2012年4月,医薬品のリスクを開発段階から製造販売後まで適正に管理するため,厚生労働省から医薬品リスク管理計画指針が発出された.本指針では,ICH の E2E ガイドラインに準拠して安全性検討事項,安全性監視計画を設定し,リスク最小化策を策定することが要求されている.しかし,2014年8月時点で公開されている医薬品リスク管理計画(RMP)の中には,リスクの大きさ,重大性,特性にかかわらず,従来の使用成績調査,特定使用成績調査を安全性検討事項共通の安全性監視活動として計画している事例も存在していると考えられる.
本稿では,日本製薬工業協会医薬品評価委員会データサイエンス部会のタスクフォースが取りまとめた報告書の概要から,エビデンスレベルに基づいた安全性検討事項の設定のための安全性評価,科学的な医薬品安全性監視計画(PVP)の作成について紹介するとともに,RMP「カイゼン」に向けて以下のとおり提言を行う.
1.研究課題を明確にするためには,安全性検討事項が設定された経緯および根拠を十分に吟味する必要がある
2.開発期間を通して安全性検討事項につながるさまざまなデータをどのように収集,分析するか予め検討しておくことが重要である
3.DSUR 作成段階において関係者間で安全性プロファイルを十分に議論しておけば,申請段階における安全性検討事項がより明確となり,個々のリスクや不足情報に対する研究課題を PECO に従い計画し,適切な PVP を計画できる
4.1 回の調査・研究で終わったことにするのではなく,RMP の PDCA サイクルを回すことが重要である
今後,製薬企業の承認申請プロジェクト関連担当者を含め,規制当局,アカデミアが RMP の理解を一層深めることにより,RMP が科学的により適正に管理,実行されることを期待している.
抄録全体を表示