日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
12 巻, 3 号
選択された号の論文の1件中1~1を表示しています
短報
  • 下石 和樹, 上田 賢太郎, 岡本 涼佑, 岩田 一史, 秋吉 明子, 門脇 大介, 陣上 祥子
    2023 年 12 巻 3 号 p. 371-376
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    透析患者の原因疾患の第一位である糖尿病性腎症は、一般的に腎予後が不良のため、その発症を未然に防ぐ予防的な治療が重要視されている。このような中、近年DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬について腎保護作用を検討した報告が散見されるが、併用による長期的な効果を評価した報告は少ない。そこで本研究では、DPP-4阻害薬服用中にSGLT2阻害薬が開始された2型糖尿病患者の血糖降下作用及び腎保護作用について調査し、SGLT2阻害薬の長期間の上乗せ効果を評価した。

    2型糖尿病患者で、2015年8月から2020年3月の間にDPP-4阻害薬を6ヶ月以上服用後に新規でSGLT2阻害薬が開始された45名のうち2年以上併用した36名を対象とした。腎機能別に3群(A群:30<eGFR≦60、B群:60<eGFR≦90、C群:90<eGFR)に分け、併用開始から2年間、HbA1c、eGFRの推移について電子カルテを用いて後方視的に調査した。

    対象は男性23名、女性13名、平均年齢61.2±11.7歳であった。併用開始後すべての群においてHbA1c値の速やかな低下がみられ、A群、C群においては2年後の有意な低下が観察された。また、eGFRはC群では併用開始1ヶ月後、2年後に有意に低下したが、A群、B群ではeGFRの有意な低下はなく、1/Scrの傾きからも腎機能低下は観察されなかった。これらの結果より、DPP-4阻害薬服用中の2型糖尿病患者にSGLT2阻害薬を併用することで、血糖降下作用だけでなく、腎保護作用の上乗せ効果があることが示唆された。

feedback
Top