日本歯科理工学会誌
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41 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 宇尾 基弘
    原稿種別: 総説
    2022 年 41 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    歯科用コンポジットレジンの機械的特性の向上にはフィラーの改善が大きく寄与している.フィラー添加は繊維強化と並んで複合材料の主要な補強手法であり,一般工業用のゴム,樹脂の多くもフィラー添加により補強されている.さらに近年は複合材料に様々な機能を付与するフィラーも開発されている.フィラーを均一,高密度に添加し,補強効果を高めるには,マトリックスへの親和性,結合性を改善する表面改質が不可欠である.本報では一般工業用のフィラーの種類や表面改質法について解説する.

  • 飯島 志行
    原稿種別: 総説
    2022 年 41 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    コンポジットレジン系材料の製造および利用は主に,粉体状フィラーの樹脂への分散・混練,成形,硬化操作を経た後に,機能発現させる工程から成り立っている.この一連の工程で粉体の挙動をいかに積極的に制御できるかが,コンポジットレジン系材料の機能制御にむけた成否の鍵である.例えば,粉体は液中や樹脂中で容易に凝集体を形成し,この現象をうまく抑制しないと粉体の液中・樹脂中分散体は増粘固化して成形不良を招く.また,粉体材料の幾何学的特性に由来してコンポジットレジン系材料には樹脂/粒子間の界面領域が豊富に存在する.材料機能との相関性をみながらこの界面領域をいかに設計していくのかも材料機能創出に向けた重要な要素である.本稿では粉体材料をハンドリングする際に直面する困難性を簡単に概説した後,粉体プロセスの観点からはどのような点に留意してコンポジットレジン系材料を設計し得るのかご紹介したい.

  • 峯 篤史, 萩野 僚介, 伴 晋太朗, 松本 真理子, 壁谷 知茂, 矢谷 博文
    原稿種別: 総説
    2022 年 41 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    2014年に保険導入されてから8年間で,CAD/CAMレジン冠は日本の臨床に着々と普及してきている.この新規補綴装置の質を向上させるために,わが国は「臨産官学民連携」で奮起してきた.臨床研究の成果として4年予後調査では,小臼歯CAD/CAMレジン冠の生存率は96.4%であり,脱離をトラブルと捉えた場合の成功率は77.4%であった.基礎的データの蓄積も進み,マトリックスレジンを被着対象としたレジンプライマーの有用性が明らかとなっている.このように,CAD/CAMレジン冠の臨床と基礎研究から,さらなるコンポジットレジン系材料としての可能性がみえてきている.今後,「日本独自のメタルフリー治療」が確立されるために,歯科理工学会にも強く期待せずにはいられない.

    本総説の内容は第78回日本歯科理工学会学術講演会(担当校:岡山大学)における学会主導型シンポジウム「さらなるコンポジットレジン系材料の可能性を探る!」で発表した.

  • 二階堂 徹
    原稿種別: 総説
    2022 年 41 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    コンポジットレジン材料は,材料の機械的性質の改良が進み,歯質接着材料の信頼性向上とMIDによってコンポジットレジン修復法の適応症例は拡大している.最近のコンポジットレジンの潮流は,シェードテイキングを不要とするユニバーサルタイプのコンポジットレジンや,自己接着性を有するコンポジットレジンの開発であるが,現時点では様々な問題がある.今後,在宅診療の増加やデジタルデンティストリーの展開に対応した新たなコンポジットレジン材料の開発が期待される.

原著
  • 國見 亮太, 梶本 昇, 丸田 道人, 佐藤 平, 玉置 幸雄, 都留 寛治
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 41 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    近年の審美性要求の高まりにより,ステンレス鋼製矯正用ワイヤー(以下,SUSワイヤー)に白色コーティングを施した製品が利用可能になったが,コーティング層が部分的に剝離する問題が報告されており,SUSワイヤーの色調を制御する新たな手法が望まれる.そこで,本研究ではステンレス鋼に酸化被膜を形成するインコ法による色調コントロールを試みた.
    インコ法によりSUSワイヤーの色調を変化させることが可能であり,処理条件によっては,未処理と比較して歯冠色に近い色調を得ることができた.処理時間が増加するにつれ,SUSワイヤー表面のCrおよびOの量が増加したことから,着色はCrを主成分とする酸化被膜の形成による光の干渉作用と推察される.歯冠色に近い色調を有したSUSワイヤーのメタルブラケットに対する静止摩擦力,ビッカース硬さ,弾性係数および引張強さは未処理のSUSワイヤーと有意差は認められず,耐食性は向上することがわかった.

  • 黑田 哲郎, 和田 悠希, 片山 裕太, 角井 早紀, 大橋 桂, 木本 克彦, 二瓶 智太郎
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 41 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,インジェクションタイプの連合用アルジネート印象材の性質について,弾性回復と弾性ひずみ,引裂き強さ,およびベースとなるアルジネート印象材との引張接着強さを寒天印象材と比較とした.
    その結果,インジェクションタイプの連合用アルジネート印象材の弾性ひずみは寒天印象材と同等であり,弾性回復は寒天印象材と比べて有意差は認められなかった.また,引裂き強さは寒天印象材と比較して有意に高い値を示し,ベースとなるアルジネート印象材との接着強さも有意に高い値であった.インジェクションタイプのアルジネート印象材は臨床においても有用と示唆された.

  • 伊藤 圭一, 金谷 貢, 泉 健次
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 41 巻 2 号 p. 162-172
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究では万能試験機を用いて,歯科用αおよびβ半水石膏の硬化膨張圧発現の様相と,両石膏の混水比,水温,練和時間ならびにα半水石膏の種類が最大硬化膨張圧に及ぼす影響を検討した.硬化膨張圧は練和後しばらく変化がなく,次に収縮が発現してから膨張に転じて徐々に増大し,およそ80~120分後に最大硬化膨張圧を示すプラトーに達した.さらに,膨張圧が増大している期間中にαおよびβ半水石膏ともに,階段状の微小な圧力変化が確認できた.また,両石膏ともに,混水比が大きくなるほど最大硬化膨張圧は低くなったが,水温及び練和時間の影響は見られなかった.α半水石膏の種類は最大硬化膨張圧に大きく影響し,硬化膨張抑制のための調整剤により膨張圧は低くなることが示唆された.以上,本測定法は,石膏硬化時の階段状の微小圧力変化を伴う硬化膨張圧を検知可能で,半水石膏の水和反応に伴う硬化現象の研究手法として,新規の有力な方法となることが示唆された.

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