日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
12 巻, 1 号
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原著
  • 阿部 多嘉浩, 大橋 春香
    原稿種別: 原著
    2023 年 12 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/25
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    近年、SGLT2阻害薬の血糖降下作用のみならず、心・腎保護作用が報告されている。糖尿病の薬物治療は、異なる作用の薬剤を併用することで血糖コントロールを行い、三大合併症を抑える治療が行われている。しかしながら、その組み合わせは多数存在しており、各薬剤の腎保護作用も不明点が多い。本研究では、DPP4阻害薬ビルダグリプチンとSGLT2阻害薬カナグリフロジン併用による腎保護作用を調査した。

    対象期間は2017年4月から2022年3月とした。対象患者は当院腎臓内科よりビルダグリプチン処方中の患者とし、ビルダグリプチン単独群とカナグリフロジン併用群に分けた。主要評価項目としてeGFRとUACRを設定し、腎保護因子を調査した。ビルダグリプチン単独と比較してカナグリフロジン併用によりUACRは年間0.01g/gCr減少し(P = 0.97)、eGFRは年間0.19mL/min/1.73m2低下速度の抑制を認めた(P < 0.05)。eGFRを目的変数、年齢、HbA1c、UACR、RAS阻害薬及びCCBの併用の有無を説明変数として重回帰分析をした結果、UACRのみ有意差を認めた(P < 0.05)。また、eGFRの低下速度抑制はRAS阻害薬の併用によらないことを認めた。

    本研究結果より、ビルダグリプチンとカナグリフロジン併用による腎保護作用が認められ、この作用は尿蛋白減少によることが示唆された。DPP4阻害薬とSGLT2阻害薬の組み合わせは多数存在しており、他の組み合わせでも腎保護作用の観点から有効性を検証していく必要があると考える。

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