日本がん看護学会誌
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15 巻, 1 号
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原著
  • 永田 智子
    2001 年 15 巻 1 号 p. 5-15
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    造血器疾患は寛解後も長期にわたる治療が必要であり,患者の心理社会的適応への対応は重要である.本研究は,外来通院中の成人造血器腫瘍患者の適応を職業,家庭,社会活動,情緒の4側面から総合的にとらえ,関連する要因を特定することを目的とした.

    都内の5つの病院において,調査期間中に血液内科外来を受診した20~60歳の造血器腫瘍患者112名のうち,研究参加の承諾が得られた者に対して調査を行い,102名から有効回答を得た.質問紙の内容は家族構成や仕事の状況,疾患についての認知的評価,対処方法,心理社会的適応などである.疾患等に関する情報は医師又はカルテから得た.

    全般的には,各変数は適応の各側面に対し,同じ方向で関連していた.すなわち,疾患についての肯定的な評価,仕事の変化が少ないこと,自覚症状が少ないこと,発症からの期間が長いこと,肯定的な対処方法がよい適応と関連していた.一方,職業上適応は入院が短いほど良好であったのに対し,社会活動適応は逆の関連を示した.他にも,年齢や家族構成などは,適応の各側面によって異なる関連性を示した.

    本研究により,心理的適応を多面的にとらえる意義が再確認された.アセスメントにより早期に適応不良のリスクを多側面から予測して,個々の患者に応じた対応を行う必要性,および症状コントロールや疾患に対する肯定的な意味づけを促進するような介入の有用性が示唆された.

  • 温井 由美
    2001 年 15 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は乳房切除術と乳房温存術を受ける患者の術前・術後のストレス・コーピングを明らかにした上で,両術式間のストレス・コーピングの類似点と相違点を明らかにすることを目的とした.

    対象者は外来で病名告知を受け,入院してきた乳房切除術患者8名と乳房温存術患者16名の計24名であり,面接法と参加観察法で得られたデータを分析した.分析の結果,以下の知見か得られた.

    1.術前・術後ストレスを両者で比較した結果,両者ともにがん告知後に『気持を整理することの困難・不安』を体験していた.そして,乳房切除術患者の方には,『親戚・近所』『乳房喪失』の不安が多くみられた.また,乳房温存術患者の方には,放射線などの治療に関する『退院後の治療の不安』術式選択時に相談できないとの『医療者への不満』が多くみられた.

    2.術前・術後のコーピングを両者で比較した結果,乳房切除術患者の方には,乳房を切除することに対して『違う視点から見つめ直す』『あきらめる』『現実から回避する』方略が多くみられた. また,乳房温存術患者の方には,『情報を検索する』『具体的な解決策を考える』『自分を励ます』方略が多くみられた.

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