日本小児血液・がん学会雑誌
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60 巻, 1 号
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第63回日本小児血液・がん学会学術集会記録
ゲノム教育セッション:血液腫瘍遺伝子パネル検査の臨床実装に向けて
  • 服部 浩佳
    2023 年 60 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    小児血液腫瘍疾患における遺伝子パネル検査によって,Germline変異が同定された場合の結果開示の方針については,固形がんの遺伝子パネル検査における二次的所見開示指針が参考になる.しかしながら,血液腫瘍パネルでは治療標的探索のみならず,診断と予後予測も目的としていることから,臨床的有用性(actionability)の違いに注意する必要がある.

    Germline変異の情報は診療上有用であることも多い.例えば,Li-Fraumeni症候群(LFS)の原因となるTP53遺伝子生殖系列病的バリアントは二次がん発症のリスク因子であり,放射線治療の適応決定に有用である.LFSでは診療ガイドラインが策定され,がんサーベイランス臨床試験が開始されるなど,フォローアップ方法も確立されつつある.小児遺伝性腫瘍全般に関しても,サーベイランス方法などを記載した診療ガイダンスが公表されている.

    常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる遺伝性腫瘍では,当該病的バリアントが親から受け継がれたものであれば,確定診断された患者の親ときょうだいは50%の確率で病的バリアント保持者である.患者が幼小児の場合は,親が後からがんを発症する可能性もあり得る.きょうだいの遺伝学的検査適応は腫瘍の発症年齢を勘案する必要がある.

    生殖細胞系列病的バリアント情報を有効に活用するためには,遺伝性腫瘍患者を取り巻く社会的,心理的,倫理的状況を認識し,対応することがより必要となると考えられる.

原著
  • 臼井 秀仁, 北河 徳彦, 中村 信人, 望月 響子, 八木 勇磨, 川見 明央, 奥村 一慶, 浅野 史雄, 田中 水緒, 田中 祐吉, ...
    2023 年 60 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    【目的】小児縦隔腫瘍では,診断のために全身麻酔・鎮静下における組織採取を考慮する事が多い.しかし縦隔腫瘍患者の全身麻酔では気道狭窄等から呼吸循環不全を生じる危険性がある.縦隔腫瘍の組織採取における全身麻酔の危険性を検証し,局所麻酔下組織採取の選択肢として縦隔腫瘍針生検の有効性と安全性を検証した.

    【対象】2012年~2021年に当院で縦隔腫瘍と診断し,組織採取を行った症例を対象とした.末梢血および骨髄検査で診断がついた症例は除外した.

    【方法】診療録から年齢,症状,画像所見,麻酔方法,組織採取方法,診断,合併症を後方視的に検討した.

    【結果】症例は21例.組織採取時年齢中央値6(5ヶ月~15)才.気道症状は13例で認め,2例で起坐呼吸を認めた.上大静脈症候群3例,心嚢液貯留3例であった.Mediastinal mass ratio (MMR) は中央値48,% cross sectional area (CSA) は中央値75.7,Blankリスク分類で高リスク8例,中間リスク9例,低リスク4例.診断はリンパ腫11例,神経芽腫6例,胚細胞腫瘍2例,他2例.全身麻酔下組織採取は13例で,全例で診断に至るも1例で合併症を生じた.局所麻酔下組織採取は8例で,全例で診断に至り,合併症は無かった.

    【考察】縦隔腫瘍の全身麻酔高リスク例では局所麻酔下での処置が望ましい.縦隔腫瘍針生検は安全かつ有効な選択肢になりうる.

  • 清谷 知賀子, 山田 悠司, 寺島 慶太, 塩田 曜子, 牛腸 義宏, 井口 晶裕, 坂口 大俊, 米田 光宏, 富澤 大輔, 松本 公一
    2023 年 60 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    背景:デクスラゾキサン(DRZ)はアントラサイクリン(ATC)による心筋障害を抑制すると報告されている.我々は高用量ATC治療を要する日本人小児がん患児に,施設倫理審査の承認を得てDRZ併用治療を行い短中期的な安全性を評価した.方法:DRZはATC治療直前に10倍量を15分で投与し,他の治療は通常通り行った.投与に先立ち患者家族の文書同意を取得した.結果:2015年2月から2022年1月までに,小児がん患児38例(男20例,女18例)にDRZ併用治療を実施した.疾患は,脳腫瘍9例,固形腫瘍25例,血液腫瘍4例で,DRZ初回投与時の年齢中央値は4歳2か月だった.造血細胞移植は11例(同種3例,自家8例)が,生体肝移植は6例が受けていた.DRZ投与開始時のドキソルビシン(DOX)換算累積投与量中央値は260 mg/m2で,最終投与時の累積投与量中央値は375 mg/m2だった.全員で治療急性期の有害事象はなく,骨髄抑制や臓器障害のレベルも,通常その治療で想定される範囲内だった.観察期間中央値は657日で,心不全や二次がんの発生はなかった.原疾患による死亡が4例あった.長期的な心保護と有害事象の観察には長期フォローアップが必要である.結論:日本人小児がん患児においてDRZ併用治療は急性期の有害事象なく安全に使用できうる.

  • 竹中 基記, 前沢 忠志, 齋藤 愛, 坊本 佳優, 三宅 菜月, 榎本 紗也子, 西岡 美喜子, 松本 洋介, 伊東 雅美, 宮崎 有美子 ...
    2023 年 60 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
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    2020年8月に東海北陸若手がん・生殖ネットワークが発足し,がん・生殖医療に関する情報共有や啓発活動を行っている.今回,小児・思春期血液がん患者の生殖機能に関する医療連携の現状を調査し,課題の抽出や今後の展望を見出した.

    2013年1月1日~2021年6月30日までに,当ネットワーク参加9施設のがん・生殖医療外来を受診した小児・思春期の血液がん患者(年齢18歳まで)について,後方視的に検討した.

    全症例115例(男性71例,女性44例)で,年齢別では9歳以下が4例,10–12歳が9例,13–15歳が42例,16–18歳が60例であった.精子凍結は希望した66例中13例が完遂できなかったが,その原因は無精子症が大半を占めていた.卵巣組織凍結は希望した17例中16例が完遂でき,がん治療中で造血細胞移植前処置前のタイミングで行われている症例が多かった.また,7例に周術期の輸血を要した.未受精卵子凍結は希望した11例中8例が完遂でき,思春期前(14歳以下)の女児でも完遂例が4例みられた.

    小児・思春期の血液がん患者におけるがん・生殖医療は,若年になるにつれ情報提供・紹介は少なく,妊孕性温存療法を行うにあたっても骨髄抑制などリスクを伴い,その実施には注意を要する.しかし,妊孕性温存療法のニーズやその完遂率は比較的高いため,今後も特に思春期前の小児を中心に患者・医療関係者含め啓発を続けていきたい.

  • 永吉 美智枝, 早川 晶, 前田 美穂, 副島 尭史, 吉備 智史
    2023 年 60 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,小児がん経験者(以下,経験者)の身体・心理社会的晩期合併症が復学後の学校生活に影響を及ぼす困難と支援の実態を明らかにすることを目的とした.復学を果たした経験者を対象にwebまたは質問紙による無記名のアンケート調査を2021年1~5月に実施した.有効回答が得られた16名を分析対象とした.診断時の年齢の中央値は11.5(8–17)歳,院内学級への転籍者は11名であった.入院中の一日の学習時間数の中央値は3時間,9名が退院後に在宅で過ごしていた期間の中央値は2(1.5–3)か月間であった.復学後,集中力・記憶力の低下と思うような学習成果が得られない,成績の悪化という認知機能に関わる困難を感じた経験者は10名で,7名が復学後1年未満,3名が復学後1~2年に学習上の問題を生じていたが,教員に相談したのは1名のみで,6名は問題解決できなかった.体育では9名(56.3%)が参加できず,体育に関する問題は3名が復学後6年以上経過した時期に生じていた.問題が解決されない要因として,復学後に生じた問題がタイムリーに本人から教員へ相談できない状況があると思われた.経験者は学習の補完に加え,周囲への適切な説明と心理的配慮,相談窓口の設置を求めている.経験者が必要な時に,困難について相談できる教員への教育と医療と学校保健,病弱教育専門機関が連携した支援体制の構築が急務とされる.

  • 永吉 美智枝, 東樹 京子, 高橋 衣, 瀧田 浩平, 秋山 政晴, 柳澤 隆昭
    2023 年 60 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    眼球摘出術を受けた網膜芽細胞腫の患児は,義眼装用を開始し義眼のセルフケア習得が必要となる.本研究は網膜芽細胞腫の患児の幼児期からの義眼のセルフケアの実態とその獲得過程を明らかにすることを目的とした.患児へ義眼のセルフケアを移行した経験のある3~10歳の患児の母親18名を対象に半構造化面接を実施した.質的記述的デザインを用い,語りを要約してサブカテゴリー,カテゴリーを生成した.母親の年齢の中央値(最小–最大)は38(35–46)歳,患児の眼球摘出時の月齢の中央値(最小–最大)は19(1–59)か月であった.義眼のセルフケアの実態として91サブカテゴリーから,[自分で義眼ケアをやろうとするタイミングで実施を促す][子どもの義眼ケアの目的の理解を促し意欲を高める][スポイトを義眼に吸着させて外す][1日装用した義眼を洗浄や拭き取りにより清潔にする][義眼着脱時の自分の感覚を大事にする]など33カテゴリーが抽出された.義眼のセルフケアの内容には準備から,着脱と清潔保持,義眼の破損や落下予防とプライバシーの保護などが含まれ,ケアの方法は多様で工夫されていた.母親は,眼球摘出後の眼に向き合う怖さと発達過程にある子どもへ義眼ケアの理解と手技を促す難しさを感じていたことから,眼球摘出後の入院中から,眼の状態や生活に応じたケアの方法に関する教育と,子どもの主体性を尊重したセルフケア獲得への支援の必要性が示唆された.

症例報告
  • 荒木 未希絵, 山下 大紀, 吉田 奈央, 北澤 宏展, 秋田 直洋, 宮島 雄二, 濱 麻人
    2023 年 60 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    症例は8歳女児.4歳時にB前駆細胞性急性リンパ性白血病(BCP-ALL)と診断された.初期ステロイド反応性は良好で,寛解導入療法後に第1寛解が得られ,寛解を維持し2年6か月で治療を終了した.初発から4年6か月,治療終了から2年後に骨髄再発し,白血病関連融合遺伝子検査によりTCF3-ZNF384陽性が判明した.第2寛解期にメルファラン180 mg/m2および全身放射線照射12 Gyによる前処置を用いて,HLA8/8アリル一致の父親から骨髄移植を施行した.移植後17日で生着し,皮膚の急性移植片対宿主病以外に急性合併症を認めず,移植後1年現在無病生存している.再発TCF3-ZNF384陽性BCP-ALLの予後は不良とされ,造血細胞移植により良好な結果が得られる可能性がある.本症例では骨髄破壊的前処置を用いて良好な結果が得られているが,適切な前処置強度については今後の検討課題である.

  • 小柴 光央, 羽賀 洋一, 有働 みどり, 植田 有紀子, 松岡 正樹, 小梛地 洋, 島田 脩平, 高橋 浩之
    2023 年 60 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    Ogilvie症候群は,機械性閉塞機転がなく主に結腸が拡張する急性に進行する疾患で,原因は外傷,感染症などがあげられる.本症例は13歳の女児で,急性骨髄性白血病の全治療を完遂して2か月後に頑固な便秘と激しい腹痛を呈した.著明な腸閉塞と意識障害がみられて入院し,直後に汎発性帯状疱疹が顕在化した.化学療法終了から2か月後の免疫抑制中に,水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化に伴う汎発性帯状疱疹とOgilvie症候群と診断した.Ogilvie症候群にはイレウス管による減圧と腸管蠕動の改善目的にネオスチグミン皮下注を行い,汎発性帯状疱疹にはアシクロビル,免疫グロブリンによる治療を行った.意識障害の原因は入院時MRIで後頭葉にT2強調画像で高信号域を認めたが,治療後のフォローで高信号域が速やかに改善したことから,可逆性後頭葉白質脳症の併発と診断した.白血病治療終了後も細胞性免疫の回復には半年から1年要するため,免疫抑制状態には注意を要する.

  • 田中 清人, 唐川 修平, 下村 麻衣子, 谷口 真紀, 川口 浩史, 山﨑 文之, 岡田 賢
    2023 年 60 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    再発・難治性髄芽腫4症例に対し,メソトレキセート髄注を併用したベバシズマブ/イリノテカン/テモゾロミドの3剤併用療法を施行した.3例で長期に無増悪状態を維持できかつ生活の質を保つことが可能であった.1例は再発後54か月という長期生存が可能であり,また乳児期発症の難治例ではbridging therapyとして本治療を行うことで病変の進行なく3歳以降の放射線照射へつなげ,長期の寛解を維持することができた.長期の反復投与による重度の骨髄抑制については注意が必要だが,早期治療中止となる重篤な有害事象は認められなかった.既存治療と比して有効性および安全性の両面からベバシズマブ/イリノテカン/テモゾロミドの3剤併用療法が再発・難治性髄芽腫の治療選択肢となりうることが示された.

  • 水野 将治, 寺下 新太郎, 野村 恵子, 平井 宏子, 加藤 泰輔, 髙﨑 麻美, 西山 直隆, 北村 寛, 足立 雄一
    2023 年 60 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    副腎皮質腫瘍は稀な疾患であり,良悪性の診断が難しい疾患である.症例は,早発陰毛を主訴に来院した5歳1か月女児.画像検査で右副腎腫瘍を認め,機能性副腎腫瘍,ゴナドトロピン非依存性思春期早発症と診断した.転移は認めず全摘出術が可能だった.しかし,副腎皮質腫瘍の臨床病理学的な診断基準であるWeissの基準では悪性,Wienekeの基準では良性と判定された.2つの基準による形態学的評価,Ki-67による免疫組織化学的評価を総合的に判断し,最終的に良性の副腎皮質腺腫として,術後化学療法は行わない方針とした.術後1年となる現在,再発は認めておらず,不要な術後療法を回避した.

  • ~苦慮した1例より~
    髙橋 良彰, 申 将守, 木下 義晶, 今井 千速, 小林 隆, 荒井 勇樹, 大山 俊之, 横田 直樹, 菅井 佑, 髙野 祥一
    2023 年 60 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    症例は12歳男児.持続する咳嗽があり,胸部X線撮影で縦隔拡大を認め,入院となった.胸部CTで前縦隔に13 cm大の腫瘤と,左主気管支の狭窄を認めた.鎮静に伴う気道閉塞のリスクが高く,局所麻酔下に前胸部に突出した病変から針生検を施行した.線維性組織に炎症細胞浸潤を認めたが,腫瘍性病変としての確定診断は困難であった.生検後,腫瘍は増大し,リンパ腫,肉腫を想定した化学療法を先行した.その後,腫瘍は縮小したため,全身麻酔下に開放生検を施行したが,前回同様の病理所見であり,確定診断は困難であった.腫瘍は再増大し,PET-CTを施行したところ腫瘍の一部に集積を認めた.開胸下に強く集積した部位から生検したところ,大細胞型B細胞リンパ腫と診断した.Oncologic emergency症例の生検は時に診断困難であり,画像診断情報を踏まえ,安全性と確実性を備えた総合的な生検のプロトコールの確立が必要である.

  • 中尾 朋平, 永井 爽, 白石 昌久, 長田 紀大, 藤野 順子, 長谷川 真理子, 畑中 政博, 土岡 丘, 佐藤 泰樹, 伴 慎一, 野 ...
    2023 年 60 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル 認証あり

    【症例】1歳8か月,女児【経過】入院の数日前に左側腹部の腫瘤が気づかれた.画像上,左腎下極付近原発で正中を越える最大径約9.5 cmの巨大な腫瘍が指摘され,腎芽腫と考えられた.巨大腫瘍であること,腫瘍の背側と後腹膜との癒着が強く疑われたことから腫瘍全摘出術が困難と考えた.術前化学療法でダウンステージングの可能性もあることから,International Society of Pediatric Oncology (SIOP) WT 2001に基づいて術前化学療法を先行させたところ縮小を確認し,腫瘍全摘出術を実施した.断端はすべて陰性で,先天性間葉芽腎腫と病理診断された.【結語】化学療法を先行させることで腫瘍が縮小し,腫瘍全摘出術ができた先天性間葉芽腎腫の1例を経験した.SIOP WT 2001レジメンを使用することでアントラサイクリンの投与と放射線治療を回避できた.

  • 安井 良僚, 桑原 強, 田村 亮, 藤澤 麗子, 岡田 直樹, 犀川 太, 岡島 英明
    2023 年 60 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
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    PRETEXT IIIの肝芽腫においては,系統的に完全切除するため3区域切除が検討されるが,切除後の残肝容積不足による肝切除後肝不全(PHLF)が危惧される.我々は,腫瘍の局在により,根治性と残肝容積確保のために,3区域切除を回避して,病変のない隣接亜区域を温存する右葉または左葉切除+亜区域切除(本術式)を3例に施行した.全例で顕微鏡的完全切除が得られ,5年以上の無再発生存を得ている.本術式群は右葉切除または左葉切除症例の手術時間や出血量と有意差はなく,術後化学療法開始までの期間も有意差はなかった.PRETEXT IIIの肝芽腫に対しては,症例によっては本術式により3区域切除を回避し,右葉または左葉切除と同等の手術侵襲で残肝機能の確保と腫瘍の系統的完全切除を両立できる可能性がある.

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