本稿の目的は、制度論の限界を克服する主体的なスポーツ組織論の理論構成を提示し、その意義を論じることである。
制度論では、スポーツ制度によって行為者の社会的性格が形成される論理が示されているが、そのスポーツ制度を形成・変革する主体がみえ難い。また、社会的性格形成過程における行為者の主体性の発揮を把握する枠組みも不足している。すなわち、スポーツ制度を形成・変革する主体と行為者の主体性を把捉する理論的枠組みの欠如が制度論における限界として捉えられる。
そこで、制度論と主体的社会化論を援用しながら、スポーツ組織をスポーツ制度や行為者の社会的性格を形成・変革する積極的な主体として位置づけるとともに、行為者の主体性を把捉することが可能な主体的なスポーツ組織論の可能性を提示した。
この主体的なスポーツ組織論においては、スポーツ組織と行為者の両者の主体性を把捉することが可能であり、また、マクロな視点とミクロな視点を包摂するメゾ的視点を提供する意義がある。
主体的なスポーツ組織論では、愛好者の組織化が求められるこれからのスポーツ組織において、特に愛好者が主体性を発揮して積極的にスポーツ組織に働きかけると同時に、スポーツ組織も、登録者に限らず未登録者の要求を積極的に制度形成・改革に反映していく姿勢が求められる。
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