土木学会論文集A2(応用力学)
Online ISSN : 2185-4661
ISSN-L : 2185-4661
75 巻, 2 号
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応用力学論文集Vol.22(特集)
  • 楊 宏選, 福元 豊, 細山田 得三, 大塚 悟
    2019 年75 巻2 号 p. I_519-I_530
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,河床上の自由水面を有する跳水流と地盤中の浸透流を同時に計算する数値実験を行い,固定床水理実験による検証で,河川流と浸透流の空間情報を同時に得ることが可能であることを示した.数値実験から,跳水位置の手前で浸透流が河床に抜けてそこのブロックが受ける揚力と抗力が大きくなり,ブロックの有効重量による摩擦抵抗力を上回ってブロックが滑動する.これはブロック流失の実験結果に一致する.数値実験を通して,床止め工の下に透水性の高い基礎材料を設けると揚圧が下がり,床止め工を一体構造からブロック構造に変更すると,揚圧は大きく低下することが分かった.さらに,遮水矢板は前部に設けると揚圧の減殺に効果があり,後部に設けるとパイピング防止に効果が高いことが示された.

  • 猿渡 亜由未, 石見 翔汰, 渡部 靖憲
    2019 年75 巻2 号 p. I_531-I_537
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    気泡バースティングにより生成される微細飛沫発生量は海洋性エアロゾルの供給量を決定する重要なファクターであるにも関わらず,エアロゾル観測の困難さから未だそれを精度よく予測する為のモデルは提案されていない.本研究では空気負イオン濃度観測が海洋飛沫観測精度の向上に寄与し得るかどうかを検討する為の基礎的な検討材料を得る為の室内実験及び現地観測を行った.室内実験では気泡バースティングに応答した周囲の空気負イオン濃度の変化の特徴を明らかにした.また現地観測ではこれまでに飛沫発生量予測のモデルパラメータとして用いられてきた風速,波高,泡沫占有率と空気負イオン濃度との関係について調査し,特に気泡バースティングにより飛沫発生量を直接支配すると考えられる泡沫占有率が空気負イオン濃度の変化を最もよく記述することが明らかになった.

  • 福王 翔
    2019 年75 巻2 号 p. I_539-I_549
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    浮体式洋上風車は安全性の向上とコスト低減のため動的応答解析の精度向上が必要である.本論文では流体力モデルとしてポテンシャル論およびモリソン式を使用して弾性体としてモデル化したセミサブ型浮体の解析を行い得られた動的応答について両モデルの比較を行った.モリソン式,ポテンシャル論で計算した浮体動揺の波強制力によって励起された変動成分は,実験値とよく一致した.浮体動揺の固有周波数に相当する変動成分については surge および pitch 方向でモリソン式の方がポテンシャル論より大きな結果を示したが,pitch 方向においては両モデルとも実験値に対して過小評価となった.タワー基部,浮体の空中部材および浮体の水中部材における断面力は,波強制力で励起された周波数およびタワー固有振動数の両方の変動成分においてモリソン式の方がポテンシャル論より大きな値となった.タワー基部モーメントについてはモリソン式は入力波周波数に相当する成分で実験値とよく一致したが,タワー固有振動数に相当する成分では実験値に対して過大評価となった.

  • Yukun WANG, Yunlong LI, Yuji SUGIHARA, Xianting ZHAO, Nobuhiro MATSUNA ...
    2019 年75 巻2 号 p. I_551-I_558
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    Three-dimensional sedimentary structures occur frequently in coastal and river environments. Brick-pattern ripples show a regular three-dimensional configuration composed of transverse crests and longitudinal bridges between the crests. Various studies have been made to examine the formation mechanism of brick-pattern ripples. However, these studies are insufficient to explain how the brick pattern appears on the surface of sand in an oscillatory flow. In this study, we make experimentally the detailed observation of the formation process by means of flow visualization and SfM-based 3D modeling to examine the brick-pattern ripple formation.

  • 青島 亘佐, 中野 聡, 徳永 皓平, 中村 秀明
    2019 年75 巻2 号 p. I_559-I_570
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    近年,構造物点検の効率化に向けて,深層学習等のビッグデータを用いた技術が注目を集めている.しかし,深層学習は学習データの質と量への依存度が高く,教師あり学習に用いる異常事象に関するデータセットの整備が,実用上のボトルネックとなっている.そこで,本研究では,このような課題の補完を目的として,収集が容易な正常画像を用いた学習による異常検知手法について,コンクリート表面の変状検出への適用のための検討を行った.検証の結果,正常画像を用いた学習による異常検知が,変状の検出に有効であることが確認できた.

  • 水谷 壮志, 石川 敏之, 秀熊 佑哉
    2019 年75 巻2 号 p. I_571-I_580
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    鋼部材の CFRP 接着補修・補強工法では,鋼と CFRP が合成断面として挙動することを前提として設計するため,補修・補強区間の両側に定着長を確保する必要がある.さらに,定着長が確保されている場合の定着部のはく離に対する照査はエネルギー解放率を用いている.しかし,鋼橋の腐食は狭隘部や複雑な形状の箇所に発生することが多く,必要な定着長を確保することが困難な場合がある.

    本研究では,鋼と CFRP が合成断面となるための定着長が確保できない場合に着目し,定着長が不足している一軸引張を受ける CFRP 接着鋼板のエネルギー解放率の算出方法を検討した.その結果,既存の接着樹脂に生じるせん断応力分布の近似解を用いてエネルギー解放率を算出することで,FEM 解析と同程度のエネルギー解放率が算出できることを明らかにした.

  • 松本 高志, 石澤 郁馬, 近藤 健太
    2019 年75 巻2 号 p. I_581-I_588
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    生体構造を模倣したらせん積層 CFRP の板曲げ挙動を実験的に検討した.一方向炭素繊維プリプレグを積層する際に層間の配向角度差を設けることでらせん積層を構成した供試体を作製している.円周支持の平板を中央点集中荷重と中央部分布荷重の条件下で,直交積層の平板と荷重一変位挙動と破壊挙動を比較した.荷重一変位挙動においては,らせん積層は中央部分布荷重下では大きな荷重降下後にも増減を繰り返しながら最大荷重に迫るレベルまで荷重増加が見られた.破壊形態においては,直交積層が局所的であるのに対して,らせん積層の破壊は供試体全体に広がり,層間剝離はねじれるように発生することが確認された.

  • 本山 紘希, 堀田 渉, 鈴木 俊一, 堀 宗朗, 澤田 昌孝
    2019 年75 巻2 号 p. I_589-I_599
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    原子力発電所の建屋のような大規模重要構造物の安全性評価に使用する地震応答解析の品質保証は重要課題である.これに対して,著者らは,従来の質点系モデルより適用性の広いソリッド要素を主とする詳細モデルを用いた数値解析を活用することが効果的と考え,詳細モデルによる大規模鉄筋コンクリート構造物の地震応答解析手法を開発している.開発の重要項目は,高性能計算の有限要素法への材料構成則と適切な非線形解析手法の実装により,大規模な計算を実用的な時間で実行可能とすることである.本論文では,まず,これらの開発について示し,開発手法のパフォーマンスを小規模な鉄筋コンクリート構造物の解析により示した.ここで実装する非線形解析手法によって,解析が安定化・高速化されている.特にソルバのパフォーマンスが向上している点は高性能計算の活用の点から重要である.さらに,開発した手法を周辺地盤を含む原子力発電所の建屋の地震応答解析に適用し,解析時間の観点から有効性を示した.

  • 久保 武明, 谷口 望, 廣江 正明, 佐竹 紳也
    2019 年75 巻2 号 p. I_601-I_612
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    鋼鉄道橋は,コンクリート鉄道橋に比べ騒音振動性に劣ると言われているため,腹板には制振材を対策工として用いているが,制振材は設置可能箇所に制約がある等の課題がある.また,制振材は鋼板の振動と振動放射音の低減効果が一致しないことが多く,制振材設置による低減効果を正確に把握出来ていない.そこで本研究では,粒子速度により対策効果を評価する手法を提案し,その有効性を検証した.さらに,設置可能箇所に制約の無いポリマーセメントモルタル(PCM)による対策工を提案し,試験により得られた粒子速度と振動速度により,PCM と制振材の低減効果を比較することで両者の性能が同等であることを検証した.また,解析により求めた鋼板振動の低減効果を試験結果と比較することで,PCM の低減効果が解析により把握可能であることを確認した.

  • 和泉田 健夫, 佐伯 昌之
    2019 年75 巻2 号 p. I_613-I_622
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    大地震が発生した際,家屋などの構造物の被災状況を戸別に把握し,その情報を集約することができれば,救命や支援物資の供給などの迅速な対応に有益であると思われる.そこで,本研究では,構造物の被災状況を把握するための情報の 1 つとして,構造部材の破壊音に着目し,その検知に関する基礎的検討を行った.本研究ではまず,静穏な環境下において木材の破壊実験を行い,その破壊音を収録した.また,食器が割れた音や会話なども収録し,音のデータベースを構築した.そして,これ等のデータを 3 層の NN (Neural Netowork) に学習させ,破壊音とそれ以外の音を判別できるか検証した.また,別の機械学習である k-Shape と呼ばれるクラスタリング手法を同じデータに適用し,木材の破壊音とそれ以外の音を別々のクラスタに分類できるかどうかを検証した.

  • 細田 充, 水谷 淳, 山本 隆一
    2019 年75 巻2 号 p. I_623-I_633
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    レール損傷で発生が多い形態の一つに,頭部から発生する横裂があり,その横裂進展特性の把握が求められている.本研究では,レール頭部内部の残留応力を測定し,かつレール形状やき裂先端の特異場を考慮したFEM解析を実施して,残留応力およびき裂発生位置が横裂進展に与える影響を評価した.焼鈍や使用履歴でレール頭部内部の残留応力が変化し,横裂進展速度に影響することを示した.測定した残留応力およびレール形状等をFEM解析に反映させることでその解析精度が良いことを示した.測定した残留応力を考慮した解析結果と比較して,考慮しない場合は同じ深さで0.5倍程度の横裂進展速度となった.レール断面方向において,横裂の位置が異なることにより,レール破断に至る横裂深さが異なることを明らかにした.

  • 楠田 将之, 西宮 裕騎
    2019 年75 巻2 号 p. I_635-I_646
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    鉄道のバラスト軌道には浮きまくらぎが散見され,まくらぎの支持状態は必ずしも均一ではない.この浮きまくらぎは管理上さまざまな問題を生じさせる.その一つにロングレール軌道における夏期の軌道座屈がある.浮きまくらぎは,座屈抵抗力である道床横抵抗力を減少させ,軌道の座屈安定性を低下させる.しかし,浮きまくらぎの実態調査は十分でなく,その具体的影響は明らかではなかった.

    本研究では,まず,営業線におけるロングレール軌道の浮きまくらぎの実態を把握した.その結果をもとに軌道座屈解析ツールを用いて,まくらぎ支持状態に起因する座屈発生温度への影響を明らかにした.加えて,道床横抵抗力の分布状況と座屈発生温度の関係に着目し,道床横抵抗力のひずみエネルギーの値から座屈発生温度を推定できる可能性について示した.

  • 五井 良直, 金 哲佑
    2019 年75 巻2 号 p. I_647-I_657
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では交通荷重を受ける道路橋における振動モード同定の効率化を目的とし,ベイズ推論を応用した特徴抽出手法を開発する.提案手法では振動特性推定の不確実性を定量化することで,推定結果から簡易的に構造系に特有の振動モードを選定するための評価基準を導出する.振動特性の不確実性の評価においては多変量自己回帰モデルのパラメータにベイズ推論を適用したうえで,得られたパラメータの事後分布を伝達関数の極の事後分布のばらつきに変換する.提案手法の有効性を検討するため道路橋における交通振動データを用いて振動モード同定を行う.上記検討の結果,抽出された13の振動モードのうち6つについては既往研究における結果と一致することが確認された.また,残りのうち6つについては振動モード形状の妥当性から既往研究で確認されない未知の振動モードである可能性が示唆された.

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