薬剤疫学
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26 巻, 2 号
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追悼
原著
  • 内藤 舜斗, 藤居 宏幸, 井上 恵理, 吉井 利郎, 篠原 正彦, 山口 真一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 26 巻 2 号 p. 103-113
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/10/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    目的:医療情報データベースを用いて,臨床実態下でのアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の投与に起因した高カリウム血症のリスクを検討した.

    研究デザイン:ARB とカルシウム拮抗薬(CCB)の単剤処方患者をそれぞれ曝露群,対照群としたコホート研究.

    方法:メディカル・データ・ビジョン株式会社が提供する DPC データベースにて,2008 年4 月から 2017 年 6 月に高血圧性疾患(ICD-10 コード:I10-I15)と診断され,かつ ARB 又は CCB を単剤投与された患者を対象に,ロジスティック回帰モデルを用いて,オッズ比と 95%信頼区間を推定した.アウトカムは高カリウム血症(血清カリウム値 5.5 mEq/L 以上),共変量は性別,年齢,腎機能障害の有無,肝機能障害の有無,薬剤投与前血清カリウム値とした.高カリウム血症の発現率は人年法に基づいて算出した.また,腎機能障害の有無により,サブグループ解析を実施した.

    結果:高カリウム血症の発現率は ARB 又は CCB が投与された患者でそれぞれ 39.4/1000 person-years,32.6/1000 person-years であった.高カリウム血症発現までの期間の中央値は ARB 群で 36 日(Min-Max:12-85),CCB 群で 51.5 日(Min-Max:8-88)であった.また,CCB 単剤処方に対する ARB 単剤処方のオッズ比は OR 1.26(95%CI:0.58-2.75)であり,腎機能障害の有無と血清カリウム値のオッズ比はそれぞれ OR 3.31(95%CI:1.39-7.88),OR 9.20(95%CI:3.52-24.10)であった.また,腎機能障害患者でも,主解析と同様の結果が示された.

    結論:ARB 投与による高カリウム血症の発生は認められず,ARB に起因した高カリウム血症の発現は極めて低いものと考えられた.一方で,患者の腎機能障害及び薬剤投与前血清カリウム値と高カリウム血症との関連性が示唆された.腎機能障害等の患者では高カリウム血症発現への影響が報告されていることから,これらの患者での ARB 投与については,従来どおりの慎重な処方が推奨される.

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