薬剤疫学
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20 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
企画/ワクチンのファーマコビジランスの動向
  • 村上 恭子
    2015 年 20 巻 2 号 p. 41-42
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/02/04
    ジャーナル フリー
  • 田中 大祐
    2015 年 20 巻 2 号 p. 43-53
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/02/04
    ジャーナル フリー
    ワクチンは人類史上で最大の公衆衛生上の成功の一つとされている.現在,予防接種は全世界で毎年250万人の子供の死亡を防いでいる.予防接種は,人の健康に関する権利の重要な要素の一つであり,個人,コミュニティ,そして政府の責任であるとも考えられている.各国における予防接種プログラムに使用されるワクチンは,適正に使用すれば概して安全かつ有効であると考えられる.しかし,他の医薬品と同様にゼロリスクではなく,予防接種後に副作用が生じる場合がある.このため,予防接種プログラムを成功させるためには,ファーマコビジランス活動を通じて,ワクチンのリスクとベネフィットのバランスを継続的に監視し,適切な情報提供を行うことにより,一般からの信頼を得ることが重要である.ワクチンをはじめとする医薬品は,リスクとベネフィットを正しく理解し,適正に使用されることにより,その価値を最大限に発揮することができる.ファーマコビジランスは世界保健機関 (World Health Organization: WHO) により「医薬品の有害な作用または医薬品に関連する諸問題の検出,評価,理解及び予防に関する科学と活動」と定義され,医薬品のリスクとベネフィットのバランスを正しく評価するために欠かせない存在である.WHO では,世界におけるワクチン接種率のさらなる向上を目指していると同時に,デング熱やマラリアなど新たなワクチンの開発にも乗り出している.また,先進国,途上国間でのワクチン接種開始ラグが減少しているとともに,様々な技術協力等により様々なワクチンが途上国でも製造されている.このため,ワクチンの接種率が増加し,新規のワクチンも含め,多種多様なワクチンが世界的に投与されるようになってきた.ワクチンのファーマコビジランスの重要性はますます増加し,ワクチンの安全性を確保するための様々な国際協力も積極的に行われてきている.このような状況の下,ワクチンのファーマコビジランスに関して,WHO の動きを中心としてグローバルな動きについて記載する.
  • ―ブライトン分類の導入に向けて―
    岡田 賢司, 村上 恭子
    2015 年 20 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/02/04
    ジャーナル フリー
    予防接種後に発生した有害事象報告は基本的には自由記載で収集されており,その診断の確度の評価ができない場合もある.海外ではこのような実情を鑑み,標準化された基準で収集・評価検討していくことが行われている.国際標準として広く導入され始めているブライトン標準化症例定義を日本においても適用するための方策を考えた.
  • 宮崎 真
    2015 年 20 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/02/04
    ジャーナル フリー
    ワクチンのファーマコビジランスは,他の医薬品とは異なる留意点がある.本稿では,ワクチンのファーマコビジランスにおいて自発報告データベース・医療情報データベース(レセプトデータベース,診療情報データベース)が果たす役割について,その現状・可能性を考察する.自発報告データベースにおいては,社内データベース・医薬品副作用データベース(JADER)等既にワクチンのファーマコビジランス活動に利活用可能なデータベースが構築されており,予防接種の効果不良やワクチンの質に由来する問題の検出・統計的シグナル検出に対し一定の活用が可能である.今後,自発報告データベースへの症例の更なる集積によるシグナル検出力の増加,更に予防接種時事故報告制度とのデータ共有,副反応検討部会情報のデータベース化,予防接種副反応分析事業の開始等により自発報告のデータを用いたファーマコビジランス活動がより強固なものになることを期待する.医療情報データベースにおいては,ワクチン接種情報が捕捉できないというクリティカルな限界が現状あるものの,注目すべき特定事象の背景発生率や感染症の発生動向の把握等,現段階において既に利用可能な点も認められる.また医療情報データベースにおける検討が,感染症発生動向調査や定期予防接種の接種率の把握等現行の各制度の代替手段となる可能性がある.電子的に管理された予防接種履歴と他の医療情報とのデータリンケージを介して構築されるデータベース,一次データを収集する必要性等各制度の見直し,電子カルテ上のワクチンコードの標準化,母子健康手帳情報のデータベース化等,医療情報データを中心にワクチンのファーマコビジランスの更なる変革が訪れることを期待する.
活動報告
  • 小宮山 靖, 青木 事成, 古閑 晃, 久保田 潔
    2015 年 20 巻 2 号 p. 73-83
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/02/04
    ジャーナル フリー
    医薬品リスク管理計画(J-RMP)指針通知に述べられている「ICH E2E ガイドラインに示されている安全性検討事項及びそれを踏まえた医薬品安全性監視計画(PVP)」を我が国で真に実装するために必要な規制改革に関し提言を行う.その背景として J-RMP 指針通知が公表されて3年以上経過したが,公表された実際の追加の PVP は従前どおりの使用成績調査等に強く依存している.その根本原因は制度の運用を規定している GPSP 省令および GPSP 省令関連通知である.すなわち① GPSP 省令は J-RMP 指針通知で参照するよう求められている ICH E2E ガイドラインに沿った調査の実施を促すものになっていない.② GVP 省令に包含される J-RMP において,安全性検討事項の課題に答える追加の PVP の方法は GPSP 省令に示された使用成績調査,特定使用成績調査の3種類の調査あるいは試験に限定されるべきと解釈され,運用されている.そこで以下のような提言を行う.
    • GPSP 省令は,ICH E2E ガイドラインに記載の「別添―医薬品安全性監視の方法」を参照することを促し,従来の研究方法に限定しない方向で改訂されるべきである.
    • 市販直後調査は ICH E2E ガイドラインの別添にも含まれており,適用場面を画期的な新薬が世界同時あるいは日本先行で上市された場合などに限定するべきである.
    • 「GVP,GPSP 省令の一部を改正する省令の施行通知」において「(2)総括製造販売責任者の業務及び安全管理責任者の業務」として,イの「製造販売後調査等管理責任者との相互の密接な連携」の項で,「医薬品リスク管理計画書を ICH E2E ガイドラインの医薬品安全性監視計画に関する定めに基づき作成されるよう促すこと」といった規定を含めるべきである.
    • 「製造販売後調査等基本計画書」の別紙様式2は,J-RMP 指針通知に準ずるように改正すべきである.
    • 「医薬品リスク管理計画の策定について」通知の「1.医薬品リスク管理計画の作成について」に「医療現場にも納得性のある調査デザインの策定に努めること.」との趣旨を加える.
    • 外国でも販売される医薬品については,安全性の検討課題の全てに対して,必ずしも日本人での検討が必須でない課題に対しては,世界で協働/分業すること,あるいは非臨床研究で回答を与えることも可能である旨,省令あるいは関連通知において周知させるべきである.
日本薬剤疫学会 第20回学術総会記録
特別講演
  • 桐野 豊
    2015 年 20 巻 2 号 p. 85-96
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/02/04
    ジャーナル フリー
    レギュラトリーサイエンス(RS)は,1987年に,当時国立衛生試験所(現 国立医薬品食品衛生研究所)の副所長であった内山 充博士によって,「我々の身の回りの物質や現象について,その成因や機構,量的と質的な実態,及び有効性や有害性の影響を,より的確に知るための方法を編み出す科学であり,次いでその成果を用いてそれぞれを予測し,行政を通じて国民の健康に資する科学」として提唱された日本発のコンセプトである.米国食品医薬品局(FDA)では,RS を “the science of developing new tools, standards and approaches to assess the safety, efficacy, quality and performance of FDA-regulated products” と定義している.米国(FDA)では,RS を有用な新薬をより迅速に医療現場へ提供するためのツールと考えているが,日本(PMDA)では RS を「患者のために必要な医薬品を患者のために審査承認する」ためのよりどころ(基本的考え方)と捉えている点が異なる.一方,ファーマコビジランス(PV)は WHO によれば, “the science and activities relating to the detection, assessment, understanding and prevention of adverse effects or any other drug-related problem” と定義されている.RS は,医薬品の有効性,安全性,及び,品質を取り扱うが,PV は安全性に重点を置いていると言えよう.しかし,市販されている医薬品を取り扱う医療従事者にとっては,RS と PV に大きい差異は無いと思われる.「くすりはリスク」といわれるが,実際,医薬品の有害反応の発生率は驚くほど高い.有害反応を予測し未然に防止するためには,有害反応(副作用)報告制度の整備が重要であるが,さらには,医療情報のデータベース化やそれらを利用した薬剤疫学的研究が必須である.本稿では,RS の誕生とその発展について概要を紹介するが,RS に関して議論する前提であり,また,RS の結果でもある「医薬品の開発プロセスとその規制」についても概観する。
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