日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
3 巻, 1 号
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総説
  • 山本 武人, 樋坂 章博, 鈴木 洋史
    2014 年3 巻1 号 p. 3-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    持続的腎代替療法(CRRT)は、主に急性期病棟において循環動態が不安定な患者に導入されるが、CRRTにより治療上必要な薬物も除去され、血中濃度コントロールに難渋することも多い。そのため、CRRT導入患者に対しては慎重な投与設計が必要であるが、ガイドラインで推奨されている投与量は、限られたCRRT実施条件における検討に基づくものがほとんどである。そのため、施設毎・患者毎に実施条件が異なるCRRT導入患者に対して適切な投与設計を行うためには、CRRTによる薬物のクリアランス(CLCRRT)とCRRT実施条件の関連性を理解し、CRRT導入による全身クリアランス(CLtot)の変化を定量的に評価する必要がある。まず、CRRTによる小分子薬物の除去メカニズムは基本的には濾過と拡散であるが、アルブミンと結合した薬物は透析膜を透過できないことから、血漿中の非結合型薬物のみが除去の対象となる。従って、CLCRRTは薬物のタンパク非結合型分率とCRRT実施条件により理論的に推定可能であり、通常の実施条件(透析液流量と濾過量の合計が10~35 mL/min程度)であればクレアチニンクリアランス(CLcr)として10~35 mL/minに相当する。一方で、CRRT導入時の投与設計を行う上では薬物の未変化体尿中排泄率(Ae)も重要なパラメーターであると考えられる。すなわち、CRRT導入時の投与量としては、各種文献に示されているCLcrが10~50 mL/min相当の投与量を目安とするが、Aeの大きい腎排泄型薬物では、患者の腎機能が廃絶している場合にはCRRT実施条件の個人差がCRRT導入時のCLtotに与える影響が大きく、CRRT実施条件を考慮した投与設計が必要となる可能性がある。さらに、CRRT導入患者であっても初回投与量は腎機能正常者と同量とすること、CRRTは尿細管分泌や再吸収を代替できないため、それらの寄与の大きい薬物では予想外の薬物動態変化を示す可能性があることなどにも注意が必要である。本稿ではCRRT施行時のクリアランスの考え方について理論的背景を紹介した後、抗菌薬を例に臨床における投与設計への応用について解説する。

原著
  • 中村 忠博, 松永 典子, 原澤 仁美, 樋口 則英, 北原 隆志, 佐々木 均
    2014 年3 巻1 号 p. 21-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    わが国では、高齢者が毎年、増加の一途を辿っている。高齢者では消化管の運動機能低下に伴い、便秘の患者が増加する。便秘の治療には、酸化マグネシウム(MgO)製剤が繁用され、長期投与されることが多い。MgO製剤の添付文書には、長期投与では定期的な血清Mg値を測定し、高マグネシウム(Mg)血症に対する注意喚起が図られている。本調査では、MgO製剤の適正使用の状況について調査を行った。2010年4月1日から2012年8月31日の間に長崎大学病院を受診し、MgO製剤を1年以上継続投与された613例を対象とした。全例で血清Cr値は測定され、推算GFR(eGFR:mL/min/1.73m2)の評価が可能であった。その中で血清Mg値が測定されている症例は214例(34.9%)であった。65.1%の症例で、MgO製剤投与期間中に1回も血清Mg値が測定されていなかった。血清Mg値測定回数とeGFRの間で有意な関係は認められなかった。開始時のeGFRをeGFR≧60、60>eGFR≧45、45>eGFR≧30、30>eGFRに区分し、異常高値の発現件数は、eGFRが低下するに従い、有意に増加していた。MgO製剤を長期投与している症例の65%で定期的な血清Mg値の測定されていない状況であり、薬学的介入が必要な実態が明らかとなった。

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