薬剤疫学
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22 巻, 1 号
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企画/リスク最小化策の評価
  • 佐藤 嗣道, 中村 敏明
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
  • 成川 衛
    2017 年 22 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー

    従来,個々の医薬品について,そのリスクを最小化するためのさまざまな方策がとられてきたが,医薬品リスク管理計画(RMP)制度の実施により,これらが⌈リスク最小化計画⌋として整理・文書化され,公表されるようになったことは意義深い.リスク最小化活動は,患者の安全の確保・向上を目的に行われるものであるが,また一方で,患者,医療従事者,医薬品の製造販売業者・流通業者などに追加の負荷をかけるものでもある.このため,はたして当初の目的が達成されているか,その効果の評価が求められる.その結果に基づいて計画を機動的に見直すことこそが RMP の極意である.リスク最小化策の効果の評価手法として,医療情報データベースを利用した分析,医療従事者や患者へのアンケートやインタビュー調査などが考えられる.さらには,改めて前向きまたは後ろ向きの調査の実施が必要になるケースもあるであろう.多様な状況に普遍的に適用できる方法は存在せず,関係者が知恵を絞り,行動に移していく他に術はない.

  • 佐藤 嗣道
    2017 年 22 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー

    サリドマイドおよびその誘導体であるレナリドミド,ポマリドミドは強い催奇形性をもつことから,これらの薬剤の⌈胎児曝露を 1 例も起こさない⌋ことを目的に,⌈サリドマイド製剤安全管理手順(TERMS®)⌋および⌈レブラミド® ・ポマリスト® 適正管理手順(RevMate®)⌋が運用されている.本稿では,これらの管理手順の大幅な改訂(2016 年 4 月 1 日実施)に伴うリスク最小化策の評価ポイントについて記した.今回の改訂では,中央での一元的管理が緩和され,患者,医師,薬剤師の遵守状況に関する製薬企業の管理センターによる確認は事後的となり,医師・薬剤師による確認の重要性が増した.患者が妊娠回避等の行動を振り返り記入する⌈定期確認票⌋は,従来のように患者が管理センターに郵送するのではなく,受診の際に医師に渡し,記入内容を医師が確認することになった.また,家庭内の薬剤管理責任者の設置についても,患者自身による管理が可能な場合は不要とした.これらの改訂は患者会の要望に沿うものではあるが,改訂に伴い各医療機関における管理手順の実施体制が適切に構築されたか,医師・薬剤師による不遵守・逸脱が増加していないかを評価する必要がある.加えて,⌈定期確認票⌋への記入場所が自宅ではなく病院となるケースが増えると思われることから,それが患者の妊娠回避に関する意識と行動に影響を与えたかを評価できるとよい.また,家庭内に薬剤管理責任者を置かない場合に,リスクの認識と適切な行動に関する理解がパートナー/家族と共有されるかも評価のポイントとなる.改訂に伴う影響については,⌈TERMS 第三者評価委員会⌋および⌈RevMate 第三者評価委員会⌋による患者,医師,薬剤師を対象とする調査が行われており,近く結果がまとまる予定である.

  • 北川 祥賢, 高野 有紀子, 伊藤 正人, 勝又 浩美, 森 さわ
    2017 年 22 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー

    サリドマイドの誘導体である抗悪性腫瘍剤のレナリドミド水和物 (レブラミド®) 及びポマリドミド (ポマリスト® ) の妊婦への曝露を防止するための適正管理手順の RevMate® (レブラミド® ・ポマリスト®) 適正管理手順)が 2015 年に行政当局からの指示により改定され,2016 年 4 月から RevMate® (ver 5.0) 運用が開始された.この改定により会社は,登録される患者の氏名を入手せず,患者情報に関しては病院側の管理があわせて必要となった.また,サリドマイド製剤の管理手順(TERMS®)で用いられる様式で目的が同じものについては,様式の名前と確認項目の表記に関し,統一が図られた.さらに,患者の理解度に応じた対応についても可能となった.この改定で,従来会社に郵送されていた⌈定期確認票⌋が病院への提出と保管になり,会社として,⌈遵守状況確認票⌋と本様式が医療機関で適切に保管されていることを定期的に訪問し確認することが必要になった.その初回の調査確認の結果,⌈定期確認票⌋では患者による持参忘れが 1 割弱の頻度で認められた.このことから,本票の回収に関して改善が必要と考えられた.さらに,入院時に別の患者にレブラミド® が誤投与される事例が 2016 年に 4 件発生した.これを防止するため,2017 年 2 月に RevMate® (ver 5.1) として入院患者の薬剤管理の項を設け,さらにレブラミド® で新たな適応が追加され,2017 年 3 月より RevMate® (ver 5.2) の運用が開始された.RevMate® が妊婦への薬剤曝露防止のために厳密な⌈リスク最小化活動⌋ として継続的に適切に実施されていくためには,今後も実運用で認めた課題を一つひとつ解決し,当社社員に対しサリドマイドの薬害教育を実施するなど,初心を忘れず,慣れから来る不徹底並びに手順の不遵守がないよう本手順に関わる患者,患者家族,医療関係者等の方々にご理解,ご協力を賜りながら,今後も会社として継続して努力することが重要であると考えている.

  • 中島 研
    2017 年 22 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー

    妊娠中の薬剤の使用については,児へのリスクが懸念される.このため薬剤のリスク管理は非常に重要である.本邦でもかつてサリドマイドによる薬害を経験しており,臨床の現場では使用されなくなった.しかしながら,多発性骨髄腫への治療効果が明らかとなり,その管理が問題となった.実際には使用する患者の中には妊娠可能女性は少なく,管理を厳しくするあまり,妊娠とは関係のない患者でも使用しにくくなることの問題も懸念された.イソトレチノインはざ瘡の治療薬として米国で使用されている.本邦では適応はないが,輸入して使用されている現状がある.使用する患者の中には妊娠可能な女性も多数含まれるため,厳格な管理が必要である.本邦での管理は適応が取れていないことから,情報の提供が十分ではない.バルプロ酸はてんかんの他に片頭痛の予防という適応を併せ持っている.てんかんのコントロールは非常に重要であり,児への影響のリスクを伴うものの妊娠中にもリスクベネフィットを考慮し,使用が必須となる例もある.一方,片頭痛の予防については,ベネフィットが比較的小さく,米国 FDA ではこの目的のための妊娠中の使用を禁止した.本邦ではどの適応でも原則禁忌となっており,リスクベネフィットのバランスが明確ではない.今後は適応ごとの注意喚起も併せて行うことが重要と考えられた.

日本薬剤疫学会 第22 回学術総会記録
会長講演
  • 川上 浩司
    2017 年 22 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー

    昨今,各種の診療情報由来のデータベースを用いた薬剤疫学研究が実施できるようになってきた.観察研究に用いられる資料としては,リアルワールドデータ (RWD) 系と疾患登録系とがある.このうち,RWD においては,診療報酬請求 (レセプト) 情報,調剤情報,DPC 情報に加えて,我が国でも医療機関における電子カルテ由来の診療情報を統合したデータベースの構築も始まっている.一方,日本では,母子保健法や学校保健安全法等に基づいて,自治体が各種の健康診断情報を所管しているが,これらのデータベース化の取組みも開始され,ライフコースデータとして予防医療や難病理解,創薬等に大いに役立つ知見を得ることが期待されている.

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