目的:健康保険請求データベースを基にした Pharmacovigilance 用パッケージを使用し,製薬企業におけるファーマコビジランス活動への利用法を考え,実用性,課題および将来の展望について考察する.
研究デザイン:レセプトデータベース研究
方法:株式会社日本医療データセンターの提供する解析パッケージ JDM for Pharmacovigilance を使用し,日本人一般におけるがんの発現割合,抗がん剤の曝露状況,さらに有害事象の同定を目的として特定クラスの抗がん剤投与開始から 2 カ月以内に高頻度で診断される疾患の把握を行った.
結果:保険請求データから推定した日本人におけるがんの発生割合は従来のサーベイによる推定値に近いものであった.また,本データベース中に含まれるがん患者数は発生割合の高いがんで 1 年当たり数千人であった.有害事象の同定を目的とした解析では,肺がん患者において,EGFR-TKI 投与開始から 2 カ月以内に上皮組織の損傷に起因すると考えられる疾患が,プラチナ系抗がん剤使用時に比べ,高頻度で診断されていた.
結論:日本人の保険請求データベースを用いて,疾患の発生割合や,有害事象の可能性のある疾患を推定することは可能であり,企業のファーマコビジランス分野への応用も可能であると結論した.(薬剤疫学 2012;17(2): 145-153)
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