薬剤疫学
Online ISSN : 1882-790X
Print ISSN : 1342-0445
ISSN-L : 1342-0445
13 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
資料
  • 大場 延浩, 佐藤 嗣道, 折井 孝男, 石本 敬三, 下堂薗 権洋, 田中 照夫, 久保田 潔
    2008 年 13 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    Background :日本における医薬品の有効性と安全性に関する比較観察研究は、わずかしかない。比較観察研究は、それらの問題に関する重要な情報を提供し得るものであり、我々は、このような研究を容易にするメカニズムを確立する必要がある。比較観察研究においては、選択バイアスによる結果の偏りを防ぐことが重要である。我々は、未だ薬剤疫学研究に利用可能なデータベースを持たないが、現在、多くの医療機関や保険薬局は、選択バイアスを最小にすることに用い得るコンピュータ化された処方データを持っている。コンピュータ化された処方データを用いる研究において、比較する2つ以上の医薬品のうち1つが処方された患者を特定するための優れた標準的な手順は、日本におけるさまざまな薬剤疫学研究の基盤となるだろう。
    Methods :我々は、コンピュータ化されたデータを、ある特定の医薬品を使用した全適格患者を特定することに用いる施設の割合を推定するために、2753施設の病院と909の保険薬局に対する調査票による調査を実施した。
    Results :2753施設のうち1942 (71%)、および909保険薬局のうち632 (70%) から調査票が返送された。回答のあった施設のうち、患者が特定された、患者リストがプリンターから印刷された、および患者リストの電子ファイルが作成されたのは、おのおの、1942病院の75、64、36%、632薬局の100、93、40%であった。
    Conclusion :コンピュータ化された処方データを用いた手順により、比較観察研究のためのコホートを、大多数の病院や薬局において、選択バイアスが最小な状態で特定し得る。
活動報告
第13回 日本薬剤疫学会学術総会記録
会長講演
シンポジウム1
「ファーマコビジランスのあり方-新しい時代の要求に応えるには-」
  • ―「リスクマネジメントシステムに関するアンケート調査」結果の解析―
    恒成 一郎, 茨田 享子, 中山 直樹, 菅井 象一郎, 丹 求, 佐々木 正治, 海野 隆, 松本 一彦
    2008 年 13 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    国内外の製薬企業に協力を依頼し、医薬品のリスクマネジメントシステムに関するアンケート調査を実施した。その結果、外資系企業では組織として、専門の安全性管理チームとデータ安全管理委員会を設置し、開発中のリスクマネジメントプランの策定に取り組んでおり、企業として一貫性のあるリスクマネジメントを実施できる体制が整備されていた。また、意思決定を下す中枢組織のボードメンバーとしてトキシコロジストが組み込まれていることが明らかになった。また、国内製薬企業においても、回答企業の半数以上は開発段階から市販後が連携したリスクマネジメントシステムを視野に入れて検討したいと考えていることが明らかになった。今後、「リスクマネジメントシステム」を企業毎に組織体制として整備して行く上で、医薬品の安全性データの一元化を図り、各部門が一元化されたコアデータに随時アクセス可能な機構の構築、および開発段階から市販後まで一貫性のある「リスクマネジメント」を司ることができるような組織体制を整備することは不可欠である。
  • 西 利道
    2008 年 13 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    ICH E2Eガイドラインは平成17年9月16日付の通知「医薬品安全性監視の計画について」で実装された。E2Eによりその薬剤のプロファイルに応じた市販後の安全対策及び調査・試験が求められているが、E2Eを踏まえて計画した経験が少ないため、具体的な対応策については十分には検討されていない。
    抗癌剤TS-1で実施した安全対策および調査・試験を取り上げ、E2Eの観点から説明する。
    TS-1の市販後における重要な特定されたリスクとしては、副作用のプロファイルが類薬と大きく異なること、相互作用のため5-FU系薬剤との併用は禁忌であること、腎機能障害により副作用が増大することが上げられる。重要な不足情報としては、他の抗癌剤との併用情報がないこと、術後に使用した場合の有効性・安全性情報がないこと、長期に使用した場合の情報が少ないことが上げられる。これらの課題に対してどのように対応したか説明する。
    市販後の安全対策と調査・試験の計画は、画一的に実施するのではなく、その薬剤のリスク等を見極めて実施する必要がある。
  • 古閑 晃
    2008 年 13 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    強力な新薬を迅速に承認し、上市を成功するにあたってはTherapeutic Risk Managementは不可欠である。近年欧米においてはRisk Managementをどのように行うかについて2005年に相次いでGuidance documentが発表され、2年以上が経過した。我が国においても2007年には安全で有効な医薬品を迅速に提供する検討会からも同様な動きが提言されている。ICH E2EであるPharmacovigilance planningが2005年に実装化されてはいるが、これまでは個別の薬剤に対して、個別の安全対策は採られてきたものの、今後はリスクマネジメントという観点から総合的に安全対策が行われなければならない。本稿では欧米におけるRisk Managementの動きについて述べるとともに、今後の我が国の目前に迫った課題について考察を加えることとする。
  • 池田 正行
    2008 年 13 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    わが国では、独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) と厚生労働省が、公的機関として連携してファーマコビジランスを行なうと謳われている。FDAのCDER (Center for Drug Evaluation and Research) / CBER (Center for Biologics Evaluation and Research) だけでも、三百数十人の医師がいるのに、日本のFDAといわれるPMDA全体でも、20名前後の医師しか確保されていない。社会的な評価が低い、診療職よりも収入が低いことを含め、複数の要因により医師不足が生じている。多くの品目で審査を担当すべき適切な専門医を欠く結果、小児循環器科医が過活動性膀胱治療薬の審査をせざるを得ないといった専門外審査が常態化している。医師の診療行為が刑事訴追を受け、厚労省の官僚が行政判断に対し個人的責任を問われ有罪が確定する時代に、このような専門外の活動を強いられている審査員の危機感は非常に強い。規制当局や製薬企業に対し、未承認薬の早期承認や市販後安全性管理を厳しく要求しながら、それを支える人材を全く育成しようとしない医師達の中から、PMDAを志望する医師を育てていくためには、単に募集枠を広げる以上の改革が是非とも必要である。第一に、兼業規制の緩和、サービス残業の抑制、前時代的な成果主義の撤廃といった労働環境の改善。 第二に審査免責制度の確立と法務部門の設立。第三に市販後安全性部門への臨床医の配置である。より開かれたPMDAにより、PMDAの外にいる人々がPMDAにもっと貢献できるようになることが、ファーマコビジランスに対するメディアと一般市民への深い理解につながる。
  • 小林 仁
    2008 年 13 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    日本病院薬剤師会は、病院薬剤師によるファーマシューティカル・ケア・レポートを “プレアボイド” の呼称で、平成11年より収集を開始した。報告件数は年々増加し、平成18年度には累計約50,000件に達した。
    プレアボイドは、副作用・相互作用の発現を未然に回避した報告と副作用の重篤化を回避した2つの報告に分類される。後者においては、副作用モニタリングの要素が含まれ、ファーマコビジランスに活用しうる機能も有している。
    プレアボイドは、日病薬会員薬剤師からFax、日病薬のホームページ、E-mailを通じて、日病薬事務局に報告され、評価、分類され、データベースに蓄積される。
    蓄積されたプレアボイドは、ファーマシューティカル・ケア情報の創出、医療経済に関する研究推進に活用され、薬剤師によるファーマシューティカル・ケア・マネージメントシステムの核として重要な役割を担っている。プレアボイドが、ファーマコビジランスの真の目的である有効で安全な薬物療法の実現に寄与できると確信している。
feedback
Top