日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
2013 巻
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
  • 山下 拓三, 宮村 倫司, 秋葉 博, 梶原 浩一
    2013 年 2013 巻 p. 20130001
    発行日: 2013/01/30
    公開日: 2013/01/30
    ジャーナル フリー
    Recent advancement in parallel computing enables the precise finite element analysis of steel frames using solid elements. However, the finite element models used in the analysis have not been verified sufficiently. In this study, first, static finite element elastic-plastic buckling analyses of a square steel tube column subjected to a prescribed lateral displacement are performed with different meshes in order to verify the analysis model. It is shown that the accuracy and computation time of the analysis depend not only on the number of mesh divisions but also on the aspect ratio of each finite element. Then, dynamic elastic-plastic buckling analyses are performed for different meshes and different time increments. In the dynamic buckling problem, which is a kind of slow dynamics problem, accurate results can be obtained using a fine mesh but with a rather large time increment.
  • 平野 元久, 新田 高洋, 千石 加奈, 西尾 憲侑
    2013 年 2013 巻 p. 20130002
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/01
    ジャーナル フリー
    非線形最小二乗法(マルカート法)とニューラルネットワークの機能を組み合わせることにより, 花粉飛散量を予測する新しい方法を提案した. 花粉飛散量を高精度に計算するには, 発生源であるスギ林での花粉放出量を精度よく推定することが花粉飛散予測の精度向上に必須である. このために, 移流拡散方程式によって計算される空中花粉濃度の計算値が, 生活圏で測定される空中花粉濃度の観測値をよく再現するように, 非線形最小二乗法を用いて最も確からしい花粉放出量を推定する方法を提案した. 花粉飛散量を予測するために, ニューラルネットワークの学習と判断の機能を活用した. 学習機能により関心地域の気象データから花粉放出量を推定するニューラルネットワークを構成した. 予測対象日の関心地域の花粉飛散量を推定するために, 学習したニューラルネットワークを用いて予測対象日の花粉放出量を推定し, 関心地域の花粉飛散量を移流拡散方程式によって予測する手法を提案した. 予測値と観測値はよく一致することを確認した. このようにして, 非線形最小二乗法とニューラルネットワークを組み合わせた花粉飛散量の新しい予測方法を提案しその機能を確認した.
  • 玉井 佑, 柴田 和也, 越塚 誠一
    2013 年 2013 巻 p. 20130003
    発行日: 2013/02/13
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
    As a Lagrangian meshfree method, the MPS(Moving Particle Semi-implicit) method has been shown useful in engineering applications widely. In this paper, by using the Taylor series expansion, generalized schemes for any order spatial derivatives with higher order consistency, convergence, and completeness conditions are developed. Applying new schemes for numerical tests, calculating first and second derivatives of linear and non-linear functions, demonstrates higher order convergence regardless of whether particles are distributed regularly or randomly spread involving domain boundaries. Furthermore, application of new spatial derivative schemes enhances computational accuracy and stability for numerical analysis of incompressible flow with the free surface.
  • 邵 阳, 山川 貴大, 菊池 貴博, 柴田 和也, 越塚 誠一
    2013 年 2013 巻 p. 20130004
    発行日: 2013/03/06
    公開日: 2013/03/06
    ジャーナル フリー
    本研究は流体解析のための陽的MPS法と構造解析のためのHamiltonian MPS法を統合し, 3次元流体-構造連成解析手法を開発した.そして, その有効性を検証するために, 3種類の検証計算を行った.計算結果は理論解, 実験結果および他の解析手法の計算結果と比較した.
  • 越智 申久, 岡野 成威, 望月 正人
    2013 年 2013 巻 p. 20130005
    発行日: 2013/03/14
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    A welding process simulation considering the weld pool and dropped metal during welding which have a fluid flow with thermal conduction and a free surface is performed by using the hybrid particle and grid method with Explicit MPS. In this study, first, the applicability of Explicit MPS to the welding process is studied. Second, a hybrid particle and grid method is developed. In the hybrid method, particles can be used in the weld pool and the area located near the weld pool, while grid elements are used in the other areas. For high-speed simulation of the weld pool, all of calculation processes are parallelized and accelerated by a GPU (CUDA). The welding process simulation using the hybrid method can reduce the calculation cost reasonably within 1 to 2 % accuracy or so on.
  • 申 鉉眞, 平野 義鎭, 轟 章
    2013 年 2013 巻 p. 20130006
    発行日: 2013/03/18
    公開日: 2013/03/18
    ジャーナル フリー
    トポロジー最適化は,構造形状の最適なレイアウトを探索する主要な設計手法のひとつである.多目的トポロジー最適化問題においては,その適用の容易さから,目的関数を重み付き線形和手法(Weighted sum method)によって単一目的化したSIMP(Solid Isotropic Material with Penalization)法が広く用いられる.SIMP法は目的関数の感度を用いる手法であるため,計算効率が高いが,多峰性が強い設計空間の場合,設計パラメータや解析メッシュの設定方法等により異なるトポロジー最適解が得られ,一義的な解が得られない問題点がある.このため,グローバルかつロバストな探索が可能な遺伝的アルゴリズム(Genetic algorithm)の適用が注目されるが,GAは高計算コストになる問題がある.そこで本研究では,GAを用いた多目的トポロジー最適化計算を高効率化するため,重み付き線形和手法を用いたSIMP法から得られた局所最適解(エリート)と類似する個体を複数生成し,それらをGAの初期集団として用いる手法を提案する.SIMP法から得られた代表的な最適解のトポロジーと類似するエリートトポロジー解を初期集団としてGAをスタートさせることで,GAの計算効率の向上に加え,グローバルなパレート解群が得られる可能性が期待される.本研究では,提案手法の有効性について検証するために,GAの初期集団をランダムに発生する従来手法とエリート初期集団を用いる提案手法の収束性および安定性を比較検討した.
  • 渡邊 茜, 浅井 光輝
    2013 年 2013 巻 p. 20130007
    発行日: 2013/03/21
    公開日: 2013/03/21
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物の経年劣化の要因は, 中性化・アルカリシリカ反応(ASR)・塩害等のさまざまな現象が考えられる. その多くは力学的要因と化学的要因が複雑に連成しており, 劣化メカニズムを詳細に把握したうえで合理的な対策することは非常に困難である. コンクリート内部での物質の浸透・拡散現象は, 材料内部の膨張あるいは劣化の起点となり, 微視的な亀裂, 材料界面でのはく離等の損傷を招く. また逆に, 微視的な損傷を受けた領域は, 拡散現象において高速に物質が拡散する経路となり, 物質が局所的な領域に拡散しやすくなる. 以上のように, 拡散問題と力学の損傷問題は両者が双方向に連成する現象であり, 材料劣化の微視的なメカニズムを解明していくには, 連成現象までを再現可能なシミュレータが必要となる.
    そこで本研究では, 3次元の非均質材料内に発生するクラックの進展をボクセルFEMで表現する方針とし, そこに損傷モデルの概念を導入することで, ひび割れ現象と物質の拡散現象の両者が, 微細なひび割れの発展とともに段階的に変化させ, 結果として両者の連成問題がより安定して解くことができるシミュレータを提案した.
  • 貞本 将太, 田中 智行, 岡澤 重信
    2013 年 2013 巻 p. 20130008
    発行日: 2013/04/16
    公開日: 2013/04/16
    ジャーナル フリー
    これまでに多くの研究・開発が行われてきた有限要素法に加え, 近年ではメッシュ(要素)を用いない数値解析手法であるメッシュフリー/粒子法の研究が盛んに行われている. メッシュフリー/粒子法ではメッシュを用いない離散化を行うため, メッシュのゆがみ や つぶれ などに強く大変形挙動に適した解析手法である. また, 物体が破断・飛散するような問題の表現にも比較的柔軟な方法として知られる. 解析対象は節点や粒子と呼ばれる離散点によってラグランジュ的に近似・離散化され, 強形式, 弱形式を問わず様々な問題への適用が行われている. 著者らは土木や海洋構造物で用いられる補剛板構造物の座屈解析を行うことを目的として, Reproducing Kernel Particle Method (RKPM) を用いた Mindlin-Reissener 板理論や Kirchhoff 板理論への適用を行い, 非線形板曲げ問題への拡張を行ってきた.
    メッシュフリー法では, メッシュを用いない離散化を行うため, その数値積分法に工夫が必要である. Element Free Galerkin Method (EFGM) では, 一般的にバックグラウンドセルと呼ばれる領域を用いて数値積分を行う. 一方, RKPMの数値積分法としては Stabilized Conforming Nodal Integration (SCNI) が提案されており, 本研究でもこれに倣い SCNIを用いて数値積分を実施している. SCNIでは, 各々の離散点に対してボロノイ分割により積分領域を定義し, 領域内の積分に関してガウスの発散定理を適用することで積分の安定化・高精度化を図る. しかしながら, これまでに取り扱われた例題には矩形板や円板について全体の応力状態が一様となる基礎的な問題が多い. 本研究では補剛板構造を解析対象としているが, これらの構造物では板の内部で集中荷重や変位拘束を受けることにより局所的に応力が変化する問題を考慮しなければならず, これまで用いてきたSCNIのみでは精度が不十分であることを確認した. 本論文では, この問題に対して解決法を提案する.
    メッシュフリー法における剛性マトリクスの数値積分には従来から様々な方法が提案されており, 本研究ではSCNIを用いている. SCNIでは節点配置に対応したボロノイ分割による仮想的な積分領域を配置しガウスの発散定理を適用することで, 形状関数の偏微分を省略し高精度な数値積分を実施する. またSCNIを拡張した方法として, Sub-domain Stabilized Conforming Integration (SSCI) が提案されている. SSCIでは, SCNIで用いるボロノイ分割を細分化して数値積分を実施する. 従来の研究では, 薄板の挙動を高精度に表すためにKirchhoff 板理論をもとにHermite補間に基づいた近似法であるHRK (Hermite Reproducing Kernel) 近似を提案したが, HRK形状関数は基底ベクトルにその偏微分形を含むため, 関数形状は通常のRK形状関数に比べてやや複雑であり, 加えて弱形式は2階の導関数であることから, 偏微分の階数を落として数値積分の精度を確保するためにSSCIを用いた. 本研究では局所的に応力が集中するときの数値積分方法に関する問題の回避策の1つとしてRK近似に対してもSSCIを適用することを提案する. このように, SCNIの板曲げ問題で発生する解析精度に関する議論を行った論文は報告されていない. また, SSCIはHRK近似の性質を考慮して提案された数値積分手法であるため, RK近似を用いた解析の数値積分にSSCIを用いた研究例は著者らの知る限りでは存在しない. 本報ではこれらの問題についてメッシュフリー法における数値積分の観点から考察を行い, 得られた知見について報告する.
  • 増田 正人, 中林 靖, 矢川 元基
    2013 年 2013 巻 p. 20130009
    発行日: 2013/04/18
    公開日: 2013/04/18
    ジャーナル フリー
    近年のスポーツは技術の発展が目覚ましく, スポーツ工学やスポーツ科学を取り入れたトレーニング方法も発達している. 中でも, サッカーはその人気や技術の向上にともなって, 様々な角度から工学的・科学的な研究がなされてきている. 2003年9月に日本フットボール学会が発足し, トレーニング, コーチング, ゲーム分析, スポーツ社会学, スポーツ心理学, スポーツ医学バイオメカニクスなどの分野でサッカーは研究されている. また, RoboCupというロボット工学と人工知能の融合を目指し, 自律移動型ロボットにサッカーを競わせる大会もある. このようにサッカーは既に様々な形態で学術研究の対象となっている. 物理学的な観点からは, サッカーボールと空気との間で起こる物理現象は極めて複雑であり, フリーキックからの得点を科学的に解析する試みがなされている. フリーキックは試合において得点のチャンスを広げる重要な要素であるが, 実際のフリーキックでは選手の経験や感覚, 勘によりボールを蹴りゴールを狙うことになる.
    本研究ではサッカーの直接フリーキックにおいて, ボールが直接ゴールに入る確率を上げ, キーパーに捕球されにくいコースにボールを蹴るための情報を算出するシステムの開発を行う. このシステムをフリーキックサポートシステムと呼称する. このシステムにより選手の経験, 感覚に頼っていた技術を誰でも分かる情報に落とし,実戦の場や練習の補助に当てることができ, フリーキックの精度・確度の向上に役立つシステムになると推測される. もちろん, ゴール隅に直接入る蹴りだし角度や速度, 回転の値を正確に求められたからといって, キッカーがその値通りに蹴ることが困難である。しかしながら, 予め選手のキックの特性データを調べておき, 求めた数値の感度解析結果と合わせて用いることにより, あるシチュエーションで誰が蹴れば直接ゴールを割る確率が上がるかといった実戦的な応用も考えられる.
    ここで提案するフリーキックサポートシステムは, 実際のフリーキックを順問題とおいたときにその逆問題を解くものと位置づけられる. つまり, 通常は任意の場所でフリーキックのチャンスを得たときに, キッカーがボールを蹴り出し, 狙った箇所にゴールするといった流れであるのに対し, 任意の場所から狙った箇所にゴールさせるためには何処にどのように蹴り出せば良いかという逆問題を解くことである. 本論文ではこの逆問題をニューラルネットワークと自己組織化マップ(Self-Organizing Map : SOM)を組み合わせたモジューラネットワーク型SOM(mnSOM)を用いて解き, ゴール効率の精度検証と有用性を示すことを目標にし, これまでに十分に議論されていないmnSOMのマップの定量的な評価方法を提案し, フリーキックサポートシステムへ適応させる.
  • 車谷 麻緒, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史, 加藤 準治, 樫山 和男
    2013 年 2013 巻 p. 20130010
    発行日: 2013/04/19
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル フリー
    本論文では, 材料を粒子(離散要素)の集合と捉え, 粒子間の結合・破壊を構造要素でモデル化した, 簡便な破壊シミュレーション法を提案する. まず, 粒子間の結合位置と結合面(破壊面)の角度を考慮して粒子間の相対変位の関係式を導出し, 破壊シミュレーションに適した構造要素の定式化を示す. 次に, 剛性マトリックスの固有値解析により, 粒子配置による基本変形モードと積分次数との関係について検討する. そして, 1軸引張問題を対象に, 境界に位置する粒子の境界積分方法を説明した後, はりの曲げに対する解析精度と収束性について検証する. 最後に, 破壊のモデル化について述べた後, 本解析手法に対する数値解析例として, 複数のクラックが生じる問題を対象に, 破壊シミュレーションへの適用例を示す.
  • 浅井 光輝, 藤本 啓介, 田邊 将一, 別府 万寿博
    2013 年 2013 巻 p. 20130011
    発行日: 2013/05/08
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
    粒子法ではメッシュを定義する必要がなく, 解析領域の内部に粒子を充填するだけで解析できるといったプリプロセス上のメリットも期待できる. 一方で, 粒子法では境界面上に計算上制御できる点が必ずしも存在しないため, 境界条件の付与方法は単純ではない. 特に実際の粒子モデルの作成においては, 解析領域内を構造格子状に分割し, その格子の中心点あるいは交点に粒子を配置することが多い. この簡易的なプリプロセスによれば, 領域内に均等に粒子が配置できるものの, 境界面は階段状のガタガタな形状となり実際のなめらかな物理境界とは適合し"非適合境界"となるため, 境界付近の流れが不自然となる.
    そこで本論文では, 仮想マーカー境界処理のアイデアを利用し, 階段形状の非適合境界を有する解析モデルにおいて, すべり・非すべり境界条件を与えるための新たな境界処理方法を提案する.
  • 吉村 忍, 徳永 健一, 杉本 振一郎, 奥田 洋司, 末光 啓二, 加藤 千幸, 山出 吉伸, 吉村 英人
    2013 年 2013 巻 p. 20130012
    発行日: 2013/05/24
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    構造, 流体などの物理現象を表す偏微分方程式を数値的に解くための一手法として, 有限要素法が広く用いられている. 文部科学省次世代IT基盤構築のための研究開発「イノベーション基盤シミュレーションソフトウェアの研究開発」プロジェクトでは, 有限要素法に基づいた, 高並列環境で高速に動作する構造解析ソルバFrontISTRおよび熱流体解析ソルバFrontFlow/blue等の研究開発を行っている. これらのソルバによって大規模な構造解析, 流体解析を並列計算機環境で高速に行うことが可能となった一方, 解析に用いる数億~数千億自由度のモデルをいかに効率よく生成するかが新たな課題となっている.
    大規模なメッシュを効率的に作成する方法としては, 既存の小~中規模メッシュの要素を細分化する方法が考えられる. 著者らは, 今回新たに並列有限要素法解析ソルバにライブラリとして組み込み, モデルの細分化を並列環境で行い, そのまま並列解析に移行できる汎用的なツールREVOCAP_Refinerを開発した. 本稿では, REVOCAP_Refinerの特徴と主要アルゴリズムについて詳述するとともに, 並列有限要素法解析ソルバFrontISTRおよびFrontFlow/blueにREVOCAP_Refinerを組み込み, 実問題解析における性能を評価した結果について報告する.
  • 荻野 正雄
    2013 年 2013 巻 p. 20130013
    発行日: 2013/07/03
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    領域分割法は有限要素解析の有効な並列化方法として知られており, 応力, 破壊, 熱, 粘性流れ, 電磁場など様々な現象への応用研究が行われている. 本研究で用いる領域分割法とは, Schur補元方程式を前処理付き反復法で解くものである. 前処理として, 実装の容易さから簡易的な対角スケーリング前処理が広く用いられているが, これまで簡易さを含めて十分な議論は行われていない. そこで本研究では, 領域分割法の対角スケーリング前処理について考察し, 簡易的な対角スケーリングの新解釈を提案する.
  • 乙守 正樹, 山田 崇恭, 泉井 一浩, 西脇 眞二, 小木曽 望
    2013 年 2013 巻 p. 20130014
    発行日: 2013/07/19
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
    金属導波管は効率良く電磁波を伝搬させる機器として, 主にマイクロ波通信装置に用いられている. その金属導波管において, 所望の電磁波の伝搬特性を得るために, 誘電体やフェライトを内部に装荷した導波管が実用化されている. 例えば, 誘電体を内部に装荷した導波管では, 特定の周波数において電磁波を遮断させる帯域遮断フィルタや, 2つの出力ポートを有し, 電磁波を所望の電力比に分割して出力するT分岐などがある. さらに, フェライトを内部に装荷した導波管では, フェライトの非可逆性を用いて, 電磁波の伝搬方向によって動作の異なる機能を持たせることが可能で, 例えば, 一方向のみに電磁波が伝搬し, 逆方向には伝搬しない単向管や, 3つ以上のポートを持ち, どのポートから入射した電磁波も右隣もしくは左隣のポートに出力するサーキュレーターなどの設計を可能とする. またフェライトは外部磁場を印加した場合に, 周波数に依存した比透磁率を持ち, その周波数特性が外部印加磁場の大きさにより変化する特徴を持つため, フェライトを装荷した導波管の特長として, 動作周波数の可変性が挙げられている.
    そのような導波管内部に装荷した誘電体やフェライトなどの形状設計において, 数学的および力学的根拠に基づいて統一的な設計を行う手法として, トポロジー最適化の適用が考えられる. Hirayama et al.は, 密度法に基づくトポロジー最適化を用いて, 導波管内部の誘電体の最適構造を求める手法を構築し, 帯域遮断フィルタおよびT分岐の最適設計問題に適用している. さらにNishiwaki et al.は, 密度法に基づくトポロジー最適化を用いて, 所望の周波数において電磁波を効率的に伝搬させるため, 伝搬定数の最適設計手法を構築し, 導波管断面の誘電体分布の最適構造を得ている. トポロジー最適化では, 0から1までの値をとる連続した密度を用いて最適な材料分布, すなわち最適構造を表現するため, その密度が中間値となる, いわゆるグレースケールを許容することになる. このグレースケールで構成される構造は, 数学的および物理的な解釈は可能であるものの, 実際には製造が困難であるため, 工学的には意味を持たない構造と言える. そのためフィルタに基づく方法などでグレースケールを除去する方法が提案されているが, 本質的な解決には至っていない.
    一方, グレースケールの問題を本質的に解決可能な方法として, レベルセット法による形状表現に基づくトポロジー最適化手法が提案されている. この方法では, レベルセット関数のゼロ等位面により物体の外形形状を陰的に表現するため, 上述のグレースケールを本質的に除去できる特長をもつ. 山田らは, 区分的に一定値となるレベルセット関数を用いて, チコノフ正則化により最適化問題の正則化を行い, 反応拡散方程式を解く問題に置き換える方法を提案している. この方法では, 孔の数が増加するようなトポロジーの変更が可能であり, さらには正則化の度合いを設定することにより, 最適構造の幾何学的な複雑さを定性的に設定することが可能である.
    本研究では, レベルセット法に基づくトポロジー最適化を用いて, 比透磁率と比誘電率がともに異なる材料を扱うため, 比透磁率と比誘電率の両方の空間分布を考慮した方法論を構築する. 構築した手法を用いて導波管フィルタ設計問題に適用し, さらに, T分岐など複数のポートを持つ機器の最適化問題の定式化を行う. フェライトの透磁率はLandau-Lifshitzモデルを用いて表現し, 有限要素法を用いて電磁波伝搬問題を解くことで導波管の特性を求める. 最後に本報で提案する手法を, 導波管フィルタおよびT分岐の最適設計問題に適用し, 構築した手法の有効性と妥当性を検証する.
  • 車谷 麻緒, 寺田 賢二郎, 加藤 準治, 京谷 孝史, 樫山 和男
    2013 年 2013 巻 p. 20130015
    発行日: 2013/08/12
    公開日: 2013/08/12
    ジャーナル フリー
    本論文では, コンクリートの破壊力学に基づいて, ひずみ軟化挙動を規定する等方性の損傷モデルの定式化を示す. そして, 非局所モデルを用いずに, これをコンクリートのひび割れ進展解析に応用し, 提案モデルの妥当性や有効性を検証する. まず, 1次元問題において, 提案モデルの定式化を示した後, 修正von-Misesモデルによる等価ひずみを用いた多次元問題への拡張について述べる. 簡単な検証例題を設定して, 提案モデルが変形・破壊におけるエネルギー収支を高精度に評価できることや, メッシュサイズに依存しない解析結果となることを示す. 最後に, 提案モデルを用いたひび割れ進展解析手法を混合モード破壊のベンチマーク問題に適用し, 実験と同様のひび割れ経路と応答結果を再現可能であることを示す.
  • 中山 茂
    2013 年 2013 巻 p. 20130016
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2013/09/20
    ジャーナル フリー
    Adiabatic quantum computation has been proposed as quantum parallel processing with adiabatic evolution by using a superposition state to solve combinatorial optimization problem, then it has been applied to many problems like satisfiability problem. Among them, Deutsch and Deutsch-Jozsa problems have been tried to be solved by using adiabatic quantum computation. In our previous paper, it has been shown that the adiabatic quantum computation in Deutsch problem is modified by using a cubic step function instead of a linear step parameter. In this paper, it is proposed to solve Bernstein-Vazirani problem more efficiently by the same cubic method to obtain a solution with higher observation probability of 99.6%.
  • 石原 大輔, 堀江 知義
    2013 年 2013 巻 p. 20130017
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2013/09/26
    ジャーナル フリー
    本研究においては, 非圧縮性流体と柔軟な弾性構造物の相互作用系に対するプロジェクション解法の収束性を評価した. 提案するプロジェクション解法は, 非線形反復計算において, 中間速度を用いて, 一体型方程式を平衡方程式と圧力ポアソン方程式に分割する. 一体型方程式は, 自由度が大きいことと悪条件であることの欠点を持つ場合があるが, 提案解法の定式化はこれらの欠点を緩和する. 提案するプロジェクション解法の性能を, 流路中に設置された柔軟な弁と閉じた水槽中で羽ばたく柔軟な翼を用いて, 評価した. 前者は典型的な検証問題である. 後者においては, 構造と流体の質量密度が同程度に設定されている. これらの例題において, 従来の分離型解法は, 連成反復の収束性の悪化や数値的不安定性といった数値的困難さを被る場合がある. 最初に, 様々な時間刻みに対して, 線形反復解法の収束特性を調べた. 提案するプロジェクション解法における収束が, 安定していたのに対し, 一体型解法における収束は, 不安定であり, 収束しない場合さえあった. 次に, 提案するプロジェクション解法において, 非線形反復の収束特性を調べた. 提案するプロジェクション解法において, 結果の収束に必要な反復回数は, 高々数回であった. これらの結果から, 従来の一体型解法や分離型解法が数値的困難さを生じる場合に対しても, 提案するプロジェクション解法が効率的であることが示される.
  • 岡本 成史, 山中 晃徳, 下川辺 隆史, 青木 尊之
    2013 年 2013 巻 p. 20130018
    発行日: 2013/11/05
    公開日: 2013/11/05
    ジャーナル フリー
    多結晶構造を有する材料中のミクロ組織形成過程を解析するための最も強力な数値解析手法のひとつとして, マルチフェーズフィールド(MPF)法が注目されている. しかしながら, MPF法は複数のフェーズフィールド変数と同数の時間発展方程式を解く必要があるため, ひとつの秩序変数を用いる従来のフェーズフィールド法に比べて計算コストが大きいことが問題である. そこで本研究では, MPF法を高速に計算するために, CUDAとMPIを用いた新しい複数GPU計算法を構築した. 特に, 複数GPU計算を行うための領域分割法を採用し, さらにCPU間とCPU-GPU間のデータ通信時間を計算時間で隠蔽するための独自のオーバーラッピング法を提案した. さらに本研究では, 多結晶粒成長の3次元シミュレーションを複数GPU計算ではじめて実施した. その結果, 本研究で提案するオーバーラッピング法を用いることにより, データ通信時間の完全な隠蔽に成功し, 良好な弱スケーリング性能および強スケーリング性能を実現した.
  • 佐藤 雅弘, 片山 真人, 春木 孝之
    2013 年 2013 巻 p. 20130019
    発行日: 2013/11/12
    公開日: 2013/11/12
    ジャーナル フリー
    MPSによる1次元および2次元のスカラー波(音波)解析の定式化, 安定条件・速度分散特性の考察を行った. 更に, 実際に時間応答を計算して, 解析解を念頭に結果を検討したところ, よく一致することを確認した. 本研究で明らかになった主な点を以下に示す.
    (1) 粒子を座標軸上に均等配置した場合, 粒子間相互作用モデルは, あるクーラン数, 影響半径において, 中心差分と全く同じ定式化になることがある.
    (2) 影響半径を大きくすると, 「中心差分法におけるクーラン数の安定条件」よりも大きくなった. 影響半径が, ある大きさを超えると, Δh/Δt が位相速度よりも小さい場合でも安定に計算できることが分かった.
    (3) 安定条件内では, Δh/Δt に対して, クーラン数が大きいほど, また影響半径が小さいほど速度分散が少ない. 平面波の進行方向における速度分散特性は, 差分法に似ている.
  • 西口 浩司, 前田 和久, 岡澤 重信, 田中 智行
    2013 年 2013 巻 p. 20130020
    発行日: 2013/11/13
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    近年, 粘着剤は, 自動車・建材・電子デバイスから経皮吸収型薬剤に至るまで, 多種多様な分野において用いられている. このような用途拡大の背景には粘着剤の高機能化がある. これに伴い, 粘着剤の設計はより複雑になっている. 粘着剤は高分子化合物であり, 粘性と超弾性の一種であるゴム弾性を持っている. また, ヤング率は室温において約0.10MPaであり, 一般の固体材料と比べると極めて低い. そのため, 公称ひずみで数千パーセント以上の極めて大きな変形を生じ得る. このような大変形下における粘着剤の力学的挙動の把握は, 粘着剤開発において必要不可欠である. ただし, 今日でも粘着剤の設計は実験ベースで行われることが多く, その過程では試行錯誤が多い. そこで, 数値シミュレーションによる設計支援が求められている. そこで著者らは, 大変形のロバストな解析が可能なEuler型有限要素法を用いて, 粘着剤の粘性-超弾性に着目した数値解析手法の開発を行ってきた. ただし, 粘着剤は温度依存性が強く, 実務的解析を行うには温度依存性を考慮した粘性-超弾性解析を行う必要がある. 以上のような背景において, 本論文ではEuler型有限要素法による温度依存性を考慮した粘着剤の粘性-超弾性解析手法を提案する.

    基礎方程式については, 本研究では連続体力学で記述される巨視的な系として, 粘着剤のモデル化を行うことにする. 基礎方程式はすべてEuler表示で記述される. ただし, Euler表示は物質点を時々刻々と追跡しない方法であるため, 物質点の位置ベクトルを用いずに固体変形を記述する必要がある. そこで本研究では, 左Cauchy-Green変形テンソルの時間発展式を導入することで, 速度場から固体変形を評価する. 構成関係の定式化においては, 粘着剤の粘性-超弾性とその温度依存性に着目する. 粘性-超弾性についてはSimoの粘弾性モデルを用いて定式化する. 温度依存性については, 代表的な時間-温度換算則であるWLF則を用いることで, Simoの粘弾性モデルにおける緩和時間に換算して表現する. ひずみエネルギ関数については, 本研究では実務的解析における活用のし易さの観点から山下-川端モデルに着目する. 山下-川端モデルは, カーボンブラック補強ゴム解析のために提案されたモデルであり, 線形的な弾性挙動とひずみ硬化挙動を表す項を有している. 本研究では, 粘着剤解析の定量性を向上するために, 山下-川端モデルに, ひずみ硬化挙動を表す高次項を追加したひずみエネルギ関数を仮定する.

    次に, 以上の基礎方程式をEuler型有限要素法により解く方法について述べる. 本研究では, 簡便で効率的なアルゴリズムとするためoperator split法を用いて, Euler表示の基礎方程式を非移流ステップと移流ステップに分割して解く. 非移流ステップでは, 時間を進めて物体を変形させる計算を行う. 移流ステップでは, 変形した物体形状や各種物理量を固定メッシュに射影する. 物体形状はVOF法により捕捉される. その際, 物体の存在しない要素で生じる数値不安定を回避するため, VOF関数値が一定値以下の領域で左Cauchy-Green変形テンソルの値を零とする操作を行う.

    本手法の妥当性を検証するために, 異なる引張速度と温度条件におけるアクリル系粘着剤の一軸引張試験のシミュレーション結果と実験結果を比較した. その結果, 本手法によって粘性よるひずみ速度依存性を精度良く再現できることを確認した. また, 温度依存性については, 低温領域の定量性は高くなかったものの, 室温以上の温度領域では温度依存性を精度良く再現できることを確認した. また, 山下-川端モデルにひずみ硬化挙動を表す高次項を追加することによって, 粘着剤解析の定量性を向上できることがわかった.

    以上より得られた結論を以下にまとめる.
    (1)空間固定メッシュを用いる解法であるEuler型有限要素法により, 粘着剤の一軸引張解析で大変形解析を行えることを示した. これにより, 通常のLagrange型有限要素法では解析が難しい大変形問題に対する本手法の適用可能性を示すことができた.
    (2)ひずみエネルギ関数として山下-川端モデルに着目した. 山下-川端モデルは, 線形的な弾性挙動とひずみ硬化挙動を表す項を有している. 山下-川端モデルに, ひずみ硬化挙動を表す高次項を追加することによって粘着剤解析の定量性を向上できる.
    (3)WLF則を用いることで, 粘着剤の温度依存性をSimoの粘弾性モデルにおける緩和時間に換算して表現した. この方法により, 温度依存性のある粘着剤の粘性-超弾性挙動が再現できる.
  • 渡辺 高志, 桝谷 浩, 三橋 祐太
    2013 年 2013 巻 p. 20130021
    発行日: 2013/12/09
    公開日: 2013/12/09
    ジャーナル フリー
    粒子法では一般に拘束した粒子を用いて壁境界を表現するが, 滑らかな曲面や複雑形状の再現には高い計算解像度を要する. また, 境界に複数層の粒子を配置する必要がある点はモデル化を行う上での制約事項であり, 計算時間の観点からもより利便性の高い境界面の導入が望ましい. 更に粒子を用いた壁境界モデルは大きな変形を考慮することが困難である点も問題である. 一方で, 粒子を用いずにCADデータなどの幾何形状をそのまま三角形パッチの壁境界のモデル化する手法もあり, この手法はMPS法の商用コードに採用されている. しかしながら, 既往の三角形パッチによる壁境界モデルは, 計算効率を優先して前処理工程で計算した距離関数を使い続けるアルゴリズムを採用しており, 境界面が変形する問題には適用することができない. 本研究では, 距離関数を用いずに変形を考慮することが可能である, 新しい三角形パッチによる壁境界の計算手法を提案する. 提案手法をSPH法の流体解析に導入し, 基本的な解析精度の確認を行った. そして, 本手法を境界面が大変形する条件下の流体解析に適用し, その有効性の検討を行った.
  • 谷地 大舜, 加藤 準治, 高瀬 慎介, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史
    2013 年 2013 巻 p. 20130022
    発行日: 2013/12/13
    公開日: 2013/12/13
    ジャーナル フリー
    本研究は, 複合材料を対象としたコンプライアンス最小化問題において, 3次元マルチスケールトポロジー最適化に適用する解析的感度の導出方法を提案するものである.
    本論文で紹介するマルチスケールトポロジー最適化手法は, 均質化法に基づく分離型マルチスケール解析法を適用するものである. ここでは, 材料体積量を一定に保った条件下でマクロ構造の剛性を最大にする最適なミクロ構造のトポロジーを決定する最適化問題を定式化する.
    最適化アルゴリズムについては勾配法を基本とし, 計算コストの軽減と感度の高精度化を意図して, 随伴法による解析的感度の導出法を提案する. 最後に, 提案する感度導出法の検証を行い, またいくつかの最適化計算例をとおして本手法が先端材料のミクロ材料設計に役立つものであることを確認した.
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