日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
7 巻, 3 号
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総説
  • 岡本 拓也, 朴 鑽欽, 瀬井 康雄, 川添 和義, 横澤 隆子
    原稿種別: 総説
    2018 年 7 巻 3 号 p. 171-180
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー

    冠元顆粒は、多彩な生理活性を有し、かつ毒性や副作用がないことから、多くの報告がなされている。我々は、糖尿病性腎障害モデル実験より、冠元顆粒が糖尿病腎に対する治療の証拠を得たので、ここに報告する。まず、腎近位尿細管由来の上皮細胞株のLLC-PK1細胞を用いた実験において、高グルコースでひき起こされる酸化ストレス状態を、冠元顆粒添加群で改善する知見が得られた。さらに、2型糖尿病モデルのdb/dbマウスに、冠元顆粒を投与した腎組織中の終末糖化産物や線維症関連蛋白が低下していた。酸化ストレスや炎症に関与する蛋白発現も低下し、腎糸球体の肥大を改善し、2型糖尿病マウスの腎に好影響を及ぼしていた。このことから、冠元顆粒は腎保護作用を示し、糖尿病性腎症への進展を抑制する証拠が示され、それらはまた多系統段階で効能を発揮していることが示された。

原著
  • 長楽 寿子, 石坂 敏彦, 井上 美樹, 山本 圭城, 南澤 彩奈, 安井 友佳子, 小竹 武
    原稿種別: 原著
    2018 年 7 巻 3 号 p. 181-189
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー

    堺市立総合医療センターでは、処方せんにクレアチニン・クリアランス(以下、Ccr)を記載するとともに、腎機能により調節が必要な薬剤が処方されている場合、薬品名の後に「腎」が明記されるよう処方せん記載の工夫を行っている。また当院はプレアボイド報告を積極的に行っており、報告件数は増加傾向にあり、腎機能に関連する報告も多くあげられている。そこで、処方せん記載の工夫による調剤・鑑査における正確性の向上と処方監査の効率化への影響およびプレアボイド報告のタイミング、提案内容の変化を検討したので報告する。当院薬剤師および大学薬学生を対象とし、模擬処方せんを作成し処方せん鑑査を実施した。全ての模擬処方せんにCcrを記載し、腎機能調節が必要な薬剤について「記載なし」処方せんと「記載あり」処方せんを作成した。評価項目は鑑査の正確性、所要時間の2項目とした。プレアボイド報告については、2015年のプレアボイド報告集団(「記載あり(2015)」)と2014年のプレアボイド報告集団(「記載なし(2014)」)との間で、腎機能調節が必要な薬物に関する報告を比較した。「記載あり」を鑑査した場合では、「記載なし」と比較して鑑査の正確性は統計学的に有意に高い結果となり、鑑査の所要時間についても有意に短縮された。「記載なし(2014)」群と「記載あり(2015)」群の腎機能に関連するプレアボイド件数の比較を行ったところ、「記載あり(2015)」において報告件数は有意に増加した。処方せん記載の工夫が調剤・鑑査の正確性の向上と所要時間の短縮につながり、誰でも、正確かつ迅速に、効率的な鑑査が可能であることが示唆された。プレアボイド報告の比較からは早期タイミングで適正な薬物治療が実践できることが示唆された。以上のことから、腎機能により調節が必要な薬剤について処方せんに明記することは、適正な薬物治療の貢献に有用であると考えられる。

  • 野々内 裕紀, 眞継 賢一, 林 宏和, 河村 万紀子, 岡本 朋子, 上田 綾佳, 王 宏維, 濱口 良彦
    原稿種別: 原著
    2018 年 7 巻 3 号 p. 191-200
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー

    関西電力病院医薬品情報室では薬学的介入の質向上を目指し,2014年2月よりデータウェアハウスを用いて腎機能障害の程度に応じて禁忌に相当する症例を検出するシステム(システム)を構築し活用している。今回その活用状況と課題について検討した。対象は入院患者で,Cockcroft-Gault式により求めたクレアチニンクリアランス(creatinine clearance:Ccr)が検索時点から過去1ヶ月間に60mL/min未満であった患者を検出し,Ccr<10mL/min,Ccr<30mL/min,Ccr<60mL/minの3群に分けた。各群で腎機能障害の程度に応じて禁忌に相当する薬剤(検索対象薬剤)の処方がある症例を検出し,病棟薬剤師と検出した症例への対応方法について協議した。疑義のある症例に対しては医師に処方変更の提案をおこなった。システムにより検出された腎機能障害の程度に応じて禁忌に相当した症例は104件であった。医薬品情報室と病棟薬剤師と協議の結果,医薬品情報室から医師へ処方変更の提案をおこなった症例は41件(39.4%)であり,そのうち処方変更となった症例は24件(58.5%)であった。処方変更に至らなかった症例は,病棟薬剤師や医師とその妥当性について協議し,検査項目の追加やTherapeutic Drug Monitoring(TDM)の実施,他科への併診依頼等をおこなった。我々の構築したシステムは,腎機能障害の程度に応じて禁忌に相当する症例を機械的に検出し,病棟薬剤師や医師と連携して処方内容の適正化及び薬物療法の安全性の向上に寄与している点で有用であると考える。課題として,検索対象薬剤を検出する境界値の設定が病棟薬剤師や医師の判断基準と乖離があること,検索対象薬剤の処方を未然に防げないこと等が考えられた。

  • 石郷 友之, 近藤 蕗, 立石 莉穂, 野々山 雅俊, 藤居 賢, 木明 智子, 中田 浩雅, 野田 師正, 宮本 篤
    原稿種別: 原著
    2018 年 7 巻 3 号 p. 201-209
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー

    糖尿病性腎症は末期腎不全(end-stage renal disease:ESRD)や血液透析の主要な原因の一つである。また、ESRDや血液透析患者では心血管イベントや死亡率の増加が報告されており、腎機能の低下や透析導入を遅らせることは重要な課題である。近年、glucagon-like peptide 1(GLP-1)受容体作動薬であるリラグルチドの腎保護作用が報告されている。しかし、デュラグルチドについては海外でアルブミン尿の減少効果が示されているのみであり、本邦においてデュラグルチドの腎機能への影響についての報告はまだない。その為、我々はデュラグルチドの血糖コントロールおよび腎機能への影響について検討した。2016年9月から2017年9月にデュラグルチドが開始された症例は45例で最終的な解析対象は19例であった。主要評価項目はデュラグルチド開始3ヶ月後の糖化ヘモグロビン(HbA1c)、推算糸球体濾過速度(eGFR)とし、腎機能への影響についてはeGFRの変化量も調査した。平均年齢は57.4歳で男性10例、女性9例であった。HbA1cは、デュラグルチド開始時8.9 ± 0.4%(平均 ± SE)から3ヶ月後8.0 ± 0.4%と有意な低下を認めた(p = 0.019)。また、eGFRは開始時60.2 ± 4.7 mL/min/1.73m2(平均 ± SE)から3ヶ月後65.3 ± 4.9 mL/min/1.73m2と有意な上昇を認めた(p = 0.011)。一方、収縮期血圧は123.6 ± 16.2 mmHgから125.6 ± 16.6 mmHgと変化は見られなかった(p = 0.919)。eGFRの変化量は、デュラグルチド開始前の3ヶ月間では2.1 ± 5.6 mL/min/1.73m2低下したが、開始後の3ヶ月間では5.1 ± 7.9 mL/min/1.73m2上昇した(p = 0.011)。本研究からデュラグルチドにおける2型糖尿病患者の腎障害の進行抑制もしくは腎機能改善効果が示唆される。

症例報告
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