土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
69 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.29
  • 山口 正隆, 畑田 佳男, 野中 浩一, 日野 幹雄
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1198-I_1203
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本論文は,東京湾では過去95年(1911~2005年)の間の12ケースの巨大台風,伊勢湾では過去85年(1921~2005年)の間の16ケースの巨大台風に対する浅海波浪推算を実施し,個々の台風時最大(有義)波高の空間分布特性を議論したものである.入力条件とした海上風分布は対象海域周辺の陸上気象官署で取得されたSDP風の沿岸・海上風観測風への変換とそれらの空間補間による.湾外の波高の最大値は東京湾では沖合の10mから湾口の4mに,伊勢湾では15mから7~8mに減少する.湾内の最大波高の分布は2つのパターンに大別される.1つは波高が湾口から湾奥に向けて増大し,東京湾では4m強,伊勢湾では6.5mに達する.他の1つは逆の傾向をもち,いずれの湾でも湾口で4m強をとる.この差は個々の台風の経路に起因する.
  • 山口 正隆, 野中 浩一, 畑田 佳男, 日野 幹雄
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1204-I_1209
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     瀬戸内海,伊勢湾,東京湾において海上・沿岸観測風より推定した多数ケースのストーム(台風,低気圧など)時海上風分布を入力条件とした推算波高時系列に加えて,陸上気象官署におけるSDP風資料やメソ気象モデルMM5風資料に基づく推算波高時系列と観測波高時系列から,ストーム別・地点別に得た波高誤差指標の統計解析を行い,推算波高の精度を包括的に相互評価した.この結果に従って,まず観測風資料に基づく推算波高の精度がかなり高いこと,ついでSDP風資料に基づく場合の精度もこれと比べてやや低いかあるいは同程度の精度であり,東京湾ではむしろ高いことや,MM5風資料に基づく場合には前2者に比べて必ずしも有意な精度を与えないことを明らかにした.
  • 森谷 拓実, 村上 和男, 大貫 貴士
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1210-I_1215
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     表層流は漂流ゴミの輸送や流出油の拡散に支配的に作用する.本研究では東京湾における表層流の特性の把握を目的とし,海洋短波レーダーによる表層流の観測結果と海上風の観測結果を用いて分析を行った.
     表層流の潮流成分については,レーダーによる観測結果に調和分解を行った.非潮流成分については,重回帰分析を行い,海上風が表層流に与える影響の大きさを調べた.また,海上風に風係数とエクマン螺旋による偏角を与えて吹送流を推算し,調和分解より推算した潮流と合成して表層流を推算した.推算値と観測値の整合性は高く,季節的・局所的に風係数と偏角の最適値が得られた.この結果を,東京湾で発生した油流出事故における,流出油拡散範囲の再現計算に適用した結果,良い再現が得られた.
  • 田井 明, 田中 香, 齋田 倫範
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1216-I_1221
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     沿岸域の水環境を精確にモデリングするためには密度成層の再現が必要不可欠である.その際に乱流エネルギー散逸率を実測することは現象の解明やモデリングの鍵となる.しかし,密度躍層が発達する沿岸域においてその実測方法は未だ確立されていない.乱流エネルギー散逸率を実測する方法には乱流シアを用いる方法と水温シアを用いる方法がある.測定上の理由で密度躍層での測定には水温シアを用いる必要があるが,その沿岸域への適用性は確認されていない.本研究では,河川流入が少なく水温成層が発達しやすい鹿児島湾を対象に現地観測を実施し,上記に対する検討を行い,水温シアを用いる方法の有効性を確認することができた.
  • 佐藤 之信, 中山 恵介, 新谷 哲也, 駒井 克昭
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1222-I_1227
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     過去の研究において,網走川を遡上する塩水にrasiation stressの効果が与えられると遡上量が増大することが示されている.しかし,同時に発生する風による水表面付近での吹送流の効果については検討が行われていない.そこで本研究は,網走川河口における塩分遡上に対する吹送流の影響について,現地観測の結果を踏まえ,無風状態,東風4m/sの状態および西風4m/sの条件下における検討を行った.塩水遡上の再現には,オブジェクト指向型環境流体モデルであるFantomを利用した.その結果,弱混合形態で遡上する塩水遡上初期段階における吹送流の役割が重要であり,遡上と同じ方向の風は塩水遡上量を抑制し,結果として塩水遡上量が減少することが分かった.一方で,逆方向の風は塩水遡上を促し,結果として無風状態とほぼ同等の塩水遡上量となることが分かった.
  • 丸谷 靖幸, 中山 恵介, 駒井 克昭, 渡辺 謙太, 三好 英一, 一見 和彦, 桑江 朝比呂
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1228-I_1233
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     コムケ湖は,自然干潟が形成されている北海道北東部に位置する汽水湖であり,シギやチドリなど年間170~180種の野鳥が飛来している.このように多くの鳥類が生息する環境を保全するには,干潟域における生態系を理解することが重要である.しかし,過去の研究において,鳥類および水生生物の生息場所の物理的要因が明らかにされていない.そこで本論文では,鳥類および水生生物の生息場所の物理的条件を明らかにすることを目的とし,ボックスモデルを用いたコムケ湖全体の流動特性の基礎的検討を行った.その結果,海洋水が湖へ流入すること,さらに潮位変動よりも湖水位の変動が小さいことにより,コムケ湖における植物プランクトンの一次生産が高まる可能性が示された.
  • 矢北 孝一, 滝川 清, 増田 龍哉, 森本 剣太郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1234-I_1239
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     有明海での貧酸素水塊の発生は,気象・海象条件によって海域分布が異なり,その発生には様々な環境要素が相互作用している.そこで,溶存酸素等の時系列データより,低周波を分離可能な離散ウェーブレット変換を用い自己・相互相関を求め主成分分析を実施した.その結果,気象要素の自己相関から,要素に14~60日の周期が確認された.また7月中旬に第2ピークがある降雨,風速等が貧酸素化に関連することが示唆された.主成分得点の経時変化から底層の溶存酸素が低下する7月上旬と回復する9月上旬で支配的な要因は,降雨と風速であることが分かった.相互相関の結果より,風速は+値,降雨は-値を示すことから,各地点の溶存酸素の下降には降雨が影響し,上昇には風速が影響を与えていることが示唆され,相互相関結果のピーク間に注目すると,10~35日の応答時間があることが分った.
  • 園田 吉弘, 滝川 清, 川崎 信二, 青山 千春, 齋藤 孝
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1240-I_1245
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     八代海海域における水質,赤潮データ,東シナ海北部海域における海面水温の長期観測データにより,八代海の水質環境特性について検討した.水温,塩分,透明度,DO,ph,DIN,PO4-P,Dsiの水質実測データによるクラスター分析を行い,八代海海域を5つのグループに区分した.また,DIN,PO4-P,Dsiの月変動にもとづく分布特性から,八代海の北部,南部,西部の海域における,10~2月の栄養塩濃度が高い状態は,海面養殖との関連性が示唆された.東シナ北部海域に開口する八代海海域における近年の水温変動は,東シナ北部海域のそれとの連動が示唆された.近年,八代海海域の全域で,水温の上昇傾向が続いており,これに呼応するように,赤潮が急増していることが明らかになった.
  • 田中 陽二, 岡崎 光平, 佐々木 淳
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1246-I_1251
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     閉鎖性内湾における流動場の再現精度はメッシュサイズに依存しているため,メッシュサイズによって生じる流動場の誤差を正しく評価することが求められる.本研究の目的は,閉鎖性内湾の流動場に重要な役割を果たしている潮汐残差流に着目し,メッシュサイズによる流動場の誤差を評価する方法を示すとともに,その誤差を事前に推定するための指標(メッシュ細分化指標)を検討することである.伊勢湾を対象海域として,400m, 800m, 1600mの3種類のメッシュサイズで潮流計算を行った.潮汐・潮流の再現性はいずれのメッシュでも良好であったが,海峡部での残差流はメッシュサイズによる差が比較的大きくなっていた.メッシュ細分化指標として,地形の複雑さ,および残差流の変動に基づく指標をそれぞれ提案し,残差流誤差との比較を行った.そのうち,残差流の変動に基づく指標は残差流誤差との決定係数が0.48と比較的高く,メッシュ細分化指標として使用できることが示された.
  • 田多 一史, 所 立樹, 渡辺 謙太, 桑江 朝比呂
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1252-I_1257
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     北海道風蓮湖において現地調査を実施し,大気-海水間CO2フラックスを推定した.そして,CO2フラックスとその変動要因(風速,水温,塩分,全アルカリ度(TA),溶存無機炭素濃度(DIC),生物過程による炭素増減量)との関係性(時系列変化,単相関・偏相関等)について検討した.また,変動要因の相対的な影響度を把握するために,多変量解析(パス解析)を行った.解析の結果,大気-海水間CO2フラックスに影響を及ぼす環境要因として,湖内の代表的な水質指標である塩分に起因するDICとTAが挙げられた.また,CO2フラックスは風速からの直接的な影響,DICを介した生物過程(呼吸・分解,光合成)からの間接的な影響も受けていることが示唆された.
海洋開発論文集 Vol.29(第37回海洋開発シンポジウム特別セッションのまとめ)
  • 下迫 健一郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1258-I_1260
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東日本大震災における津波によって,防波堤や防潮堤など沿岸部の海域施設に極めて大きな被害がもたらされた.今回の津波はこれまでの設計で考慮していた津波をはるかに上回るものであり,想定していなかったこれまでにない形態の被災も発生している.そのため,これからの海域施設には,設計を超える津波に対しても壊滅的な被災とならないような「粘り強い構造」が求められている.
     第37回海洋開発シンポジウムにおける特別セッション「津波と海域施設」では,津波による構造物の被災状況を改めて分析するとともに,被災した施設の復旧や他の地域における施設の補強対策を進めるに当って必要となる,海域施設の新たな設計の考え方について検討を行った.
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