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松下 能孝, 植田 浩明, 小池 正義, 上田 寛
セッションID: k07-05
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
会議録・要旨集
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AB
2O
4で表されるスピネル型化合物は、その結晶構造中でB原子が構成する4面体によってパイロクロア型3次元ネットワークを形成している。スピンを持つ遷移金属やランタノイド・イオンがBサイトを占有する系において、このネットワークは外場(温度、圧力など)によって反強磁性型磁気秩序や電荷整列が誘起された際、スピンの秩序化を妨げる様な効果を示す。この効果に加えて、同物質群は超伝導など種々の物性を示すために物性物理の分野において注目されている。中でも本研究物質(LiV2O4)は金属伝導を示し、リチウムやバナジウムと言った軽元素から構成された物質にも関わらず低温において重い電子系的な振る舞いを示す。その電子比熱係数は_から_420 mJ/molK2とf電子系に匹敵する値を持つ非常に特異的な遷移金属系酸化物であり、興味深い物性を示す物質である。そのため、詳細なる物性測定の必要性から、旧来、種々の方法にて本物質の単結晶育成が試みられてきた。現在まで報告されている唯一の成功方法は水熱合成である。しかしながら、同方法では育成条件の最適化や大型化に難がある。そこで、本研究ではリチウム系化合物をフラックス剤として用いた方法で単結晶の育成を試みた。結果、下記に示す様な最大約700ミクロン以上に達する単結晶の育成に成功した。その詳細については当日、発表を行う。
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湊 淳一, キム ワイージェイ, 山田 裕久, 渡辺 雄二郎, 田村 堅志, 横山 信吾, チョー エスービィ, 小松 優, スティーブンス ...
セッションID: k07-06
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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産業・生活廃水中のアンモニウムイオンは、河川や湖に富養化をもたらしている。その吸着・除去剤として安価な天然ゼオライトが注目されている。天然ゼオライトのアンモニウムイオン吸着効率は、ゼオライト種、交換性陽イオン容量、長石やイライトなどの不純物量などによって決定される。本研究では、クリノプチロナイトとモルデナイトを主成分とする韓国産の天然ゼオライトを空気分級法を用いて、異なる粒径の試料に調整した。空気分級されたそれぞれの試料は、XRD、粒径測定、SEM-EDS、ICP-MSを用いて特徴付けた。さらにそれぞれのアンモニウム吸着量の粒径依存性について明らかにしたので報告する
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鈴木 正哉, 渡部 芳夫, 月村 勝宏, 鈴木 憲司
セッションID: k07-07
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
会議録・要旨集
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[1.はじめに] 原子力発電に用いられた使用済み核燃料の処分において、高レベル放射性廃棄物についてはガラス固化体として処理する技術が確立しているが、TRU廃棄物の処理については現在固化体の技術開発を行っている。中でも放射性ヨウ素(I-129)は半減期が1570万年と非常に長く、TRU廃棄物処理における被爆線量評価上の支配核種となっているため、安定化処理が必要とされている。またI-129は半減期が長いばかりでなく、セメントやベントナイトあるいは天然バリアへ吸着しにくいという性質をもっており、現在では廃銀吸着材を用いて回収する方法が研究されている。しかし最初に廃銀吸着材を用いてAgIとすると、その後の固定化において前処理の必要性が生じたり、廃銀等の2次廃棄物が排出されることになる。そこで本研究では、発生するヨウ素ガスを廃銀吸着剤を用いず直接固化体中に取り込む技術開発を目的とし、高温状態においてヨウ素ガスをハイドロソーダライトなどの安定な鉱物中に直接取り込むことの検討を行ったのでここに報告する。[2.試料調製および実験方法] ハイドロソーダライト及びハイドログロシュラーを合成し、それらの粉末を試料とした。粒径は300_から_500μmのものを用いた。反応実験はヨウ素固定化反応装置を用いて行った。試料0.5gを充填した石英ガラス製反応管を縦型電気炉にセットした後、上部から窒素ガスを流しながら500_から_800℃の所定温度まで昇温させた。その後、窒素ガスにて1000ppmに希釈したHIガスを流量100ml/分、反応時間30_から_210分流通させた。徐冷後、試料を反応管から取り出し、エタノールにて洗浄した後XRD及びXRF測定を行った。[3.結果及び考察] ハイドロソーダライトを用いた実験の反応前および反応後のX線回折図形では、反応後の回折ピークは反応前と比較して低角側にシフトしており、格子が大きくなったことが確認された。また蛍光X線による分析では、ヨウ素のピークが確認された。以上のことからハイドロソーダライトは高温条件下でヨウ素ガスと反応させた場合、ハイドロソーダライト中の水酸基がヨウ素と置換し、ヨウ素ソーダライトに変化することが確認された。 反応時間を60分で一定とし、反応温度を500_から_800度で変えて行ったところ、ハイドロソーダライトに含まれるヨウ素固定化量は、温度の上昇と共に増加し750度で0.92wt%と最高に達するが、800度で0.38wt%に減少した。800度でヨウ素固定化量が減少したのはソーダライト構造が同温度で崩れたことによるものである。 以上のようにハイドロソーダライトにヨウ素が固定化されていることは確認されたが、固定化率は1wt%程度とかなり低い。ハイドロソーダライトと塩素が反応した場合、理論値の7.3wt%にほぼ近い割合で水酸基は塩素に置換されたのに対し、ヨウ素は理論値である22.0wt%の約5%程度しか置換されていない。このことはヨウ素のイオン半径(2.06A)は塩素のイオン半径(1.67A)よりも大きく、ヨウ素はハイドロソーダライトの内部へと拡散しにくいことによる可能性が考えられる。今回の実験では比較的大きなサイズの粒子を用いたことから、今後粒子の影響も考慮に入れた反応実験を行うことが必要である。 一方HI反応後のハイドログロシュラーのXRF測定を行った結果、ヨウ素は検出されなかった。これまでの研究では、ハイドログロシュラーはHClと反応しミクロポアに塩素イオンが固定化されることが分かっており、ヨウ素イオンのイオン半径は塩素イオンに比べて大きいためミクロポアへの進入が物理的に難しいことによると考えられる。
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山田 隆, 松原 聰, 宮脇 律郎, 鈴木 保光, 小菅 康寛, 西久保 勝己
セッションID: k08-01
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
会議録・要旨集
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福島県伊達郡川俣町水晶山からは各種の希元素鉱物が産するが、鉱物種をみるとイットリウムを含む鉱物が卓越している。今回、新たに、イットリウム褐簾石allanite-(Y)とイットリウムケイシク石(Y)caysichite-(Y)をみいだしたのでこれらの鉱物について外観や産状と鉱物学的性質をのべる。
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松原 聰, 宮脇 律郎, 横山 一己, 原田 明, 坂本 充成
セッションID: k08-02
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
会議録・要旨集
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静岡県河津鉱山から我が国初産のダッガン石が見つかった。六角柱状微細結晶の集合体で、透明な淡いアクアマリンブルーである。この鉱物は、鉛、亜鉛、テルル、ヒ素を主成分とする鉱物であるが、この産地のものはアンチモンがテルルおよびヒ素のサイトを一部置換していることが考えられる。
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下林 典正
セッションID: k08-03
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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西南日本に分布する三郡帯-蓮華帯から蛇紋岩メランジェ中の構造ブロックとしてのヒスイ輝石岩が報告されている(例えば,新潟県糸魚川-青海地域,兵庫県大屋地域,鳥取県若桜地域,岡山県大佐地域など)。その中でも,日本最大のヒスイ産地である新潟県の糸魚川-青海地域のヒスイ輝石岩や関連岩石については多くの研究がなされており,これまでに6種類の新鉱物(青海石・‘奴奈川石’・糸魚川石・蓮華石・松原石・新潟石)が報告されている。これらは、いずれもSrを含む珪酸塩鉱物である。本研究では,鳥取県若桜町角谷地域のヒスイ輝石含有岩の岩石記載を行い,糸魚川石や新潟石といったSr含有珪酸塩鉱物を新たに見出した。そのいずれも,原産地である糸魚川-青海地域に続いて、世界2例目の報告である。本地域でのヒスイ[若桜ヒスイ]の産出は1965年に鳥取市一行寺の中野知行師によって発見され、益富(1966)によって公表された。若桜ヒスイは,発見・報告当初から、白色から淡青色(まれにラベンダーヒスイもある)の‘硬玉’と緑色の‘軟玉質’岩石とに大別されることが知られていた。前者は益富(1966)によりヒスイ輝石岩であることが確認されていたが、後者に関しては原田(1968)による両岩石の化学分析比較が行なわれたことはあるが、岩石記載は行なわれていなかった。今回、偏光顕微鏡観察および蛍光X線分析による全岩分析によって、前者はヒスイ輝石岩であることを確認するとともに、後者はいわゆる‘軟玉’(ネフライト)ではなくパンペリー石・緑泥石やヒスイ輝石を主要構成鉱物とするパンペリー石岩であることがわかった。昨年度の年会において、下林・山田(2003)は、このパンペリー石岩の円礫を横切るヒスイ輝石細脈中に糸魚川石の存在を報告した。その後の研究で、若桜産の糸魚川石はヒスイ輝石が主体をなす‘硬玉’においても同様の産状 -すなわち,糸魚川石とパンペリー石との共生体とその周縁部にセルシアンが分布した組織がヒスイ輝石の細脈中に見られる- が観察された。このことから、若桜地域においては、ヒスイ輝石岩やその関連岩石の割れ目に沿ってAl,Na,Ba,Srなどに富む変成流体が浸入し,まずは壁面からヒスイ輝石・セルシアンの順に無水鉱物が晶出し,その内側に糸魚川石とパンペリー石といった含水鉱物が互いにintergrowthしながら成長したと考えられる。また、前述の糸魚川石が発見されたパンペリー石岩円礫のマトリクス部から新たに新潟石が見出された。新潟石は、宮島ら(2001)によって青海町宮花海岸から採取された特異なロディン岩(ダイアスポア含有ぶどう石岩)転礫より発見・報告された新鉱物で、クリノゾイサイト[Ca2Al3Si3O12(OH)]の A2席のCaをSrに置換したもので、理想化学式はCaSrAl3Si3O12(OH)である。糸魚川石と新潟石とが同一岩石から報告されたのは初めてである。若桜産の新潟石はSrを含有するクリノゾイサイトをovergrowthする形で共生し,両者は長さ約100μmの葉片状結晶の集合体として産する。新潟石-Sr含有クリノゾイサイト共生体はヒスイ輝石,緑泥石,パンペリー石および少量のチタン石と共存している。若桜産の新潟石の組成を原産地のものと比較するため、Miyajima et al. (2003)に倣ってO=13で規格化したところ、若桜地域の新潟石はFeに乏しくAlに富みことがわかった。また、A席を占めるべきCaとSrとがともに若干乏しく、Ca+SrのみではA席に空席を生じてしまうことになる。そのため単純には比較できないが、XSr(A2席におけるSr/(Ca+Sr)比)に換算すると0.79となり、原産地のもの(0.67-0.79)よりも若干高い値を示すこととなった。
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永嶌 真理子, 赤坂 正秀, 櫻井 剛
セッションID: k08-04
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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四国中央部三波川変成岩の転石から見つかった含Cr緑簾石の記載的研究を行った.含Cr緑簾石は化学組成によって3つのタイプに分類することができる:(1)Ca緑簾石(20–23 wt.% CaO,0.6–3.3 wt.% SrO),(2)含REE緑簾石(2.9–5.5 wt.% REE, 1.5–3.3 wt.% SrO)(REEは主にCe
2O
3, La
2O
3, Nd
2O
3, Pr
2O
3),(3)Srに富む緑簾石(5.8–8.4 wt.% SrO).Ca緑簾石のCr
2O
3含有量は5.7 wt.%に達し,これはCa
2Cr
3+3Si
3O
12(OH) 成分12 mol%に相当する.Srに富む緑簾石のCr
2O
3含有量は0.4-3.3 wt.%,含REE緑簾石のCr
2O
3含有量は3.1-3.5 wt.%である.Cr含有量が変化に富むのに対して,Fe
2O
3含有量は6.8-8.9 wt.%という限定的な範囲で変化する.
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中野 聰志, 下林 典正, 阿依 アマヒディ
セッションID: k08-05
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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ハイパーソルバス閃長岩中アルカリ長石は、顕微鏡的に汚濁したマイクロパーサイト部分のほかに、熱水反応を免れた顕微鏡的に清澄な初生的部分(クリプトパーサイト)を大なり小なり残しているので、マグマからの冷却史を解析する上で近年非常に有用な研究対象とされている。チリ共和国の最南部パタゴニアアンデスに位置するバルマセーダ山麓から採取した閃長岩アルカリ長石の組織は、これまで解析された他の産地のものと異なる特徴をいくつか示している。また、特徴のあるCaゾーニングパターン(Nakano, 1998)と、ほぼそれと反対の特徴を示すFeの特異な分布パターンが存在する。 一方、近年カソードルミネセンス(以下、CL)法が、鉱物研究に広く応用されてきている。アルカリ長石のCLカラーとして、Smith and Stenstrom (1965)の研究以来、赤色と青色が知られてきている。赤色のCLについてはいくつかの微量元素の存在が要因として検討されてきた。Finch and Walker (1992)は、閃長岩アルカリ長石の初生的部分が青色の、熱水反応で粗大したマイクロポアに富むマイクロパーサイトの部分が赤色のCLを示すことから、赤の発光にはmicroporosityが関係しているのではないかと指摘した。最近のFinch and Klein (1999)の研究では、青色のCLの要因はAlとの結合Oにおける電子空孔の存在であり、赤色CLの要因はT1に位置するFe+3の存在によるものであることが明らかにされた。 以上のこれまでの研究をふまえると、本アルカリ長石は、CaとFeの分布の起源や微細組織の成因を研究する上のみならず、CL法による鉱物微細組織研究の観点からも適当な試料と考えられる。そこで、今回本アルカリ長石についてのCL像を観察し、Feの分布及び組織変化のパターンと対応させその解析を行った。その結果、本アルカリ長石のCLカラーは、顕微鏡的に清澄で微細組織のない初生的部分(Fe2O3 約0.2%)が青色、Feに富む初生的部分(Fe2O3 _から_2wt%)が明るい赤色、Feを少なくとも少量含むマイクロパーサイト部分が暗い赤色(Fe2O3 約0.3%以上)、ほとんどFeを含まないマイクロパーサイト部分が暗色(ほとんどルミネセンスがない)であることがわかった。
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田賀井 篤平, 橘 由里香
セッションID: k08-06
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
会議録・要旨集
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シーボルト鉱物標本と江戸時代の鉱物学田賀井篤平(東大・総博)・橘由里香(東大・院理)P. F. Sieboldユs mineral collection and mineralogy in Edo periodTagai, T. (Univ. Tokyo), Tachibana, Y. (Univ. Tokyo)江戸末期に日本を訪れたシーボルト(P.F.Siebold)は、日本における自然史研究の基盤を築いた。シーボルトの自然史研究では植物学と動物学が知られており、膨大な植物標本と動物標本のコレクションがライデン(オランダ)の植物園と自然史博物館に残されている。シーボルトは離日後、通称「日本」と呼ばれる大著を著わしたが、日本産の鉱物に関する記載は極めて少ない。シーボルト自身の関心は主として動植物、特に植物にあったようで、鉱物類の収集は同行者であるビュルガーに任せた。大沢(2003)はライデン自然史博物館に収蔵されているシーボルト鉱物標本約800点を調査した。我々の調査では、シーボルト自身による手書きのラベルとおもわれるものも数十点(未確定)、ビュルガーの手になるラベルは約65点ある。その他協力した日本人として伊藤圭介、水谷助六、桂川甫賢と考えられるラベルも確認された。収集された鉱物標本は非常に偏っており、色や形や名前や産地の特殊なものを採集あるいは購入して提供したと思われ、当時の鉱物学の知識は植物学や動物学に比べると遥かに遅れていたと思われる。昭和9年にベルリンの日本学会が、シーボルト関連の文献約300点を貸し出した際に土井正民が鉱物学に関連の深い資料をタイプして写本を作成した。この文献は「日本」には掲載されていない日本の鉱物に関するまとまった記述であり、当時の日本の鉱物学の実状を知ることができる重要な資料である。このほかにも数種類のまとまった資料を含み、現在調査中である。しかし、少なくとも土井の残した資料は、シーボルトではなくビュルガーの手になるもので、いわばビュルガーの「日本鉱物誌」とも言うべきものである。本研究は科学研究費(課題番号16401036)の補助を受けて行われている。シーボルト:「日本」9巻 雄松堂書店 (1977)シーボルト:(土井正民印書)日本鉱物誌 日本鉱業史料集 日本鉱業史料集刊行委員会大沢眞澄:シーボルト収集の日本産鉱物・岩石および薬物類標本ならびに考古資料、新シーボルト研究I 自然科学・医学篇 八坂書房(2003)Siebold, Buerger, Mineral collection, Edo periodTagai, T. : t_tagai@um.u-tokyo.ac.jp
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坂野 靖行, 宮脇 律郎, 松原 聰, 牧野 州明, 豊 遙秋, 山田 滋夫, 神谷 俊昭
セッションID: k08-07
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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岐阜県春日村産新鉱物 苦土定永閃石は,接触変成岩中に産する角閃石のリムとして産する.角閃石は肉眼では褐色を帯びた黒色で,最大長径3 mmである.[4]Al(四配位のAl)に乏しいコアと[4]Alに富むリムからなり,リムの幅は約150 μm以下である.コアとリムはそれぞれパーガス閃石とパーガス閃石ー苦土定永閃石に分類される.苦土定永閃石の代表的な化学組成は(Na
0.73K
0.27)
1.00(Ca
1.97Na
0.01Mn
0.02)
2.00(Mg
3.07Al
0.86Fe
2+0.68Ti
0.29Fe
3+0.10)
5.00(Si
5.47Al
2.53)
8.00O22(OH1.90F0.07Cl0.03)2.00である.上記組成を持つ苦土定永閃石の格子定数はa = 9.905(9), b = 18.00(1), c = 5.322(5)Å, β = 105.47(7)°である.
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宮脇 律郎, 松原 聰, 横山 一己, 岡本 鑑吉
セッションID: k08-08
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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岐阜県恵那郡蛭川村田原産のHingganite-(Ce)が国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物名委員会より、新鉱物として正式に承認を受けた。EPMAによる定量分析結果から得られた実験式は、(Ce0.820La0.325Nd0.133Pr0.061Y0.030Sm0.011Gd0.002Dy0.001Ca0.600) Σ1.983Fe0.239Be2.017Si2.017O8.203(OH)1.522である。ガンドルフィーカメラとイメージプレートによる粉末X線回折データを用いリートベルト法で精密化した格子定数は、a = 9.8973(11), b = 7.6282(8), c = 4.7505(6) Å, β= 90.416(8) °, V = 358.64(7) Å
3, Z = 4、である。
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長瀬 敏郎, 門馬 綱一, 田中 雅彦
セッションID: k08-09
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
会議録・要旨集
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石英のポリモルフであるモガナイトの六角板状晶の内部組織について,偏光顕微鏡ならびに透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った.その結果この六角板状晶は薄板状結晶の集合体からなり,これら薄板状結晶が石英でのエステレル双晶に相当する結晶学的関係をもって接合することにより六角板状の形態を形作っていることが明らかとなった.
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堀 秀道, 長瀬 敏郎, 北峯 瑞也
セッションID: k08-10
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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The sample has been collected in the old dump of Tanohata (Mn) Mine. This mineral is present as fibrous aggregates mixed in quartz and other manganese minerals. Our investigation shows the mineral belongs to pectolite type in which lithium and mangan play main chemical components. The late J.Ito already synthesized " Li-serandite " by his naming (Mineralogical Jurn. vol7, pp 45-65, 1972). The data of both materials are enough identical. In our conclusion this Li-Mn mineral could be the natural occurence of the synthesized material by J.Ito. The basic chemical analysis were carried out by EPMA, LA-ICP-MS analysis was done for lithium. Minor ammount of Be also has been found. X-ray powder diffraction is almost same with Ito's data. SAED pattern indicates pectolite type of crystallographical structure. A chemical formula calculated on the base of 8 oxygen: (Li 0.78, Na 0.22) 1.00 (Mn 1.86, Ca 0.03, Mg 0.09) 1.98 Si 3.01 O 8 (OH) 1.0
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間嶋 寛紀, 赤井 純治, 松原 聰, 宮脇 律郎, 石橋 隆
セッションID: k08-11
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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ストロンチオ斜方ジョアキン石(”奴奈川石”)は、茅原ら(1974)によって新潟県青海町金山谷のアルビタイト中から青海石などの含Sr鉱物とともに発見された鉱物である。組成はNa2+xBa4Fe1.5(Sr,Ba,REE,Nb)4-xTi4(O,OH)4(Si4O12)4・2H2Oで、多形関係にある鉱物としてストロンチオジョアキン石がある。茅原ら(1974)はX線単結晶法により斜方晶系として決定した。今回新潟大学所蔵の標本より金山谷産のアルビタイト中の、黄色で本鉱物とされている4試料を用いて透過型電子顕微鏡で検討した。 透過型電子顕微鏡観察用には、試料は、微少量の粉末をつくり、JEM 2010高分解能透過型電子顕微鏡で観察した。組成は、付属のEDS(Noran Inst. Voyager IV)で検討した。 電子線回折および高分解能観察により検討した結果、すべての試料に(001)面での積層不整が観察され、一部の試料ではそれが著しい。さらに、ある程度の大きさをもつ単斜晶系部分と斜方晶系部分とが平行連晶している部分も比較的頻繁に観察された。つまり、独立の相としての単斜相が存在しているとみることができ、高分解能電子顕微鏡像では単斜相と(001)面で頻繁な積層不整がみられた。 Dowty(1975)はジョアキン石族鉱物の結晶構造解析を行ったが、これ以前に Cannillo et al.,(1972)は 単斜晶系ジョアキン石構造が(001)面のpseudo mirror をもち、このことは頻繁な双晶構造が起りうることを指摘している。トポロジー的にはこの双晶構造は、積層不整ととらえることができる。つまり、単斜構造のスラブの積層が c* 方向 に3/8 a のdisplacementで続くと単斜晶構造であり、これが - 3/8 a のdisplacementで起きると斜方晶構造となる(但し、双晶構造は厳密に mirror operation であり、translation とは異なるので構造上の微修正を含む)。 今回観察された、青海産試料の結晶構造の乱れは結晶の個体差が大きく、ほとんど斜方晶系のものから半分以上が単斜晶系のものまでさまざまであるが、ほとんど斜方晶系のものでもわずかな不整は必ず含んでいることがわかった。 また結晶個体間の色の違いも見られるが、組成・産状と単斜晶と斜方晶の頻度、また積層不整密度等との関係は現在検討中である。
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大西 政之, 小林 祥一, 草地 功, 藤原 由輝, 西田 勝一
セッションID: k08-12
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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和歌山県すさみ町下防己の三陽鉱山からalloclasiteを見出した.三陽鉱山産alloclasiteは砂岩を切る幅10 cm内外の石英脈中に,径5 mm以下の粒状ないし柱状結晶として産出した.共存鉱物はarsenopyrite,chlorite,Fe-Al arsenate鉱物である.肉眼的には鋼灰色で金属光沢を示す.VHN100=752 (653-882) kg mm-2,MHN=6.D(calc)=6.19 g cm-3.EPMAによる代表的な分析値は,最もコバルトに富む部分でCo 31.58,Fe 3.45,Ni n.d.,As 44.01,S 19.98,total 99.02 wt.%である.S=1としたときの実験式は(Co
0.860Fe
0.099)
0.959As
0.943S
1.000を与える.(Co
0.801Fe
0.169Ni
0.037)
1.007As
1.000S
1.000 (Co/(Co+Fe+Ni)=0.621-0.897) の組成をもつ結晶の粉末X線回折値から求めた格子定数はa=4.642 (2),b=5.612 (2),c=3.416 (1) Å,β=90.02 (5) °である.
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西尾 大輔, 皆川 鉄雄
セッションID: k08-13
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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瀬戸内領家帯に属する愛媛県弓削島には,かつて島中南部に弓削島石灰石鉱山があり(四国通商産業局,1957),現在では廃山となっている。この鉱山から産出された石灰岩は領家花崗岩による変成作用を受けており,糖晶質大理石となっている。石灰岩にはしばしば暗黒色の団塊が含まれ,Al, Fe, Tiに富みSiに乏しい特徴を持っており,組成的にはラテライトに近似する。このような岩石は現在,捨て石もしくは露頭として確認でき,同様の産状と岩石が瀬戸内領家帯および四国秩父帯ではいくつか見いだされている。過去に,愛媛県弓削島,明神島からはカリ(苦土)定永閃石が新鉱物として記載されており(Shimazaki et al., 1984),西尾・皆川(2003)は愛媛県睦月島においても同様の角閃石の産出を報告した。また,近年,岐阜県春日村からNa-typeの苦土定永閃石の産出があり,新鉱物として認定された(Banno et al., 2004)。他にも定永閃石に関連した角閃石がスカルンやアルカリ岩などからいくつか報告されている(e.g. Mogessie et al., 1986; Sawaki, 1989; Sokolova et al., 2000)。しかし,これまで報告された定永閃石グループにおいてTiの卓越は弓削島産のものでわずかに認められる程度であり(Ti=0.51),明らかにTi-typeに属する定永閃石グループは認められなかった。われわれは,弓削島産角閃石が他地域産に比較してSiに極端に乏しいことに注目し,Siおよび各元素とTiの固溶関係を調べた。その結果,SiとTiに関しては明らかに負の相関が認められ,一部の角閃石はSi=4かつTi=1を端成分に持つ組成領域(Si<4.5, Ti>0.5)にプロットされた。その他,Shimazaki et al. (1984)と同様にSi>4.5かつTi>0.5の組成領域にプロットされる角閃石も見いだした。これらはすべてMg-rich analogueであり,今回の調査においてFe-rich analogueは弓削島では見いだせなかった。Leak et al.(1997)の角閃石分類によれば,Ti>0.5の角閃石はTitano-typeに相当するが,Si<4.5の角閃石については未知である。実験式はそれぞれ,(K
0.79Na
0.20)
Σ0.99Ca
2.05(Mg
0.68Fe
2+1.39Ti
0.66Al
0.76Fe
3+0.45)
Σ4.94(Si
4.45Al
3.55)
Σ8.00O
22(OH
1.80F
0.20)
Σ2.00 および (K
0.76Na
0.23)
Σ0.99Ca
2.04(Mg
1.83Fe
2+1.40Ti
0.54Al
0.71Fe
3+0.46)
Σ4.94(Si
4.73Al
3.27)
Σ8.00O
22(OH
1.70F
0.30)
Σ2.00 である。また,格子定数はSi<4.5, Ti>0.5の角閃石でa=9.964(4), b=18.024(8), c=5.369(3)Å, β=105.46(4)°,V=929.4(8)Å
3 ,Si>4.5, Ti>0.5の角閃石でa=9.965(4), b=18.015(7), c=5.365(4)Å, β=105.49(3)°,V=928.2(9)Å
3 の結果が得られた。両角閃石の組成幅はわずかであり,格子定数にはその結果が反映されにくい。
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草地 功, 小林 祥一, 武智 泰史, 中牟田 義博, 長瀬 敏郎
セッションID: k08-14
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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岡山県備中町布賀鉱山のゲーレン石・スパー石スカルンに近接した結晶質石灰岩を貫く不規則な脈中には,新鉱物takedaiteをはじめ日本新産のnifontoviteなど種々のカルシウムホウ酸塩鉱物が産することはすでに報告してきている.今回,これらのカルシウムホウ酸塩鉱物からなる不規則な脈中に未知の含水カルシウムホウ酸塩鉱物を見いだしたので,その鉱物学的性質について報告する.
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高田 雅介, 草地 功, 岸 成具, 田邉 満雄, 安田 隆志
セッションID: k08-15
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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岡山県備中町布賀鉱山のゲーレン石・スパー石スカルンに近接した結晶質石灰岩を貫く脈中には種々のホウ酸塩鉱物が産する。これらのホウ酸塩鉱物は塊状として産することが多いが,脈中の隙間あるいは晶洞にはnifontovite, pentahydroborite, borcarite, frolovite, hexahydroborite及びuralboriteなどが自形結晶をなして産している。また、これらのホウ酸塩鉱物集合体は後のCu, Asなどを含む熱水脈によって貫かれており、この脈中には自形結晶を示すhenmiliteが多量に形成されている。今回,これらのホウ酸塩鉱物7種、及び以前に報告したolshanskyiteの結晶形態を明らかにすることができたので,それらの結果について報告する。
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受川 智春, 皆川 鉄雄
セッションID: k08-16
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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四国に分布する超塩基性岩体に伴われるNi-Fe自然金属やNi硫化物についての詳細な鉱物学的検討は,宮久(1966)による中央構造線に沿う蛇紋岩からのmillerite,Onuki(1980)による黒瀬川構造帯蛇紋岩体産awaruite,heazlewoodite,清久(2003)による中央構造線,清水構造帯の蛇紋岩質炭酸塩岩帯からのmillerite,siegenite,gersdorffite,violarite,pentlanditeの報告がある.しかしながら多くの岩体においてこれらの鉱物は未検討のまま残されている.現在,我々は四国の三波川帯,御荷鉾帯,黒瀬川構造帯,四万十帯に分布する超塩基性岩体に伴われるNi-Co-Fe系自然金属,Ni-Co-Fe系硫化鉱物相を明らかにし,各蛇紋岩体の特徴を知る目的で検討を進めている.まだ未同定のものも多く存在するが,今回はこれまで行った検討結果の概要について報告する. Ni-Co-Fe系自然金属は現在のところawaruite,wairauiteの産出が確認されており,native iron?もchromite中から見出している.awaruiteは高知県岡豊,円行寺など高知市一帯,徳島県木頭村坂州一帯の黒瀬川帯蛇紋岩体や愛媛県鴫山鉱山の御荷鉾帯蛇紋岩から見出され,特に四国の黒瀬川帯蛇紋岩体中に普遍的に生じていることが明らかになった.これらの産状はOnuki(1980)の産状と若干異なり,その大半は蛇紋岩を切るantigolite細脈中に単独であるいはmagnetiteを伴い,淡黄白色,数ミクロンの自形_から_半自形結晶(cube∼octahedron)をなし散在しており,Fe
1.7Ni
7.2∼Fe
0.6Ni
3.4のやや広い組成範囲を持つ.wairauiteはCallis and Long(1964)によって記載されたnative elementであり,本報告の肉淵谷産wairauiteは本邦初産である.wairauiteは蛇紋岩化した橄欖岩中にawaruiteと共に数ミクロン程度のcube∼octahedronの自形結晶をなし散在している.Fe:Co(Co/Co+Ni=0.9)はほぼ1:1の組成を示す. Ni-Co-Fe-S系硫化鉱物ではpentlanditeが最も普遍的に産し,検討した全ての岩体から見出されたが,含有率は岩体によって著しく異なる.その大半は黄白色粒状をなしているが,数mm大を越える肉眼的な大きさに達することも多い.しばしばheazlewooditeと密接に共生する.Co量は1∼16wt%と岩体によって異なる. Ni-S系鉱物としてはheazlewooditeとmilleriteが一般的であり,一部にNi
7S
6の値を持つgodlevskite様鉱物が見出された.heazlewoodite,milleriteは理想的な値を持っており,gaspeite:NiCO
3によって一部交代される場合がある. Ni-As-S系鉱物としてはgersdorffite等が少量確認されている. 以上の自然金属,Ni硫化鉱物の大半は産状の検討から,初生的に伴われていたのではなく,蛇紋岩化に伴って生成したと推定される.今回の報告ではこれらNi鉱物の特徴と共に四国産のchromite-magnesiochromite-magnetite系鉱物の特徴についても報告する.
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福島 宏幸, 皆川 鉄雄, 西尾 大輔
セッションID: k08-17
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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秩父累帯北帯に位置する高知県天坪地域には,チャート-緑色岩を母岩とする多数の層状マンガン鉱床(アクチノライト-パンペリー石相程度)が胚胎している.特にフキナロ,長河原,松株,鳳の森などの鉱床群からなる穴内鉱山は秩父帯の代表的なマンガン鉱床として知られている.主要鉱石の鉱物組み合わせは,(1)braunite+caryopilite±rhodonite+quartz,(2)hausmannite+gageite+alleghanyite+rhodochrosite,(3)greenalite+quartzであり,tinzenite,bannisterite,taneyamalite,piemontite,strontiopiemontite,okhotskite,natronambuliteなどの晩期生成脈によって貫かれている(吉村,1967,1969,皆川,1992,1998).今回,穴内鉱山産のpiemontite-strontiopiemontite系列鉱物と称されていた試料の再検討を行ったところ,幾つかの試料から鉱物学的にはepidote-strontiumepidote系列に属する緑簾石族鉱物が確認されたので産状,化学的特徴について報告する. Srを含むepidoteは,これまでにニュージーランドのAlpine Schist中(SrO:最大8.4wt%)から(Grapes and Watanabe,1984),あるいはグアテマラ産ヒスイ輝岩中(SrO:10.27wt%)から(Harlow,1994)報告されている. 穴内鉱山産epidote-strontiumepidote系鉱物はtinzenite,okhotskite,datolite,calciteと共に暗赤色,緻密質のチャート様岩の構成鉱物として,またこれらを網状に切る淡赤褐色針状∼柱状結晶集合脈として見出された.Piemontite-strontiopiemontiteと区別し難いが,やや褐色味の強い色調をもつ.EPMA分析の結果得られた値の多くは,Fe
3+2O
3:7∼15wt%,Al
2O
3:13∼22wt%,Mn
3+2O
3(一部MnOとして):0.5∼10wt%,SrO:10∼17wt%の値を持つ.特に長川原鉱床産試料からは,ほぼすべての分析点がstrontiumepidoteに属する値を得た.長川原鉱床産試料の代表的試料の実験式は(Ca
1.22Sr
0.73,Mn
2+0.06)
2.01(Al
1.80,Fe
3+0.93,Mn
3+0.24)
2.97Si
3.01O
12(OH)となり,A2サイトの73wt%がSr,M1,M2サイトはほぼAl,M3サイトはFe
3+とMn(Fe
3+>Mn)によって占められる化学的特徴を持っている.緑簾石族鉱物の分類(例えばMiyajima et al, 2003)から判断すると,この値を持つ試料はepidoteのSr置換体に相当する.本報告では穴内鉱山産のSrに富むepidoteの産状および鉱物学的性質について報告する.
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上原 誠一郎, 清水 佑介
セッションID: k08-18
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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長垂Liペグマタイトは日本有数のLiペグマタイトのひとつであり,lepidoliteやelbaite,および希元素を含む鉱物を多産した.長垂Liペグマタイト中のニオブ・タンタル鉱物の報告(三角・井手, 1957; 桑野, 1970; Banno, et al., 2001など)はなされているが,その全容は明らかにされていない.本研究では,長垂Liペグマタイトに産するニオブ・タンタル鉱物,中でもcolumbite族およびpyrochlore族の鉱物についての化学組成を中心に検討した.SEM/EDS化学分析の結果から,columbite族鉱物はmanganocolumbite,manganotantaliteが,また,pyrochlore族はTaに富むmicrolite,uranmicrolite,bismutomicroliteとSbを含むbismutomicroliteが見いだされた.
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松井 智彰, 木股 三善, 西田 憲正, 八田 珠郎
セッションID: k08-19
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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口永良部島東部の湯向海岸に露出する安山岩中に、直径が最大1.5cm程度の斜長石巨晶が発見された。EPMAを用いた化学分析により、灰長石(CaAl
2Si
2O
8)成分が90%前後であり、最周縁部において数%曹長石(NaAlSi
3O
8)成分に富むものの結晶全体として組成的にほぼ均質な斜長石であることが明らかになった。その母岩は口永良部島火山活動史の第4期火山 (松本, 1934)である高堂森火山から噴出したと考えられ、蛍光X線分析により、SiO
2成分は58wt%程度で、カルク・アルカリ岩系の安山岩であることが判明した。西日本火山帯においては、薩摩硫黄島、開聞岳火山から灰長石巨晶を産するが、その母岩はいずれもカルク・アルカリ岩系の玄武岩質安山岩である。東日本火山帯に産するソレアイトまたは高アルミナ玄武岩中の灰長石巨晶については、島弧におけるマグマ混合の最盛期を凍結した「示相鉱物」としてその生成過程が総括的に考察された(Kimata
et al., 1995)。薩摩硫黄島および開聞岳火山産灰長石巨晶の鉱物組織や包有物、その他の微量長石端成分や格子定数についての結晶化学的特徴は、東日本火山帯に産する灰長石巨晶と類似しているため、同様の生成過程が推定された。しかしながら、これまで口永良部島産斜長石巨晶については詳細な記載が行なわれておらず、それに基づいた成因の解明もなされてこなかった。そこで、口永良部島産斜長石巨晶について鉱物学的な特徴を記載し、他地域に産する灰長石巨晶と比較することによりその生成過程を検討する。 口永良部島産斜長石巨晶は、無色透明または白色で(010)、(001)が発達した自形結晶あるいは集斑晶として観察される。共生する斑晶鉱物は、斜長石(巨晶以外)、単斜輝石、斜方輝石であり、わずかにカンラン石がみとめられる。斜長石巨晶の内部はガラス光沢が強く、周縁部において部分的に白濁した箇所が見られる。偏光顕微鏡下では、巨晶は最周縁部に僅かに累帯構造が観察されるが全体としては光学的に均一である。集片双晶、貫入双晶ともに多く見られ、しばしばへき開を伴うが裂開は存在しない。包有物としては融食形をしたカンラン石が見られるが中心部ではなく周縁部に分布し、斜長石巨晶の結晶面に向かう方向に板状に伸長したものが多く見られる。巨晶以外の斜長石斑晶には明瞭な累帯構造が見られた。化学分析の結果、灰長石成分以外には曹長石成分が7%程度、FeAl
2Si
2O
8成分、CaFeSi
3O
8成分、□Si
4O
8成分が微量に含まれることが確認された。斜長石巨晶以外の斜長石斑晶の化学組成は、巨晶より曹長石成分に富み化学的累帯構造が著しい。包有物のカンラン石はフォルステライト成分は79%程度で、薩摩硫黄島および開聞岳火山産のそれと比較して若干高い値を示した。また、斜長石巨晶とその他の斜長石斑晶の粒径を比較すると、前者の粒径は後者の粒径分布から明らかに独立しており、マグマから晶出した時期が異なることが示唆される。 以上のことから、口永良部島産斜長石巨晶について明らかになった要点をまとめると以下のようになる。(1)母岩はカルク・アルカリ岩系の含カンラン石複輝石安山岩で、(2)巨晶の化学組成は灰長石成分が約90%で化学的累帯構造はなくほとんど均質である。(3)その他の斜長石斑晶は巨晶より曹長石成分に富む。(4)巨晶の成因については、微量成分の鉱化剤としての役割、温度-交替説などが考えられ、母岩マグマの初生鉱物としてではなく巨晶生成後に島弧におけるマグマ混合を経験したと推測される。
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木村 眞, 杉浦 直治, 中嶋 春菜, ワイスバーグ マイケル
セッションID: k09-01
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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Our systematic study shows that ilmenite is always present in LL chondrites. Ilmenite is encountered in the chondrules and matrix. The MnO content of ilmenite in LL3.0-3.3 is lower than that in LL3.5-6. The low concentration of MnO in the former is due to crystallization from chondrules melts at high temperatures. On the other hand, ilmenite composition in LL3.5-6 reflects thermal metamorphism. Therefore, ilmenite is indicative of petrologic type. We also made the first measurements of the 53Mn-53Cr systematics of ilmenite in ordinary chondrites. The age for ilmenite in Y790256 (LL6) may be about 2 Ma older than angrites, although the excess 53Cr is not significant at 2 sigma errors.
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土山 明, 中村 圭子, 中村 智樹, 野口 高明, 上杉 健太朗, 中野 司
セッションID: k09-02
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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SPring-8に設置されたマイクロトモグラフィーシステムを用いて、惑星間塵のCT撮影をおこない、その3次元構造を非破壊で求めた(実質的な空間分解能は1 m強)。ラピッドプロトタイピング法を用いて、得られた3次元外形を正確に拡大した模型を作成した。これにより複雑な外形をしたサンプルを、3次元的に容易に把握することが可能となった。従来のTEMによる研究では、ウルトラミクロトームによりサンプルを数多くの超薄切片に切り出し、その一部を観察しているが、本研究によりTEM観察した超薄切片がサンプルの3次元構造全体のどの部分を観察したものであるかが認識できるようになる。現在NASAによるStardust計画が進行中であり、2005年1月には彗星Wild-2の塵が地球にもたらされる予定であるが、本方法はこのような貴重な微小サンプルのキュレーションや研究にも有効であると考えられる。
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赤井 純治
セッションID: k09-03
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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炭素質コンドライトのマトリックスは微小な鉱物の集合体で、その詳細は電顕鉱物学の視点から解明されてきたところが大きい(e.g. Mackinonn & Buseck, 1979; Akai,1980; Tomeoka & Buseck,1985; Akai,1988; Zolensky et al.,1993; Brearly & Jones, 1998)。これらの鉱物種、結晶形態・集合状態・組織は、それら鉱物あるいは隕石自体の生成に関する重要な情報を示唆していることが考えられる。構成鉱物のなかには多くの特徴的あるいは特異な鉱物も含まれるが、生成条件等明確になっていないものも多い。これまで主にCM2, CI1隕石(CV3隕石を一部含む)について電顕観察によってとらえられてきた、ミクロ-ナノスケールの鉱物をリストとして整理し、これまで明らかになった点と、未解明の点・今後の課題等を考察する。ここで、鉱物を分類群ごとに示すと、主なマトリックス鉱物のリストは以下のようになる。・フィロシリケート(蛇紋石、7Å板状鉱物<規則/不規則構造><ポリゴナル構造>/タルク/スメクタイト/サポナイト/14Å緑泥石//熱変成フィロシリケート)・PCP・層状鉱物 (トチリナイト/トチリナイト-蛇紋石混合層鉱物<規則/不規則><管状形態>)・硫化鉱物 (トロイライト/磁硫鉄鉱/ペントランダイト/キューバ鉱)・酸化鉱物(磁鉄鉱<フランボイダル形態、球状、板状plaquatte>/コランダム/フェリハイドライト/ルチル/スピネル/ヒボナイト)・炭酸塩鉱物(カルサイト/ドロマイト/シデライト/breunnerite/アラゴナイト)・硫酸塩鉱物(ジプサム/エプソマイト/アンハイドライト )・炭素鉱物(ナノダイヤモンド-2種?/グラファイト<板状、リボン状、他>/球状炭素/同心円状炭素/不定形低結晶度集合体/“ナノカプセル状”/”固体有機物”他)・シリコンカーバイト/ シリコンナイトライド/炭化チタンシリコンカーバイト(SiC)、ダイヤモンド(C)、グラファイト(C)、コランダム(Al2O3)、炭化チタン(TiC)等は、プレソーラーグレインであると考えられているがここでは並べて示してある。いずれも太陽系進化過程に対応したもの、あるいはそこに外部から混入したものととらえることができる。これらについて鉱物種ごとの観点から、主にこれまで筆者が観察してきた例で、成因論的に推定できているものと、未解明のもの、今後の課題・残された問題等を議論する。このなかで、特に炭素鉱物の形態的多様性、構造変化、ポリタイプ、隕石タイプとの対応、また磁鉄鉱の形態上の特徴、等については、最近の成果も含め紹介する。Ref. Mackinonn IDR & Buseck PR, 1979, Nature 280,219; Akai J,1980, Mem.NIPR 17,299; Tomeoka K & Buseck PR,1985, GCA 49,2149; Akai J,1988, GCA 48, 1593 ; Zolensky ME et al.,1993,GCA57, 3123;Brearly AJ & Jones RH(1998) Rev. Mineral.36,3-1.
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留岡 和重, 桐山 幸治, 中村 圭子, 山花 康浩, 関根 利守
セッションID: k09-04
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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地球表面で回収される塵のほとんどは含水隕石に似ている。しかし,含水隕石は,落下隕石中わずか2.8 %を占めるにすぎない。このような塵と隕石における含水物質の存在度の大きな違いは,これまで地球大気の「フィルター」効果によると考えられてきた。 今回,2つの多孔質な隕石の衝撃回収実験を行った。両隕石のうち一方は含水であり,他方は無水である。実験の結果,含水隕石は,無水隕石よりもはるかに広い範囲の圧力で,衝撃を受けた部分が微細な粒子に粉砕され,さらに圧力の解放時に爆発的な膨張を起すことがわかった。この結果は,含水小惑星が無水小惑星よりも,衝突によって塵を形成する割合がはるかに高いことを示しており,塵と隕石における含水物質の存在度の大きな違いをうまく説明する。すなわち,塵と隕石における含水物質の存在度は,それらが地球大気に突入する以前にすでに確立されている可能性が高いことを示している。
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富岡 尚敬, 留岡 和重, 中村 圭子
セッションID: k09-05
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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含水隕石の衝撃変成と微小隕石形成との関連を探ることを目的として,マーチソンCM隕石の衝撃実験回収試料のTEM観察を行った.マーチソンのマトリクスは,主にサーペンティン,トチリナイトからなるが,回収試料では衝撃圧が低い順に,トチリナイトの分解,サーペンティンの分解,オリビンの結晶化という一連の変化が起こっていることが明らかになった.21GPaの試料の組織は,サーペンティンの量が相対的に乏しいものの,phyllosilicate-rich classの微隕石に近く,49GPaの試料はolivine-rich classに類似している.微隕石の形成は,含水隕石の大気圏突入時の加熱だけでなく,衝撃変成における加熱温度の違いでも説明でき,phyllosilicate-rich classは比較的低温で,olivine-rich classはより高温で形成された可能性がある.
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大西 市朗, 留岡 和重
セッションID: k09-06
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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はじめに 始原的な岩石学的タイプ1-3の炭素質コンドライト中には、層状珪酸塩などの含水鉱物が含まれている。これら含水鉱物は、始原天体上で、カンラン石などの無水鉱物が、水質変成によって二次的に生成したと考えられている。しかし、その具体的なプロセスや条件は良く分かっていない。現在まで、水質変成のプロセス解明のため、天然の隕石試料を出発物質として、酸性および中性溶液を用いた水熱実験が行われてきた(Tomeoka & Kojima, 1995など)。本研究では、高アルカリ溶液によるアエンデ隕石(CV3コンドライト)水熱実験を行い、その結果を酸性および中性溶液による結果と比較した。
実験方法 アエンデ隕石の小片を1規定水酸化ナトリウム溶液(pH=14)とともに金チューブに封入し、水熱合成装置(400℃、800気圧)で1週間反応させたのち、実験回収試料を、粉末X線回折(XRD)装置、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて分析、観察した。
結果と考察 実験後回収した隕石バルク試料のXRD分析において、14-15Åと7Åに大きなピークが見られたことから、クローライトとサーペンティンが生成したことが示唆される。 SEMおよびTEM観察の結果、マトリクスの大部分が変成しており、Alに乏しいサーペンティン(<1 Al
2O
3 wt%)が生成していることが分かった。マトリクスの主要構成鉱物であるFeに富むカンラン石は、紡錘状の原形を留めておらず、多くは大きさ5μm以下の細粒の微粒子としてマトリクス中に残存している。一方、コンドリュール中では、メソスタシスやエンスタタイトが部分的に交代変成しているものの、Mgに富むカンラン石やCaに富む輝石は変成されていない。メソスタシスを交代している層状珪酸塩は、Alに富むクローライト(8-15 Al
2O
3 wt%)であり、エンスタタイトを交代している層状珪酸塩は、クローライトとサーペンティンの中間の組成を示す(3-8 Al
2O
3 wt%)ことから、両者の混合物であると推測される。また、コンドリュール中のエンスタタイトやカンラン石の割れ目の中には、サーペンティンができており、脈状組織(幅<20μm、長さ<100μm)を形成している。 以上の結果から、アルカリ条件下では、マトリクスが最も変成されやすく、次いでコンドリュール中のメソスタシス、エンスタタイトが変成されやすいことが分かった。一方、酸性条件下(1規定塩酸溶液)でのアエンデ隕石水熱実験(Tomeoka & Kojima, 1995)では、コンドリュール中のメソスタシスやエンスタタイトの大部分がサポナイトに交代されているのに対し、マトリクス中のFeに富むカンラン石は比較的変成を免れ、大きさ10-50μmのサポナイト集合体がまばらに生成しているにすぎない。また、中性条件下(純水)では、酸性条件下よりも変成の程度は低く、コンドリュール中のメソスタシスやエンスタタイトが一部サポナイトに交代されているのに対し、マトリクス中では、Feに富むカンラン石の隙間にサポナイトがわずかに生成しているにすぎない(Kojima & Tomeoka, 1999)。珪酸塩鉱物の溶解速度は溶液のpHに強く依存することが知られており、今回の結果は、Feに富むカンラン石がアルカリ条件において溶解しやすいことを物語っている。
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野口 高明, 中村 智樹, 木村 眞, 今栄 直也
セッションID: k09-07
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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1.はじめに CHコンドライトは多くの細粒コンドルール(<100μm径)と Fe-Ni金属,特徴的なCa, Al-rich inclusion,強い水質変成作用を受けたクラストを含み,細粒の不透明なマトリックスを欠いている[1,2,3,4]。さらに,宇宙化学的特徴や酸素同位体組成も考慮し炭素質コンドライトの一員とされている[5]。我々は,Asuka 881020隕石が上述の既知のCHコンドライトの記載岩石学的特徴を全て満たしていることを示した[6]。さらに,強い水質変成作用を受けたクラストについて,既知のCHコンドライトのものとは異なる点を見出した。これらのクラストの鉱物学的特徴について報告する。2.結果 非常に強く水質変成作用を受けたクラスト(以下HHC (heavily hydrated clasts)と略す)は,十から数百μmの不定形をしており,細粒の不透明なマトリックス中に,フランボイダル・マグネタイトや,数μmのFe(およびNi)硫化物を含む。また,時にdolomiteを含む。HHCのマトリックスのEPMA分析値は平均88.17 wt%と低いトータルを示すため,マトリックスは層状珪酸塩に富むと考えられる。HHC以外に,かなりの水質変成作用を受けた不定形の差し渡し数十μm以下のクラスト(以下AGC (altered glass clasts)と略す)が存在する。AGCは芯に溶食されたガラスを持ち,周囲はFeに乏しいsaponiteとSiO2に富む物質の混合物と考えられる物質に置換されている(平均84.42 total wt %)。HHCとAGCをSEM-EDSで確認し,実体鏡下でHHCを7個,AGCを4個,薄片より掘り出し,放射光X線回折を行った。HHCは主な層状珪酸塩鉱物がserpentineであるもの,saponiteと少量のserpentineであるもの,層状珪酸塩が確認できなかったものの3種類に分かれた。X線的に層状珪酸塩が検出されなかったHHCではpyroxene,olivine,kamacite,troiliteを含んでいた。また,AGCからは層状珪酸塩由来の明瞭な回折線は確認できなかった。3.まとめ CHコンドライトに含まれるHHCについての従来の鉱物学的研究は,主な層状珪酸塩鉱物はserpentineであり,saponiteなどは少量含まれるに過ぎないと述べている[3,7]。ところが,Asuka 881020においては,上述の3種類のHHCが見出された。この結果は,CHコンドライトに含まれるHHCが皆同様の履歴を経たものばかりではないことを示している。層状珪酸塩が含まれなかったHHCは[2]のreduced clastsに対応すると考えられ,HHCが加熱と還元を受けたものである可能性がある。AGCからX線的に層状珪酸塩が検出できないということは,水質変成作用によって作られた物質の結晶度が非常に低いことを示唆している。このようにAsuka 881020には,水質変成の条件とその後の過程の異なったクラストが少なくとも4種類含まれていることが分かった。文献 [1] Krot A. N. et al. (2002) MAPS, 37, 1451-1490. [2] Grossman J. N. et al. (1988) EPSL, 91, 33–54. [3] Greshake, A. et al. (2002) MAPS, 37, 281-293. [4] Ivanova, M. A. et al. (2001) LPSC XXXII, #1817. [5] Bischoff, A. et al. (1993) GCA, 57, 2631-2648. [6] Noguchi, T. et al. (2004) NIPR Symposium abstract, 62-63. [7] Osawa, T. et al. (submitted) MAPS
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海田 博司, ブキャナン ポール
セッションID: k09-08
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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輝石は,カンラン石と同様,隕石や地球産の岩石に普遍的に産出する鉱物であるが,熱変成過程等の熱的歴史の解析に必要な拡散のデータはカンラン石に比べ,詳細に検討されている例が少ない(例えば[1])。本研究では,これまで報告されている斜方輝石の拡散係数のうち二種類を比較・検討した。また,その拡散係数をポリミクトユークライトであるPetersburg隕石中の斜方輝石鉱物片に適用し,熱変成過程を考察した。 比較した拡散係数は,Ganguly and Tazzoli [2](以下,G&T)とMiyamoto and Takeda [3](以下,M&T)で報告されているものである。一般に拡散係数は,温度,元素の濃度,酸素分圧等の関数であるが,M&Tでは温度の関数としてのみ報告されており,G&Tでも温度とFe濃度依存性のみである。しかしながら,G&Tの拡散係数はiron-wüstite bufferで求められたことが分かっているので,補正をすることによって温度,Fe濃度,酸素分圧の関数として表すことが可能である[4]。これらの拡散係数の値を比較すると,酸素分圧よりもFe濃度の依存性が大きいことが分かった。また,比較的高温域(∼1000℃から∼800℃)では,G&TとM&Tの拡散係数は非常に近い値となるが,より低温域(∼500℃)では両拡散係数は三桁程度異なる値となる。 これらの拡散係数をBuchanan and Kaiden [5]によって解析されたPetersburg隕石中の斜方輝石鉱物片の化学的ゾーニングに適用して計算を行ったところ,850℃から400℃の冷却速度としてG&Tからは0.12℃/年,M&Tからは0.25℃/年が得られた。低温域での拡散係数の値の相違にもかかわらず近い値が得られ,これらの冷却速度はいずれもこの温度範囲の冷却期間として数千年に相当する。この冷却期間は,Buchanan and Kaiden [5]がPetersburg隕石の熱変成が母天体上でのマグマの貫入による接触変成作用によるものであるとして熱伝導の計算から求めた冷却期間と調和的である。【参考文献】[1] Miyamoto M.
et al. (2002)
Antarct. Meteorite Res.,
15, 143-151.[2] Ganguly J. and Tazzoli V. (1994)
American Mineralogist,
79, 930-937.[3] Miyamoto M. and Takeda H. (1994)
J. Geophys. Res.,
99, 5669-5677.[4] Miyamoto M.
et al. (1986)
J. Geophys. Res.,
91, 12804-12816.[5] Buchanan P. C. and Kaiden H. (2004)
LPS,
XXXV, #1502.
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山口 亮, 三河内 岳
セッションID: k09-09
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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最近、ユークライトの中に、熱変成温度がソリダス温度を超えたため部分溶融を起こした形跡のあるものが見つかった。これが、放射年代の攪乱や鉱物間の微量元素の再分配などの原因になったと考えられる。本研究では、ユークライトを、ソリダス近傍で短期間加熱し、その岩石組織や鉱物組成の変化について調べた。本研究では、加熱により、ユークライトは、メソスタシスや、それを構成する副成分鉱物の部分が優先的に融けることを明らかにした。この溶融が、放射年代の攪乱や希土類元素の再分配の原因になる可能性を示した。
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鳥海 淳, 三河内 岳, 荒井 朋子, 紋川 亮, 小泉 英祐, 宮本 正道
セッションID: k09-10
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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LAP02205は最近南極から発見された月隕石で、結晶質の組織を示している玄武岩である。現在までに発見されている月の石の大部分は角レキ化した組織を示しているため、この隕石を分析することにより、月の玄武岩の結晶化過程に関する新たな情報が得られると期待される。現在までに発見されている月隕石を輝石、カンラン石、斜長石などの鉱物組成で比較すると、LAP02205はその中でもNWA032/479に最もよく似ていることが明らかになった。しかしながら、LAP02205とNWA479では、組織が大きく異なっていて、これらの違いは、冷却速度の違いを反映していると考えられる。また、アポロ計画で得られたサンプルの中でこれらの隕石と似ている組織・鉱物組成を示しているのは、アポロ12号のイルメナイト玄武岩である。本研究では、アポロ12号のイルメナイト玄武岩とLAP02205/NWA479の比較も行い、両者の結晶化過程の類似点・相違点についても議論を行う。
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佐伯 和人, 武田 弘
セッションID: k09-11
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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月面の反射率スペクトルを画像とともに得られる画像分光望遠鏡ALIS(Advanced Lunar Imaging Spectrometer)を完成させた。ALISの将来目標は国際宇宙ステーションから月面を繰り返し可視・近赤外領域で観測することにより、月の測光モデルを完成させ、宇宙機搭載光学センサーの放射輝度較正に役立てようというものである。しかし、現在完成している地上モデルでも、月面の分光学的研究が可能である。本研究では、ALISにより得られたデータから、月面の苦鉄質岩石のクラス分けと分布情報の抽出を行った。
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小泉 英祐, 三河内 岳, 宮本 正道, 鳥海 淳, 紋川 亮, マッケイ ゴードン
セッションID: k09-12
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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玄武岩質火星隕石Y980459は同じグループに属する他の火星隕石に見られない多くの特徴を持っており、この隕石の形成過程を明らかにすることは火星マグマに対する知識を深める上で重要である。そこで、我々はこの隕石の形成過程を結晶化実験及び、MELTSを用いた相平衡計算、冷却速度の計算により研究した。その結果、この隕石の全岩組成が親マグマの組成を残している事が分かった。また、石基部のカンラン石及び輝石のコアの組成はカンラン石巨晶のリム部の組成と平衡であり、カンラン石巨晶リム部と石基部の結晶化が連続であることを示している。輝石中のAlの組成変化から、この隕石に斜長石が含まれていない理由は、急冷による過冷却により斜長石の結晶化が抑止されたと考えられる。結晶成長を考慮に入れたFe-Mgの元素拡散計算によりカンラン石巨晶の結晶化速度を見積もったところ、その速度は約1度/時であった。
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今栄 直也, 池田 幸雄
セッションID: k09-13
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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ナクライト隕石は、オージャイト斑晶から構成されるマフィックな火成沈積岩である.可能な親マグマ組成を用い相平衡実験と冷却実験を、白金ワイヤーループ法を用い、全圧1気圧下でCO2/H2混合ガスを導入できる縦型環状電気炉をFMQ条件に制御して行った.相平衡実験では、チタノマグネタイト、オージャイト、かんらん石、斜長石の順に晶出した.また、相平衡実験で得られた液相温度および固相温度を用いて、液相~固相温度間での冷却実験を行った.冷却実験では、やまとナクライトで観察された2層からなるオージャイトのリムの化学累帯構造の特徴を定量的によく再現していた.相平衡実験から形成したかんらん石のモードは小さく、不定形であるがオージャイトに比べて粗粒であった.遅い冷却でのみかんらん石1粒子が観察された.
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三河内 岳, マッケイ ゴードン, ジョーンズ ジョン, ジュレビッチ エイミー
セッションID: k09-14
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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エコンドライトはコンドライトの部分溶融によって形成されたと考えられているが、これまでに、両者の組成が1対1に対応する組み合わせは見つかっていなかった。Jurewicz et al. (1993) は、CV・CMコンドライトの部分溶融実験を行い、酸化的雰囲気下で、アングライト的なメルトが形成されることを示したが、当時、見つかっていたアングライトには、完全に一致した組成を持つものはなかった。その後、数個の新しいアングライトが発見され、いくつかのサンプルには、Mgに富んだカンラン石外来結晶が含まれることが分かり、アングライトの親マグマの組成が明らかになった。このアングライト親マグマの組成は、CVコンドライトの1200度、logfO2=IW+2の条件下での部分溶融メルト組成と非常によく似ており、部分溶融の量や希土類元素量の類似性からも、両者の成因的関係が強く示唆される。
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宮本 正道, 小泉 英祐, 鳥海 淳, 三河内 岳
セッションID: k09-15
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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パラサイト隕石中のカンラン石のFe-MgおよびCaのゾーニングを用いて冷却速度を求め、それぞれの結果を比較した。この解析での問題点は、報告されているFe-Mg相互拡散定数は約2桁、Caは2_-_3桁の相違があることである。我々は、以前に簡単な高温実験結果を解析することにより、Misener(1974)のFe-Mg相互拡散定数に酸素分圧依存性を導入した値が、実験結果と最も良く合うことを報告した(Miyamoto et al., 2002)。この値は、Buening and Buseck(1973)の値より約1桁小さく、パラサイトの冷却速度として1100度からの冷却で約2度/年で300 mの深さを与える。同様にCaについては、Jurewicz and Watson (1988)の値が最も良い一致を示し、これを用いて計算した冷却速度は、約5度/年で200 mの深さとなった。これらは、Fe-Mgの結果と大体調和的である。
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三浦 保範
セッションID: k09-16
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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1. はじめに:中間型斜長石は離溶ラメラ組織と光の干渉色を示す (Miura et al., 1975)。その斜長石ラメラ組織の形成は、高温マグマからの均一溶液からの固体状態の離溶反応(スピノーダル分解)で理解されている。今回は、衝突ガラスからの形成を解明するのが目的である。2. 形成の問題点:下記の問題点がある。a)地球での高温マグマに関係して形成された古期岩石でラメラ組織を示す斜長石鉱物の産出が限られる、b)マグマからの直接固体晶出であるが不均質な組織を保持する、c)鉄の鉱物が広く組織内に分布する、d)月は高温マグマが形成初期に関与したが衝突で形成された古い月の試料にはラブラドライト斜長石が形成されない、e)火星起源の隕石からは衝突ガラス(マスケリナイト)が発見される。これらの問題点を、統一的に解明してみる。3. 地球上の試料の産出場所の特徴:地球上でイリデッセンスを示すラブラドライト斜長石は、一定の古期岩石の分布する地域(カナダ、マダガスカル、フィンランド、米国、ロシアなど)に限られて産出し、20億から30億年前の古い岩石から産出しているのが特徴である。4.月・火星試料の特徴:アポロ月面・月隕石試料は中間型斜長石組成の鉱物が形成されていない。火星には、火星起源隕石中にマスケリナイト(中間型斜長石鉱物)という衝突で不均質にガラス化している斜長石があるが、ラメラ構造は火星の隕石からは発見されていない。5.衝突後高温化形成の解釈:これら問題点を全て説明する考えとして、ラメラ組織を持つラブラドライト斜長石が、衝突ガラス形成の後、地下での高温マグマ加熱結晶化から形成したと考える。その証拠として、中間型斜長石に不均質な組織が残り、鉄などの鉱物が再結晶して多く含まれており、また、古期の大陸の分裂割れ目に相当する場所ラメラ組織を持つラブラドライト斜長石が多く産出していることなどが挙げられる。6.まとめ:次のようにまとめられる。地球惑星が形成された後、十数億年から二十数億年の間に中間型斜長石組成の衝突破砕ガラス形成記録がマグマ加熱で消失して固体晶出後ラメラ組織が形成されたと考えられる。ただし、火星などに、破砕斜長石が高温状態での持続できる場所周辺があれば、中間型斜長石鉱物ラメラ組織が形成されている可能性がある。Keywords: Intermediate plagioclases, Iridescence, Lamellar texture, Impact glass, Martian plagioclases.Corresponding author: Yasunori Miura (Inst. Earth Sci., Fac. Sci., Yamaguchi Univ.; E-mail:yasmiura@yamaguchi-u.ac.jp)
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赤井 純治, 中牟田 義博
セッションID: k09-17
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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ユレイライト中のダイヤモンドの起源については、ショックによることが指摘され ている(Nakamuta and Aoki, 2000)。南極隕石であるユレイライトY-74130の中に含 まれる炭素鉱物についてガンドルフィカメラで検討すると、ダイヤモンド、グラファ イト、コンプレストグラファイトが確認された(Nakamuta and Aoki, 2001)。炭素鉱物以 外ではカマサイト、マグヘマイト、トロイライト、シュライバーサイト等が少量含ま れる。このガンドルフィカメラで検討された試料について、高分解能電顕観察を行 い、それらの相互関係、それらの生成過程について推定を試みた。 試料は100μm程度のグレインであったが、混合物であった為に、そのまま超硬合 金で圧砕して粉砕し、エタノールで軽く分散し、金のみを蒸着グして補強して作った マイクログリッド上に滴下、乾燥させて試料調整を行った。粉砕はしたが、混合物は 局所的な組織は残していると考えられる。用いた電顕はJEM2010、200kVで観察 した。得られた高分解能写真では、1)それほど分散化してない粒子で、極めて多種の鉱物が混在分布することがわかった。2)ダイヤモンドはこれらの粒のうちでは比較的大きな粒子として存在した。3)グラファイトだけが濃集している部分もみられた。グラファイトはかなり厚みの ある比較的結晶度のよいものの他に、積層数が少なく結晶度があまりよくないものも 存在する。また、板状のグラファイトのなかでも積層状態があまりよくないものもみ られ、多様な状態があることが観察された。4)ダイヤモンドのグレインで、ダイヤモンドの3方向の{111}格子像が広く見られ る (2Å)。2Åの{111}面の格子像のごく一部、この2Åの倍周期にコントラスト を示す部分が存在する。5)このダイヤモンド{111}格子像にほぼ平行にグラファイト(001)格子(3.4Å) が並び、ダイヤモンド{111}格子像に移化するようにみえる部分が存在した。これ は、グラファイトからダイヤモンドへの構造変化の過程をみているものと解釈でき る。 6)移化の途中でも約4Å周期に対応する格子が見られる(これがコンプレストグラフ ァイトに近い構造かと推定される)。以上から、このダイヤモンドはショックにより、グラファイトから転移して生成した ものであること、その転移の途中が、ごく一部のこされていること、一部ダイヤモン ドは、{111}面の2倍周期つまり、六方構造に近い構造をとっているの可能性がしめ された。これらの結果は、コンプレストグラファイトの非常にブロードな回折線、プリズム反 射のダイヤモンド回折線等.X線的特徴(Nakamuta and Aoki, 2001)と調和的であ る。Ref. Nakamuta and Aoki (2001) Meteor. & Planet. Sci., 36, A146 (abstract).
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矢内 桂三, 野田 賢
セッションID: k09-18
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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Fifteen specimens have been reported as so-called meteorites in Mongolia(Table). However only seven of them are true meteorites, and they have been classified as 3(No.2, 7 and 10) irons and 4(No.1,4, 12 and 14) stones including one achondrite. Recently one stone-Nartiin had(No.14) have been identified as chondrite. Saynshand Museum kept stone specimen as one of terrestrial rocks. October 8. 2003, Japan-Mongol Joint Party for Meteorites visited the museum and recognized the new meteorite specimen Nartiin had. Nartiin had 1,946 g in weight, is complete rounded stone covered by black fusion crust with light grey interior(Fig.), and classified as ordinary chondrite LL6-7 tentatively. The stone is listed in seventh meteorites in Mongol and fell in N45 40 E108 40 on Gobi Desert.
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青木 大空, 川辺 和幸, 中牟田 義博
セッションID: k09-19
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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隕石中のかんらん石の格子歪みを測定し,Naryilco LL6 普通コンドライト中に認められるかんらん石の被衝撃圧を推定することにより,破砕部と非破砕部における衝撃効果の違いを検討した.その結果,非破砕部のかんらん石は 0.075 から 0.205 %の格子歪みを示し,破砕部のかんらん石の格子歪みは 0.155 から 0.290 %であった.山田 (2000) により示された格子歪みと衝撃圧の関係をもとにすると,かんらん石の格子歪みの最大値から非破砕部のかんらん石の被衝撃圧は29.6 ± 5.6 GPa,破砕部のかんらん石の被衝撃圧は 21.3 ± 5.1 GPaであると推定された.破砕部と非破砕部におけるかんらん石の Fa 成分の割合を比較すると,破砕部のかんらん石が非破砕部よりも Fa 成分に富んでいた.
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別府 優篤, 中牟田 義博, 中村 智樹, 関根 利守
セッションID: k09-20
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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Uchizono et al .(1999) は合成カンラン石を用いた実験を行い,カンラン石の格子歪みと衝撃圧の間に比例関係があることを見出し,カンラン石の格子歪みが衝撃圧の定量的推定に使えることを示した.今回,Uchizono et al .(1999) と同じ合成カンラン石試料で衝撃継続時間が長い衝撃実験を行い,格子歪みに対する衝撃継続時間の効果を検討した.今回得られた格子歪みと衝撃圧の関係を示す直線のslopeは,Uchizono et al .(1999) より大きく,衝撃継続時間が長くなると同じ衝撃圧でも格子歪みが大きくなり,実際の隕石で推定された衝撃圧と格子歪みの関係に近づくことがわかった.
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青木 崇行, 赤井 純治
セッションID: k09-21
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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炭素質コンドライト中には多様な炭素鉱物が存在する.筆者らは化学的処理により,微少量の炭素質コンドライト試料から炭素鉱物を抽出することに成功し,高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いた観察を行ってきた.その結果,例外はあるがCI,CM2タイプの隕石からは有機物と思われる Carbonaceous Globule や不定形低結晶度グラファイトが,CV3,CO3,C4タイプの隕石からは比較的結晶度の良い板状タイプのグラファイトが主に見出されることが分かった(青木他,2003[1];Aoki et al. 2003[2]; Akai et al. 2003[3]).今回,さらにこのグラファイトについての検討をすすめ,そのポリタイプについて調べた. グラファイトには,炭素六角網平面の積層のしかたにより,六方晶系(Graphite-2H)と菱面体晶系(Graphite-3R)の2つのポリタイプが存在する.常温常圧では2H型が熱力学的に安定であり,3R型は剪断応力などによって積層欠陥として生じるものと考えられている.例えば稲垣道夫他(1977)[4]は,天然グラファイト粉末のメノウ乳鉢による磨砕を行った結果,その初期過程では菱面体晶系グラファイトの割合が増加することをX線によって確かめている. 今回,Allende(CV3),Asuka-882094(CO3),Yamato-693(C4)中の板状グラファイトについてHRTEMを用いて精査した.また,あわせてマルチスライスシミュレーションプログラムMssCによる像検討を行った.その結果,結晶方位,defocus量,試料の厚さ等を変化させた場合の格子像の変化からグラファイト・ポリタイプの判別について示唆を得た. 例えば,Y-693隕石中のグラファイトには,0.34nm の(002)格子像(2H)に,0.21nmの(100)格子像(2H)が見られ,この交差角度から2H型 (あるいは3R型)の判別できる.これらの隕石中からは,両タイプのグラファイトが見出された. X線を用いた解析に比べ,HRTEMでは全体の量比の検討については難があるが,ごく少量の試料で局所的な解析ができるという点が特色としてあげられる.現在,さらに多くの多様な隕石中のグラファイトにおけるポリタイプについて検討を進めており,その結果についても報告する.Ref. [1] 青木崇行, 赤井純治, 牧野州明 (2003) HRTEMによる炭素質コンドライト中の炭素鉱物の多様性,
日本岩石鉱物鉱床学会2003年度年会講演要旨集,
235; [2] Aoki T., Akai J. and Makino K. (2003) HRTEM study of characteristic carbon minerals and globules in carbonaceous chondrites,
Abstr. Int. Symp. Evol. Solar Sys. Materials: New Perspect. Ant. Meteor., NIPR, 5-6; [3] Akai J., Aoki T. and Saito M. (2003) Nano to micro minerals in Antarctic carbonaceous chondrites,
GCA 67,
Spec. Supplement Abstr. 13th Goldschmdt Conf. 2003, A10; [4] 稲垣道夫, 麦島久枝, 細川健次 (1973) 黒鉛の摩砕にともなう構造変化,
炭素,
74, 76-82
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武村 邦子, 留岡 和重, 岡田 信彦
セッションID: k09-22
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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1. はじめに 初期太陽系において、隕石母天体の形成に衝突が大きく関与していたと考えられ、その痕跡は隕石中の衝撃変成という形で残されている。しかし、より始原的とされる炭素質コンドライトのほとんどは弱い衝撃変成を受けたものしか知られていない。Efremovka隕石はCKグループ以外の炭素質コンドライトで唯一、衝撃溶融脈を含み、S4という高いショックステージを示す。強い衝撃を受けたCKコンドライトは全て熱変成を受けており、岩石学的タイプは4-6であるが、CV3であるEfremovka隕石は熱変成の影響はあまり受けていない。これらのことから、Efremovka隕石の衝撃効果を明らかにすることは、炭素質コンドライトの衝撃履歴の解明につながると思われる。本研究では、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、EPMAによりEfremovka隕石の観察と分析を行った。
2. 結果 Efremovka隕石中のほぼ全てのオリビンは波動消光を示し、面状割れや弱いモザイク化を示しているものも存在する。マトリックスの組織は他のCVコンドライトに比べ空隙率が低く、コンドリュールの偏平も見られている。 SEMによる観察により、多くの微小メルトベインが試料中に広く存在しているのが発見された。そのほとんどは幅10μm、長さ50μm以下である。最大幅50μm、長さ500μmに及ぶものも少数ながら存在した。Efremovka隕石からこのような微小メルトベインは報告されていない。メルトにはコンドリュールと類似した組成のオリビン、エンスタタイトの破片や、大きさ5μm程度の球状の不透明鉱物粒子が多く含まれていた。この不透明鉱物粒子は2相に分離しており、トロイライトをベースとして、その内部に非常に微小(<0.5μm)なFe-Ni metal粒子が含まれている。また、メルト周辺部では、より細粒な不透明鉱物粒子が存在する傾向があった。今回発見されたメルトのほとんどは、コンドリュールやオリビン・エンスタタイト・アグリゲートに隣接したマトリックス中に存在しており、マトリックス中に単独で存在するものは稀であった。
3. 考察 今回発見された微小メルトベインの多くが、コンドリュールやアグリゲートに隣接したマトリックス中に存在していたことから、マトリックスの部分的溶融が、衝撃によるコンドリュールとマトリックスの摩擦や、コンドリュール・マトリックス境界での衝撃波由来の熱の局在化によって引き起こされたと考えられる。この考えは、多結晶で多孔質の物質では衝撃由来の熱・圧力が粒境界で集中するという事実と矛盾しない。 メルトの冷却速度を硫化鉱物粒子とその内部のmetal粒子から見積もることは、これら粒子が小さいため困難ではあるが、おそらく10
5-10
6℃/s程度と、非常に速かったと考えられる(Scott, 1982に基づく)。この速い冷却速度により、衝撃による溶融と固化の間のインターバルが非常に短かったと考えられ、メルトした物質は他の場所に流れ出ることなくその場で固化したと推測される。また、この速い冷却速度は、メルト領域の周辺がメルトに比べかなり低温であったということを示唆し、このことからもEfremovka隕石で発生した熱がかなり不均質であったと考えられる。
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井上 誠太郎, 留岡 和重
セッションID: k09-23
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
会議録・要旨集
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1. はじめに CK隕石は,ほとんどが強い熱変成(岩石学的タイプ4-6)を受けているという点でユニークな炭素質コンドライトである。はっきりとタイプ3と確定されたものはまだ知られていない。タイプ3の隕石は,母天体で熱・水質変成の影響をあまり受けていないことから,隕石母天体の始原的状態,そして進化プロセスを知る上できわめて重要である。 Dhofar015は酸素同位体組成,難揮発性親石元素・REEsパターン,コンドリュールにガラスが存在することなどから,CK3である可能性を持つ隕石だと考えられている(Ivanova et al., 2000)。しかし,まだ詳細な研究はなされていない。本研究では,光学顕微鏡,SEM,EPMAを用いて,Dhofar015の詳しい組織観察・組成分析を行い,その熱履歴を調べた。
2. 結果 Dhofar015は,CV,COグループの隕石に比べ,コンドリュールとCAIsの量が少ない(コンドリュール:15.3vol%,CAIs:0.7vol%)。マトリックスの主要構成鉱物はカンラン石,輝石と斜長石の微粒子(<20μm)である。マトリックスに点在する不透明鉱物(<200μm)粒子は磁鉄鉱で,その中にはスピネルとイルメナイトのラメラを含むものが多く存在する。またDhofar015はケイ酸塩の暗色化を示す。これらの特徴はCK隕石とよく一致している。 カンラン石の波動消光や面状割れが少ないことから,Dhofar015は強い衝撃は受けていないと考えられる。しかし,薄片全体に渡り,幅20-30μmのメルト脈が見つかった。その中には磁鉄鉱やペントランダイトの微粒子(<2μm)が多く存在し,その間をカンラン石微粒子(<5μm)が埋めている。 コンドリュールとマトリックス中のカンラン石組成をランダムに測り,その組成均質化の度合を表す偏差数値 [σFa/(平均Fa)]×100を求めた。その数値は7.52であり,Dhofar015が岩石学的タイプ3に分類されることを示している(タイプ3:>3,タイプ4-6:<3)(Kallemeyn et al., 1991)。
3. 考察 Dhofar015は,その岩石・鉱物学的特徴がCK隕石に近い。またカンラン石組成の均質性から,岩石学的タイプ3に当てはまる。しかし,Dhofar015のカンラン石組成の均質化を表す偏差数値7.52は,タイプ3.7のCO隕石Isnaの偏差数値31.8に比べるとはるかに小さく,Fe/Mg比の均質化が進んでいることが分かる。このことからDhofar015の岩石学的タイプは3.8-3.9が妥当であると考えられる。タイプ3.8-3.9の隕石はほとんど見つかっておらず,熱変成の過程を知る上で非常に貴重な隕石だと考えられる。 炭素質コンドライトにおいてメルト脈はほとんど知られておらず,その存在からDhofar015は特異な過程を経ていることが考えられる。Dhofar015のメルト脈は衝撃によると思われるが,カンラン石結晶の波動消光や面状割れなど,通常ショックステージの見積もりに用いる強い衝撃の痕跡が見られない。これらのことは,Dhofar015母天体は高温に加熱された状態で,比較的弱い衝撃を受け,その結果メルト脈が形成されたことを意味していると思われる。
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留岡 和重, 土`山 明, 圦本 尚義
セッションID: k10-01
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
会議録・要旨集
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太陽系始原物質とは,コンドライト隕石に代表される太陽系で最も始原的な物質であり,「45.6億年前の太陽系の始まり」を我々に直接伝えてくれるロゼッタストーンだと言えよう。これまでの膨大な始原物質研究の成果は,現在の太陽系の起源・進化のモデルの構築に大きな役割を果たしてきた。いまや物質科学は惑星科学を支える重要な一分野である。今回のシンポジウムでは,始原物質科学の最前線で活躍しておられる研究者の方々をお招きし,ご自分の研究を紹介していいただく。このシンポジウムの目的は,普段,惑星科学とは直接関係の薄い鉱物科学者たち(とくに若い人たち)に太陽系始原物質科学の最前線に触れていただき,その面白さ,意義を知っていただくことである。そして,私たちは,願わくは鉱物科学者と惑星科学者がお互いの接点を見出し,新たな研究テーマを創出するきっかけがつくれればいいと思っている。
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佐々木 晶
セッションID: k10-02
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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小惑星、彗星、カイパーベルト天体などの太陽系小天体の研究が、近年非常に活発になり、惑星科学の分野でも存在感を大きい。特に、太陽系物質の起源と進化を探る上では欠かすことのできない研究ターゲットになっている。 隕石の母天体は小惑星と考えられている。しかし、反射スペクトルすなわち「色」には不一致(普通コンドライトに対応する小惑星が少なく、S型に対応する隕石が少ない)があり、長い間謎であった。それを解決したのが、宇宙風化作用の解明である。大気の無いシリケイト天体が宇宙空間に晒されていると、宇宙空間ダストの高速衝突による加熱により表面物質の蒸発・凝結が起きる。その際に、微小鉄粒子が生成されて、反射スペクトルの暗化・赤化を引き起こす。我々は実験室のシミュレーションにより、宇宙風化作用の素過程を明らかにした。最近では、小惑星の族の力学的年代と、宇宙風化度に相関があることがわかってきた。宇宙風化作用が年代学のマーカーとしても利用できる日が近い。さらに、始原的な炭素質天体でも時間とともに「色」の変化が起きていることが明らかになっている。 一方、1992年にはじめて発見されたカイパーベルト天体は、その後、続々と発見されて、現在では数は1000に近い。大きいものは冥王星の衛星シャロンを凌ぐ。最近の、力学的研究により、カイパーベルト天体のうち軌道が不安定になったものが、太陽系の内側へ運ばれ、木星族と呼ばれる彗星を経て、短周期彗星へと進化する道筋が明らかになった。カイパーベルト天体は、もともと遠方の氷微惑星が起源である。そのため、彗星を調べることが太陽系の外側での物質進化研究において重要な役割になる。また、一部の炭素質小惑星は、短周期彗星を起源としていると考えられている。短周期彗星起源であることが力学的に明確な天体は、将来の接近探査やサンプルリターンの重要なターゲットになるだろう。
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橘 省吾
セッションID: k10-03
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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コンドリュールは,原始太陽系円盤において固体前駆物質が加熱・溶融・急冷を経て形成されたと考えられる.コンドリュールがいつ形成されたのかについては,短寿命核種26Alを用いてCAI形成から100-300万年後ということがわかってきた.コンドリュールは低圧力下での高温溶融を経験しており,揮発性元素の非平衡蒸発が起こったと考えられる.我々は揮発性元素の硫黄の同位体分析と硫黄の蒸発カイネティクス実験に基づく蒸発モデルによって,コンドリュール前駆物質の加熱が急激(>10^4 K/hr)であった可能性が高いことを示した.この加熱速度は,コンドリュール形成の熱源として考えられる衝撃波加熱や雷加熱と整合的である.年代情報,加熱への制約条件を基に,コンドリュール形成がどこで起きたのかについて,原始太陽や原始惑星系円盤の進化モデルと組み合わせ,いくつかの可能性を議論する.
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比屋根 肇, 留岡 和重
セッションID: k10-04
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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コンドライトと呼ばれる一群の隕石(始源的隕石)は、太陽系形成期に原始太陽のまわりを取り巻いていた原始太陽系円盤(水素・ヘリウム主体のガスの中に固体微粒子が1%程度含まれる)の中で形成された種々のコンポーネントを含んでいる。そのひとつに難揮発性包有物(Refractory Inclusion(RI)、またはCa-Alに富む包有物(CAI))がある。難揮発性包有物は、(1)文字どおり難揮発性、すなわち高温鉱物の集合体であること(主要構成鉱物はスピネル、メリライト、Ca輝石(しばしばAl, Tiに富む)、アノーサイト等)、(2)太陽系最古の年代(Pb-Pb年代で4567Ma)を持つこと、(3)大きな酸素同位体異常を持つこと、といった特徴がある。CAIが太陽系形成最初期の非常に高温のイベントによってつくられたことは確かである。 CAIは特異な酸素同位体異常を持っている。酸素には質量数16、17、18の3つの同位体があり、地球ではその存在度比はおよそ99.76%:0.20%:0.04%である。CAIを構成している鉱物は、(
17O/
18O)比がノーマルなのに、
16Oだけが4-5%も過剰に存在する。最近のイオンマイクロプローブ分析技術の発達により、鉱物ごとの、あるいは鉱物内部の酸素同位体組成の分布が詳細に調べられるようになった。その結果、CAIに典型的な鉱物だけでなくオリビンなどにも同様の酸素同位体異常が存在すること、異なるコンドライトグループでもCAIの酸素同位体組成は一定であること、などの事実が明らかになった。 CAIの酸素同位体異常を説明するには、通常の化学反応や蒸発・凝縮・拡散などのプロセスで生じる「質量依存同位体分別」ではなく、「質量に依存しない同位体分別」が必要である。可能な説明としては、 (i)
16Oに富む太陽系外起源粒子の混入、(ii) 初期太陽系に存在した同位体不均一、(iii) 質量に依存しない同位体分別効果の存在、などの可能性が考えられよう。Robert Claytonは最近、太陽光により原始太陽系星雲内の一酸化炭素が解離して酸素原子を生成するとき、同位体によって解離に用いられる(吸収される)波長が微妙に異なることに注目し、新しい説を提唱した。
16Oは存在度が高いため、その反応に関与する波長の光は吸収が激しく、原始太陽系星雲の浅いところまでしか届かない。一方、
17O、
18Oは存在度が低いため、反応に関与する波長の光は原始太陽系星雲の奥深くまで届く。このような自己シールド効果の違いにより、星雲内部では解離された酸素原子の中で
17O、
18Oが圧倒的となる。すなわち質量に依存しない同位体分別効果が生じる。Claytonは太陽系のもともとの酸素同位体組成はCAI的であり、地球も月も多くの隕石もすべて反応によって
17O、
18Oに富むようになったと考えている。面白い考えではあるが、まだまだ議論の余地があろう。太陽系の平均的な酸素同位体組成については、ジェネシス計画(太陽風の酸素同位体組成の直接分析)によって明らかにされるだろう。 酸素同位体はガスと固体の反応に関して面白い知見を与えてくれるが、CAI形成時の温度、酸素分圧、あるいは蒸発・凝縮プロセスなどについては別のアプローチが必要である。講演では、イオンマイクロプローブによるCAIの希土類元素分析の最近の例をいくつか取りあげて、鉱物の微量元素分析がどのようにCAI形成の謎ときにかかわってくるかについても紹介したい。
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香内 晃
セッションID: k10-05
発行日: 2004年
公開日: 2005/03/10
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ハレー彗星の探査から星間塵中にはケイ酸塩と同等かそれ以上の有機物が含まれていることが明らかになった.しかしながら,これまでの惑星形成論ではケイ酸塩と氷のみが惑星材料物質として扱われ,有機物の存在は全く無視されてきた.私たちは大量に存在する物質の重要性を認識し,以下の実験的研究を行っている:a) 分子雲での氷への紫外線照射による有機物の生成と,その有機物がさらに低密度雲で強い紫外線照射を受けて変成する過程,b) 星間雲で形成された有機物(有機質星間塵)が原始太陽系星雲で受ける蒸発変成作用,c) 有機質星間塵の付着・成長過程,d) 有機質星間塵が炭素質隕石母天体に取り込まれて受ける水質・熱変成作用.これらの研究の概略を紹介し,それをもとに次のトピックスを議論する:i) プレソーラーダイヤモンドの起源 隕石中のいわゆるプレソーラーダイヤモンドは炭素星や超新星起源ではなく次の2通りの過程で形成された:a) 分子雲で氷への紫外線照射,b) 炭素質隕石母天体中での有機物の水質変成・熱変成.このように考えるとこれまで説明のつかなかった SiCやグラファイトより2_---_3桁多量に存在すること,および炭素同位体は太陽系と同じであることがうまく説明できる.ii) 小惑星の急速成長 有機質星間塵の加熱蒸発実験から,有機質星間塵は小惑星領域に存在する事がわかった.衝突・付着実験から,mmサイズの有機質星間塵は5m/sでも付着することが明らかになった.これらの結果から,有機質星間塵が存在した2-3 AUでは,星雲が乱流状態になっている降着円盤時でも,星間塵の集合体の成長が急速に進んだと結論される.
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