自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
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巻頭言
特集
  • Carlos Rodrigo Garibay Rubio, Genta Nakano , Astrid Renneé Peralta G ...
    2025 年44 巻2 号 p. 125-128
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/11/19
    ジャーナル フリー
    Mexico's geographic proximity to the United States has made it one of the main routes for mixed migrant flows. Against this backdrop, in October 2018, a public call was made through social networks of individuals in Central America to migrate openly to the United States, triggering a massive caravan. Due to its size and the needs of its members, the caravan triggered a complex response in Mexico, highlighting significant challenges in disaster management and humanitarian response. This study aimed to retrospectively identify critical disaster prevention and management themes in order to address complex mass migration situations. Interviews were conducted with key decision-makers belonging to international, governmental, and civil society organizations involved in the caravan response. The results highlight, for example, the critical role of cultural sensitivity in a transparent and holistic governmental response in which the agendas of different groups of migrants as well as the well-being of local communities are considered, thereby promoting understanding between the two early on.
  • Carlos Rodrigo Garibay Rubio, Genta Nakano, Astrid Renneé Peralta G ...
    2025 年44 巻2 号 p. 139-150
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/11/19
    ジャーナル フリー
    メキシコは地理的にアメリカに隣接するため,様々な背景を持つ移民がアメリカを目指す際 の主要ルートのひとつとなっている。このような背景から,2018年10月,中米の人々がソー シャル・ネットワークを通じてアメリカへの移住を呼びかけ,大規模な移民キャラバンが形成 された。その規模と移民のニーズから,移民キャラバンはメキシコで複雑な対応を引き起こし, 災害管理と人道的対応における重大な課題を浮き彫りにした。本研究の目的は,複雑な大量移 民の状況に対処するための,重要な災害予防と管理のテーマを回顧的に特定することである。 本研究では,移民キャラバン対応に関与した国際機関,政府機関,市民社会組織に属する主要 な意思決定者にインタビューを実施した。その結果,例えば,透明性のある総合的な政府対応 は,文化的背景にも配慮することが重要であることが浮き彫りとなった。そして,移民が持つ 様々な背景とともに,移民が通過する地域社会の福祉も考慮され,移民と地域社会双方の理解 の促進が重要であることを指摘した。 和訳:中野元太(京都大学防災研究所准教授)
  • 白石 レイ, 幣 亮汰, 青木 悠真
    2025 年44 巻2 号 p. 151-160
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/11/19
    ジャーナル フリー
     本稿は,主に予測可能な洪水に対する発災前の事前移転移転に関して,移転元地の都市や地 域の変容というよりも,災害リスクの解消を含む,移転当事者個人やコミュニティとしての生 活の変容という視点から,参加型で集団で行う移転(さらにはそれらをマスな政策で実施する こと)の包括的な価値について,一部日本と比較しながらフィリピン・メトロマニラの政策の 仕組みやその結果について考察するものである。行政ではなく移転者集団である既存の地域コ ミュニティが事業主体となり,移転地選定や住宅デザインを行うことで,災害リスクがより低 減され,ソーシャル・キャピタルは保持され,都市施設や交通へのアクセス性は向上し,住空 間は多様化し,同時に進行するプロジェクトどうしで人々は学び合う。移転を希望する多くの 人々が,主体的・集団的に時間をかけながら移転計画を実行できるトップダウンの政策として のボトムアップの仕組みの構築が求められている。
  • Robert Olshansky
    2025 年44 巻2 号 p. 161-166
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/11/19
    ジャーナル フリー
    Disasters temporarily accelerate the typical processes of human migration driven by economic and environmental factors. These effects are particularly pronounced in the 21st century due to population growth in hazard-prone areas. Society has increasingly been trying to minimize the impact of these dislocations by intentionally relocating communities found in hazardous areas. Such actions will become more necessary because of climate change. But relocation is contentious, often unpopular, and rife with questions of equity and justice. This essay briefly presents a framework that summarizes the key concerns involved in initiating and managing such relocations: natural science, risk decision-making, relationship to place, the details of the relocation process, and the historical, social, and political context. It concludes with thoughts on managing climate change in California regarding wildfires and sea level rise.
  • オルシャンスキー ロバート
    2025 年44 巻2 号 p. 167-171
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/11/19
    ジャーナル フリー
    災害は,経済的および環境的要因によって引き起こされる典型的な人間の移動プロセスを一 時的に加速させ,その影響は,災害多発地域における人口増加により,21世紀において特に顕 著であると言える。社会は,災害リスクの高いコミュニティを意図的に移転させることで,こ うした移動の影響を最小限に抑えようと努めてきたが,気候変動によってますます移転の必要 性が議論されうると言える。しかしながら,移転は議論を巻き起こし,しばしば不協和を生じ, 公平性と正義に関する疑問がつきまとう。本稿では,こうした移転とそのマネジメントに関わ る主要な懸念点,すなわち自然科学,リスクに関する意思決定,場所との関係性,移転プロセ スの詳細,そして歴史的,社会的,政治的背景を要約した枠組みを簡潔に提示することを目的 とする。最後に,米国カリフォルニア州における山火事と海面上昇に関する気候変動への対応 について考察したい。和訳:大津山堅介(東京大学先端科学技術研究センター特任講師)
報告
  • 牛山 素行, 本間 基寛, 向井 利明
    2025 年44 巻2 号 p. 173-209
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/11/19
    ジャーナル フリー
    2023年に洪水または土砂災害により死者・行方不明者が発生した20箇所を対象とし,被害が 発生した時間帯に発表されていた防災気象情報を調査した。被害が発生した時間帯の洪水また は土砂災害の危険度(キキクル)は,「危険」(警戒レベル4 相当)が13箇所,「警戒」(警戒レベ ル3 相当)が2 箇所,「注意」(警戒レベル2 相当)が2 箇所だった。顕著な大雨に関する気象情 報は,20箇所のうち16箇所で発表されていた。記録的短時間大雨情報は20箇所のうち2 箇所で 発表されていた。被害が発生した場所の災害リスク情報についても調査した。土砂による被害 は7 箇所で,すべてが土砂災害警戒区域の範囲内だった。洪水による被害は13箇所で,そのう ち5 箇所が浸水想定区域の範囲内,12箇所は洪水の可能性がある低地であった。
  • 加藤 謙介
    2025 年44 巻2 号 p. 211-230
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,令和4年台風14号での,宮崎県延岡市の指定緊急避難場所における人とペット の避難受け入れ(同伴避難)対応の意義と課題について,避難場所に配置された行政職員へのイ ンタビュー調査を基に検討を行った。延岡市では,市内75カ所の指定緊急避難場所のうち55か 所で,施設内に,避難者の居室とは別に「ペット避難スペース」が設けられていた。台風14号通 過前後の3日間で,最大1,088世帯(2,148名)が67か所の避難場所に避難し,うち9か所で,20 世帯(49名)がペット24頭(犬20・猫3 ・小鳥1 )と共に避難した。本事例では,避難場所の環 境整備,飼い主の自助,行政-市民の適切な「対話」「連携」によって,短期間・小規模だが『同 伴避難』が実現した。特に,飼い主-ペットの適切な避難行動の促進が示唆された一方,職員 から長期的な災害対応等に関する様々な課題が指摘された。今後も,「被災」の経験から得られ た知見を基に,災害時に人もペットも誰もが助かるインクルーシブな「人とペットの災害対策」 を進める必要があると言えるだろう。
  • 藤本 一雄, 安藤 淸, 関 信夫
    2025 年44 巻2 号 p. 231-243
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,過去約30年間に5回の浸水被害を経験している千葉県茂原市の住民を対象とし て水害対策に関するアンケート調査を行った。240名からの回答を用いて, 4 種類の水害対策 (避難行動,浸水対策,保険加入,転居意向)と浸水ハザード(浸水予想など)・世帯属性(住居 形態など)との関係について分析した。その結果,一戸建ての住民は,現住所に住み続け,垂 直避難を選択する傾向にあり,集合住宅の住民は,転居を希望しており,水平避難を選択する 傾向にあることを確認した。これらの結果を踏まえて,今後想定される大雨時の水害対策に関 する課題を住居形態別に指摘した。
論文
  • 多屋 友布里, 関根 正人
    2025 年44 巻2 号 p. 245-258
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/11/19
    ジャーナル フリー
    2024年8月21日に東京23区内で発生した降雨は,マンホールからの雨水の逆流や地下鉄駅の 浸水が発生し,被害状況を撮影した動画や画像がSNS 上に多く投稿された。SNS 上のデータや 防犯カメラの映像などを用いた浸水深の推定は既に研究手法として取り入れられつつあるが, 複雑な地形や排水システムを有する都市部で発生する局所的な浸水を対象としたものはあまり 多くはない。そこで,本研究では2024年8月21日の降雨を対象として,SNS 上に投稿された動 画や画像から読み取れる浸水深の判読値を求め,これと都市浸水予測手法S-uiPS の計算結果の 比較を行った。これにより,SNS から収集した画像・動画データは,計算値と良好な対応関係 にあることを確認した。また,本研究で対象とした都市部における道路上の浸水は,道路の横 断勾配や縁石などによってつくられる窪地に生じる局所的な現象であり,同一の交差点内で あっても深さにばらつきがある場合があることが明らかになった。
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