日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
6 巻, 1 号
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原著
  • 山﨑 修治, 三星 知, 山田 仁志, 相田 宏美, 長井 一彦, 岡島 英雄
    2017 年 6 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    下越病院の透析外来に通院中で降圧剤を多数服用している血液透析(HD)患者において、服用中のレニン-アンギオテンシン系(RAS)阻害剤すべてをアジルサルタン40mg 1日1回の投与に変更し、服用降圧剤数の変化と血圧の変動について検討した。また、48時間自由行動下血圧測定(48-hr ABPM)を実施した。対象は、RAS阻害剤を含む降圧剤を5種類以上服用しているHD患者9名とした。試験期間は2012年8月から2013年2月とした。アジルサルタンに変更後、1日に服用する降圧剤は6.0±0.9種類15.4±4.5錠から、4.0±1.7種類10.0±6.3錠へ有意な減少を認めた(p<0.05)。透析前血圧は136.9±20.8mmHgから、136.7±16.9mmHgと有意な差は認めなかった(p=0.90)。48-hr ABPMは8名で実施し、血圧変動パターンは、改善が3名、不変が5名、悪化した患者はいなかった。アジルサルタン変更後、昼間収縮期血圧は136.5±5.3mmHgから134.5±8.4mmHgと減少傾向を認めた。夜間収縮期血圧は138.5±4.0mmHgから132.8±6.6mmHgと有意な減少を認めた(p<0.05)。アジルサルタンの投与で十分な降圧効果を認めたため、RAS阻害剤以外の服用降圧剤数も減量でき、48-hr ABPMにおいて昼間血圧に対する夜間血圧の比が改善傾向を示したと考えられた。

  • 露木 賀生, 河野 誠
    2017 年 6 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    外用局所麻酔剤エムラクリームは高い皮膚透過性のため良好な局所麻酔効果を発揮することから血液透析における穿刺時の疼痛緩和を目的として使用されている。一方で、エムラクリームの高い皮膚透過性から、有効成分であるリドカインおよびプロピトカインが1時間の密封塗布により血中へ移行する。血液透析患者において、血中に移行した薬物の血液透析除去性に関する情報は重要であるが、リドカインとプロピトカインの血液透析性については近年主流であるハイパフォーマンス型血液透析器での情報はない。そこで、リドカインおよびプロピトカインの血液透析による透析性を明確にし、血中濃度推移が血液透析による影響を受ける可能性について検討するために、小型化した血液透析器を用いたin vitro透析実験をおこなった。リドカインおよびプロピトカインを含むヒト血漿20 mLを、ポリスルホン系血液透析膜を取り付けたin vitro小型化透析システム(有効膜面積:26.4 cm2、血漿流量:2 mL/min、透析液流量:5mL/min)を用いて透析した結果、リドカインおよびプロピトカインの血漿中濃度は経時的に減少し、透析除去された。また、臨床血液透析条件(有効膜面積:1.5 m2、血液流量:200 mL/min、透析液流量:500 mL/min、ヘマトクリット:44%)でのリドカインおよびプロピトカインの血液透析クリアランス(血漿基準)はそれぞれ34.2 mL/minおよび64.1 mL/minと予測され、リドカインおよびプロピトカインの全身クリアランス(リドカイン:950 mL/min、プロピトカイン:1,910~2,570 mL/min)に比べ小さいと予測された。

  • 松坂 昌宏, 小林 豊, 萩原 紫織, 望月 真太郎, 高田 正弘, 井出 和希, 川崎 洋平, 山田 浩, 諏訪 紀衛, 鈴木 高弘, 横 ...
    2017 年 6 巻 1 号 p. 15-27
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/19
    ジャーナル フリー

    静岡腎と薬剤研究会は腎臓病薬物療法について学習する機会が限られていた静岡県の病院・薬局薬剤師の取り組みの現状を把握し、課題を見出すためにアンケート調査を行った。対象は第1回静岡腎と薬剤研究会に参加した病院・薬局薬剤師とした。アンケートは多肢選択式20問とし、腎機能評価や疑義照会の他、処方箋やお薬手帳への検査値の記載に関する質問を作成した。回答者は病院薬剤師42名、薬局薬剤師20名の合計62名であった。調剤時の処方鑑査の際に腎機能を表す検査値を確認する薬剤師は53名(85%)であり、薬物投与量を確認する際の腎機能評価にeGFRを使用する薬剤師は40名(65%)であった。体表面積未補正eGFRを使用するのは40名中17名(43%)と半数以下であった。腎機能を評価した上で疑義照会をしている薬剤師は48名(77%)であり、病院薬剤師42名中37名(88%)に対して薬局薬剤師20名中11名(55%)と異なっていた。その理由に検査値の入手方法と確認頻度に違いがみられ、病院薬剤師38名(90%)が検査値をカルテから入手するのに対し、薬局薬剤師18名(90%)は患者から入手していた。確認頻度では薬局薬剤師15名(75%)が検査値を入手できた時に確認しており、腎機能評価が不定期に実施されていた。疑義照会内容は過量投与が48名中45名(94%)と最も多く、薬物相互作用は7名(15%)と少なかった。処方箋に腎機能を表す検査値の記載を希望する薬局薬剤師は20名中17名(85%)であり、検査値を記載している施設の病院薬剤師は42名中7名(17%)であった。お薬手帳に検査値の記載を希望する薬局薬剤師は13名(65%)であったが、検査値を記載している施設の病院薬剤師は3名(7%)と少なく、病院薬剤師の取り組みが進んでいないことが明らかとなった。以上の結果から、地域の腎臓病薬物療法の質的向上には、腎機能評価に関する研修会の実施や薬局薬剤師が検査値を入手しやすいように薬薬連携の推進を図ることが重要である。

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