酸カルシウム(炭酸Ca)は胃酸分泌抑制薬の併用による効果減弱と、カルシウム含有による血管石灰化が懸念される。そこで当院薬剤部は内科医師に対し、これらの情報提供を行い、処方状況の変化に関する調査と、薬剤師による情報提供が医師の処方意識にどのような影響を与えたかについてのアンケート調査を行なった。対象は2014年1月の時点でリン吸着薬の処方を受けている保存期CKD患者のうち、1)炭酸Caと胃酸分泌抑制薬を併用している、2)血清リン値>4.5 mg/dL、を満たす患者の主治医とした。リン吸着薬の処方を受けている保存期CKD患者16名全てが炭酸Caを服用しており、12名が胃酸分泌抑制薬を併用していた。併用患者のうち血清リン値>4.5 mg/dLである患者は7名であった。情報提供により7名中5名においてリン吸着薬の変更や胃酸分泌抑制薬の中止がなされた。処方変更された5名中2名は血清リン値が低下し、2名は上昇し、1名は血液検査実施前に透析導入となった。情報提供対象患者以外においても処方の見直しがなされ、両薬剤の併用率は75%から21%と有意に減少した。アンケート調査の結果、薬物相互作用について6名中4名の医師が「知らなかった」と回答、意識変化では6名全員が「変化あった」と回答した。「今後は血管石灰化の危険性を回避するため可能な限りカルシウム非含有リン吸着薬を使用する」などの意見も得られた。これらのことから、薬剤師による積極的な情報提供は医師の処方意識に影響を与え、処方を見直すきっかけになることが示唆された。今後は他の薬物相互作用についても介入を検討し、有効性と安全性の高い薬物療法の提供により医療の質の向上に寄与していきたい。

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