土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
69 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.29
  • 日高 正康, 西 隆一郎, 内山 正樹, 福田 隆二
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_898-I_903
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     鎌田泰彦(1967)1)や近藤ほか(2003)2)は,九州西岸の有明海および島原湾内の底質の粒度組成を求め,この海域の堆積環境は5つの堆積型に分けられることを明らかにした.その後,秋元ほか(2006)3)は島原湾東部,熊本県白川沖の含泥率の鉛直分布より泥化が進行している海域の存在を明らかにした.本研究では,2002年4月に有明海および島原湾において柱状に採取した海底表層堆積物試料を分析し,底質の中央粒径,砂・シルト及び粘土の含有率の時空間的分布を求めて,諫早湾が開門される2002年以前の堆積環境の経年変化について考察した.なお本研究は,1997年4月14日に潮受け防波堤が閉鎖されたあと.2002年の4月24日の短期的に開門される前までの有明海および島原湾の底質状況に関する研究である.
  • 日高 正康, 西 隆一郎, 前田 広人, 内山 正樹, 福田 隆二
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_904-I_909
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     鹿児島県では深水層における低酸素化,無酸素化の拡大は湖底表層堆積物中の窒素やリンの溶出を助長し, さらなる富栄養化につながるという懸念から,定期的に池田湖の水質調査を実施している.しかしながら底質とくに湖底堆積物の化学分析についての報告は少ない.そこで本研究では年間(15か月)を通じて採取した底泥試料を用いて,底質汚濁の化学的指標の一つである硫化物含量を基に, 池田湖の底質の季節変化を水温躍層の形成過程の観点から明らかにすることにした.その結果, 硫化物濃度は成層期の終わりに極大となり, 逆に循環期には低下することがわかった. また, 近年の温暖化の進行により湖水の上下混合の程度が弱まることによって, 湖底の硫化物濃度の上昇を起こす可能性を示唆した.
  • 山崎 宗彦, 村上 和男
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_910-I_915
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,シルテーション現象が問題化している新潟西港を対象とし,港内に流入する土砂量の把握,堆積特徴について検討する.出水時におけるヒステリシスの関係や,流量調整の影響を考慮することで,精度良く流入土砂量を算定した.また,実際に観測された浚渫土砂量,深浅測量のデータと比較することで,その精度と季節的な特徴を把握する.海洋数値モデルPOMに,底泥の巻き上げや,土砂輸送モデル等を組み計算を行った.観測された流況,水質に合うようパラメータの感度調整を行い,出水時における港内の水質や流入土砂の輸送,堆積特徴の把握を行った.
     この結果,流入土砂量は,上流河川の流量や気象条件によって,季節的な変動が見られた.また,港内に流入する河川流量,水質の変化によって,出水時における堆積特徴の変化を確認した.
  • 山本 浩一, 西村 翔太, 関根 雅彦, 今井 剛, 樋口 隆哉, 神野 有生, 濱田 孝治, 横山 勝英
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_916-I_921
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,塩分が増加する環境である河川感潮域の底泥と,もともと塩分に晒されていた海底泥が,淡水に晒されたときの沈降速度が塩分によってどのように変化するかを明らかにすることを目的として,ほぼ粒度分布が同一とみなせる感潮域底泥と海域(干潟)の底泥について沈降速度の塩分依存性を検討した.その結果,塩分による沈降速度の増加は粘土粒子の凝結によるものであり,低塩分下でもEPSに富む河川感潮域の底泥は粘土粒子とシルト粒子の凝集により沈降速度が高くなることが明らかになった.
  • 宇野 宏司, 数馬 直樹, 辻本 剛三, 柿木 哲哉
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_922-I_927
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     河口域に形成されるワンドは,河川流のほかに潮汐流や伏流水の影響を受け,河川本川とは異なった環境が形成されている.そこには多種多様な動植物が生息・生育し,生産性の高い豊かな生態系が構築されるとともに,洪水時には遊水機能を発揮するなど防災面からも貴重な空間となっているが,その物理的な環境については未解明の部分も多い.
     本研究では兵庫県下最大の一級河川である加古川の河口右岸に形成されているワンドを対象に,微細粒子の移動特性とワンド内の物理環境の実態把握を目的とした現地調査を行い,ワンド内外の底質移動特性や植生による波浪の減衰効果等を明らかにした.
  • 村上 智一, 鵜飼 亮行, 野口 幸太, 河野 裕美, 水谷 晃, 下川 信也, 中瀬 浩太, 吉野 純
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_928-I_933
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,西表島網取湾における河川からの流入土砂の輸送状況の解明であり,特に夏季および冬季の平均的な気象時や台風および出水といったイベント時での相違に着目した.そのために,網取湾において気象,海洋および河川観測を実施し,得られたデータを多重σ座標系沿岸海洋モデルCCMに入力することで,夏季,冬季,台風1109号時および出水時の網取湾の海水流動を再現し,その再現された海水流動場の下で土粒子の粒子追跡解析を行った.
     その結果,夏季は東側リーフの土粒子の分布数が西側リーフに比べて多くなる一方で,冬季は西側と東側リーフの土粒子の分布数がほぼ同じとなるなどの夏季と冬季の網取湾の土砂輸送のパターンを明らかにした.また,台風1109号時や出水時では,強風や増加した河川流量に伴って土粒子が湾全体に広く分布することを示した.
  • 若佐 和美, 宮武 誠
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_934-I_939
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     波打ち帯の漂砂移動に及ぼす飽和・不飽和斜面の浸透・滲出流の影響を模型実験及び数値解析の両面から検討した.模型実験では,段波作用下の前浜斜面に敷設した蛍光砂にブラックライトを照射し,波打ち帯の漂砂移動を可視化するとともに,前浜砂層内に注入した蛍光塗料の軌跡から前浜浸透流の流速・流向を推定した.その結果,砂浜斜面が飽和状態にある場合,沖向きから上向きに転じる前浜浸透流が強まることで,前浜砂層の砂粒子には揚力が働き,波打ち帯の漂砂移動をより活発化させていることを明らかにしている.また,遡上波変形と飽和-不飽和浸透流の結合数値解析モデルならびに,透過斜面の無次元掃流力モデルによる数値解析の結果は,実験で得た波打ち帯の漂砂移動の傾向にほぼ一致することを示している.
  • 遠藤 将利, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁, 片江 友美
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_940-I_945
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東京湾内に造られた人工海浜のいなげの浜と幕張の浜は,互いにわずか5km離れているのみであるにもかかわらず,沿岸漂砂の卓越方向が反転する現象が見られた.この現象を解明するために,これらの人工海浜について空中写真により汀線変化を調べるとともに,2012年8月17日には海浜縦断測量と海浜構成材料のサンプリング調査を行った.その上でSMB法による波浪推算を行い,いなげの浜と幕張の浜での年間の沿岸漂砂量を推算した.この結果,いなげの浜で卓越方向が南東向きとなった理由として,沖地形による屈折の影響が大きいことが分かった.
  • 大久保 泰宏, 新舎 博, 秋本 哲平, 海野 寿康, 井熊 孝樹, 江森 吉洋
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_946-I_951
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     汚染物質が付着しやすい浮泥を封じ込める目的で,固化処理土を利用した浮泥の封じ込め施工を実施した.現地調査の結果,浮泥の平均湿潤密度は1.05g/cm3で,最大層厚は10mmであった.浮泥の封じ込め施工に際しては,事前に,浮泥の封じ込め方策を見出すために,数十種類の配合の異なる処理土を作製し,現場施工を模擬した水中打設実験を実施した.その結果,第1層として,処理土A(湿潤密度1.1g/cm3,水中流動性小)を10cm厚で打設すると,処理土A層によって形成された大きな空隙の中に浮泥が取り込まれること,その後,第2層として,処理土B(湿潤密度1.3g/cm3,水中流動性大)を10cm厚で打設すると,処理土A層の上に処理土Bからなる覆土層が形成され,浮泥の封じ込めが可能であることが明らかとなった.また,現場試験施工として,上記のように処理土を2段階施工すると,浮泥の封じ込めが可能であった.
  • 山越 陽介, 赤司 有三, 中川 雅夫, 菅野 浩樹, 田中 裕一, 辻 匠, 今村 正, 渋谷 貴志
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_952-I_957
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     カルシア改質土は,これまでに実海域で浅場マウンド造成工事の事例が報告されているが,今回初めて埋立地盤の大規模造成を行った.大量施工における,配合設計方法,施工品質管理方法,造成地盤の強度確認までの一連の品質管理の確立に資することを目的として,配合試験データ,施工品質管理データの取得並びに造成地盤調査を行った.その結果,セメント固化処理土と同様の手法で配合設計が可能であること,カルシア改質土の短期強度,湿潤密度の測定により目標強度達成状況を予測することが可能であること,静的コーン貫入試験や表面波探査を用いて造成地盤全体が目標強度を達成していることを確認できた.
  • 吉田 誠, 高橋 英紀, 森川 嘉之, 深田 久, 中島 秀晃, 河田 雅也, 水谷 征治, 住谷 圭一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_958-I_963
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本論文は,浮き型格子状固化処理工法の水平成層地盤への適用性を解析的に検討したものである.浮き型格子状固化処理工法は,液状化地盤の上層のみを格子状に固化改良し,下層を未改良とする液状化対策工法である.改良格子は三次元的な配置であるため,三次元FEMなどにより液状化対策効果を評価する必要があるが,そのモデル化には多大な労力を要する.本研究では格子形状を疑似的に二次元でモデル化する有効応力解析法を提案し,遠心模型実験の再現解析をとおして,液状化対策効果を十分な精度で評価できる解析方法を示した.同時に,実験では確認できない地盤の応力状態や振動特性を把握し,浮き型改良の液状化抑制メカニズムを検証した.さらに,実験では再現できない広い領域に対して解析を行い,その液状化抑制効果について検討した.
  • 秋本 哲平, 車田 佳範
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_964-I_969
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     港湾構造物等における細粒分含有率Fcが高い地盤に対する液状化対策として,高圧噴射攪拌工法が知られているが,排泥処理に関するコストや環境への負荷が課題となっている.本研究はそういった課題を解決することを目的に排泥を有効利用することにより発生量を抑制する高圧噴射置換工法を提案するものである.
     本工法における最重要課題は,高圧水噴射による排泥とロッド先端から吐出する充填材の混合を抑制しつつ,充填材を広範囲に充填することである.その課題を解決するために,室内での充填実験および屋外での実機を用いた試験施工を実施した.その結果,高圧水を噴射する切削部と充填材を吐出するロッド先端部を1m離隔することで,排泥と充填材の混合を抑制でき,充填材のフロー値を190mm程度に調整することで,広範囲に充填できることが確認できた.
  • 新舎 博, 宮本 健児, 渡部 要一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_970-I_975
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     浚渫土を処分して形成された沿岸域の埋立地盤の中には,透水係数の大きい中間砂層が存在していることが多い.こうした埋立地盤を真空圧密で改良すると,中間砂層を通じて埋立地外の水を多量に吸引し,圧密改良効果そのものが著しく低減するのではないか,という懸念がある.そこで,中間砂層からの吸引水がある場合を想定して,粘土地盤の真空圧密効果を室内実験で明らかにすることを試みた.実験は中間砂層からの吸引水量をPBD1本あたり2ℓ/minと設定し,吸引水量がある場合とない場合の圧密実験を実施した.両者の沈下曲線を比較すると,大きな差がないことから,2ℓ/minの吸引水量が圧密へ及ぼす影響は小さいことが明らかとなった.また,PBDの許容通水量についても,負圧作用時の吸水試験の結果を基に考察した.
  • 松﨑 義孝, 高橋 重雄, 伴野 雅之, 髙山 知司, 合田 和弘
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_976-I_981
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     2012年10月米国東岸に上陸したハリケーン・サンディに伴う高潮・高波により,米国ではニューヨーク州とニュージャージー州を中心に大きな被害が生じた.今回のハリケーン・サンディは,フェッチが長い,水深が浅い,波のセットアップといった,高潮の発生する要因が揃っていた.ニューヨーク市街地近郊において最大4mの高潮偏差であった.地下トンネル,地下鉄,地下街の浸水,停電,港湾・空港施設の被害,発電所,工場,製油所の浸水被害,油流出など,大都市における高潮災害であったことが特徴である.また,米国沿岸部は広範囲にわたって高潮被害を受けており,特にバリアー島において被害が大きかった.沿岸部住宅地区では高潮,火災による家屋の被害があった.
  • 三上 貴仁, 柴山 知也, Miguel ESTEBAN
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_982-I_987
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     2012年10月29日にアメリカ東海岸に上陸したハリケーンサンディにより,ニューヨーク州やニュージャージー州の沿岸部で高潮災害が発生した.ニューヨーク市では,変電所の浸水による停電や地下鉄を含む地下空間の浸水など,都市機能に大きな被害が生じた.本稿では,現地調査結果とウェブ上で収集した情報をもとに,ニューヨーク市における高潮災害の実態をまとめた.さらにこれらの情報をもとに,日本の臨海都市域での浸水災害を考える際に検討すべき項目として,地下空間における浸水災害の評価,人的被害軽減のための措置,異なる浸水形態(高潮と津波)の想定の3つを取り上げて論じた.
  • 高木 泰士, Tran Van TY, Nguyen Danh THAO, Esteban Miguel , 高橋 勇人
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_988-I_993
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     メコンデルタの洪水リスクを評価するためには,今まで十分に考慮されてこなかった潮汐の影響の理解が不可欠である.加えて,将来的な洪水リスクの議論では,海面上昇の検証が必要となる.本研究では,潮汐と海面上昇がメコンデルタ都市の洪水頻度や浸水深に及ぼす影響を検証した.メコンデルタ最大の都市Can Thoは,河口より80km内陸に位置するが,河川水位は年間を通じて潮汐の影響が支配的であり,半日周潮,日周潮および年周潮の影響が顕著である.Can Thoの川岸では,現在年間2.5%程度の時間帯で浸水が発生しており,市内の主要道路では膝上程度の浸水が発生している.海面上昇により,将来洪水頻度が増加し,現在は雨季に集中している浸水が将来的には年間を通じて発生することが定量的に示された.
  • 星野 さや香, 柴山 知也, Miguel ESTEBAN, 高木 泰士, 三上 貴仁, 高畠 知行
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_994-I_999
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     気候変動が現在のペースで100年にわたり継続したと仮定して,将来の気象条件下で強大化した台風が日本に来襲した場合に発生する高潮の危険性を予測し,沿岸域防護手法を提案した.東京湾を例として検討し,算出した高潮より標高の低い地域について,失われる資産額の算出を行った.また,算定した最高高潮水位を水準とした防潮堤の嵩上や新設,堤外地の地盤高の嵩上にかかる費用の算出を行った.約100年後の気象条件下で,190cmの海面上昇を考慮した場合,東京港・川崎港・横浜港には標高にしてそれぞれ4.5m・4.0m・3.9mの高潮高を推算した.これらの標高以下の地域が全て浸水したと想定すると,東京では75兆円,神奈川では4兆円を越える被害が出る.強大化した台風が防潮堤や水門の機能を停止する場合を想定して,将来的に荒川流域の高潮防護計画を確立する必要がある.算出した高潮高への対策として胸壁防潮堤の新設・堤外地の嵩上を行うと,直接的費用は東京港において約2,600億円,川崎港・横浜港において約1,200億円となる.
  • 田辺 智子, 山城 賢, 島田 剛気, 横田 雅紀, 木梨 行宏, 橋本 典明
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1000-I_1005
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     有明海は,高潮の危険性が高い海域の一つであり,さらに将来的には温暖化による高潮リスクの増大が懸念されていることから,特に背後に低平地を有する湾奥部の沿岸では,高潮・高波に対する防災対策が重要である.本研究では有明海湾奥部の沿岸防災に資する知見を得ることを目的に,海岸堤防に沿った複数の地点で潮位観測を実施し,湾奥部の高潮の増幅特性等について検討した.加えて,非構造格子モデルFVCOMを用いて観測期間に来襲した台風1216号について高潮推算を行い,湾奥部の高潮増幅率をより詳細に検討した.台風1216号のように有明海の西側を台風が北上すると,湾奥部で高潮が大きく増幅される場合があることが,潮位観測および高潮推算結果より具体的に示された.
  • 鈴木 武, 柴木 秀之, 鈴山 勝之
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1006-I_1011
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     高波が来襲する状況での越流現象の特性を把握するため,VOF法に基づく2次元数値波動水路(CADMAS-SURF)を用いて,海水が堤防から越流する状態の数値実験を行った.その結果,数値実験は,本間1)の越流公式から求められる越流量を波なしの条件において概ね再現した.波がある場合は,波なしの場合よりも越流量が大きくなり,その増加量は完全越流の場合が,もぐり越流の場合より大きかった.堤防壁厚が薄い場合は,完全越流の場合に,壁厚が厚い場合よりも越流量が大きくなるが,もぐり越流の場合は明確な差が現れなかった.
  • 小田 僚子, 伴内 祐太, 番場 勇介, 高岡 大晃, 仁平 学, 矢内 栄二
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1012-I_1017
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     千葉県習志野市の住宅街に存在する潟湖干潟である谷津干潟全体の熱緩和効果を検討することを目的とし,夏季においてシンチロメータによる顕熱フラックスの集中観測を実施した.その結果,谷津干潟全体の顕熱フラックスは日中で最大83Wm-2,1日積算では1.26MJm-2day-1であった.都市住宅街の平均顕熱放出量(9.02MJm-2day-1)と比べて小さいことから,谷津干潟は住宅街において熱緩和効果を持つことが示唆された.また,干潟内の点計測による顕熱放出量との比較から,水深の浅い場所(2.57MJm-2day-1)に比べて水深の深い部分を含む干潟全体では顕熱の放出はより抑制されており,熱緩和効果は谷津干潟の水位に強く依存していることがわかった.
  • 徳永 貴久, 田井 明, 木元 克則
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1018-I_1023
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     有明海湾奥西部の干潟縁辺域を中心に形成する貧酸素水塊の経年変動特性と潮流との関係を明らかにするために2005年から2012年の夏季に流速および底層DO等の水質の現地観測を行った.流速の調和解析を行った結果,いずれの年も10分潮のうちM2潮が卓越しており,東西成分よりも北方成分が卓越していた.各成分を合成した潮流振幅(M2)は2009年が大きく,2006年と2012年が小さかった.平均底層DOは2006年および2012年が最も低く,2009年が最も高い値を示した.潮流振幅(M2)と密度差,潮流振幅(M2)の3乗と平均底層DOのとの間には相関関係が見られたことから,有明海湾奥西部の干潟縁辺域では,生物化学的作用のみならず淡水流入による河口循環流の形成とそれによる潮流振幅の変化が貧酸素水塊の形成に重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 藤原 哲宏, 中本 健二, 日比野 忠史, 齊藤 直
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1024-I_1029
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     広島デルタ河口域に形成された河川干潟では,ヘドロ化が進みアナジャコ等が優占する泥干潟になり,アサリ漁獲量は種苗放流の効果も少なく激減している.また,河川護岸の防災機能強化を目的とした護岸法尻への鋼矢板の打設により,護岸堤内側から河川干潟の地下に流出していた地下水が遮断され,干潟環境が変化していると想定される.
     泥化が進行し地下水が遮断された河川干潟内の澪筋において,石炭灰造粒物を0.3m厚の覆砂状に敷設することによるアサリ育成場の構築を試みた.造粒物の散布により造粒物層および散布境界部での生物相が変化し多様な生物の生息環境が形成されつつある.造粒物散布12ヶ月後には定着したアサリの生息が確認され,石炭灰造粒物による覆砂によりアサリの生息が可能な環境を創出できる可能性が確認された.
  • 竹山 佳奈, 木村 賢史, 上村 了美, 吉田 潤, 中瀬 浩太, 古川 恵太, 鎌田 弘行
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1030-I_1035
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     河口域の自然干潟のタイドプールや澪筋等の微地形は,魚類の重要な生息場として評価され,浅場とは異なる役割を持つことが指摘されてきた.しかしながら,大都市運河域の造成干潟のタイドプールにおける魚類の生息場としての機能に関する報告は少ない.2002年に東京湾奥部の京浜運河で自然再生等を目的として造成した「大森ふるさとの浜辺公園」の干潟上に,生物多様性の豊かな環境創造を目的として,タイドプール等の微地形を造成した.この微地形の魚類相,ベントス,水質について調査し,造成したタイドプールの魚類生息場としての機能や環境特性について明らかにした.また,水深やサイズ,地盤高などの地形条件が異なるタイドプールについて,魚類生息状況を比較し,運河域の生物多様性にとって重要なタイドプールの条件についてまとめた.
  • 中村 友昭, 趙 容桓, 水谷 法美, 李 光浩
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1036-I_1041
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     砂粒子の間隙に粘土が含まれることによる粘着力の効果を導入した漂砂計算手法を提案するとともに,それを組み込んだ波と地形変化の相互作用を解析できる数値計算モデルを構築し,浅場の地形変化現象への適用を通じてモデルの妥当性の検証と粘着力の効果の感度分析を行った.その結果,砂粒子の間隙に粘土があることによる効果は限界Shields数を大きくするだけでは表せず,粘着力の効果を適切にモデル化することの重要性を示した.また,粘土の含有率,含水比,粘着抵抗力の増加とともに,限界Shields数は増加し,掃流砂量は減少することから,浅場の地形変化が小さくなる一方で,地形変化の傾向は影響を受けないことを明らかにした.したがって,砂粒子の間隙に粘土を含ませることで,地形変化の傾向に影響を与えることなく地形変化が抑えられる可能性を示唆した.
  • 宮崎 哲史, 肴倉 宏史, 水谷 聡, 高橋 克則, 木曽 英滋, 平井 直樹, 武田 将英, 倉原 義之介
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1042-I_1047
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     鉄鋼スラグ製品の海域利用に際しては,表面から溶出するアルカリによるpHの変化を把握する必要がある.スラグ製品に関するpHの変化について,既往の研究では円筒容器などの閉じられた系における室内実験は実施されているが,流れがある開放された系での実験は実施されていない.そこで,本研究では,実海域の開放された系を想定した大規模な水槽実験を行い,5種類の鉄鋼スラグ製品からのアルカリ溶出について,pHを指標として,その空間分布の時間変化を調べた.その結果,粒度調整した製鋼スラグでは,その粒径によってアルカリ溶出特性に違いがあることが分かった.一方,鉄鋼スラグ水和固化体製人工石材およびカルシア改質土では,アルカリ溶出によるpHの変化は見られなかった.
  • 山田 耕一, 辻 匠, 渡部 要一, 水谷 崇亮, 森川 嘉之, 鵜飼 亮行
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1048-I_1053
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     近年,環境創造を目的とした人工干潟の造成が実施されているが,周辺の海域利用の影響を軽減するため,干潟法留め潜堤が構築される.干潟を造成する海域の地盤は,一般的に軟弱な地盤が多く,潜堤の基礎地盤は地盤改良されるが,地盤改良は全体工事費の中で占める割合が高く,造成事業の課題の一つとなっている.そこで,潜堤の構造材料として石材に代わり,軟弱地盤へのなじみが良いカルシア改質土を用いた地盤改良のない潜堤について模型実験を行い,その可能性について検討した.
     模型実験では軟弱地盤中へのめり込み形状や固化後の破壊状況を計測し,数値計算によりその結果の評価を試みた.本研究により,地盤改良のない干潟潜堤の可能性と今後の課題が明らかとなった.
  • 熊谷 隆宏, 高 将真, 田中 裕一, 乗松 秀臣, 川島 浩治
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1054-I_1059
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     鉄鋼スラグの一種である転炉系製鋼スラグを中詰材に有効利用する人工干潟を造成した.スラグを中詰材に用いる干潟の断面構造として,下層に粒径30~85mmの脱炭スラグ,その上に粒径0~25mmの脱リンスラグ,そして覆砂を配置する3層構造にすることにより,粒径の小さい材料の下層への落ち込みが抑制され,安定な構造を実現できることを明らかにした.また,修正カムクレイモデルを搭載した地盤解析モデルによる圧密沈下解析を干潟の施工管理に導入した.FEM解析において,干潟の施工履歴を再現しながら,将来の沈下予測を行い,中詰部の上げ越しの高さおよび覆砂の仕上げ高さを評価した.FEM解析を施工管理に導入することにより,干潟や藻場基盤としての機能を維持する上で必要な地盤高さを将来にわたって確保することを可能にする高精度の施工を実現した.
  • 高 将真, 杉原 広晃, 土田 孝, 熊谷 隆宏, 山田 耕一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1060-I_1065
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     スラリー化した浚渫土を圧入して圧密沈下した干潟地盤を隆起させる圧入工法は,既往の研究において有効な工法として提案されてきた干潟の修復方法である.表層の生物相に影響を与えず,さらには定常的に発生する港湾航路の維持浚渫と干潟造成・維持を両立出来る工法である.本研究では, 圧入工法の実用化に向けて実規模実験を実施し,補助工法としての隆起抑制板の設置や高圧噴射攪拌による圧入地盤の事前軟化の有効性を確認した.また,S波速度分布より圧入した浚渫土の内部形状を推定し,圧入土量との整合を確認した.さらに2次元FEM解析を行い本工法の再現検証を行った.本工法を用いると,浚渫土を活用した人工干潟の造成から修復までの一連の施工システムを構築できると考えられる.
  • 鶴ヶ崎 和博, 澤田 豊, 角田 紘子, 菱沼 由美子, 土田 孝
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1066-I_1071
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     人工干潟の造成では,潜堤や護岸を築造した後に浚渫土などの中詰め材を投入し,その後覆砂を行っている.基盤が良好な場合,直接のレキ材投入による潜堤や護岸の造成が可能であるが,軟弱な場合,事前に地盤改良などを要する.本研究では,軟弱な海底地盤上への干潟造成を想定し,潜堤についてはレキ材の替わりに袋状のジオメンブレンに周辺の浚渫粘性土を注入した袋体の適用性について検討を進めている.本報では正規状態に近い海底地盤上に高さ3m以上の潜堤を安定的に構築することを目標として,遠心力模型実験および数値解析により潜堤の安定性や変形挙動について検証した.
  • 越川 義功, 日比野 忠史, 中下 慎也, 吉岡 一郎, 中本 健二, 山木 克則
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1072-I_1077
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     ヘドロが堆積した海域にアマモ場を再生するために,広島港に造成した石炭灰造粒物基盤において,アマモ場の複数年にわたる群落の維持,地盤との活着機構について調査した.懸念された石炭灰造粒物基盤の地形変動は低潮位時に波の影響を受けるものの,一定期間後には安定することが明らかになった.また,石炭灰造粒物で造成した生育基盤では,アマモの地下茎と細根が基盤の細部に入り込み,草体の流出を防ぐとともに地形の安定化に寄与している.この結果から,石炭灰造粒物で造成したアマモ生育基盤は,長期的かつ効果的にアマモ場を形成する手法として有効といえる.
  • 片倉 徳男, 高山 百合子, 住廣 隆夫, 廣島 英樹, 岩田 至
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1078-I_1083
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     世界的な規模で環境の変化が問題となり,アラビア湾でも1996年以降に異常に高い海水温がしばしば記録され,特にサンゴは大きなダメージを受けていることが報告されている.本研究を実施しているアラビア湾のムバラス島の周辺海域でも,36℃を超える異常に高い海水温がしばしば記録されている.そして多くのサンゴが高水温によるダメージをうけた痕跡が確認され,一部の種は絶滅の危機に瀕していた.そこで,絶滅の危機に瀕したサンゴの復活とともに,周辺海域に生育する海草について,再来する高水温からのダメージを回避するため,新たな増殖技術の開発が必要になった.しかし,アラビア湾は常時でも他の亜熱帯地方より高い水温と塩分濃度であるうえ,現地における移植の取り組み事例や研究事例がない.そこで,日本国内で培った移植技術をベースに,1)サンゴを絶滅から回避する移植技術の開発,2)海草群落の増殖技術の検証,を行い,継続したプロジェクトとして実用化した.
  • 亀山 剛史, 山地 功二, 細川 恭平, 松山 哲也, 角道 弘文, 末永 慶寛
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1084-I_1089
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東日本大震災や各種沿岸開発に伴う藻場の減少は深刻化しており,藻場の修復,造成技術の開発が望まれている.特に,浅海域で流動環境の多様性が期待できる海底勾配の急な部分から平坦部へ移行する場所への構造物の設置が求められるようになってきた.このような場所に設置する場合は,設置後の滑動,転倒さらには揚力に対する安定性に乏しくなるため,安定性向上のための技術開発も急務となっている.
     本研究は,構造物底部に滑動防止用スパイク構造,内部に揚力軽減用空孔部を設けた新たな藻場造成構造物を設計し,実機実験による摩擦係数を算定した後,海底勾配の急な場所での安定性向上技術の開発を目的とした.また,これまで藻場造成構造物の安定計算の中で検討されていなかった揚力を軽減する技術も水理実験により検討した.
  • 宮里 聡一, 清野 聡子, 田井 明, 多田 彰秀, 釜山 直樹, 木村 幹子
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1090-I_1095
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     近年,日本では総合的な海洋の生物多様性保全への取り組みが始まっている.とくに,2011年には,環境省により「海洋生物多様性保全戦略」が策定され,海洋保護区(MPA: Marin Protected Area)設定の取り組みが開始された.MPA設定には,資源管理上重要となる海域の抽出が求められている.漁業データの集積,地域住民の経験知,海洋学的および生態学的な科学的知見は,その選定の際に不可欠である.現在,長崎県対馬市では,水産資源の持続的可能な利用を目的としたMPAの設定に向けて,漁業者を中心に検討が行われている.本研究では,対馬周辺海域の漁業環境情報の集積,地理情報システム(Geographic InformationSystem)によるゾーニングを行った.また,海洋構造と生息場のゾーニング手法の関連性を検討するため,対馬北部海域で行った現地観測の概要と結果を示す.
  • 佐藤 仁, 山本 潤, 岡元 節雄, 工藤 博文, 今林 弘, 黄金崎 清人, 渡辺 航希, 山下 俊彦
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1096-I_1101
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     北海道の日本海沿岸では,栄養塩の乏しい海域特性及び冬季の水温上昇に伴うウニの食害に起因する磯焼けが発生しており,磯根漁業に深刻な影響を与えている.磯焼け対策については,各地で様々な手法で実施されているが,藻場の維持回復が限定的で,かつ持続性が確保できないケースが多く見られる.
     本論文は,環境共生機能を付加しながらも磯焼けの影響を強く受けている沿岸構造物の改良を含む磯焼け対策施設の計画,整備手法並びに効果の検証方法について検討した.その結果,海域環境に応じた嵩上げ改良,養殖ロープ造成,ウニ密度管理手法を立案した.また,これら施設の構造設計に関わる条件設定に順応的管理手法を導入し,施工時における地域協働も活用した総合的な磯焼け対策事業を構築した.
  • 高山 百合子, 片倉 徳男, 伊藤 一教, 住廣 隆夫, 廣島 英樹
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1102-I_1107
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     アラビア湾(ペルシャ湾)南部に位置する島(ムバラスショール)周辺の流況と,そのショールから発生するサンゴ卵・幼生の輸送について,潮流と吹送流を外力とした数値計算によりいくつかの検討を行った.その結果,このショール周辺では,年間を通して北西風が卓越していることから,サンゴ幼生は,概ね島南東方向へ輸送される傾向が示された.ただし,その輸送距離は風の強度により異なることから,輸送時期の風が弱い場合,サンゴ幼生はショール周辺に留まる可能性があることが示唆された.また,その輸送距離について2D計算と3D計算を比較した結果,風の影響が大きい場合にその差異が大きくなった.断面2次元計算により一方向風の影響特性を整理した結果では,風速が大きい程3D表層と2Dの流速差異が大きくなったことから,鉛直分割数を増やす必要性が確認された.
  • 大塚 文和, 川西 利昌, 増田 光一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1108-I_1113
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東京湾におけるアサリ幼生の観測結果である殻長出現頻度分布を基に、それらを正規分布の重ね合わせで近似できるとした混合正規分布と捉え、最小2乗法により同時発生個体群(コホート)を抽出することにより、合理的に平均成長速度を推定した。また、その結果を踏まえて、アサリ幼生の発生時の殻長および成長速度について個体差を考慮した簡易な幼生成長モデルを構築し、殻長出現頻度分布の観測結果を再現することにより、成長モデルの妥当性を明らかにした。更に、アサリ幼生の殻長や鉛直移動速度等の個体差を考慮した鉛直移動モデルを構築し、鉛直1次元の基本的な再現シミュレーションを行い、モデルの妥当性を明らかにした。
  • 東 和之, 大田 直友, 河井 崇, 山本 龍兵, 橋本 温, 石田 達憲, 山中 亮一, 上月 康則
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1114-I_1119
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     ホソウミニナが提供する生態系機能と,取り巻く生物との種間関係を明らかにするために,ホソウミニナ,ユビナガホンヤドカリおよび底生珪藻に着目して,野外観察・実験を行った.既存干潟の77.5%のユビナガホンヤドカリはホソウミニナの貝殻を利用していた.ホソウミニナとユビナガホンヤドカリ,それぞれ単独では底生珪藻の密度を低下させたが,両種を混在させると底生珪藻の密度低下が緩和された.ホソウミニナは生態系エンジニアとして,ヤドカリの棲み場所の提供や物質循環を担っていたが,そのヤドカリにより種間相互作用が更に複雑化されていた.ホソウミニナのような生態系エンジニアにしっかり配慮していくことで,生物多様性の高い干潟の創出につながっていくことが明らかになった.
  • 吉田 潤, 古川 恵太, 上村 了美, 岡田 知也
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1120-I_1125
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     沿岸域における生態系サービスの向上においては,沿岸域の環境を統合的に評価すること,さらに大型生物などを指標として分かり易く評価し実践的な管理につなげていくことが重要である.そこで本稿では,沿岸域一体を生息場とする生物(マハゼ)を利用して沿岸域の環境を総合的に評価することを将来的な目標とし,マハゼの群集動態の解析手法の実証的な開発を行った.
     その結果,既往文献よりも長期化しているふ化時期や,年毎に成長速度を考慮する必要性が明らかになり,また全長組成分布より得られるふ化群組成は,場所毎のマハゼの加入・滞留の状況の違いを捉えることができる解析手法として有望であること,また,特定のふ化群出現頻度を空間的に解析することにより,マハゼの移動経路と影響範囲を推定できる可能性があることが示唆された.
  • 林田 健志, 山本 潤, 大橋 正臣, 河合 浩, 坂本 和佳, 村上 俊哉, 工藤 勲
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1126-I_1131
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究は,北方海域における生物パラメターを取得することを目的とし,北海道周辺海域で植物プランクトンの光-光合成曲線の推定を行い,8地点11ケースにおいて,最大可能成長速度と最適光強度を取得した.最大可能成長速度は,文献値の低栄養塩,低温,高温海域の値の範囲であり,北方海域の値は文献値と比較して大きく変わらないと考える.最適光強度は,本州や北海道の文献値と近い値であった.さらに,低次生態系モデルを用いて基礎生産量を算定した結果,武蔵堆と日本海北部海域4地点でそれぞれ29.04~63.21,32.54~185.87 mgC/(m2・day)であり,日本海北部海域の特徴を示したと考える.本研究の成果は,今後の北方海域の基礎生産に関する検討を行う場合に有効な知見となると考える.
  • 鶴成 悦久, 西 隆一郎, 加茂 崇, 立山 芳輝, 浜本 麦, 林 健太郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1132-I_1137
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,極浅海域を対象にGPS魚群探知機を用いて地形図の作成を行い,測深精度および地形図の誤差を,地形測量の高精度な測量データと比較した.その結果,公共測量や水路測量が規定する制限値より1.2倍から1.6倍の測深精度となった.一方,水質や底質,生物調査などの研究に高精度な地形図が必ずとも必要とは限らず,前述したような精度でも十分に許容できるものと考えられる.また,GPS魚群探知機は一般的に普及しており利用しやすい.そのため,地形図作成に高精度な測量成果を求めるのではなく,制限値の2倍を超えない範囲を中程度の測量精度と定義し,GPS魚群探知機を用いた極浅海域における地形図作成について評価を行った.同時に測深時に水質を連続観測することで,沿岸域水圏環境モニタリングに関する効果的な調査方法の可能性についても言及する.
  • 藤田 勇, 松崎 義孝, 白井 一洋
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1138-I_1143
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     スマートフォンを活用した海象情報のリアルタイム収集用の漂流ブイを試作し,実海域において動作確認試験を実施した.スマートフォンの内部機能と外部拡張機能を組み合わせて,GPSによる測位と風向風速を計測し,携帯電話網を介してリアルタイムにデータを遠隔地に伝送するシステムを構築した.実海域試験では,通信性能及び海象データを評価し,実用化できる可能性が大きいことを示した.
  • 関 克己, 河合 弘泰, 川口 浩二, 猪股 勉, 橋本 典明
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1144-I_1149
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     GPS波浪計は,離岸距離10~20km,設置水深100~400m程度の沖合に設置されており,沖波を直接観測することが可能な波浪計である.ただし,係留されたブイ式の観測装置で時々刻々観測地点が変化するという特徴があり,主波向については検討されているが方向スペクトル推定については検討されていなかった.
     本研究は,GPS波浪計による沖波の方向スペクトル推定の可能性について,ブイの動揺に関する数値シミュレーション結果を用いて検討を行った.その結果,ブイの移動速度を水粒子速度と仮定し,拡張最大エントロピー原理法(EMEP)を用いることにより,良好な方向スペクトルが得られることを確認した.また,波浪と風を同時に作用させたシミュレーション結果についても検討し,本検討で入力した変動風の条件下では,風の影響は小さいことを確認した.
  • 田中 龍児, 西 隆一郎, 長山 昭夫
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1150-I_1155
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     空中写真測量や航空レーザ測量を実施するには狭く,トータルステーション等による地上測量には広すぎるような範囲での陸域部の海岸地形測量を,ハンディGPSを用いて高密度にかつ迅速に測量する技術の開発を行った.DGPS補正を行うと,一般にいわれる単独測位の誤差10mよりもはるかに小さく,固定局と移動局の差を取ったことにより,電離層や大気中の電波遅延の誤差が消去されていることが確認された.さらに,3次元アフィン変換を施した結果,地図情報レベル2500程度(相当縮尺1/2,500)の精度の地形測量を,簡単に,高密度に,かつ迅速に行うことができた.調整された点群データはGISで処理し,地形図作成の自動化についても検討した.なお,一連のデータ処理はWEBプログラムを作成し,いつでも,どこでも,誰でも利用できる環境を構築した.
  • 森 洋, 林 健次, 宇都宮 好博, 大西 健二
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1156-I_1161
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東京港での浮泥層の堆積状況を含めた海底面の把握を行うため,音波探査や柱状採泥調査等を実施した.異なった周波数を用いた音波探査結果と土質性状との関連性を明らかにすることにより,探査する対象に応じた周波数設定の可能性を検討した.
  • 中村 友昭, 水谷 法美
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1162-I_1167
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     気相・液相・固相の相互作用を解析できる数値計算モデルを用いて,風による風波の発達現象に対する同モデルの再現性を検証するとともに,風によるコンテナの漂流挙動をコンテナへの作用力の観点から考究した.風による風波の発達現象に関して,吹送距離の増加とともに有義波高も増加する点で水理実験との対応を確認した.ただし,その増加割合には水理実験との差異を確認し,気液界面での相互作用を適切に再現する必要性を示した.風を主要因としたコンテナの漂流現象の解析では,風速の増加やコンテナの質量の減少とともにコンテナがより大きく漂流することを確認した.さらに,コンテナに作用する風下方向の力は抗力だけでは評価できず慣性力の影響を大きく受けることを示し,コンテナの漂流挙動を予測する際における慣性力の重要性を明らかにした.
  • 上久保 祐志, 滝川 清, 増田 龍哉, 荒川 晃, 中村 秀徳
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1168-I_1173
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     我が国においては,東京湾,有明海,八代海などの閉鎖性海域や各地の沿岸域の浮遊ゴミ問題については,船舶の航行上の安全性,良好な海浜景観の喪失,海洋生物等への影響等の問題が指摘されている.浮遊ゴミについて,より効果的な発生源対策や回収・処理を進めるためには,漂着の状況と地域の特性をふまえた取組が必要である.本研究では,閉鎖性海域である八代海において浮遊ゴミの状況や地域特性について情報を収集し,調査を行った.その結果,八代海における浮遊ゴミは球磨川を通じた陸域からの影響が大きく,豪雨時に多くのゴミを流出する.特に平成24年度の豪雨によって流出したゴミは大量に八代海北部に漂流し,地元の漁業者の操業を妨害するほどの大きな問題となった.それらの浮遊ゴミは夏季の南風,冬季の北風により,各々の風向方向が高密度漂着地点となる事が分かった.
  • 藤田 勇, 松崎 義孝, 齋藤 英治, 北原 厚生
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1174-I_1179
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     海面に浮遊する油の漂流制御を目的として,水面に対して斜めに入射する水ジェットによる集油特性を検討した.高圧水を流れを持つ水面に対して斜めに噴射すると,放物線状のフロントで囲まれた排除領域が発生し,外部の流れは領域内部に進入して来なくなる.この様な排除領域の大きさを表す代表長さを実験によって計測した.計測データを整理し,潮流速度,水ジェットの速度及び流量から代表長を求める実験式を提案した.
     更に粒子法によるモデルを作成し,数値計算で実験をシミュレートした.粒子モデルにより現象をある程度再現できることを示した.
  • 嶋田 陽一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1180-I_1185
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東日本大震災の際の津波により大量の中・大規模漂流物が北太平洋へ流出し,約1年後に青森県八戸市の港から流された漁船(全長約30m)がカナダ沖合で発見された事例を踏まえてCGADDからの風圧係数,風速及び海流のモデル気候値を用いて北太平洋上の漂流漁船挙動シミュレーションにおける風圧係数の影響を調べた.今回の漂流漁船のように,シミュレーションでは八戸沖合の漂流物が北緯45度程度のアメリカ・カナダ沖合へ1年程度で到着する.風圧係数が小さくなるにつれて,漂流物が北アメリカ沖合からハワイ諸島沖合へ時計回りに移動する軌跡の大きさは小さくなり,漂流物はハワイ諸島沖合と北アメリカ沖合の間に留まる傾向を示す.この海域はGreat Pacific garbage patchに相当する.さらにアメリカ・カナダ沖合へ到着する漂流物数,短い移動時間の頻度は減少傾向を示す.
  • 加藤 一行
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1186-I_1191
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     氷荷重の算定法は,氷象の種類と存在の仕方(主に季節)により大きく異なる.構造物の形状のことはさておき,氷象の種類と存在の仕方で分類したものが.氷荷重シナリオである.設計的な氷荷重を設定する場合,想定する海域での全ての氷荷重シナリオに対して,氷荷重と再現期間の関係を求め,想定する再現期間で最大の氷荷重を設計上の特定荷重とする.本研究では,夏期の多年性平坦氷と垂直構造物との相互作用というシナリオにおける氷荷重の算定法を,氷象の持っていた運動エネルギーが相互作用後も氷象の運動エネルギーと氷象の破壊によって消費されるエネルギー(クラッシングエネルギー)の和として保存されるという仮定のもとで定式化した.さらに,その定式化を踏まえると,このシナリオの必要性に関する検討を行わなくてはならないとの認識に達した.検討を行った結果,遭遇確率が非常に高いと想定される海域以外ではこのシナリオを考慮する必要は無いとの示唆を得た.
  • 竹内 貴弘, 木岡 信治, 成田 恭一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1192-I_1197
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     海岸・海洋構造物に働く氷圧力の寸法依存性は氷圧力Pと貫入面積Aの関係で示され、この説明には幾つかのアプローチがある。その一つにPalmer and Sanderson(1991)のフラクタル理論を適用した明快な説明があるが、この場合に必要とされる海氷の圧縮破壊時のフラクタル次元Dに関しては、系統だったデータの取得が不可欠である。本研究では、海氷圧縮破壊時の氷破片のフラクタル次元Dに関する室内試験を試み、フラクタル次元Dに対するフラクタル性、氷温、密度、および結晶構造の影響を検討した。海氷の圧縮破壊時の氷破片にはフラクタル性があること、結晶構造の違いや密度には影響をあまり受けないこと、氷温の影響が僅かにあること、さらにDは2.16から2.39の範囲内にあったことなどを報告した。
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