日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
9 巻, 1 号
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原著
  • 関口 展貴
    原稿種別: 原著
    2020 年 9 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/12
    ジャーナル フリー

    早期がんに対して行われる内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection : ESD)は、開腹手術に比して患者側の負担が少ない。しかし、ESD後の出血(後出血)を合併する症例が見受けられる。後出血に対して併存疾患は影響を及ぼす可能性がある因子の一つであるが、本邦において腎機能低下と後出血について検討している報告が少ない。そこで腎機能低下が後出血に対してどの程度、寄与するのか調査することとした。2016年4月〜2018年4月に佐久総合病院佐久医療センターでESDが実施された症例を対象とし、後ろ向きで調査を実施した。後出血の定義は術後10日以内に観察された吐血、黒色便、ESD前後でヘモグロビン ≧ 2の低下、ESD後の内視鏡検査で観察された出血とした。

    合計403人の患者を対象として分析を行なった。年齢 ≧ 75歳(P = 0.161)、服用薬剤数 ≧ 6(P < .001)、NSAIDs服用(P = 0.195)、PPI/H2A服用(P = 0.112)、SeGFR < 60で抗血小板薬単独服用(P = 0.122)、SeGFR ≧ 60およびSeGFR < 60かつ抗凝固薬単独服用(P = 0.086、P = 0.002)、SeGFR < 60かつ抗血小板薬+抗凝固薬併用(P = 0.023)、高血圧(P = 0.119)について後出血と関連していることが単変量解析で示された。続いて、多変量解析から、SeGFR < 60かつ抗凝固薬単剤使用例(OR 8.39; 95%信頼区間 2.57-27.4)が抽出された。一方で腎機能に関わらず、抗凝固薬の使用自体が後出血リスクに関わっている可能性も示唆された。今回の研究では腎機能低下の影響は統計的に有意でなかったが、腎機能低下は腎機能非低下群と比較して後出血のリスクが増大する傾向が示されており、術後管理に注意を要する患者群であると考えられた。

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