日本語の研究
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14 巻 , 2 号
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小特集:越境する日本語研究
  • 多門 靖容
    2018 年 14 巻 2 号 p. 1-17
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    古代和歌に、連体歌、序歌、倒置歌の三つの世界を構成し、それぞれの世界の課題と三つの世界の関与を論じた。まず連体歌による事態の時空間飛躍を考察し、萬葉では時空間が飛躍しない歌が多いが、飛躍がある場合の、或るケースに関する「浅田予想」が妥当であることを論じた。また飛躍がある場合の、飛躍の偏りも指摘した。次に序歌について、従来、序歌の典型とされてきたものをAタイプとし、この他にBおよびCタイプがあることを述べ、3タイプを類別する必要を論じた。倒置歌については述部用言の特徴に触れた。三つの世界の繋がりを述べれば、連体歌は本論で提案する序歌Aタイプと類似し、Aタイプは倒置歌と強く関与している。以上の考察はすべて歌の時系展開に沿った享受を前提に意味を持つ。

  • ──数量の多さを表す句との対応から──
    常盤 智子
    2018 年 14 巻 2 号 p. 18-33
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    本稿では、明治期に翻訳から生じたとされる「N(Nは名詞の意)の多く」という類の直訳に注目し、数量の多いことを表す英語の表現「~ of N」がどのような日本語と対応しているのかについて、当該期の日英対訳会話書約150点を対象に横断的な調査を行った。その結果、日本人の手になる会話書にも英米人の手になる会話書にも副詞等を伴う意訳が多くみられることがわかった。また、日本人の会話書の中には英米人の会話書ではみられない「Nの多く」類の直訳が一定数みられた。これは後に一般化する同種の表現の早い例とみることができた。当該期において日本人の外国語理解の方法には訓読という背景があり、書きことばを無視できなかったことに対し、英米人は当時の話しことばの習得に重点をおいていたということが、今回の調査結果に反映していることを論じた。

  • 江口 正
    2018 年 14 巻 2 号 p. 34-50
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    九州各地の方言は動詞活用の組織に特徴があり,二段活用(特に下二段)が残存して古い特徴を保つ一方,一段動詞がラ行五段化するという新しい変化の方向を併せ持つ。このふたつの特徴は方向性が逆であるため,別個の説明が与えられることが多かった。本稿では,大分方言に見られる動詞終止形の撥音化現象を手掛かりに,それらの特徴はいずれも「同音衝突の回避」が関係するという仮説を提出する。

  • 塩田 雄大
    2018 年 14 巻 2 号 p. 51-67
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    ことばに関する無作為抽出調査(NHK放送文化研究所実施)のおよそ20年分(計34調査[設問総数616件])の結果を学歴差に関して分析したところ、大卒層には「意見のばらつきが比較的小さく特定の回答に集中する(つまり言語意識の均質性が高い)」傾向が表れ、また「漢字表記を好み、外来語の原音的表記を好み、“ことばの乱れ”に関しては保守的な反応を見せる」などといった志向性が相対的に強く見られた。

  • 白川 博之
    2018 年 14 巻 2 号 p. 68-83
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    かつて日本語教育からのニーズを背景に進展した日本語文法の記述的研究も、今世紀に入る頃から目的を失い閉塞状態が続いているという指摘がある。しかし、実際には、日本語学習者・教授者に供されうる文法記述にはまだ不足していることがたくさん残っている。本稿ではそのような問題意識のもと、学習者の視点に立っての問題の掘り起こしとその解決の方途を考える。

     具体的には、「日本語教育研究への越境」を可能にする観点として、「語用論的研究(使用文脈の研究)」「外国語との対照」「語法研究(類義表現の研究)」という3本の柱を立てて、具体的な研究事例を通して、目のつけどころや研究の可能性について検討する。「日本語教育研究への越境」は、結局、「われわれの日本語」から「みんなの日本語」へ」という、日本語の見方の転換を伴うことにも論及する。

  • ──作文教育を中心に──
    坂井 晶子
    2018 年 14 巻 2 号 p. 84-100
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    現行の句読法は、西洋のpunctuationの影響のもと、明治以降に日本語の書き言葉に使用されるようになった。義務教育課程においては、まず国語読本から〈、〉と〈。〉を使い分ける句読法が使われ始め、次いで作文教科書に使用された。明治37年の「国定読本編纂趣意書」および明治39年「句読法案」の発表をきっかけに、綴り方の授業で句読法が教授されるようになった。児童の作文もこの流れを反映し、明治30年代においては、句読点を全く用いないか、一種類のみを使用するものが大半を占める一方、明治40年代には現行に近い句読法を使うものが優勢となる。また、記号は後から文章に打たれるのではなく、文字とおなじタイミングで付される。この句読法は大正年間を通じて次第に定着していった。

  • 菊地 恵太
    2018 年 14 巻 2 号 p. 101-117
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    本稿では「棗」「攝」等の略字体「枣」「摂」に見られる畳用符号(同一構成要素を繰返す符号)「〻」及びそれを横に並べた「〓」に着目し、その使用状況の変遷を明らかにする。日本では当初、畳用符号による省画は中国由来の「〓・〓」(䜛・〓)に限られていたが、同一構成要素3つ乃至4つの字体を「〓」符号で省略する手法が室町中期頃より見え始め、室町後期以降同様の省略法を用いる字種が広く見られるようになる。さらに同一構成要素2つの字種の場合でも、「〻」を用いて省画する手法が「䜛」「〓」以外の「棗」「皺」等といった字種にも見られるようになった。こうした一連の過程から、略字体の生成過程・使用の変遷において「分析的傾向」と呼べる側面が存在することを示した。

〔書評〕
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