土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
69 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.29
  • 松原 雄平, 黒岩 正光, 渋谷 容子, 大元 誠治, 大西 季秋, 市村 康
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_598-I_603
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究は,当該海岸での整備事業に対してTCMによる継続的な評価ならびに2011年から行っているコンジョイント分析評価の二つの結果から,海岸利用者が海岸景観をどのような要素からとらえているのか,検討を行ったのでその結果について報告する.
     TCMによる事業価値の算定では,新たに空間的な広がりにより景観向上の効果があれば,事業価値は上昇するが新たなる改善がなければ社会情勢に反映されず一定であることが分かった.社会資本整備における利用者の満足度は,その整備の充実度と明確に関係することが分かった.
     コンジョイント分析による算定では,「海岸保全施設の高さ」を改善することがWTPが高くなるという結果が得られた.
  • 五明 美智男
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_604-I_609
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     我が国は,北海道,本州,四国,九州,沖縄本島のほか,海上に展開する6800を超える離島で構成されている.外洋海域に数多く存在する離島は国土権益の維持,海洋環境の保全,水産・海洋資源開発の拠点として大変重要である.本研究では,航路により提供される離島,特に有人離島のネットワークに着目し,グラフ理論にもとづくネットワークの評価指標を用いて離島の社会環境の分析を試みた.分析対象とした鹿児島県,長崎県,沖縄県および東京都の海域について,提案した3つの要素によって各海域の諸島群を構成する各島の特徴,ネットワークの中での主島,属島,孤島などの特性,排他的経済水域の根拠となる低潮線基点とネットワークとの関係が明らかとなった.こうした指標は,様々な社会的要因によっても変動することから,外洋離島のみならず内海離島のネットワークおよび環境の変化や歴史的変遷を分析する上でも有効なものと考えられる.
  • 柳 馨竹, 中尾 謙太, 堀川 大介, 塩谷 茂明, 笹 健児
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_610-I_615
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     ヒューマンエラーが起因する海難事故が減少しない一因として,様々な航海情報の提供が十分でないと思われる.著者らは,近年他分野で盛んに利用されているGIS(地理情報システム)を用いて,航海の安全に必要な航海情報の提示を行う航海支援システムの確立を目指してきた.
     今回の研究の目的は航海中に最も緊張し,海難事故が発生し易く,操船困難な出入港時の局面を対象に,GISによる三次元表示を用い,視覚的に分かり易い航海情報及び擬似体験航海ができる航海シミュレーションを提示することで,操船者の安心と安全を支援することである.
  • 高 欣佳, 塩谷 茂明
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_616-I_621
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     近年の世界経済の急速な発展に伴い,グローバルな物資の輸送が頻繁に行われている.特に,海上輸送を担う船舶の大型化・増加により,海上輸送は今後もより一層重要となる.一方で,海上輸送が連続的になれば,航行海域内の船舶輻輳度が増し,海難事故多発の要因となる.また,船舶量の増加に伴い,入港時に,港外で待機する沖待ちにより,燃料費消費および船員運賃等の経済的損出だけでなく,船舶からの排ガスによる大気環境汚染等の問題が発生する.これらの問題を解決するには,まずはじめに現状での船舶の航行実態を詳細に把握する必要がある.そのため,本稿では,船舶に搭載が義務付けられているAISデータの解析により,大阪湾における船舶の航行実態の把握を行った結果を報告する.
  • 塩谷 茂明, 瀧林 佑哉, 高 欣佳, 若林 伸和
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_622-I_627
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     船舶の航海において,海上交通の安全性確保を図ることを目的に,様々な海事法規が規定されている.特に,沿岸海域で,船舶の輻輳度が高く,狭隘な海域である東京湾,伊勢湾,大阪湾及び瀬戸内海等は,航行船舶が過密状態となり,衝突及び乗揚等の海難発生の危険性が高い.その中でも,港に入出港の際,操船者の緊張感が高まり,最も危険度が高くなる.
     港の中でも特定港では,港内における船舶交通の安全及び港内の整頓を図る目的で,港則法で「特定港に出入りし,又は特定港を通過するには,国土交通省の定める航路によらなければいけない.」と制定されている.
     本研究の目的は,入出港時の船舶が港則法に定められた航路を正しく航行しているかの実態調査を,AISデータを用いて行うことである.このような詳細な調査はこれまで実施されてこなかった.調査結果より,今後,法規制の遵守の徹底,指導及び改良点等を検討する上での情報提供を処する.
  • 赤倉 康寛, 安藤 和也, 安部 智久
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_628-I_633
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     新興国の旺盛な資源需要や市場拡大によって,コンテナ船やバルクキャリアの船型大型化が続いている.大型化は,輸送において大きなコストメリットをもたらす一方で,港湾施設の大型化対応が必要となり,航路等の水域施設は,多額の費用を要する浚渫を余儀なくされる.その航路計画に当たっては,新たに出現した大型船の運動性能をベースに,港湾毎に異なる航行環境を踏まえた合理的な算定手法が必要となる.本研究は,以上の状況を踏まえ,1万TEUクラスの超大型コンテナ船,30万DWTクラスのVLOC(鉱石専用船)及び10万DWTクラスのバルクキャリアに対応した航路計画を可能としたものである.
  • 山城 賢, 横田 雅紀, 大谷 優衣, 眞栄城 玄和, 橋本 典明, 春日井 康夫, 本田 一光, 井芹 絵里奈
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_634-I_639
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     国土交通省関門航路事務所では,国際基幹航路である関門航路の維持のため航路全域にわたる深浅測量を年1回行い,浚渫を実施している.この深浅測量データは,航路全域を網羅した長期にわたるデータで極めて貴重である.本研究では,関門航路の効率的な維持管理に資するため,深浅測量データを整理・解析し,航路内の水深変化特性について検討した.その結果,南東水道地区は顕著な堆積傾向にあり,早鞆瀬戸地区では堆積と侵食が縞状に分布する海域があることなど,航路内の水深変化特性が明らかとなった.また,特に南東水道地区において,浚渫により水深変化速度(堆積速度)が増加することを示し,浚渫に伴う水深変化速度の増加率の分布を示した.
  • 本田 隆英, 羽角 華奈子, 伊藤 一教, 織田 幸伸
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_640-I_645
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     全国47地点,4年間の豊富な波浪観測データを用い,長周期波と有義波の相関関係を回帰分析により考察した.回帰分析は既往の研究にならい,長周期波高を有義波高と有義波周期の積の関数とし,1次式から3次式まで検討した.長周期波と有義波の関係は2次式により有効に表現できることを確認し,2次式の回帰係数を観測点ごとに同定した.長周期波と有義波の発生頻度分布から,長周期波高推定式の推定精度を示すパラメタsを提案し,sについて比較検討したところ,特に波浪が広範な方向から来襲する観測点では,推定精度が低い傾向が見られた.最後に,回帰式による長周期波高推定式の適用性について検討し,それぞれの観測点で同定した回帰係数を用いることで,長周期波高を良好に算出できることが確認された.
  • 横川 陽太郎, 泉宮 尊司, 石橋 邦彦
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_646-I_651
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究は,冬季日本海の発達した波浪について現地観測を行い,方向スペクトルや方向集中度などの波浪諸元の算定より波浪の変化特性を明らかにしている.推定精度の高い泉宮ら(1998)によって開発された方向スペクトル推定法NIDEを用いて,現地波浪の方向スペクトル推定を行った.風速,気圧配置など異なる気象条件の下での方向スペクトル特性について調べ,標準方向スペクトルと比較した.さらに,日本海の波浪の特徴として,波形勾配が0.04以上になることや,波高が4m以上では,方向集中度の値は急激に減少することも明らかにされた.
  • 仲井 圭二, 橋本 典明, 額田 恭史
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_652-I_657
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     ナウファスの12地点を対象として,波浪の多方向性,弱非線形性及び不規則性を考慮して拘束長周期波を計算し,年間の出現特性を調べた.波高が高いときに拘束波高は大きくなるが,平常時の拘束波高は非常に小さく,長周期波はほぼ自由波であるということができる.拘束波高/長周期波高は,水深が浅いほど,そして日本海側では方向集中度が小さいほど大きいことが分かった.また,方向集中度を考慮した拘束波高の推定式から長周期波高の推定式を提案し,その妥当性を示した.
  • 池田 奈保子, 古木 裕章, 山城 徹, 浅野 敏之, 齋田 倫範, 城本 一義
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_658-I_663
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     2012年2月10日~3月31日に上甑島浦内湾と女島沿岸において水位と流速,気圧の直接測定を実施し,浦内湾で発生していた副振動の増幅特性を調べた.浦内湾では,湾口で節を持つ周期23.8分の振動(第1モード)と,湾分岐部および湾口部付近で節を持つ周期12.5分の振動(第2モード)が卓越していた.湾口部と湾奥部における振動の振幅比が,第1モードに対しては8.7で,第2モードに対しては8.9であることを明らかにした.また,浦内湾で発生する大きな副振動は主に第2モードに起因していることを示した.
  • 田中 真史, 松本 朗, 半沢 稔
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_664-I_669
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     多くの港湾で長周期波による船体動揺が問題となっている.対策の一つとして,天端が静水面に位置する没水型長周期波対策マウンド構造物の防波堤背面への適用が提案されているが,その安定性については明らかとなっていない.本論文では,混成堤背面に適用した当該構造物の被覆材所要質量の適切な算定方法を提案するため,水理模型実験により当該構造物の越波に対する安定性を調べた.
     混成堤背面に適用した没水型長周期波対策マウンド構造物の被災形態は,法肩の被害に直接関わるマウンド天端幅によって異なることが分かった.また,消波ブロックの安定数算定式を断面諸元別に導き,安定性の差異を明らかにした.これにより,これまで設計法が確立されていなかった消波ブロックの所要質量を適切に算定することが可能となった.
  • 村上 啓介, 北村 翔一郎, 真木 大介, 竹鼻 直人, 岩田 恭平
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_670-I_675
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     効果的な防波機能と十分な耐波安定性が得られる構造形式の一つとして,防波堤や護岸天端のパラペット部を後退させた構造形式(後部パラペット)が提案されている.本研究では,後部パラペットにフレア断面を採用する新たな構造を提案し,その越波低減機能を水理模型実験により評価した.また,数値シミュレーションを実施し,フレア断面を有するパラペット部に作用する波圧と波力について検討した.後部パラペットにフレア断面を採用することで,従来の直立断面パラペットと比較して少ない後退量で越波を低減できることを確認した.また,フレア断面のパラペット部に作用する水平波力は,パラペットを後退させることで低減され,下向きの鉛直波力は増大することを示した.
  • 前田 真志, 岩本 仁志, 佐藤 純一郎, 宇多 高明, 石川 仁憲, 宮原 志帆, 芹沢 真澄
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_676-I_681
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     駿河湾に面した静岡海岸には,浜川や大谷川などいくつかの小河川が流入している.これらの河川の河口では北向きの沿岸漂砂が卓越し,また海浜が粒径の大きな砂礫で構成されているためいずれも河口閉塞が課題となっている.本研究では,BGモデル(Bagnold概念に基づく3次元海浜変形モデル)を用い,浜川地点での沿岸漂砂量1.7×105m3/yrが連続的に流れる動的平衡海浜をモデル上に造り,その上で種々の対策案について検討した.
  • 平山 克也, 加島 寛章, 林 健太郎, 五十嵐 雄介
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_682-I_687
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     わが国の港湾における防波堤の多くは越波を許容しているため,港内静穏度解析においては必要に応じて越波伝達波の発生・伝播状況を正しく把握し,港内岸壁における荷役稼働率の算定に反映させることが求められる.そこで,港内波浪変形計算に近年多用されるブシネスクモデルを用いて,防波堤上の越波量を算定すると同時にこれが堤体上を移動して港内側に流入する過程を解き,越波伝達波を算定する手法を示した.さらに,この計算モデルを越波が頻発する金沢港に適用し,港内外で観測された複数の波浪データに対する再現計算を行い,それらの計算精度を検証した.その結果,金沢港内の観測波高は防波堤端部からの回折波と風場による港内発生波が支配的であるが,高波浪時には少なくとも0.2~0.4Hzの越波伝達波が発生していることを確認した.
  • 平野 夕焼, 木村 克俊, 越智 聖志, 高橋 幹夫, 浜口 正志
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_688-I_693
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     海岸沿いの鉄道は,高波によって運行障害が発生する危険性がある.本研究では,実際に発生した運行障害事例を対象として水理模型実験により越波状況を再現するとともに,越波飛沫の飛散が鉄道線路に及ぼす影響を明らかにした.次に,より厳しい波浪条件に対して,越波による道床バラストの散乱特性を検討した.実験結果に基づいて消波ブロックによって発生する越波飛沫の軌跡の算定式を求めるとともに,沖波波高が6mを越える条件において道床が大きく変形することを示した.越波対策として開口率30%の防波フェンスを設置することにより,道床被害が大幅に低減できる.また,防波フェンスの高さを適切に設定することで,越波飛沫による運行障害を防ぐことができる.
  • 加島 寛章, 平山 克也
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_694-I_699
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     岩手県久慈港では,2011年に発生した東北地方太平洋沖地震津波により,これまで港湾域においてほとんど確認されることのなかった津波の短周期波分裂が発生し,その様子が上空からの映像として記録された.このような津波のソリトン分裂は1983年の日本海中部地震津波や2004年インド洋大津波においても確認されているが,その特性については未解明な部分が多い.本研究では,断面模型実験により当時の状況を再現し,ソリトン分裂津波の発生・伝播過程や防波堤に対する波圧特性について調べるとともに,波の非線形性と分散性を考慮可能なブシネスクモデルを用いた数値計算によるソリトン分裂津波の再現性について検討を行った.
  • 川崎 浩司, 鈴木 一輝, 高杉 有輝, 西浦 洋平, 有光 剛
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_700-I_705
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,質量保存の向上を目的に従来のCIP法に基づく平面2次元モデルを改良し,段波状津波の遡上実験を対象とした再現計算より,本モデルの妥当性・有用性を検証した.さらに,波先端や越流公式の適用有無といった条件が計算結果に及ぼす影響について議論した.その結果,本モデルは,波先端条件としてスリップ条件を課すことで,実現象に近い水面形を再現できることが判明した.また,防潮壁などの構造物を地形として表現することで,精度の高い遡上・氾濫解析が実施可能であることが実証された.
  • 関本 恒浩
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_706-I_711
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東日本大震災以降,数値波動水路を用いた津波解析が数多く実施されている.津波のような長周期波に対する数値シミュレーションを行う場合,エネルギー減衰帯と開境界による無反射境界条件処理が通常波のように有効に機能しないことがある.本研究では,線形長波理論を用いて理論的な検討を実施し,エネルギー減衰帯内では波数の変調が生じ,開境界条件であるSommerfeldの放射条件を大きく逸脱する可能性を示した.また,長周期波は,エネルギー減衰帯内で反射を生じやすいことを指摘するとともに,これらについて,モデル方程式を用いて反射率の評価を行い,本研究の範囲ではエネルギー減衰帯における反射波の発生が顕著であることを確認した.また,津波のような長周期波に対しては,エネルギー減衰帯を用いず,開境界処理のみを行うほうが良いことを指摘した.
  • 宇野 宏司, 中野 晋
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_712-I_717
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     2011年3月の東北地方太平洋沖地震では,東日本だけでなく西日本太平洋岸の各地においても津波の到達が見られた.本研究では,東北地方太平洋沖地震発生時に,四国太平洋岸,大阪湾,播磨灘で観測されていた水位,流向・流速,水温・塩分の連続モニタリング結果を用いて,東北地方太平洋沖地震津波の到達による四国・瀬戸内海域の水塊構造への影響を明らかにした.解析の結果,四万十川沖とその河口ならびに関空MT局では東北地方太平洋沖地震で発生した津波の到達が確認され,水位変動,流速,水温・塩分の鉛直分布に影響を及ぼしていたことがわかった.また,津波到達時には四万十川河口内に形成されていた成層が一時的に弱められることが明らかになったほか,津波到達から10日後には水面変動成分を含む高周波数領域でのパワースペクトルの顕著な減少も確認された.
  • 村上 智一, 川口 知格, 小笠原 敏記
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_718-I_723
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究は,各季節の宮古湾全体の流動・密度構造を明らかにすること,および東北地方太平洋沖地震津波による地形変化が宮古湾の流動・密度構造に与える影響を評価することを目的とし,海洋モデルおよび津波発生前後の地形データを用いて,宮古湾の海水流動および密度場の再現シミュレーションを行った.
     その結果,宮古湾に接続する閉伊川および津軽石川の河川流量の変化が湾内の海面密度分布を大きく支配することが明らかになるとともに,気象イベント時には,強風の影響を受け,流動・密度場が短時間に変化することが示された.また,東北地方太平洋沖地震津波による地形変化は,宮古湾全体の流動・密度場に影響を与えないものの,局所的には,津波発生前に比べて発生後の海面密度が高くなることや流向を反転させるなどの影響を持つことが明らかとなった.
  • 砂川 透吾, 辻尾 大樹, 石河 雅典, 小笠原 敏記
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_724-I_729
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     防波堤の耐津波設計に関する事象を解析できる手法の基礎的な検討として,粒子法の一つであるMPS法と数値波動水路(CS2D)を用いて,防波堤周りの越流状況を解析した.また,両モデルの特性の把握を目的として計算結果を比較した.なお,MPS法はマウンドを不透過としているが,CS2Dは不透過及び透過の2パターンを計算した.
     堤体前面の水位においてMPS法に比べCS2Dはピーク時の時間波形が急峻となる.マウンドを不透過とした場合,防波堤背後の平均流速は両手法とも類似した傾向の鉛直分布を示すが,透過を考慮したCS2Dは,マウンド底面付近での流速が最大となった.防波堤前面に作用する最大波圧について,越流水深により両手法それぞれの計算精度に違いが生じることがわかった.越流時の防波堤周辺の空間波形はMPS法が既往の実験結果と整合した.
  • 入部 綱清, 與儀 友樹, 仲座 栄三, 花城 有人
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_730-I_735
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     近年,地震動による容器内の液体の振動により容器が損傷する被害が報告されている.このような条件下においては,容器内の液体の水面は大きく振動し,砕波を伴った3次元的な複雑な運動となるため,非線形性の強い水理現象を解くための3次元数値計算手法の開発が必要である.
     本論文では円筒形容器内の水の振動を対象に,粒子法の3次元数値計算を用いて渦度の変動について検討し,渦度と水の運動パターンが特徴付けられることを実験結果との比較により明らかしている.さらに,振動振動数と水深半径比の関係を検討し,運動パターンの遷移が水深半径比によって変化することを示している.
  • 金山 進, 奥村 弘
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_736-I_741
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     エルミート完全3次要素の導入は,移流計算に高い精度を有するCIP法を非構造格子へ展開する方法の一つである.2次元問題においては三角形を用いて計算領域を分割するため,海域における波,流れ,物質移動に対する数値解析において複雑な境界条件下での適用性が期待できるが,移流計算の精度自体についても構造格子のものとの比較に基づいて把握するため,平面問題を対象とした検討を行った.矩形格子を対角線で2つのエルミート完全3次三角形要素に分割したスキームを用いてガウシアン型の初期条件に対する移流計算およびノイマンの方法による安定性解析を行い,平面問題におけるCIP法の基本形といえるA型CIP法との比較を行った.三角形要素は流れが境界線と平行に近づくと精度が低下するという特性を有しているが,それ以外の条件では,格子間隔を半分にした矩形格子のモデルに迫る精度を示した.
  • 中山 恵介, 新谷 哲也, 清水 健司, 木下 直貴, 岡田 知也, 佐藤 之信, 丸谷 靖幸, 駒井 克昭
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_742-I_747
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究では東京湾を対象とし,数値計算を適用する場合における静水圧および非静水圧の計算精度の検証をメッシュアスペクト比を変化させて検討した.東京湾において卓越して発生する内部波の選出を行うためモード解析を適用した.得られた内部波の周期を利用し,環境流体モデルFantomを使用してメッシュアスペクト比を5,10,25,50,100,500と変化させて静水圧および非静水圧の計算を行った.非静水圧でメッシュアスペクト比5の計算結果を基準として誤差評価を行い,内部波の砕波地点周辺の密度分布を再現するためには非静水圧計算を利用する必要があることが示された.計算誤差検証の結果,静水圧計算ではメッシュアスペクト比による誤差に変化はないことが分かった.さらに,非静水圧計算を利用する場合,メッシュアスペクト比10以下が望ましいことが示された.
  • 川崎 浩司, 松浦 翔, 坂谷 太基
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_748-I_753
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     OpenFOAMはオープンソースの3次元数値流体力学ツールとして注目を集めている.しかし,海岸・海洋工学分野におけるOpenFOAMの妥当性・有用性については十分に吟味されていない.そこで,本研究では,同モデルを水柱崩壊問題と段波-構造物衝突問題に適用し,精度検証を行った.既往の実験結果との比較より,同モデルが高い再現性を有していることが確認された.加えて,OpenFOAMで用いられているVOF法に基づく自由表面解析手法の妥当性について検討した.その結果,自由表面が時空間的に大きく変化する水理現象では,界面の数値拡散抑制を目的としたパラメータであるcαが計算結果に大きな影響を与えることがわかり,cαの設定には十分な留意が必要であることを明示した.
  • 奥村 弘, 有川 太郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_754-I_759
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究ではGPUを用いたCADMAS-SURF/3Dの高速化を目的とし,その適用性と検証結果を報告する.GPU化の際に必要となるCUDA移植ツールの検討を行い,FORTRANによりコーディングされているCADMAS-SURF/3DをCUDA C言語に移植するためのCプリプロセッサによるマクロ使用方法を提案する.さらに,プロファイル結果から計算のボトルネックに対し,データ配列アクセスパターンに最適化を行う.このとき,丸め誤差による解の正当性に対する検証を行い,データ配列へのアクセスパターン最適化によるプログラムチューニング方法を提案する.この手法を用いたGPU計算により,CADMAS-SURF/3Dが最大で約400%高速化した.
  • 野志 保仁, 宇多 高明, 柴﨑 誠, 熊田 貴之, 荒芝 良彰
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_760-I_765
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     茨城県鉾田海岸で現地観測を行い、HL周辺の季節的地形変動を調べた.この結果,鉾田海岸の底質は中砂と細砂で構成され,両者で全体の90%以上を占め,中砂はほぼ-3m以浅に集中的に堆積していることが明らかになった.また,南側に位置する23号HLの北側隣接部では,夏季は冬季に比べて中砂量が増加する一方,29号HLの南側隣接部ではこれと逆の傾向を示した.この現象は,当海岸では夏季には北向きの沿岸漂砂が卓越して主に細砂が流出し,冬季はこの逆になることから説明できた.この点はUAV観測によるHL周辺の汀線変化比較からも確認された.
  • 和田 耕作, 上野 博史, 宇名手 環, 高木 利光, 永田 千広, 三宅 由衣
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_766-I_771
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     島根県江の川河口から西に延びる延長約10kmの海岸は,小規模な岬に区切られた3つの砂浜海岸(東から,郷田海岸,和木波子海岸,国分久代海岸)が連続する.郷田海岸では1970年代に江の川河口付近から海岸侵食が西へと波及しており,その対策として離岸堤群が建設されてきている.離岸堤建設後において侵食域はその西に波及し,さらに真島岬を越えた和木波子海岸にまで波及してきていることが,空中写真による汀線変化解析から明らかとなった.さらにその汀線変化を汀線変化予測モデルで再現することで,西向きの卓越した沿岸漂砂量の存在とその沿岸分布形,さらに2つの岬の通過漂砂量の実態を明らかとした.
  • 宇多 高明, 酒井 和也
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_772-I_777
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     GPSを用いて踏査地点を正確に記録した衛星画像と,ポールなどのスケールを写し込んだ現地写真等を組み合わせて海岸調査を行う手法を提案し,これを用いて2012年8月,Mauritiusの海岸踏査を行った.Mauritiusの南東側に位置するBlue Bay地区では過去に著しい侵食が起きたが,その機構が明らかではなく,対策に苦慮していた.そこで当地の海岸線に沿った踏査を行ったところ,突堤の建設に伴いリーフエッジから供給された砂が海岸線に連続的に供給されなくなったことが侵食の原因であることが分かった.
  • 林 健太郎, 志村 智也, 森 信人, 間瀬 肇
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_778-I_783
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     地球規模での長期的な気候変動により,将来気候において波浪などの沿岸外力が変わることが予想されている.長期的な気候変動による沿岸外力の変化は波高だけではなく,周期や波向等の代表諸元も変化することが懸念される.波浪諸元は,海岸が位置する海域や地形等の地域特性によって大きく変わることから,長期的な汀線変化への影響を把握するためには,地域特性を踏まえた波浪変動によって生じるそれらの影響を考慮する必要がある.
     本研究では,既往の現地調査や航空写真解析から推察された長期的な沿岸特性を考慮した計算条件及び汀線変化モデルを構築した.そのモデルをベースとして,長期的な気候変動に伴う今世紀末(2075-2099年)の海水面温度の違いによる解析パターンを用いた波浪予測結果を用いて,対象地区周辺における,将来気候条件下における汀線の将来変化を推定し,汀線への影響を検討した.
  • 玉井 昌宏, 辻本 剛三, 藤岡 佑樹
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_784-I_789
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     淡路島の諸海岸の砂の起源を特定するために,島内の18の海浜砂とそれに関係すると予想される河川の河川砂を採集した.筆者が前報で提案した砂の色による分析方法を適用するとともに,砂粒子の形状特性を分析した.加えて,各河川の流域地質特性を把握することによって,砂の色の成立要因について考察した.河川砂の色は,地質条件によって大きく異なり,火成岩地質を擁する北部地域においては黒系統で淡い色を,大阪層群優勢の流域では淡い茶色系統の色を,南部の和泉層群を擁する地域においては暗い色を有することがわかった.海浜砂の色は,河川砂ほど明確な色の差異はなく,これは風化,養浜,海浜間の砂の移動等が影響していると考えられる.
  • 小林 昭男, 宇多 高明, 遠藤 将利, 野志 保仁
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_790-I_795
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     海岸線近傍での道路や駐車場の整備計画検討では,用地確保の困難よりそれらが海浜地に前出しされ,結果的に自然海浜の狭小化を招く例が多い.このような人為的改変に伴う自然海浜の喪失について房総半島南部に位置する豊岡海水浴場を対象として検討した.豊岡海水浴場では,豊岡泊地の防波堤が伸ばされて以降波の遮蔽域が広がったため,防波堤背後の波の遮蔽域へ向いた沿岸漂砂が起きた.その際,防波堤の存在によって汀線が後退した区域に護岸が大きく前出しして造られた.この結果形成された異形ブロックと高いコンクリート護岸は,海水浴場の景観としてそぐわない姿となった.
  • 杉山 喜一郎, 佐藤 純一郎, 宇多 高明, 石川 仁憲, 宮原 志帆, 芹沢 真澄
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_796-I_801
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     富士早川の河口樋門の閉塞対策について検討した.この樋門付近では東向きに約10万m3/yrの沿岸漂砂が流れていることから,この沿岸漂砂を保ちつつ吐口の閉塞を防止する方法を考えた.まず,空中写真に基づく汀線変化解析により樋門周辺の長期的地形変化を明らかにし,その上で等深線変化モデルにより動的平衡海浜を作り出し,樋門周辺条件を与えて樋門の閉塞防止策について検討した.最適案は,樋門下手側にある消破堤を20m陸側にずらす一方,その天端高を高めて堤防からの越波防止を図る案であった.
  • 宇多 高明, 大木 康弘, 三波 俊郎, 住田 哲章
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_802-I_807
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     茨城県大津漁港の防波堤による波の遮蔽域では,過去に大量の土砂が堆積したが,堆砂量は天妃山以北の神岡上・磯原海岸の侵食土砂量よりはるかに大きかった.この原因として,砂が南側区域から運び込まれた可能性が考えられたことから,大津漁港~高戸岬を対象として空中写真による汀線変化解析を行うとともに,そこでの海浜土砂変化量を算出した.この結果,1975~2009年間に,大津漁港~天妃山間(全長4.5km)では7.0×105m3土砂量が増加したのに対し,天妃山~高戸鼻間(13km)では8.4×105m3の減少であり,両者はほぼ対応を示した.これより天妃山の岩礁は沿岸漂砂の固定境界とはならないことが分かった.
  • 芹沢 真澄, 宇多 高明, 三波 俊郎, 宮原 志帆
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_808-I_813
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     三角形状の湖内で発達した風波の作用による砂嘴の形状と湖の分裂現象について,北海道東部にあるサロマ湖浜での実例を基に調べた.現地踏査によれば,この湖浜では多数のリズミックな砂嘴群の形成が確認された.次に,芹沢ら1)の提案したBGモデル(Bagnold概念に基づく3次元海浜変形モデル)を用いて細長い三角形状の湖の変形と分裂の計算を行い,現地で見られた地形変化の特徴がBGモデルにより説明可能なことを示した.
  • 塩入 同
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_814-I_819
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     海岸林の津波防災効果についての関心は,東日本大震災以降,特に高まっている.このことから,全国で砂浜を有する海岸線が,海岸保安林とどこで,どの程度の延長で隣接するのかという情報は,津波防災や侵食の著しい砂浜海岸の環境や利用の確保に向けた地域政策を議論する上で,不可欠である.本研究では,海岸統計などからは把握することができない海岸保安林と隣接する砂浜海岸の位置や延長を,環境省や国土地理院が公開する既存の数値情報を利用し,GISを用いて推定した.また,実際に海岸管理を担う道県庁の担当部局への電話ヒアリングなどを行い,推定結果の再現性を検証し,隣接箇所での森林部局との連携状況について聞き取り調査を実施し,砂浜海岸を取り巻く管理上の問題点を探るものである.
  • 宇多 高明, 大中 晋, 三波 俊郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_820-I_825
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     Funamanu島は,TuvaluのFunafuti Atollに位置し,首都のあるFongafale島の西0.6kmにある長さ0.8kmの洲島である.この洲島では,1972年10月に襲来したCyclone Bebe時に大量のサンゴ礫が打ち上げられた.そこでcyclone襲来直前の1971年7月の空中写真,1984年8月撮影の空中写真,および2010年6月撮影の衛星画像を基に洲島形状の変化を調べた.また,2012年6月にはFunamanu島の現地踏査を行うとともに,6月12日~13日には島の西端東端部において地形測量を行い,礫の体積良を把握した.
  • 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁, 遠藤 将利, 大草 佑介
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_826-I_831
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東京湾奥部に位置する千葉県幕張の浜では,1980年代に埋立地護岸前面に人工海浜が造成され利用に供されてきた.しかしこの人工海浜では,徐々に侵食が進んだことから,2009年には侵食対策として南北突堤のほぼ中央に中央突堤が伸ばされた上で,南突堤~中央突堤間の500m区間でd = 50mmの礫12,000m3による粗粒材養浜が行われた.粗粒材は既設護岸線と平行に養浜されたが,投入礫は波の作用で北側へと移動しつつ前浜へと打ち上げられ小高いバームが形成された.本研究では,この実例を基に礫の挙動を実測し,礫の移動・堆積特性を明らかにした.
  • 渡辺 国広, 諏訪 義雄, 関口 陽高, 野口 賢二, 伊藤 幸義, 高田 保彦, 岩佐 隆広, 二階堂 竜司
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_832-I_837
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     静岡県の駿河・富士海岸と富山県の下新川海岸に設置されたコンクリートブロックの摩耗量を調査した結果,設置後の経過年数に応じた摩耗量の増加が確認された.多変量解析によって,波高,標高も摩耗速度に対して有意な影響を及ぼしていることがわかり,現地海岸における摩耗量を推定するモデル式を提示した.回転ドラム型試験機を用いてコンクリート供試体を摩耗させたところ,現地海岸と同様の摩耗作用を再現できることが確認され,現地における摩耗と摩耗促進試験の対応関係を導き出した.この手法を用いて摩耗させた繊維シートは,駿河海岸における現地曝露で得られた繊維シートよりも,やや劣化が大きくなる傾向にあったが,本手法によって礫海岸における摩耗耐久性の照査が可能であることが示された.
  • 鈴木 拓也, 茅根 創, 岩塚 雄大, 片山 裕之, 関本 恒浩, 磯部 雅彦
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_838-I_843
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     サンゴ礁州島は,サンゴ礁上にサンゴ礫で形成された標高1~2m程度の低平な島であり,静水面よりわずかに高い位置に形成される.その地形変化については,短期間の高波浪により形成・消失された報告はあるものの,観測データ取得が困難でありそのメカニズムについては未解明な部分も多い.本研究では,西表島北方リーフ上にサンゴ礫だけで形成されるバラス島を対象として現地調査および水理実験を行い,その地形変化メカニズムについて検討を行った.その結果,以下の結論を得た.1)台風時の強い外力により堆積・侵食・移動の地形変化を繰返す.島の移動方向は流れを主体とした外力の卓越方向と定性的に一致する.2)枝サンゴを中心としたサンゴ礫は,底面流速として概ね0.7m/sが移動限界流速と考えられる.
  • 宇多 高明, 芹沢 真澄, 宮原 志帆, 三波 俊郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_844-I_849
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     人為改変に伴うサンゴ洲島周りの地形変化を,BGモデル(Bagnold概念に基づく3次元海浜変形モデル)を用いて予測した.サンゴ洲島周辺に離岸堤が次々と造られた場合の各段階での海浜変形の予測を行った.離岸堤が設置されると,離岸堤による波の遮蔽効果によってその背後にはトンボロが形成される.同時に離岸堤の両側は侵食され,汀線が後退するために対策が必要となり,その対策として離岸堤を設置すると最終的にサンゴ洲島の全海岸線に沿って離岸堤が設置されることとなり,自然海浜の人工化が進む.
  • 黒岩 正光, 松原 雄平, 丸毛 裕治, 中野 伸太郎, 市村 康, 間瀬 肇
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_850-I_855
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     鳥取県東部の岩美海岸浦富地区のポケットビーチ(以下浦富海岸)において,侵食対策として実施されている人工リーフの天端の嵩上げと天端幅拡張による海浜変形への影響を3次元海浜変形モデルを用いて検討すするとともに,改変による人工リーフ開口部の洗掘と同ビーチ東側に位置する田後港の港口部埋没対策も,同海浜変形モデルによって検討したものである.数値解析の結果,開口部の洗掘は,2基の人工リーフを連結することで,防止可能であるが,リーフ背後の沿岸流を助長することになり,さらに港口部の堆砂も助長する可能性が示された.リーフ開口部の洗掘対策と同時,港口部前に潜堤を設置するなど,複合的な対策が必要であることが示された.
  • 宇多 高明, 松井 隆佳, 尾崎 文亮, 星上 幸良, 芹沢 真澄, 宮原 志帆
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_856-I_861
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     福井県浜住海岸に造られた人工リーフに関し,現況までに得られた観測データを基に,海浜流の作用をexplicitに取り入れたBGモデルを用いて人工リーフの堆砂効果向上法について検討した.改善策では,人工リーフ上の岸向き流れを低減させることが必要と考えられたことから,人工リーフの沖側半分を消波ブロックで嵩上げし,透過率を大きく下げた案について検討した.この結果,堆砂効果が大きく改善されることがわかった.
  • 和泉 恵之, 伊藤 一十三, 武笠 裕美, 宇多 高明, 酒井 和也, 石川 仁憲, 袴田 代, 菅原 健太郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_862-I_867
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     二宮海岸の山西地先に観測区域を設け,波による地形変化,底質粒度組成の変化,さらにはカラーサンドの移動などに関する観測を行い,礫浜の安定性と礫浜の有する護岸根固め機能について調べた.二宮海岸では道路護岸の前面を礫が埋めているが,この礫層は高波浪が作用しても安定しており,同時に汀線付近に投入された礫は汀線付近に留まると同時に岸側へと運ばれ護岸前面に堆積しやすいことが分かった.
  • 宇多 高明, 三波 俊郎, 五十嵐 竜行
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_868-I_873
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     駿河湾奥の富士川河口右岸に位置する蒲原海岸を対象として,1952年以降2010年までに撮影された空中写真,深浅測量データ,および2008年11月と2010年1月に実施したNMB(Narrow multibeam)測量データなどを基に地形変化の実態を明らかにした.当海岸では沖合に海底谷が発達しているため海底勾配が急であり,このため消波施設として有脚式離岸堤が設置されている.このような特徴を有する海岸での地形変化実態を現地実測により明らかにした.
  • 山野 貴司, 藤原 隆一, 野村 浩二, 白木 孝一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_874-I_879
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     柱状構造物における問題の一つである局所洗掘は,構造物の安定性に影響を及ぼすため,その機構を把握することが重要である.水理模型実験で局所洗掘を取り扱う場合,縮尺効果による相似則に注意が必要である.本研究では,杭直下の地盤高の経時変化を捉えることを目的に現地観測を実施した.その結果,洗掘深が波浪の増大に応じて進行し,減衰期間で小さくなる杭直下の局所洗掘の経時変化を計測できた.また,底質の移動形態の相似則に着目し,移動床水理模型実験によって現地の局所洗掘の経過の再現を試みた結果,局所洗掘の時間的な変化や最大洗掘深をかなり精度よく再現できた.また,現地観測およびその再現実験で発生した局所洗掘について,最高波高を用いることで従来行われた小口径円柱に対する実験結果と比較的よく一致することがわかった.
  • 日比野 忠史, 長津 義幸, 三戸 勇吾, 中本 健二
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_880-I_885
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     下水汚濁した海底堆積泥の環境改善実験が行われており,浄化機構の解明や現場実験結果の評価のために様々な手法が用いられている.本論文では,超軟弱泥上に構築された石炭灰造粒物層での観測方法を検討するとともに,底質改善を評価するための調査手法,具体的には,超軟弱泥層での沈下実験,ヘドロ厚さ測定,軟弱有機泥の性状評価のための新しい手法について提案し,現地調査に用いた.これらの調査結果から本手法は超軟弱泥層での底質改善を評価するために適した手法であることが明らかとなった.
  • 増田 龍哉, 御園生 敏治, 田中 聖二, 森本 剣太郎, 矢北 孝一, 滝川 清
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_886-I_891
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     八代海は九州西部に位置する閉鎖性の強い内湾である.近年,八代海では,赤潮の頻発化,水産資源の減少などの海域環境悪化に伴う問題が顕在化している.そのため,早急な海域環境の回復・改善が求められているが,その実施には,八代海特有の海域環境特性を理解し,その場に応じた対策を実施する必要がある.しかし,八代海での調査事例は少なく,底質や底生生物の十分な環境変動特性の把握には至っていない.そこで本研究では,八代海で2011年秋季に底質・底生生物調査を行い,現況を把握することとした.八代海において22地点を選び,底質・底生生物(マクロベントス・メイオベントス)を採取した.それらをクラスター分析を用いて解析したところ,八代海の底質・底生生物の分布特性をグループ化することができた.
  • 玉井 和久, 小畑 健二, 芳倉 勝治, 日比野 忠史, 首藤 啓, 山本 裕規, 三戸 勇吾
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_892-I_897
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     石炭灰造粒物による海底被覆手法の効果を検証するための実証試験を実施し,約2年半のモニタリングを行った.有効被覆層間隙中への有機泥の捕捉により,施工から2年半が経過した時点でも被覆層上への有機泥の堆積層厚は2cm前後と,同湾の堆積速度の約半分となっており,有機泥の再堆積による効果減衰を抑制する機能が示された.また,硫化水素や栄養塩類の化学的な除去や底層DOの上昇などの効果も継続していることが示された.底生生物の現存量は試験後に増加しており,日和見的な小型種から長寿命の大型種へ遷移しつつあると考えられた.被覆層の間隙構造や硫化水素の化学的除去などの本手法に特有の物理的・化学的な効果は,3年以上は継続して得られ,底生生態系の回復が促されることで,長期的に環境改善への正のスパイラルを導くことが期待される.
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