薬剤疫学
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13 巻, 2 号
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理事長挨拶
  • 久保田 潔
    2008 年 13 巻 2 号 p. 69
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    ジャーナル フリー
    薬剤疫学は,人の集団における薬物使用による効果と副作用を疫学的手法を用いて研究する学問です.仮説を明確にしてこれをテストする「正統的」疫学研究とともに,仮説の生成(新たな副作用の発見や,既知の有効性や副作用に関する新たな問題の発見など)も薬剤疫学の重要な分野です.また,催奇形性など重大だが予防可能な薬のリスクを最小限におしとどめ,薬のもつ有用性を最大限にひきだすための「リスク最小化ツール」の作成・評価など,薬の「リスク管理」の系統的アプローチが薬剤疫学に関心をもつものにとっての重要な課題として認識されつつあります.
    我が国では1970年代から使用成績調査(の前身の副作用調査)が開始されるなど,一早く制度的整備が進められました.日本の制度は韓国などにお手本として「輸出」されましたが,次第にデータベース研究を中心に薬剤疫学の急速な発展が進む欧米ばかりではなく,大規模データべースの実利用が進む韓国や台湾の後塵を拝するに至っています.
    当面薬剤疫学会に必要なこととして以下の三点を挙げたいと思います.第一に,国際的な会議を我が国でより多く開くなど,欧米のみならず韓国や台湾などアジアの関係者との交流をより深め,学ぶべき点は虚心坦懐に学ぶことです.第二に,2011年からの稼働に期待が寄せられているレセプトデータベースについて積極的に発言し,データベースを用いた薬の安全性と有効性に関する質の高い薬剤疫学的研究が可能となる条件を整える努力をすることです.第三に,リスク最小化を含む薬のリスク管理を日本薬剤疫学会としても積極的に取り上げることです.
    薬の国際開発が進み,新薬をより早く享受できるメリットとともに,市販前の試験における日本人の数が少なく,リスクの把握が十分とは言えないまま新薬が市場にでることも多くなりました.日本薬剤疫学会が果たすべき役割はますます大きくなっています.疫学研究を専門とする医師,薬剤師,統計家はもとより,より多くの医療関係者の学会への参加を願ってやみません.
    2008年12月
  • 景山 茂
    2008 年 13 巻 2 号 p. 70
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    ジャーナル フリー
    平成17年11月に計らずも理事長の大役を仰せつかりましたが,3年間大橋 靖雄副理事長,事務局を預かって下さった楠 正先生を初め理事・監事の諸先生他,皆様のお力添えにより何とか大過なく理事長職を終える事ができました.厚く御礼申し上げます.
    この間,学会は社会へ向けた発信をして来ました.平成19年12月に厚生労働大臣宛に提出した「医薬品等の安全確保のためのレセプト情報活用に関する要望書」,平成20年7月に提出した,内閣官房IT対策室への「重点計画―2008(案)に関する意見」等であります.また,学術面においては例年の学術総会のみならず,平成19年5月には特別シンポジウム「インフルエンザ罹患後の異常行動と薬剤疫学」や同年10月にはISPE/JSPE教育プログラムが開催されました.これらはすべて直接担当された皆様の功績によるものです.
    レセプトオンライン化は3年後に迫っており,レセプト情報の薬剤疫学への活用は焦眉の急と思われ,行政への一層の働き掛けが必要と思われます.国内ではこのように一定の活動が行われましたが,国際的な活動の充実は今後の課題と思います.この方面は久保田潔新理事長により充実されるものと思います.日本薬剤疫学会の更なる発展を祈念しております.
    2008年12月
原著
  • 北澤 京子
    原稿種別: 原著論文
    2008 年 13 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    ジャーナル フリー
    目的 : 英国および日本の医学記事の特徴を比較する目的で、両国の代表的なニュースサイトに掲載されている記事を、メディア・ドクター・オーストラリアのチェックリストを用いて評価する。
    研究デザイン : 横断研究
    方法 : 2007年1月から6月までの間に、英国(BBC、Guardian、Independent、Times、Yahoo! UK)および日本(朝日、読売、Yahoo! Japan)の健康・医学ニュース専門ウェブサイトに発表された病気の予防および治療に関する記事を抽出した。メディア・ドクター・オーストラリアが開発したチェックリストを適用し、記事の質を調べた。総合得点を両国間で比較した。
    結果 : 英国記事296本および日本記事79本が抽出された。媒体ごとの総合得点は朝日 (45.7)からIndependent (63.4)まで幅があった(満点は100)。日英で総合得点を比較したところ、英国 60.0 (95%CI 58.2-61.8)、日本 47.8 (同、45.4-50.2) で、英国記事の方が有意に高かった(p<0.001)。
    結論 : 今回の研究で抽出された記事は、メディア・ドクター・オーストラリアの観点からは必ずしも満足できる情報を提供しているとは言えなかった。質の高い健康・医療情報を一般市民に届けるために、医学研究者とジャーナリストが協力できる可能性が高いと思われた。
資料
第13回 日本薬剤疫学会学術総会記録
特別招待講演
特別講演2
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