日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
選択された号の論文の344件中301~344を表示しています
放射線治療生物学(感受性・高LET・防護剤・増感剤・ハイパーサーミア・診断)
  • 于 冬, 野口 美穂, 関根 絵美子, 二宮 康晴, 藤森 亮, 三浦 雅彦, 岡安 隆一
    セッションID: P2-52
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]Heat-shock protein 90 (Hsp90) は ubiquitous 分子シャペロンタンパク質で、様々なタンパク質の安定、活性化や細胞周期チェックポイント、シグナル伝達機構、転写の調節と関連している。我々はプラスミドによりIGF-IRを過剰発現させたHeLa細胞(HeLa-IGF-IR)を用いて、Hsp90 阻害剤(17AAG)による放射線増感効果を検討した。
    [方法] Hela 及びHeLa-IGF-IR 細胞を150nMの17-AAGで24時間前処理し放射線感受性をコロニー形成法によって評価した。またMTT法、SLGA(senescence-like growth arrest)、さらにDNA修復酵素に対し免疫蛍光法も行い、放射線感受性を調べた。
    [結果と考察] HeLa-IGF-IR細胞はHeLa細胞と比較し有意に放射線抵抗性を示したが、150nMの17-AAGを加えることによって、HeLa-IGF-IR細胞の放射線抵抗性は失われた。HeLa-IGF-IR細胞では17-AAGを加えることで、放射線照射後のPARP発現量が減少、またアポトーシスも増加することも確認した。MTT assayにより、17-AAG付加後、HeLa-IGF-IR細胞はHeLa細胞より成長が抑制され、spheroid 形成も抑制されるた。17-AAGにより、HeLa-IGF-IR細胞は放射線照射後のγ-H2AXと p-ATMのfoci数がHeLa細胞より増加した。IGF-IRを過剰発現しているような腫瘍では、IGF-IRタンパクを安定化するHsp90 阻害剤を用いることにより、下流のPI3-K, MAPKによる生存シグナル伝達経路を阻害し、アポトーシスとSLGAが増加することで、有効な放射線増感につながる可能性があり、臨床応用が期待される。
  • 野口 実穂, 于 冬, 平山 亮一, 二宮 康晴, 関根 絵美子, 窪田 宜男, 安藤 興一, 岡安 隆一
    セッションID: P2-53
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Hsp90阻害剤17AAGは単独でも抗腫瘍効果を持ち、放射線や他の化学療法剤と組み合わせることでさらに高い抗腫瘍効果が報告されている薬剤である。17AAGによる放射線増感のメカニズムとして細胞増殖抑制やアポトーシス増強等が示されているが、さらに別なメカニズムが存在する可能性がある。そこで我々は放射線による細胞死の主原因であるDSBに焦点を当て、17AAGがDSB修復機構に影響を与えるかどうかを検討した。
    【方法】ヒト前立腺癌細胞株DU145、ヒト肺扁平上皮癌細胞株SQ-5に100nM 17AAGを37℃、24時間処理した。DSBの検出はconstant field gel electrophoresisにより行った。X線20Gy照射後、37℃で6時間まで修復させた。さらにDSB修復に関わるタンパク質(DNA-PKcs、Ku80、Ku70、Rad51、Rad52)のwestern blottingを行った。また免疫染色法によりX線2Gy照射後のRad51 focus形成を調べた。
    【結果および考察】放射線照射後のDSB修復は17AAG処理によりDU145、SQ-5細胞ともに阻害され、DU145細胞では照射後2時間で2.4倍、6時間で3.3倍、SQ-5細胞では2時間で1.7倍、6時間で2.3倍の修復阻害が見られた。また17AAG処理によりHRRに関与するRad51の発現量が17AAGの濃度、投与時間依存的に減少し、さらに放射線照射後のRad51focus形成も阻害され、DU145細胞においてX線単独では照射後2時間でRad51 foci数が最大になったが、17AAG処理群では2時間ではfocusは見られず、focus形成に遅れが見られた。さらにSQ-5細胞においても同様な傾向を得た。今回の結果から17AAGの放射線増感にはRad51のdegradationに起因したhomologous recombination repairの阻害が大きく影響していると考えられる。
  • 萩原 亜紀子, 中山 文明, 浅田 眞弘, 須藤 誠, 鈴木 理, 今村 亨, 明石 真言
    セッションID: P2-55
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    (背景)ヒトfibroblast growth factor (FGF)は現在22種類知られており、血管新生、創傷治癒など多様な生命現象に対する生理的な機能を有することから、種々のFGFが薬剤として臨床応用の段階に至っている。FGF1は、keratinocyte growth factor receptor (KGFR)を含むすべてのFGFRに反応し多くの機能を有する。しかしながら、放射線障害の治療薬として、その有効性に関する報告は少ない。(目的)放射線小腸障害時におけるFGF1の効果及びその投与条件を評価する。(方法)さまざまな投与条件でFGF1のBalb/cマウス腹腔投与を行い、8Gyγ線全身照射後のcrypt regeneration assay(CRA)にて、空腸cryptの再生を評価した。照射後24時間の空腸組織をTunel法で染色し、Apoptosisを評価した。さらに、照射前FGF1投与でLD50/6を算出し、組織学的検討を行った。  (結果) CRAにて、照射後でもFGF1投与によりクリプト再生の著明な改善が認められ、使用した最大量100μgが最も有効だった。FGF1は、cryptのapoptosisを量依存性に抑制した。LD50/6は11.5Gyで、10μg FGF1投与で大きな改善は認められなかったが、組織学的に空腸の障害はFGF1投与群の方が明らかに軽度だった (考察)FGF1が量依存性に、放射線小腸障害の改善に効果を発揮することが示された。LD50/6に大きな改善が認められなかったが、組織学的に空腸組織障害の改善が認められ、高線量被ばくによる多臓器障害も考えられることから、必ずしもFGF1の小腸に対する障害軽減効果を否定するものではないと考えた。さらに多量のFGF1投与の実施、FGF1の効果持続の改良など検討を進めている。
  • 西村 義一, 武田 志乃, 金  煕善
    セッションID: P2-56
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ラクトフェリン(LF)は「牛乳の赤いタンパク質」として、スウェーデンで発見され、ヒトを含む哺乳類の乳、分泌液、成熟好中球の顆粒などに含まれる分子量約8万のタンパク質で、2~3個のシアル酸からなる糖鎖を持っている。LFは血液中の鉄蛋白であるトランスフェリンと同様、Fe3+を二個分子内にキレートする性質がある。先の学会で LF添加飼料で飼育したマウスにX線を全身すると照射後30日目の生存率はLF給餌群で85%、対象群で62%とLF給餌群で放射線抵抗性が観察された。またLFはヒドキシラジカルに対するラジカルスカベンジャーであり、放射線防護剤としての利用が期待できることを示した。一方、放射線照射後、腹腔内投与することで放射線防護効果のある物質が報告されているが、そのメカニズム等、詳細については明らかにされていない。今回はマウスX線全身照射後のLFの放射線防護効果に関する実験を行い、興味深い知見が得られたので報告する。【方法】8週齢のC3H/Heマウス、52匹に6.8Gy のX線を全身照射した後、半数のマウスにはLF4mg/匹を腹腔内投与した。投与後、マウスには完全精製飼料を与え、30日間の生存率を観察した。また、脾臓細胞のアポトーシスなどについても観察を行った。【結果】C3H/Heマウスに6.8Gy全身照射後、LFを腹腔内投与すると、LF投与群ではほとんど死亡せず、照射後30日目の生存率は92%であったのに対し、対照群では50%であった。また、マウスにX線を全身照射後、1, 2 ,4 hr後にLF腹腔内投与すると、脾臓細胞のアポトーシスと骨髄細胞の損傷を抑制した。一方、腹腔内マクロファージュについては有意な変化は認められなかった。
  • 辻 孝, 萩平 貴美, 大西 武雄
    セッションID: P2-57
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    5-Azacytidine(5-Aza-CR)はDNA methyltransferase 阻害剤で、各種癌抑制遺伝子のメチル化を阻害して抗腫瘍活性を示し、一部で臨床応用の試みがなされている。一方、5-Aza-CRはそれ自体細胞毒性を示し、また、p53を介したapoptosis経路を活性化するとの報告もある。ここでは、本薬剤の放射線細胞死への影響をp53との関連で検討した。ヒト肺癌細胞株H1299/neo(p53欠損株)、H1299/wp53(野生型p53導入株)、H1299/mp53(異常p53導入株)いずれに対しても5-Aza-CRはほぼ同等の毒性を示した。5-Aza-CR 100μM 48時間と放射線を併用した場合、H1299/wp53では相乗的な細胞死がみられ、放射線増感効果が認められたが、H1299/neo、H1299/mp53では放射線増感効果はみられなかった。
  • 大原 麻希, 渡邉 経弘, 窪田 宜夫
    セッションID: P2-58
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    ヒトの疫学調査より、chemopreventive agentと呼ばれるしょうが、大豆、チリ、野菜、緑茶、などの飲食物を摂取しているアジアの人々は癌のリスクが低いことが知られている。これらchemopreventive agentの発癌抑制における標的には、癌治療における標的にもなりうるものが多くあると考えられる。 今回、我々は植物フラボノイドのapigeninのヒト腫瘍細胞に対する殺細胞効果、放射線増感効果について検討した。 「材料と方法」  実験にはヒトの肺の扁平上皮癌由来のSQ-5、同じく頭頚部のSQ-20細胞、ヒトの正常線維芽細胞を用いた。Apigeninと放射線の併用効果は照射前16時間に薬剤を投与し、照射後さらに8時間インキュベートした。放射線感受性はコロニー形成法、細胞死はアクリジンオレンジ/エチジウムブロマイドの二重染色により、ネクローシスとアポトーシスを検出した。細胞死にかかわるタンパク質の発現に対する影響はWestern blotによった。 「結果と考察」  Apigenin(40μM)はヒト腫瘍細胞で放射線との併用効果が観察された。一方、ヒト正常線維芽細胞では、放射線増感効果は腫瘍細胞に比べって小さかった。Apigeninの放射線増感効果が最も大きなSQ-5細胞で、放射線増感効果の機構について検討した。その結果、Apigeninと放射線との併用ではアポトーシス細胞が増加すること、放射線照射では抗アポトーシスに働くBcl2の発現の増強が観察されたが、apigeninを併用すると抑制された。またapigeninはサイクリン依存性キナーゼを阻害するWAF1/p21の発現を誘導した。これらの結果より、apigeninはアポトーシス誘導、細胞周期停止により、放射線増感効果を引き起こすと考えられる。 
  • 高橋 賢次, 門前 暁, 阿部 由直, 江口-笠井 清美, 柏倉 幾郎
    セッションID: P2-59
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】造血システムは絶えず血球を産生する再生能の高い系であるため,放射線や抗がん剤などに対し極めて感受性が高く,しばしば血球減少症が誘発される.我々は,X線に対する血小板産生を司る巨核球前駆細胞(colony-forming unit megakaryocyte, CFU-Meg)の感受性やサイトカインの作用について明らかにしてきた.本研究では,新たに重粒子線に対する影響について解析した.【方法】インフォームドコンセントを得た臍帯血から磁気細胞分離システムを用いてヒトCD34+細胞を高度に分離精製した.IMDM培地懸濁細胞浮遊液に対し,LET 50 KeV/μmで炭素線を照射(2 Gy)後,ヒト遺伝子組換サイトカインを用い,plasma clot法によるCFU-Meg生存曲線または液体培養法による細胞数の増加と分化,DNA二重鎖切断のマーカーであるリン酸化H2AX (γ-H2AX)の検出をフローサイトメトリー法で解析した.サイトカインは,スロンボポエチン(TPO), interleukin-3 (IL-3),Flt-3 ligand (FL)及びstem cell factor (SCF)を用いた.【結果・考察】CFU-Megのコロニー形成において,X線で観察されたサイトカインに依存する感受性の変化が重粒子線では認められなかった.しかしながら、巨核球分化はそれぞれのサイトカインコンビネーションに応答し,特にTPOとIL-3による巨核球と血小板産生の増加が見られ,X線照射時の応答と差異がなかった.一方,DNA損傷のマーカーであるγ-H2AXの増加は,重粒子線・X線共に照射群において見られたが,X線ではサイトカイン添加によってその量が増加したのに対し,重粒子線ではサイトカインによる影響がなかった.従って,重粒子線とX線それぞれによるDNA損傷修復に対するサイトカイン応答性の違いが防護効果を左右する可能性が示唆された.
  • 上野 恵美, 吉田 顕, 西村 まゆみ, 島田 義也, 安西 和紀
    セッションID: P2-60
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】放射線の初期反応がラジカル生成を起因としていることから、我々はこれまで、様々な抗酸化活性を有する化合物を検討し、30日生存率で評価した急性の放射線障害に有効な化合物をいくつか見出してきた。ここでは、これらの化合物がX線の晩発影響に有効であるかどうかに興味を持ち、胸腺リンパ腫発生系を用いて検討した。
    【方法】30日生存率で評価したX線による骨髄死に対して有効であった化合物として、ラジカット、POBN、HM-PROXYL、TMG、およびシステアミンの5つの薬物について検討した。C57BL/6NCrjマウス(雌、5週齢)にX線1.6 Gyを1週間おきに4回照射することによる胸腺リンパ腫の発生を調べた。照射前にそれぞれの薬物を、30日生存率で評価する急性障害で有効な投与条件で投与してその効果を調べた。最長で約200日までマウスを観察し、胸腺、脾臓、肝臓、腎臓を秤量するとともに各臓器の組織標本を作製した。
    【結果と考察】X線単独照射群の胸腺リンパ腫の平均発生率は56%であった。一方、各種化合物投与群の胸腺リンパ腫発生率も42?75%であり、照射前の投与で胸腺リンパ腫発生を有意に低下させることはなかった。ただし、HM-PROXYLでは胸腺リンパ腫の発生時期を遅らせる傾向が見られた。生存率曲線からは、5つの薬物のうちシステアミンのみが有意に寿命を延長した。胸腺リンパ腫以外で死亡した個体の生存率曲線を解析すると、システアミンとTMGが有意に寿命延長をおこした。ラジカットとPOBNは、胸腺リンパ腫にもそれ以外の原因による死亡にも影響を与えなかった。これらの結果から、いくつかの抗酸化剤は、胸腺リンパ腫の発生およびそれによる死亡は防御できないが胸腺リンパ腫以外の晩発障害を軽減する作用を有することが示唆された。
  • 林 幸子, 松本 英樹, 畑下 昌範, 塩浦 宏樹
    セッションID: P2-61
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    アドリアマイシン(ADM)及びハイパーサーミアは共に温熱化学増感効果を示す。加温した細胞におけるADMの耐性誘導は臨床の癌治療に困難を帰することが報告されている。我々はChinese hamster V79細胞を用いてin vitroで42℃ハイパーサーミアとADMの同時または連続併用により増感効果が見られることを報告した。即ち42℃とADMの同時併用加温初期1時間で生存率の著しい減少が認められ、その後4時間までの観察で生存率曲線は緩やかになった。V79細胞のstep-up加温(42℃-44℃)においてADMは42℃加温による温熱耐性を抑制しその後の44℃加温の致死効果を増感した。この研究においてwtp53遺伝子及びmutant K-ras遺伝子を有するヒト肺癌A549細胞を用いてADMの温熱増感効果をin vitroで解析した結果、相加的増感効果を示した。更にp53遺伝子をtransformしたmp53を有するA549細胞とwtp53遺伝子を有する親株細胞の温熱増感効果を比較検討した。温熱、ADM単独又は併用処理後のアポトーシスの発現誘導動態を解析した。
  • 島崎 達也, 荒木 正健, 井原 誠, 岡田 誠治, 宮本 英七
    セッションID: P2-62
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    Scid細胞は温熱に対して高感受性を示す。我々は、Scid細胞と温熱に対する感受性が正常であるハイブリッドScid細胞を用いて、H2AXフォーカス指標としたDNA二重鎖切断修復能を解析した。温熱耐性は、44℃、5分で前処理し、その後、37℃でインキュベーションし、再度、任意の時間44℃で処理した。結果として、温熱耐性は統計的に有意な差ではないがScid細胞がハイブリッドScid細胞より小さい傾向を示した。また、DNA二重鎖切断修復能も同様の傾向を示した。このことより温熱耐性とDNA二重鎖切断修復能が関連していることが分かった。
  • 長谷川 武夫, 高橋 徹, 具 然和, 池田 豊, 熊澤 勝美, 暮木 実智弘, 安藤 聡志, 天野 守計, 山本 五郎
    セッションID: P2-63
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    温熱処理は一般的に42.5℃以上の温度で行われるが。我々は42.5℃以下の温度でも免疫能活性と茸(岩出株101:IH,Grifora Gargal:IGG)抽出物による温熱増感のある事を見出した。実験にはEL-4腫瘍を腹腔内に担癌したC3Hマウス(♂、7W)を用い、1週間毎日、150mg/kgのIH又はIGGを経口投与し、42℃、30分の温熱処理を温水槽によって大腿部に加えた。各処理後12時間目にマウスより採血と脾臓摘出を行い、脾臓は軽く磨り潰して白血球を単細胞として取り出した。一方、EL-4及びYAC-1細胞にCr-51を標識たアッセイによって、NK細胞活性を測定した。無処理群の活性を1に規格化すると、温熱単独群は1.75倍、IH投与単独群は1.44倍、IGG投与単独群は2.25倍、腫瘍移植のみは1.11倍、IHと温熱併用群は3.80倍、IGGと温熱併用群は4.03倍のNK細胞活性が観測された。固形腫瘍担癌マウスの抗腫瘍効果では両薬剤は温熱効果を増強した。以上の結果はIH,IGGに毒性が無い事から、温熱治療の補助剤として有用であり、治療中の患者のQOLを高める可能性が強く、臨床での応用が期待できる。
  • 渡邊 真樹子, 上原 知也, 秋澤 宏行, 古澤 佳也, 安藤 興一, 入江 俊章, 川井 恵一, 荒野 泰
    セッションID: P2-64
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    細胞機能に関する情報を与える核医学診断は形態学的診断と比較して早期に癌の治療効果判定を可能とする.実際,S-[methyl-11C]methionine (Met)を用いた核医学診断は重粒子線による癌の治療効果判定に汎用されている.しかし,炭素-11は半減期20分と短く,汎用性に乏しい.Metの集積には癌細胞内のエネルギー依存的なメチル基転位反応が関与するため,Metと同様の挙動を示す18Fあるいは123I標識薬剤の開発は困難である.そこで本研究では,癌治療効果の早期判定の指標となる新たな細胞機能を探索する目的で能動輸送を行うアミノ酸輸送システムAについて検討した. アミノ酸輸送システムAの特異的な基質である14C-α-methylamino isobuthyric acid (MeAIB)を用いて,3 Gyの炭素線照射前後における腫瘍細胞への取り込み変化と細胞内総ATP量との関連をMetと比較した.さらに,炭素線照射前後の腫瘍細胞におけるMeAIBの膜輸送経路を検討した.炭素線照射後,腫瘍細胞数の減少よりも早期にMeAIBとMetの腫瘍細胞への取り込みが有意に減少し,細胞内総ATP量に変化は観られなかった.アミノ酸輸送システムLの阻害剤はMeAIBの取り込みに影響を与えず,炭素線照射後におけるMeAIBの取り込みの減少に伴いアミノ酸輸送システムAを介するMeAIBの取り込みが減少した.以上の結果は,細胞数変化また細胞内総ATP量変化よりも鋭敏にアミノ酸輸送システムA によるMeAIBの取り込みが減少したことを示し,アミノ酸輸送システムAの機能を反映する放射性薬剤は癌の治療効果の早期判定に有用であることを示唆する.
  • 佐藤 裕一, 山林 尚道, 中村 尚司
    セッションID: P2-65
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】核医学で用いられる内部被ばく線量計算法(MIRD法)では、β線エネルギーは、線源となる臓器内で完全に吸収されると仮定している。しかし、RI内用療法の基礎試験で用いられるマウスの臓器は、高エネルギー放出核種90Yの飛程と比べ小さい。そのため、線源臓器を透過したβ線エネルギーが、その隣接した臓器の線量を増大させてしまうことが知られている。マウスの臓器線量を正確に推定するためには、CTスキャンから得られるボクセルファントムのような幾何学的にリアリスティックな線量評価モデルが必要とされ、また、その際に、モンテカルロ計算コードを用い小さな領域内のβ粒子エネルギー吸収をシミュレーションすることが重要になってくる。 そこで、我々は、そのモンテカルロ計算コード適用の妥当性を確認するための検討を行った。
    【方法】単純な小型物理ファントム(Tough-Water; 30mm x 30mm x 70mm)中に、線源となる90YCl3溶液を入れた2個のカプセル(9.6MBq, 1.1MBq)と小型ガラス線量計を埋め込み、ファントム内の吸収線量を測定した。また、同じジオメトリのEGS5用ユーザーコードを作成して、β粒子輸送をシミュレーションし、解析した。
    【結果】小型物理ファントム内の小型ガラス線量計による実測値との比較から、我々が作成したEGS5用ユーザーコードにより、小物理ファントム内のβ粒子エネルギーの吸収過程を十分に推定することがわかった。
被ばく影響(原爆影響・胎内被ばく・被ばく事故・その他)
  • 坂田 律, 清水 由紀子, 西 信雄, 杉山 裕美, 笠置 文善, 森脇 宏子, 林 美希子, 紺田 真微, 早田 みどり, 陶山 昭彦, ...
    セッションID: P2-66
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】放射線の卵巣への早期影響については種々の報告がなされている。原爆被爆者において、澤田は遠距離被爆者に比べ近距離被爆者に被爆直後閉経者が多数みとめられたこと、その平均閉経年齢が対照群に比べ、殊に急性放射線症状有症状群で有意に若い傾向が見られたことを報告しているが、急性放射線症状という重篤な全身症状が閉経年齢の低下へ与える影響を無視できないと結んでいる。そこで、被曝後数十年を経てからの閉経においても、この様な被曝線量増加に伴う閉経年齢の低下が見られるかを放射線影響研究所寿命調査対象者について検討した。【方法】当研究所では、追跡調査を行っている寿命調査集団女性を対象とした郵便調査を現在までに1969年、1978年、1991年の3回行っている。それぞれの調査に初潮年齢、出産歴、閉経年齢等が質問項目として含まれており、被曝線量情報が得られている対象者のうち約18,000人がいずれかの調査で閉経年齢を回答している。被爆時に10歳であった者も1991年調査時には56歳に達しており、被爆時に初潮を迎えていた対象者は、そのほとんどが閉経を迎えていると考えられる。被曝時に既に初潮を迎えていた対象者と、初潮前であった対象者では、放射線被曝と閉経年齢との関連が異なると考えられる為、解析は、初潮後被曝群と初潮前被曝群の2群に分け、閉経年齢に関連すると考えられる因子、出生コホート、出産経験の有無等を考慮して行った。【結果】初潮後被曝群において、被曝線量の増加に伴い、閉経年齢が有意に早くなる関連が認められた。初潮前被曝群においても、初潮後被曝群と同様に閉経年齢が早まる関連が見られたが、その差は有意ではなかった。これは初潮前被曝群においては、閉経年齢が得られている対象者が少なく、被曝線量が1.5Gy以上の対象者が8名と少なかった為とも考えられる。
  • 横田 賢一, 三根 眞理子, 柴田 義貞
    セッションID: P2-67
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】被爆者の急性症状に関する情報は二度と得られない貴重な情報である。しかし、被爆者自身の申告によるものであるため情報の正確さが問題となる場合がある。被爆直後の1945年9月から1946年に行われた日米合同調査団による調査結果と1960年から1965年の被爆者調査の結果との一致の程度を調べることにより急性症状に関する情報の確かさを検討することを目的とした。
    【対象と方法】被爆直後の日米合同調査団による長崎の調査対象 6,621人のうち、性別、調査時年齢、被爆場所の記載があった 4,798人と1960年から1965年に被爆者手帳を取得し急性症状の情報があった16,403人とを照合し、同定できた 627人(男350人, 女277人)を対象とした。被爆直後の調査結果(調査A)と被爆後15年以降の調査結果(調査B)について、調査Aで症状ありと回答した人のうち、調査Bでも症状ありと回答した人の割合(症状ありの一致割合)と調査Aで症状なしと回答した人のうち、調査Bでも症状なしと回答した人の割合(症状なしの一致割合)を調べた。また、症状のうち脱毛については症状の程度を考慮した場合についても調べた。
    【結果と考察】調査Aと調査Bでの急性症状の有症割合はそれぞれ、下痢が35%と32%、嘔吐が28%と20%、発熱が22%と30%、口内炎が20%と13%、脱毛が14%と23%、歯茎血が12%と18%、皮下出血が12%と16%、鼻出血が3%と9%であった。各症状について症状ありの一致割合が最も高かったのは脱毛(74%)であった。逆に症状なしの一致割合が高かったのは口内炎(93%)、皮下出血(91%)、鼻出血(92%)であった。また、脱毛の程度が頭髪の半分以下のものを症状なしとした場合は症状ありの一致割合は50%、症状なしの一致割合は92%であった。
  • 甲斐 倫明, 伴 信彦
    セッションID: P2-68
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
     現行の放射線リスク評価は、原爆被ばく生存者の疫学データの統計的解析から得られている。疫学データから得られた線量反応関係を利用して低線量に外挿することの妥当性については議論の焦点となっている。生物学的な発がんの仕組みを想定して、放射線がどのような働きをしているかについて検討することで、生物的な議論を取り込んだリスク評価を行うことが望まれる。最近、急性リンパ性白血病(ALL)に関係した特定の染色体異常(TEL/AML1)が健常者(キャリア)においても1%の頻度で存在していることが明らかになってきた。本研究では、幹細胞の細胞動態と放射線の作用に注目し、白血病に注目した発がん数理モデルについて検討した。血液幹細胞を多段階モデルを基本として表現し、それぞれのステージで細胞死、分化、増殖を考慮した数理モデルを作成する。それぞれの細胞数の動態を受精時の1個の細胞から考慮して、年齢による変化をシミュレートする。受精から出生までは指数的に幹細胞数は増殖し、出生直後の一定期間は、非対称細胞分裂によって幹細胞数は一定を保ち、その後、あるレベルに収束する。小児期の自然発生ALLの年齢発生率は3歳をピークとする傾向を示すが、この傾向を良くモデルは表現できる。白血病発症の起源となる染色体異常をもった細胞は放射線被ばく以前にすでに発生して、この細胞に対して放射線が行う作用として、1)白血病化するための次のステージへの突然変異を起こす、2)幹細胞の細胞動態に変化をもたらす、の二つの可能性を考えたときに、原爆データの発症パターンを説明するには後者であることが推察された。放射線が細胞増殖を10倍に増加させることで、1%のキャリアのリスクと99%のノンキャリアのリスク(ゼロ)の平均値が原爆被ばく生存者の観察値と一致した。モデル解析は、放射線が細胞動態に影響することでリスクをもたらすことを示唆した。
  • 三根 真理子, 横田 賢一, 太田 保之, 柴田 義貞
    セッションID: P2-69
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     原爆被爆者の口述記録をテキスト型データ解析で分析し、健康と被爆の関連を考えるとした群の特徴を調べることを目的とした。
    【対象と方法】
     長崎市は長崎市在住の原爆被爆者1,237人を対象に、被爆時の状況や被爆体験に関する面接聞き取り調査を1997年に行なった。同調査から得られた口述記録をテキスト型データ解析の方法を用いて分析した。解析対象は1,237人のうち、性、年齢、GHQ-30、被爆距離の項目がすべて判明している928人とした。被爆体験に関する聞き取りの中で「健康状態が悪い時、被爆との関係を考えますか」という問いに「はい」と回答した者(考える群)と「いいえ」と回答した者(考えない群)との証言の特徴を検討した。「はい」と回答した者は477人、「いいえ」と回答した者は308人であった。
    【結果】
    考える群と考えない群の証言の長さの平均は245字(6~2891)と154字(6~2861)であり、考える群の方が長く話す傾向がみられた。有意となるキーワードは考える群では身体、貧血、骨などの身体的状況や肝臓、甲状腺、手術などの疾病に関するものが上位となった。考えない群では身体的状況に関するキーワードは上位にはならなかった。特に被爆時年齢19歳以下において考える群の特徴が目立った。
  • 田中 薫, 王 冰, 村上 正弘, 江口 清美, 野島 久美恵, 尚 奕, 藤田 和子, コフィニ エルヴェ, 早田 勇
    セッションID: P2-70
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    胎齢15日目でのWistar ラット雄性胎児の重粒子線での胎内被ばくの影響を、0.1 Gy から2.0 Gy の線量範囲で、胎児生殖腺、出生後の精巣の発育、生殖力について調べた。比較としては、200 kVp のX 線を使った。2.0Gyでの離乳前の子供の死亡率は、ネオン線、炭素線、X線でそれぞれ、100%、18%、12%となった。ネオン線では0.1Gy程度の低い線量でも、離乳前の子供の死亡率や睾丸重量、体重に対する睾丸の重量の割合に有意な変化が見られた。炭素線やX線では、照射線量が0.5Gy以上になると、一般的に目立った効果を引き起こした。0.5Gy以上の照射は、線量依存的に生殖母細胞のアポトーシスを誘導し、出生前死亡を増加させ、睾丸の下降をおくらせ、睾丸重量を軽くし、体重に対する睾丸重量の割合を変化させ、精細管の奇形を増加させた。 1.0 Gyあるいは 1.5 Gyの照射を胎児期に受けると、雄の場合、 非照射の雌との交尾の成功率に顕著な減少が見られた。一方、胎児期に0.5Gy以上照射を受けた雄と非照射の雌との間の子供に、出生前死亡と離乳前の死亡率の有意な増加が見られた。これらのことは、妊娠15日目での胎児への照射が、雄性ラット胎児の発育や生後の精巣の成熟や生殖力に対して、広範囲にわたって著しく有害な影響を引き起こすことを示している。そしてその影響は、線量とLETに関係していた。
  • 豊田 新, Tieliewuhan Eldana, Zhumadilov Kassym, 白石 久二雄, 宮澤 忠蔵, 田中 憲一, 遠藤 ...
    セッションID: P2-71
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
     事故放射線により歯のエナメル中に生成したラジカルをESR(電子スピン共鳴)によって検出し、個人の被曝線量を求めることができる。この方法は、歯のエナメルを構成するヒドロキシアパタイトが感度の高い線量計素子として利用できることに基づいている。一方、同じく歯を構成する象牙質は、ヒドロキシアパタイトを含むものの、有機物の含有量が高く、ESRに対する感度が低いため用いられてこなかった。しかし、最近になって、象牙質を用いても線量計測を行うことができ、この場合にエナメルと象牙質とでガンマ線と中性子に対する感度が異なっていることを利用すれば、両方を測定することによって、ガンマ線と中性子による被曝線量をそれぞれ求められる可能性が示された1
     今回、JCO核燃料加工工場において発生した臨界事故によって被曝し、犠牲となった作業者の歯のエナメル及び象牙質をESRによって測定し、ガンマ線および中性子線による被曝線量を求める試みを行った。歯のエナメルと象牙質をダイヤモンドカッターを用いて機械的に分離し、1mm程度以下の粒に砕き、ESR測定装置、日本電子製FA-100を用いて測定した。コンピュータプログラム"New ER"2 を用いて、被曝によって生成される信号の強度を得た。
     エナメルの測定から求められたガンマ線等価線量は、11-13 Gy と以前の報告3とほぼ矛盾しない結果が得られた。しかし、象牙質からの線量は、11-30 Gy とばらつき、エナメルと象牙質との線量の差から中性子の線量を区別できる精度での結果は得られなかった。
    1.F. Trompier et al. (in press) Radiat. Protec. Dosim.
    2.A. Ivannikov et al. (2001) Health Phys., 81, 124-137.
    3.K. Shiraishi et al. (2002) Jour. Raidat. Res., 43, 331-335.
  • 吉本 泰彦
    セッションID: P2-72
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本の原発は北海道から九州の12の道県に分布する。営業運転開始年が1966年で最も早い原発があった茨城県のがん死亡率の地理的パターンを主に解析する。【資料】市区町村別1972-97年がん死亡率データ。全リンパ・造血組織、消化器系、及び非消化器系別に解析。【方法】全国死亡率を基準にした標準化死亡比SMRを、県、二次医療圏、市町村で期間別に計算し、最後の5年間はその経験的ベイズ推定値EBSMR(丹後、今井)も求めた。対照地区と比べた原発所在地区の営業運転開始年以降に共通する過剰相対リスク(ERR)のポアソン回帰モデル層別調整推定値も全国と茨城県で求めて比較。最小潜伏期の仮定は全リンパ・造血組織2年、その他5年。【結果】茨城県は1997年末当時6つの二次医療圏、85市町村の構成。同県の1993-97年のSMRは全リンパ・造血組織で0.91、消化器系で1.00、及び非消化器系で0.93。千葉県隣接2つの二次医療圏の一部の市町村で消化器系のEBSMRが1.1より高いが、他は1.0程度かより低い。茨城県の成人T細胞白血病(ATL)死亡数は全白血病の3%程度。全国原発所在地区のERRは見かけ上のリスクの増減を示した。50歳以上の固形がんの減少と女性、特に75歳以上の全リンパ・造血組織のがんの増加。これらの交絡は年齢別がん死亡率と高齢者がん死亡数の経年変化が原因であろう。75歳以上のがん死亡数の割合は近年増加し、リンパ・造血組織と消化器系で男より女で大きい。ATLの誤診の影響を受ける白血病・悪性リンパ腫に比べて、全リンパ・造血組織の全国6地方ブロック別SMRの経年変動は相対的に小さい。また、選ばれた対照地区或いは特定の原発所在地区の死亡率の短期的変動、例えば、茨城県原発所在地区の1983-87年の非消化器系固形がんの低い死亡率もERRの推定に影響を与えていた。
  • 工藤 幸清, 阿部 由直, 胡 東良, 鬼島 宏, 中根 明夫
    セッションID: P2-73
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】放射線による腸管障害が発生した場合、現在の医療では補液管理を中心とした対症療法が主な治療法となっている。そこで放射線腸管障害による腸死を防護することを目的とし、マウスを対象に放射線局所照射後の腸管部分へマウス胚性幹細胞 (embryonic stem cell: ES 細胞) の移植実験を試み、ES細胞の生着、分化に関する検討を行った。
    【方法】麻酔下でマウス (ICR nu/nuの雌) の四肢を固定し、腸管の一部を腹腔外へ露出、体幹部を厚さ 2 mmの鉛で覆い、露出した長さ約 20 mmの腸管部分に、X線で 30 Gy を照射した。照射後、 ES 細胞 (129/Svマウス系統の雄) を腸管の漿膜下に注入し、縫合閉腹、個体を回復させた。その後 13 日から 27 日を経過したマウスの腸管を摘出した。ES細胞の生着の確認はPCRでおこない、組織学的な検討についてはヘマトキシリン-エオジン (H.E.) 染色および免疫染色 (stage specific embryonic antigens-1 (SSEA1) 、basic fibroblast growth factor (bFGF) 、alpha-smooth muscle actin (αSMA) および cytokeratin AE1/AE3) によりおこなった。
    【結果および考察】移植された ES 細胞は、放射線による腸管障害部分に生着し、かつ増殖することを確認した。移植 13 日後では、腺管様構造を示す細胞が存在するが、陰窩細胞までは分化していないと考えられた。移植 27 日後では、円柱上皮、重層扁平上皮、間葉系細胞、骨等に分化し、テラトーマの形成を確認した。放射線による腸管障害部分で ES 細胞がテラトーマ化することを確認したことから、今後移植された ES 細胞を in vivo での腸管へ分化誘導、あるいはある程度 in vitro で分化させた ES 細胞を投与する必要があると考えられた。
  • 小林 羊佐, 石川 徹夫, 床次 眞司, 米原 英典, 山田 裕司, 吉永 信治
    セッションID: P2-74
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    現在、ラドン及びその壊変生成物からの被曝による健康へのリスク評価は鉱山労働者の疫学研究に基づいてなされているが、一般公衆への健康リスクを考えた場合、その評価は住居のような一般環境を対象とした疫学研究でなされることが望ましい。近年、欧州や北米等で実施された症例・対照研究のプール解析により、一般環境レベルのラドンへの曝露でも肺がんリスクが有意に増加することが報告されている。中国雲南省は世界有数の錫の生産地であり、同地域の錫鉱山労働者を対象とした疫学調査結果はBEIR-VI報告書のリスク推定に用いられているが、同研究で得られた単位曝露当たりのリスク推定値は他の研究の推定値よりも低く、曝露評価の問題が指摘されている。そこで本研究では、雲南省の鉱山周辺において、一般環境を対象とした新たな疫学研究の実現可能性を検討するために、ラドン・トロン濃度及びそれらの壊変生成物濃度測定を実施した。
    本研究では、2004~2006年にかけて雲南省箇旧(Gejiu)市内において、農村部の100家屋、市街地の50家屋を対象としてラドン濃度及びトロン壊変生成物濃度の測定を実施した。長期測定としてパッシブ型ラドン・トロン弁別測定器を用いて、2ヶ月間の測定を行った。また、短期測定として農村部の8軒と市街地の4軒で、アクティブ型の測定器類を用いたラドン・トロン濃度及びそれらの壊変生成物濃度測定を実施した。
    調査の結果、住居ではラドン壊変生成物による年間被曝線量の平均値に対して、トロン壊変生成物からの年間被曝線量の平均値は倍程度になると推定された。現在、トロンの線量評価には線量換算係数など不確実な点が多いが、本調査結果で示されたトロン壊変生成物の高い線量寄与は、疫学調査におけるその線量評価の重要性を示唆している。
  • 吉永 信治, 小林 羊佐, 床次 眞司
    セッションID: P2-75
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    欧州および北米で実施された最近のプール解析により、ラドン濃度が比較的低い住居内環境においても、ラドン濃度の増加と共に肺がんリスクが直線的に増加すること、単位ラドン濃度あたりの肺がんリスクは、鉱山労働者の調査結果と大きな矛盾がないことが示されている。それらの研究では、ラドン濃度測定値における不確実性を制御するために、ラドン濃度の空間的・時間的分布をモデル化して推定した「もっともらしい」ラドン濃度値に基づいた解析や、ラドン濃度がより完全に測定された対象者に限定した解析が実施され、いずれもラドン濃度あたりの肺がんリスク推定値が、不確実性を制御しない場合に比べて高くなることが示されている。
    ラドン濃度測定値における不確実性のもう1つの源としてトロンが考えられる。住居内ラドンと肺がんに関する過去の疫学調査のうち、中国の黄土高原での症例・対象研究など、ラドン濃度測定の際にトロンを弁別しない測定器を用いた研究では、ラドン測定値が過大評価された可能性が高い。しかしながら、疫学調査におけるラドン測定値の過大評価が、ラドン濃度あたりの肺がんリスク推定値にどのような影響を与えるかは明らかでない。
    本研究では、ラドンとトロンが混在する状況において、トロンを弁別しないラドン濃度測定によってラドン測定値が過大評価された場合に、ラドン濃度あたりの肺がんリスク推定値がどのような影響を受けるかを、ラドンとトロンの濃度比等に関するいくつかの仮定に基づくシミュレーションによって定量的に評価した。詳細な検討結果は学会当日に報告する。
  • 石川 徹夫, 床次 眞司, 小林 羊佐, 岩岡 和輝, 谷田部 慶憲, 北條 智美, 大坪 恵理子
    セッションID: P2-76
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    放射性物質による吸入被ばくを評価する上で、呼吸率は一つの重要なパラメータである。一般に放射性物質の種類に関わらず、呼吸率の増加とともに吸入摂取量も増え、その結果預託実効線量もそれに応じて増加する。ICRPでは、睡眠、休息(座位)、軽作業、重作業という作業区分ごとの呼吸率の代表値を与えており、睡眠時の0.45m3/hから重作業時の3m3/hと活動状態によって7倍程度の開きがある。しかしながら、これらの代表値は欧米人を基礎としたデータであり、日本人にそのまま当てはまるかどうかは検討する余地がある。従来は、日本人を対象として呼吸率を直接測定した例はあまりなかった。本研究では、様々な活動状態における呼吸率を測定できるように、人体に装着して呼吸率を測定可能な装置を開発した。この装置の概要を紹介するとともに、試験的な測定結果についても紹介する。
非電離放射線
  • 池畑 政輝, 鈴木 敬久, 和氣 加奈子, 吉江 幸子, 中園 聡, 多氣 昌生
    セッションID: P2-77
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    環境中に発生している種々の電磁界の健康影響を評価するため、特に極低周波域およびラジオ波に関しては、様々な研究がなされてきた。一方、中間周波(300Hz~10MHz)の電磁界については、依然として十分な評価データが蓄積されていない。本研究では、中間周波の健康影響に関する基礎的な知見を得るため、特に変異原性に着目して評価をおこなった。中間周波の磁界を曝露するため、樹脂製の炭酸ガスインキュベーターと平面コイルを組み合わせた曝露装置を製作した。本報告での曝露条件は、インキュベーター底部に置いた培養用シャーレの底面で、周波数20kHz・磁界強度最大約310μT(ICNIRPガイドラインの一般公衆の参考レベル6.25μTに対して約50倍)であった。変異原性の評価法としてマウスリンフォーマアッセイ(MLA)を用いた。L5178Y TK+/-3.7.2c細胞を培養後、1×105cells/mlの細胞浮遊液を調整し、磁界曝露群、対照群、陽性対照群(メタンスルホン酸メチル処理)の3群に分けて48時間培養(24時間後に一度継代)した後、生細胞数測定およびTFT耐性変異検出用の96ウェルプレートに分注し、2週間培養をおこなった。培養後、コロニーを形成しているウェルを計数し、突然変異頻度を求めた。その結果、対照群と磁界曝露群の間には有意な突然変異頻度の差は認められなかった。また、コロニーの形成についても両群で差異は認められなかった。したがって、本研究で検討した磁界曝露の条件では、中間周波磁場はMLAで検出される種々の突然変異(点突然変異、染色体レベルの変異)誘発能を持たないことが明らかとなった。
  • 鈴木 蓉子
    セッションID: P2-78
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    近年、電磁場は調理器、医療用機器などに広く利用されており、送電線の付近では、送電に伴って比較的強い電磁場が発生しているなど、私たちの近辺には様々な磁場環境が存在している。これまで、疫学的調査などから、0.2μT以上の交流磁場が人体に対して悪影響を及ぼすこと、また、Lai and Singhらにより、0.25~0.5mTの交流磁場がラットの脳細胞においてDNA鎖の切断を誘導する、といった報告がなされている。一方で、MRIなどに利用されている直流強磁場は、生体に及ぼす影響は少ないとされているものの、不明な点が多い。そこで本研究では、モデル生物の1つである線虫C. elegansを用いて、直流強磁場環境が及ぼす生物影響についての実験研究を行った。 まず、5Tの直流強磁場下でも線虫は正常に発生・成長し、世代交代も問題なく起こることが確かめられた。次に、直流強磁場によりDNA鎖の切断生じるかについて、減数分裂前期の遺伝子組換えに関わるDNA2本鎖切断活性が低下したhim-17変異体を用いて調べた。その結果、直流強磁場下でDNA鎖の切断が増加することはなく、DNA損傷に伴って生じるアポトーシス数も増加しなかった。さらにDNAマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現の解析を行ったが、放射線照射した際、DNA損傷に伴って誘導される遺伝子群は、直流強磁場下では誘導されなかった。以上の結果から、5Tまでの直流強磁場がDNA損傷を誘導する可能性は著しく低いと言えるだろう。一方で、同マイクロアレイにより、様々なストレスで発現誘導するhsp-16遺伝子が直流磁場下でも誘導されることを見出した。本遺伝子は交流磁場で発現上昇することが知られており、いわゆる磁場に応答する可能性が強く示唆された。本発表では、その他の遺伝子発現もふまえ、直流強磁場環境が生物に及ぼす影響について考察する。
  • 小山 眞, 中原 岳久, 櫻井 智徳, 宮越 順二
    セッションID: P2-79
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    極低周波変動電磁場(Extremely low frequency electromagnetic fields: ELF-EMF)による細胞への影響を調べるため、ヒト脳腫瘍由来A172細胞を用い、5mT磁場曝露後の細胞内DNA中のAPサイト(Apurinic/apyrimidinic sites)の量を定量した。細胞の処理はELF-EMF単独曝露、過酸化水素単独処理、もしくは過酸化水素処理中の細胞にELF-EMFを複合曝露した。曝露時間は2,4,8,16,および24時間で行った。細胞は処理した後、セルスクレーパーで回収し、PBSで洗浄後、DNAを抽出した。精製したDNAにARP(Aldehyde Reactive Probe)を加え、APサイトに結合させた後、アビジン-ビオチンの系により発色させ、OD450nmの吸光度を測定した。あらかじめ用意した0∼40ARP/105bp濃度のAPサイトから検量線を得、曝露によって得られたサンプルの値からAPサイトの量を調べたところ、ELF-EMF単独曝露では、sham曝露と差がなかった。また、過酸化水素単独処理では、全ての処理時間でAPサイト増加が見られた。ELF-EMFと過酸化水素の複合曝露においては、8,16,および24時間曝露した細胞で、同じ時間過酸化水素単独曝露した細胞よりもAPサイトの量が有意に増加した。このことから、ELF-EMFは単独でAPサイトの量を増加させることは無いと思われるが、過酸化水素と磁場との複合曝露によって、過酸化水素誘発のAPサイトの量を増幅させる作用があると考えられる。
  • 平岡 和佳子, 近藤 隆, 高橋 吏
    セッションID: P2-80
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]近年、超音波療法は皮膚疾患や皮膚生理の保持に広く適用が試みられている。チロシナーゼを介するメラニン沈着の過程は、超音波療法のターゲットとして期待されているものの一つである本研究では、1MHzの超音波にを用いて、インビトロでチロシナーゼの不活化を試みた。あわせて、皮膚治療における超音波療法の可能性とその基本的な作用メカニズムを探った。[方法]チロシナーゼの酵素活性の測定には、50 nM L-dopa, 2 % DMF, 6 nM MBTH を含む 1 mM リン酸緩衝液 pH 7.1を用い、シグマ社より購入したマッシュルームチロシナーゼの酵素反応を検出した。活性酸素種の検出にはESRスピントラッピング法を用いた。遊離したCu2+は、接触法により定量した。超音波の照射は、Ultax-UX601(1 MHz)を用い、超音波強度はHNR-1000 ハイドロフォン (ONDA)により測定・校正した。用いた超音波強度は、最大1.4 W/cm2とした。[結果]チロシナーゼ酵素の反応溶液に1MHzの超音波を照射して、すぐに酵素活性の測定を始めた。非照射の試料に比べると照射試料の活性は低下した。また、スピントラップ剤を含む反応溶液に超音波を照射したのち、ESR測定を行うと、OHスピンアダクトが検出された。しかし、OHスカベンジャーであるマンニトールを加えても、超音波による酵素活性の低下は回復しなかった。一方、反応溶液中に過剰量のCu2+を加えると、超音波照射後には酵素活性の低下が見られなくなった。遊離Cu2+の定量実験では、超音波強度の上昇につれて、チロシナーゼから遊離しているCu2+が多くなっていくのが観察された。以上の結果は、超音波によるチロシナーゼ不活化の原因は、活性酸素によるものではなく、酵素の活性中心からCu2+が外れることに起因することを示唆している。
  • 新村 幸雄, 馬上 とし子, 永井 謙一
    セッションID: P2-81
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    マウスリンパ細胞由来のM10細胞は放射線に対する高感受性を有し、その親細胞であるL5178Y細胞は低感受性であることが知られている。M10細胞では紫外線(310nm)の照射時間に依存して、細胞増殖が抑制され、アポとーシスが誘導される。本研究は放射線感受性および低感受性細胞における遺伝子発現の違いをDNAアレイ法およびノーザンブロット法によりに調べた。また紫外線照射量の違いにより誘導されるアポトーシスの変化を調べた。【方法】細胞のアポトーシス解析はAnnexin-V-FLUOS staining kit (Rochu Diagnostics) を用いて、FACS Calibur  (Beckton Dickinson)にておこなった。DNAアレイ膜はAtlas #7741-1(CLONTECH社)を用いた。P-33によるプローブ標識をおこないハイブリダイゼーション後イメージングアナライザー(BAS1500)により分析した。解析ソフトはArrayGauge(Fuji film)を用いた。さらにEX-ARRAYを用いて解析をおこなった。7種のハウスキーピング遺伝子を標準遺伝子として標準化をおこなった。ノーザンブロットはP-32標識によりおこなった。【成績】数種類の遺伝子が増加することが明らかとなった。放射線感受性と非感受性細胞との比較をおこない、ノーザンブロットによりMCP-3, Cdx-2, HMG-14, glucose-regulated protein gene, serotonin receptor gene およびHox-2.4の遺伝子の活性化が明らかになった。
環境影響・放射線物理・化学
  • 馬場 泰輔, 村田 和浩, 桑原 義和, 福本 学
    セッションID: P2-82
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    宇宙空間は地球上と比べ、重力の大きさと宇宙放射線被ばく量に大きな差があり、これらはストレスとして全身代謝に影響を及ぼすと考えられる。肝臓は全身代謝に重要な臓器であるが、宇宙環境の影響研究がなされていない。そこで本研究では、宇宙飛行が肝臓へ与える影響を検討するために、宇宙飛行後のラット肝を用い、肝代謝酵素として良く知られているCytochromeP450 (CYP)とストレス応答タンパク質の発現レベルと、組織における発現分布解析を行った。 1991年に9日間宇宙飛行(FL)を行なった雄SDラットを用いた。飼育法は、個別飼育(RAHF)と、集団飼育(AEM)で行なわれ、対照として地上飼育群(GC)を設定した。ラットはシャトルの着陸後すぐに屠殺し、肝臓を摘出後凍結し、解析するまで-80℃で保存した。遺伝子発現は抽出した全RNAを用いてRT-PCR法にてcDNAを合成し、Taqman法にて各遺伝子の発現量変化を見た。また、FL-AEM、尾部懸垂にて微小重力を模した対象、地上飼育ラットの凍結肝から薄切切片を作製し、CYPの免疫染色を行い、組織像を観察した。 飼育法の違いでは、FLではAEMでCYP2A1, 2C11, 4A1の発現量が、GCではCYP3A2の発現量が高くなった。FLとGC間では、FLのAEMではCYP1A1, 4A1、Cirbp、hsp90が有意に高く、RAHFではCYP1A1,4A1に同様の傾向が認められた。このことから、CYP1A1と4A1は宇宙飛行によって特異的に発現亢進することが推察できた。免疫染色の結果、GCでは強く染色されている中心静脈域の第一層細胞がFLではあまり染まっておらず、肝実質細胞の放射状の配列が乱れていた。またFLでは門脈域に顕著に空胞変性が見られた。このことから、宇宙飛行により肝臓の構造やCYPの発現分布に変化が起こっていることが確認できた。
  • 堀川 大樹, 坂下 哲哉, 片桐 千仭, 渡邊 匡彦, 中原 雄一, 黄川田 隆洋, 浜田 信行, 和田 成一, 舟山 知夫, 東 正剛, ...
    セッションID: P2-83
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    クマムシとは、体長がおよそ0.1~1.0mmの緩歩動物門に属する動物群の総称である。陸生クマムシは、脱水してanhydrobiosis (無水生命)という無代謝状態に移行する特徴がある。クマムシは、無水生命状態において、様々な極限環境(高温・低温・高圧・有機溶媒などへの暴露)に耐性を示す。本研究では、この生物における放射線耐性に着目し、クマムシの一種・オニクマムシ(Milnesium tardigrdum)が、活動状態および無水生命状態において、イオンビーム(50 MeV 4He2+; 12.5 MeV/amu, LET 16.2KeV/μm))と60Coγ線照射に対し、どの程度の耐性を持つかを解析した。結果、オニクマムシにおけるイオンビームおよびγ線照射48時間後の半致死線量(LD50)は、活動状態(イオンビーム: 6200 Gy, γ線: 5000 Gy)の方が、無水生命状態(イオンビーム: 5200 Gy, γ線: 4400 Gy)より有意に高かった。オニクマムシは、活動状態時には体内の水分含量率がおよそ80 %であるのに対し、無水生命状態ではおよそ1 %である。よって、放射線が照射された場合、活動状態の方が、体内の水分から生じるラジカルの影響を大きく受けると予測されるので、この結果は意外なものであった。この現象を説明する仮説としては、オニクマムシが、高い放射線損傷修復を持つことが示唆される。また、オニクマムシは、イオンビームの方が、γ線よりも、照射後に高いLD50値を示した。一般に、γ線よりも高LETであるイオンビームの方が、生物に及ぼす致死効果が高いとされているため、オニクマムシがγ線よりもイオンビームに対して高い耐性を持つことは、LETの違いからは説明できない。現在のところ、この原因となる機序については不明であるため、今後、LETの異なる放射線の影響を詳細に評価するために、照射後のクマムシの生存と繁殖について、長期間にわたって調査する必要がある。
  • 床次 眞司, 北條 智美, 小林 羊佐, 高橋 博路, 石川 徹夫
    セッションID: P2-84
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    自然放射線源のうちラドンの吸入による被ばくに基づく線量が、約半分を占めることはよく知られている。そして、その線量はラドンガスではなくその壊変生成物の吸入に起因している。しかしながら、実際の調査では、測定される対象がラドンガス濃度であり、その濃度に平衡ファクタを乗じて壊変生成物濃度に換算して線量を算出している。一般にラドンの平衡ファクタは、屋内で0.4、屋外で0.6という値が代表的な値として用いられている。ところで、環境中にはラドンだけでなく、トリウム(Th-232)の壊変系列から生成されるトロン(Rn-220)が少なからず存在している。我が国の屋内ラドン全国調査やそれ以降の研究から、居住環境においてトロンが検出された例が多く見られている。一方でトロンの平衡ファクタに関する報告は少ない。我々のグループでは、これまでに国内のみならず海外において様々な屋内環境中のラドン・トロン濃度及び平衡等価トロン濃度を測定してきた。本発表ではこれまでの調査結果に基づくトロン平衡ファクタを取りまとめたのでそれらについて報告する。
  • 大塚 良仁, 五代儀 貴, 柿内 秀樹, 高久 雄一, 久松 俊一
    セッションID: P2-85
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    青森県六ヶ所村に立地する商業用大型再処理施設では、2007年夏の操業を目指し、2006年3月から実際に核燃料を使用した最終試験(アクティブ試験)を行っている。このアクティブ試験と操業運転時には、環境中に極めて微量ながら放射性核種が放出される。当該施設では、PuやFPが大量に取り扱われるため、周辺環境におけるPuや137Cs等の土壌中での挙動を研究することは、安全評価上、重要である。これまで我々は、畑地土壌、未耕地土壌での調査を行ってきたが、今回は、六ヶ所村の代表的な環境のひとつでもある森林について報告する。239+240Pu及び137Csの蓄積量は、それぞれ106±40 Bq m-2、2.6±0.9 kBq m-2であり、未耕地土壌(81±21Bq m-2、2.3±0.8 kBq m-2)と比較して大きいことがわかった。240Pu/239Pu原子数比と239+240Pu/137Cs放射能比はいずれも典型的なフォールアウトの値と等しく、これらの核種の由来は、これまでの調査と同様に大気圏核実験由来といえる。これらの核種の深度分布と、1954年以降のフォールアウトパターンを用いて、それぞれの核種について下方への移動速度を計算した。その結果、239+240Puと137Csの移動速度は0.1-0.6 cm y-1の範囲であり、海外で報告されている森林土壌での結果とほぼ同じであった。これらの速度は、強熱減量が大きくなると遅くなり、粒径が大きくなると早くなる傾向があった。 本研究は、青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。
  • ZHENG Jian, YAMADA Masatoshi
    セッションID: P2-86
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    The largest fraction of the short-term and long-term dose from accidental releases and fallout from atomic bomb tests was from iodine isotopes. Among the radioisotopes of iodine, I-129 is of most concern due to its long half-live. It has been expected that the environmental behavior of radioactive I-129 should be basically similar to that of natural I-127. Thus, the biogeochemical cycling of stable iodine in the environment can be used for the safety assessment of I-129. We here report a hyphenation technical between HPLC and SF-ICP-MS for the speciation of stable iodine in seawater because the chemical form is one of the most important factors controlling iodine environmental behavior in the ocean. Several HPLC separation columns, including anion-exchange (ExcelPak ICS-A23), cation-exchange (IonPac CG5A) and size-exclusion (AsahiPak GS-220HQ) columns were investigated for their performance for separation of iodate and iodide. Surprisingly, it was found that the best separation was obtained with the short CG5A cation-exchange column with a TCC2 cation concentrator as the guard column. With a mobile phase of 30 mM ammonium carbonate at a flow rate of 1 ml/min, the analysis of iodate and iodide can be completed within 5 min. Seawater can be directed introduced into the HPLC column for analysis after a 5-fold dilution of seawater. The developed analytical method was successfully applied to the study on the vertical distribution of iodine species in coastal water off Aomori, Japan.
  • 山田 正俊, 鄭 建
    セッションID: P2-87
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】北太平洋のプルトニウムは、主に大気圏核実験によるグローバルフォールアウトおよびビキニ核実験によりもたらされた。海水中にプルトニウムがもたらされてから50年以上が経過しているが、海洋では未だ定常状態にはない。海水柱中での濃度、鉛直分布パターン、インベントリーも時間とともに変化していることが予想される。240Pu/239Pu同位体比は、原子炉のタイプ、核燃料の種類や燃焼時間、核兵器のタイプなどによって大きく異なることが知られている。本研究では、海水中の239+240Pu濃度と240Pu/239Pu同位体比の鉛直分布の測定から、海洋における挙動や起源を解明することを目的とした。
    【方法】海水試料は、淡青丸KT-92-4次研究航海において、相模湾中央部から2筒式大量採水器を用いて採取した。陰イオン交換樹脂カラム法によりPuを分離・精製した。α線測定後、SF-ICP-MSを用いて、240Pu/239Pu同位体比を測定した。
    【結果・考察】相模湾中央部における海水中の239+240Pu濃度は、表層で13 mBq/m3であり、中層で39 mBq/m3と極大となり、底層で19 mBq/m3となる鉛直分布を示した。また、海水柱中の239+240Puのインベントリーは、41 Bq/m2であり、グローバルフォールアウトから推定される値(42 Bq/m2)と同程度であった。相模湾の海底堆積物中の239+240Puのインベントリーは、191+-120 Bq/m2であることから(Yamada and Nagaya,2000)、西部北太平洋縁辺域はプルトニウムの主要なsinkであると言える。240Pu/239Pu同位体比の鉛直分布は、表層から底層までほぼ一定の値を示した。240Pu/239Pu同位体比の結果は、ビキニ核実験起源のプルトニウムの存在を示唆していた。
  • 幸 進, 川端 良子, 白石 久二雄, アパーリン ヴャチェスラフ, 片山 幸士
    セッションID: P2-88
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    中央アジア諸国においては水資源の確保が重要課題である一方、同地域は世界有数のウラン生産地帯でもあり、鉱山やウラン生産関連施設が環境へ与える負荷・人への影響についての問題も危惧されてきた。これらの問題の現状の把握と解決へ向けて、河川水や地下水など環境試料中の重金属や放射性核種のモニタリング調査が行われるようになってきた。我々は、当該地域の環境中における放射性核種の挙動の研究に関連して、異なった観点からの基礎的データを提供すべく、食事を通じた微量元素や天然放射性核種の摂取量の把握を試みた。 ウズベキスタンの首都タシケントにおいて陰膳法で採取した食事試料を、電気炉・マイクロウェーブなどにより処理して得られた硝酸溶液に含まれる微量元素・天然放射性核種をICP質量分析装置(Yokogawa HP-4500)で分析し、各元素の一日摂取量を求めた。 ウランの一日摂取量について2.4~8.4 (中央値4.5)μg/日/人、トリウムについては0.4~1.4(中央値8.8)μg/日/人という結果を得た。ウクライナ国民の微量元素摂取状況調査で得られたデータ等との比較を含め、結果と考察についての詳細を当日発表する。
  • 松永 武, 柳瀬 信之, 眞田 幸尚, 長尾 誠也, 上野 隆, 佐藤 努, 磯部 博志, 天野 光, Yurij Tkachenko
    セッションID: P2-89
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    プルトニウム同位体(Pu-238,Pu-239,240,Pu-241,以下Pu)を含む広範囲な土壌汚染・水系汚染を生じたのがチェルノブイリ事故である。そこで、本研究では事故地域においてPuの挙動を系統的に把握し、この知見を他の地域におけるPuの挙動の理解に役立てることを目的とした。【結果と考察】チェルノブイリ発電所近傍の土壌・水中懸濁物・堆積物・河川水・湖沼水について事故起因のPuの濃度と物理的・化学的存在形態を調べた結果、土壌から表面水への移動率は、同じく事故起因のCs-137、Sr-90と比較してPuが最も小さいことが示唆された。発電所周辺の高度に汚染した地域の土壌から、縦貫するプリピァチ川への事故起因Puの年間移動率は最大で約0.1%(1986年、事故発生年)であり、その後は約0.01%(2000年)まで低減したと推定される。Puの化学的存在相に関しては、土壌及び河川水と湖沼水の懸濁物では、有機物相並びに難溶解相(粘土鉱物等)に大部分が見いだされた。このことは、土壌における難移動性、水中における難溶解性を意味している。事故発電所下流20 kmのプリピァチ川堆積物でもPuは難溶解相に集中的に存在し、Sr-90と対照的であった。Puが事故地域近傍の河川水により運ばれる物理的な形態は、60-80%が懸濁物に含まれた粒子態、10-20%がコロイド態、10-20%が低分子量の溶存成分であることが見いだされた。この相分配は、施設起因のPuについてローヌ川等で得られた結果と良く一致している。【まとめ】以上から、チェルノブイリ地域の環境におけるPuの挙動は次のようにまとめられる。i) 土壌から河川への移動は小さいが継続的である、ii) 土壌から河川への移動は土壌粒子の流失や有機コロイドでの可溶化による。また、 水中のPuの生物取り込みに関しては低分子量成分の役割が注目される。
  • サフー サラタ クマール, 白石 久二雄, シガンコフ ニコライ, ザモスチィアン パブロ
    セッションID: P2-90
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    Determination of the concentration and isotope ratios of uranium is required in environmental monitoring of nuclear contamination in nuclear safeguards. 238U, 235U and 234U are naturally occurring alpha-emitting long- lived radionuclides which are taken up daily at low levels with food and drinking. Natural isotopic composition of 235U/238U =0.00725. Therefore, isotope ratio measurements are important because they can provide information on the origin of uranium. Uranium, the heaviest naturally occurring element on earth, plays an important role in daily life because of its use in nuclear power plants. The isotope ratios of uranium, 234U/238U, 235U/238U and 236U/238U were measured by using a VG Sector 54 thermal ionization mass spectrometer (TIMS). Uranium isotopic compositions have been determined in soil samples as well as in some ground water samples in the exclusion zone of Chernobyl nuclear power plant. The isotopic composition of Chernobyl soil samples showed significant deviation from the natural uranium and presence of 236U is quite noticeable. The 234U/238U activity ratio varies in the range 1.06 – 2.1 in case of soil samples. Similar variation was also observed for ground water samples. Enrichment of 235U was also noticeable for soil as well as ground water samples.
  • 榎本 宏子, SAHOO Sarata K., 松本 雅紀, 米原 英典, 白石 久二雄, ZAMOSTYAN Pavlo.V, TSYGA ...
    セッションID: P2-91
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】今年でチェルノブイリ原子力発電所の事故から20年をむかえるが、事故由来の放射性セシウム(Cs)が現在も土壌中に残存していることが知られている。我々は、チェルノブイリ近くのジトミール地方の食品のうち、Cs-137濃度が高いとされるキノコと主食として多く食されるジャガイモについての放射性Cs濃度の測定を行った。 【方法】試料は、2003年にウクライナの研究者から灰の状態で提供を受け、これをU-8容器に10mmの高さに封入してGe検出器を用いて計測を行った。預託実効線量は、この結果からこれらの食品を1年間摂取した場合と仮定してICRP Publ.67の線量換算係数を用いて求めた。さらに、これらの食品を採取した近辺の土壌の計測も行った。土壌は、0から10cmまでの深さを5段階、10から20cmまでを2段階とした乾燥土壌であり、その深さ方向7段階の放射性Cs濃度を計測した。また、食品に取り込まれるとされる深さ0から6cmまでの土壌を混合して食品と同様に計測を行った。 【結果・考察】キノコではCs-137がK-40濃度を上回って検出され、Cs-134については少量が検出された。Cs-137のキノコ摂取による成人の預託実効線量は0.9mSvとなった。また、ジャガイモについては、Cs-137がキノコに比べると少ないが検出された。しかしながら、ウクライナでのイモ類の供給量は日本に比べて5倍程と多量に食されており、7試料平均での成人の預託実効線量は1.5mSvとなった。また、土壌では、表層部にCs-137が多く検出され、深くなるに従って減少した。現在でも放射性Csは土壌から食品へ移行しており、その影響について検討する。
  • 坂内 忠明, 幸 進, 白石 久二雄, Shevchuk Larisa, Shevchuk Valery E., Zamostyan Pav ...
    セッションID: P2-92
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    ベラルーシの一般人の被ばく線量を推定するための情報の一つとして、日常食中の放射性セシウムの量を測定した。2000年9月、ベラルーシの約30地点から陰膳法で1日分の食事を集め、電気炉で灰化した。灰の一部をU8の容器に入れ、50keVから2000keVの範囲で、Ge半導体検出器で放射能を測定した。測定時間は80,000秒で、検出値は食品を集めた時点に半減期補正をした。137Csは全ての食品から検出された。一日一人当りの137Csの摂取量の最小値は2.4 Bq、最大値は90 Bqで、幾何平均は8.9 Bqであった。137Csの最大値を示した試料について30万秒の測定を行ったところ、137Csの他に134Csが検出された。ICRPの137Csによる内部被ばくの線量換算係数(1.3 x 10-8 Sv Bq-1)を用いて、年間被ばく線量を計算すると、最大で0.42mSv、最小で11μSv、幾何平均で42μSvであった。日本では2000年の時点で、文献によると一日一人当りの137Csの摂取量の幾何平均は0.03 Bqであり最大でも0.17Bqなので、日本の値よりも300倍から500倍高い値であった。40Kの量は日本とベラルーシでほぼ同じであった。
  • 寺田 宙, 飯島 育代, 礒村 公郎, 高橋 光子, 杉山 英男
    セッションID: P2-93
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 国内の流通食品に含まれている放射性核種の量と、その摂取量を明らかにするために、「食品中の有害物質等の摂取量の調査及び評価に関する研究」(厚生労働省)の一環として、マーケットバスケット方式によるトータルダイエットスタディ(TDS)を行った。 [方法] 平成15年度から平成17年度までの3年間、全国12に区分される地域のうち10地域(13都市)で試料を入手した。これら食品は全14群(飲料水を含む)に分類され、実際の食事形態に従って調理後、一部については水を添加して混合、均一化を行い調製試料とし、IV群(油脂類)・XIV群(飲料水)以外の調製試料は凍結乾燥あるいは熱乾燥後に乾式灰化して分析試料とした。分析試料中のγ線放出核種はγ線スペクトロメトリ、また90Sr、238Uは化学処理の後、それぞれ低バックグラウンドβ線測定装置、ICP-MSにより測定、分析した。 [結果] 全食品(182試料)中でγ線スペクトロメトリにより検出・定量された人工放射性核種は137Csのみであった。天然放射性核種としては40Kが定量され、一部試料からはウラン系列の214Pb、214Bi、トリウム系列の228Ac、212Pb、208Tlが定量された。各都市における137Cs の1日摂取量は定量下限値以下のデータも考慮して算出したところ、12.5-<76.6 mBq/kgの範囲にあった。また、90Srならびに238Uの1日摂取量はそれぞれ20.8-53.6 mBq/day、5.9-31.1 mBq/dayであった。今回の10地域のTDSでは地域間での放射能摂取量に顕著な差は認められなかった。これら1日摂取量の値をもとに算出した年実効線量は、137Csと比べて90Srによる線量が3-5倍大きい傾向がみられるものの、一般公衆の線量限度1 mSv (ICRP1990年勧告)と比較して十分に小さい数値であると評価される。
  • 中森 泰三, 吉田 聡, 久保田 善久, 坂内 忠明
    セッションID: P2-94
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
     人類にとっての環境の重要性が認識されるにつれて科学的な原理に基づく環境の放射線防護が求められるようになり、種々の環境生物に関する放射線の影響データが求められるようになってきた。陸上生態系において土壌は生態系存続のための機能の大部分を担う極めて重要な系であり、土壌無脊椎動物はその中で重要な働きをしている。土壌無脊椎動物は栄養塩循環を促進し、植物の生産性や多様性に影響し、さらに餌資源となることで様々な陸上生物を支えている。その生態学的重要性と環境影響評価の材料としての扱いやすさの点から、土壌無脊椎動物、なかでもミミズとトビムシ、は有害化学物質の環境影響評価研究に広く用いられてきている。ミミズは化学物質の影響試験がOECDにより採用されており、ICRPによりレファレンス生物として採り上げることが検討されている。トビムシに関しては、ISOにより標準毒性試験方法が整備されており、OECDでは化学物質の影響試験に採用することが検討されている。これらの土壌無脊椎動物を用いることにより、化学物質について考案された方法を放射線の環境影響評価研究にも適用することができる。
     本研究はこれらの土壌無脊椎動物に関して放射線影響についてのデータを取得し、放射線の環境影響評価の基礎とすることを目的としている。本稿ではシマミミズ(Eisenia fetida)とオオフォルソムトビムシ(Folsomia candida)の土壌無脊椎動物の繁殖あるいは生存に対するガンマ線照射(急性あるいは慢性)の影響についての室内試験結果を報告し、化学物質との比較の点から放射線影響の特徴について議論する。
  • 小村 和久, 村田 祥全, 田中 究, 中野 佑介
    セッションID: P2-95
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    放射平衡にあるウランとリンモリブデン酸アンモニウム(AMP)を混合するとラドンの娘核種であるPb-21およびBi-214からのγ線のカウントが異常に低下する奇妙な現象を発見した。低下は、室温で1/2、60℃で1/4にも達する。この効果は液体窒素温度で消失し室温に戻すと回復するという可逆現象であり、温度によるラドンの物理化学的性質の変化がこの現象発現の鍵を握っていることを示唆している。ナトリウム塩ではこの効果はさらに大きく、室温で <1/10、60℃で<1/30まで低下する。KX線から2 MeV以上の広いエネルギー領域にわたりカウントが一様に減少することも奇妙である。何らかの未知の相互作用によって放射性壊変が抑制(停止)されたか、放射線の放出が抑制され、あるいは観測出来ない「未確認物質」に変化したかとしか考えられない。鉛や鉄による遮蔽とは原理が異なるこの現象を説明するには新しい物理学の構築が必要である。この現象が理論的に解明されれば、放射性廃棄物問題への適用など、夢のような応用分が拓ける可能性がある。
  • 保田 浩志, 宮原 信幸, 高見 実智己, 大町 康
    セッションID: P2-96
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/13
    会議録・要旨集 フリー
    放医研低線量影響実験棟に新たに設置されたタンデム型静電加速器を用い、1-2MeVを主なエネルギー領域とする、d(4)+Be中性子線約2Gy(空気カーマ)を線量率0.027Gy/minで市販の線量計及び線量計候補の素材に照射し、放射化を調べた。銀をドープしているガラス線量計ではAg-110の生成が確認された。透過性セラミクスでは、Ta-182の生成が確認された。これらのデータを基に、異なる素材の組み合わせ等によって中性子個人線量の簡便な測定が可能か考察を行う。
feedback
Top