コンポジットレジンは,多官能性モノマーとシラン処理したガラス粉末を混ぜたものを硬化させている.重合方法の改良,フィラー粒径や配合の検討により,大幅に物性が改善した.物性のうち,機械的性質の評価法として圧縮試験,ダイアメトラル圧縮試験,直接引張試験などがあるが,実用的なのは3点曲げ試験と思われる.コンポジットレジンの加速度劣化試験としてサーマルサイクルがあるが,ソックスレー抽出装置を用いた高温水保管も効果的と思われる.また,CAD/CAM用のコンポジットレジンが市販されたが,その曲げ強さは水中浸漬7日間,サーマルサイクルによって減少していた.コンポジットレジンの摩耗試験を行ったところ,2体摩耗,ケシの実とPMMAの3体摩耗で磨耗量は異なり,CAD/CAM用コンポジットレジンブロックは修復用コンポジットレジンより概して摩耗量は少なかった.
近年,3Dプリンターを活用した付加製造(Additive manufacturing)技術が歯科分野に広く応用されている.本研究の目的は,液槽光重合法(Vat photopolymerization)で造形された試料に対してダイナミック超微小硬度計を用いた硬さ試験および万能試験機を用いた3点曲げ試験を行い,積層ピッチや積層方向などの造形条件が機械的性質に及ぼす影響について評価することである.また,これらの造形条件が立方体試料や支台歯形態の試料の寸法精度に及ぼす影響についても評価を行った.本研究の結果から,造形条件は試料のダイナミック硬さや押し込み弾性係数,曲げ強さ,曲げ弾性係数に影響を及ぼすことが示された.さらに,立方体試料の寸法誤差には積層ピッチや積層方向が影響し,積層ピッチの違いは支台歯のフィニッシュライン形態に影響を及ぼすことが示された.
フッ化物徐放性コンポジットレジン (CR) から放出されるフッ化物がStreptococcus mutansの生物活性に及ぼす影響について検討した.2種類のフッ化物徐放性CRから放出されるフッ化物濃度は約5 ppmで,S. mutansの増殖能に影響は及ぼさなかった.一方,フッ化物徐放性CRから放出されるフッ化物によって試験片に付着したS. mutansの代謝活性は低下し,バイオフィルム形成能および乳酸産生能は抑制された.さらには,放出されたフッ化物はS. mutansの乳酸産生能に関与するEnolase活性を抑制したが,S. mutansの付着能およびバイオフィルム形成能に関与するGlucosyltransferase (GTF) 活性には影響を及ぼさなかった.以上より,フッ化物徐放性CRより溶出する低濃度のフッ化物はS. mutansの生物活性を抑制することにより齲蝕予防作用を発揮する可能性が示唆された.
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