スポーツ社会学研究
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29 巻, 2 号
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特集
  • 海老島 均
    2021 年 29 巻 2 号 p. 3-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー
  • マルカム ドミニック, 大平 章
    2021 年 29 巻 2 号 p. 7-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー
     この論文は「フィギュレーション理論」によるスポーツの社会学的分析の発展を概説するものである。それはノルベルト・エリアスとエリック・ダニングの業績を回顧することから始まる。本論文は、彼らの初期の研究がフィギュレーション社会学の中心概念の多く―フィギュレーションの概念、「過程」の重要性、巨視・微視的レベルでの社会発展が基本的に相互に依存しているという認識、および具体性をともなった社会学的分析を試みることの意味―をいかに確立し、かつ具体的に示したか、さらにまた、それがエリアスの研究とスポーツ社会学の発展の両方にどれだけ大きな影響を与えたかを説明する。それから本論文は、「フィギュレーション理論」によるスポーツ社会学の発展を探究し、その研究上、教育学上の発展が、1980年代、90年代を通じていかにサブ科目に影響を与え続けたかを説明する。3番目に本論文は、理論的中核を成す原理がわたし自身の研究において、とりわけ暴力の分析、クリケット関連での「英国性」と国家的アイデンティティの分析において―もっと最近では、スポーツと健康と医療との間で増大する「共働作業」を理解する試みにおいて―いかに応用されかつ、発展させられてきたかを記述する。この分野の、近年における「最先端の」研究誌が、エリアスとダニング、および両者が共同で発展させた「フィギュレーション理論」によるスポーツ研究の重要性や意義をいかに継続的に証明しているかを指摘することによって、本論文は締めくくられる。
  • ―西カナダの例―
    ヤング ケヴィン, 大平 道広
    2021 年 29 巻 2 号 p. 21-38
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー
     スポーツ社会学において暴力を研究するとなると、エリック・ダニングとノルベルト・エリアス、さらに敷衍すれば、フィギュレーション社会学(形態・関係構造社会学)に大いなる感謝の意をささげなければならないとういうことに、ほとんどの学者は賛同するであろう。このことは確かにカナダのスポーツ社会学について言えば、当たっている。というのも、そこでは少なくとも3世代にもわたって、ダニング、および彼の恩師であるノルベルト・エリアスの思想が基盤となり、かつ常に効力を示したことが判明したからである。本稿―それは2021年の春に開催された日本スポーツ社会学会での発表の産物である―の目的は、解釈上の手段としてのフィギュレーション社会学の有望性を証明し、自分自身の「スポーツ関連の暴力」に関する調査から得られる、1つの具体的な事例研究を提示することである。チャックワゴン・レース(幌馬車レース)を事例研究として検証し、さらには、エリアスやダニングやその他の研究者のフィギュレーション社会学の用語によって、馬が危険度の高い状態にさらされてしまうことを説明しながら、本稿は自称「地上最大の屋外ショー」―あの世界的に有名なカルガリー・スタンピード(ロデオ大会)―の「文明化」への変化する見解を考察するものである。
  • 大平 章
    2021 年 29 巻 2 号 p. 39-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は、2019年2月10日に82歳で亡くなられたスポーツ社会学者エリック・ダニング(レスター大学名誉教授)の業績を辿りながら、彼がいかに現代のスポーツ社会学の発展に寄与したかを回顧することである。ここでまず強調されているのは、ダニングが、彼の理論的指導者であったノルベルト・エリアスとともに、エリアスの社会学的方法論の中核ともいうべき「フィギュレーション理論」を応用しながら、スポーツ研究の新局面を切り開いたことである。さらに注目すべき点は、両者が、スポーツ社会学の新たな方法論を追求する際に、スポーツ研究を従来の体育学の一分野として扱うのではなく、スポーツの諸相を歴史・社会学的な観点から、特に「過程」的変化を重視しながら分析したことである。2番目に重要な問題は、ダニング自身が、サッカー・フーリガニズムに代表されるスポーツ関連の、観客による暴力現象を、英国固有の歴史と社会の相互依存的な問題として位置づけ、いわゆる「レスター学派」の他の研究者との共同作業を通じて、数々の著書を発表し、いずれも有益な成果を上げたことである。3番目に本稿では、スポーツ社会学におけるダニングの貢献を再認識するために、彼がそれぞれN.エリアスとK.シアードと共同で上梓した『スポーツと文明化』と『野蛮人・紳士・選手』、および彼の単著である『問題としてのスポーツ』の三つが取り上げられ、その内容や特徴が概説されている。最後に、「フィギュレーション理論」の、日本の研究者への影響が、具体的な著作(論文集や教材など)を例示しながら論じられ、かつスポーツ研究において、とりわけ日本と他のアジア諸国との関係を追求するうえで、それがこれからも有益な指針になりうることが示唆されている。
原著論文
  • ―共的セクターとしての非営利法人の機能―
    釜崎 太
    2021 年 29 巻 2 号 p. 47-60
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/10/15
    [早期公開] 公開日: 2021/08/30
    ジャーナル フリー
     現代においては、国や自治体だけではなく、企業や地域住民にも公的な課題への貢献が期待されている。ドイツでは、非営利法人が共的セクターとなって、自治体、企業、地域住民と連携し、公的な課題に取り組む事例が見られる。
     本研究が対象とする非営利法人は、ドイツのVerein(フェアアイン)である。Vereinは、法体系からは「社団」と訳される。しかし、スポーツクラブを運営するVereinが公的優遇を受ける登記法人(eingetragener Verein)であり、特にブンデスリーガの関係者にとっては、市場経済に対抗しつつ公益性を担保する自治的集団として意識されていることを重視する立場から、本研究では「非営利法人」と規定している。
     ドイツにおいて非営利法人が運営するスポーツクラブが急増する1960年代以降、非営利法人をひとつのセクターとしながら数多くの社会運動が展開され、対抗文化圏が形成されていく。特に空き屋占拠運動で知られるアウトノーメは、FCザンクトパウリを動かし、反商業主義と反人種主義の運動を象徴するプロサッカークラブ(を一部門とする総合型地域スポーツクラブ)を生み出す。その一方で、90年代後半、プロサッカークラブの企業化が認められたブンデスリーガにおいては、非営利法人の議決権を保護する「50+1ルール」が定められ、プロサッカークラブ(企業)によるファンの獲得が、総合型地域スポーツクラブ(非営利法人)の資金を生み出す仕組みがつくられると同時に、非営利法人を軸とする市民社会のもとで、多様な地域課題への取り組みが実現されてきた。
     本研究では、SVヴェルダー・ブレーメン非営利法人理事長、1FC. ケルン合資会社社長と顧問弁護士、FCザンクトパウリ非営利法人理事への聞き取り調査をもとに、ブンデスリーガに見られる市民社会の特徴と非営利法人の機能を明らかにした。
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