日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
10 巻, 2 号
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原著
  • 森 裕也, 小谷 遥, 伊藤 知行, 枦 秀樹, 横山 雄太, 中村 智徳, 太田 哲徳
    2021 年 10 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
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    酸化マグネシウム(Mg)は便秘の治療に使用されているが、腎機能低下患者に使用する場合、Mgの排泄量が低下し、血清Mg濃度が上昇することがある。そのため、定期的な血清Mg値の測定が推奨される。しかしながら、急性期病院において、酸化Mgを使用している腎機能低下患者における血清Mg値の測定率と薬剤師の介入の有用性を調査した報告はない。そこで、各腎機能群における酸化Mg錠を使用した患者を対象として、血清Mg値の測定率を調査した。さらに血清Mg値を測定している患者を対象に各腎機能群における高Mg血症発生率や薬剤師の介入の有用性について調査を実施した。

    東京ベイ・浦安市川医療センターにおいて、2016年4月1日~2017年3月31日の1年間、入院中に酸化Mg錠を使用した患者を対象に、体表面積補正を外した個別の推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate;eGFR)(mL/min)をA群:45≦eGFR<60、B群:30≦eGFR<45、C群:eGFR<30に分けて検討した。

    対象期間中の酸化Mg錠使用患者数は283人、血清Mg値の測定率は145人(51.2%)であった。薬剤師の介入患者数はB群で1人(1.0%)、C群で6人(7.1%)と計7人(2.5%)であった。各腎機能群における血清Mg値の測定率は、A群(n=33(33.4%))、B群(n=53(51.5%))およびC群(n=59(70.2%))であった。血清Mg値の測定患者における高Mg血症発生率は、27.3%、37.7%および61.0%であり、高Mg血症の発生率に有意な差を認めた(p<0.01)。

    腎機能低下群ほど血清Mg値の測定率は高く、血清Mg値測定患者においては、腎機能低下群ほど高Mg血症患者の割合も高かった。また、血清Mg値の測定率は51.2%で、検出されていない高Mg血症症例が存在していることが示唆された。特に腎機能低下患者に対して酸化Mg錠を使用する際は、薬剤師が介入し、血清Mg値測定を推進することが、高Mg血症の早期発見に寄与すると考えられた。

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