日本語の研究

江戸語・明治期東京語における接続助詞ケレド類の特徴と変化 : ガと対比して

宮内佐夜香

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 1-16
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_1

ジャーナルフリー

抄録を表示する抄録を非表示にする

本稿では、近代語逆接確定条件表現において中心的に用いられる接続助詞ケレド類について、接続助詞ガと比較しながら、江戸語・明治期東京語を対象に調査し、その特徴と変化について論じた。使用率では、江戸語はガが優勢であったが、江戸後期から明治期にかけてケレド類が増加する。形態面では、江戸語において<ケド>は認められず、明治期になってから<ケド>が散見されるようになる。機能面では、江戸語・明治期東京語におけるケレド類は、逆接的意味のない用法ではほとんど用いられないという、ガとの相違が認められたが、江戸語と明治期東京語とを比較すると、明治期に至って、逆接的でないケレド類が江戸後期より増加するという、時代的変化も確認された。以上のように、ケレド類の使用には、使用率・形態・機能の3つの面において、江戸後期から明治期にかけて変化傾向がみられることが分かった。

抄録全体を表示

PDF形式でダウンロード (1417K)
漢語動詞の自他体系の近代から現代への変化

永澤済

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 17-32
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_17

ジャーナルフリー

抄録を表示する抄録を非表示にする

現代より自他両用動詞の多い近代漢語動詞の自他体系が,現代までにどう変化したかをコーパスを用いて分析し,その要因を考察した。近代漢語が自動詞として存立するための条件<通常,他から人為的なはたらきかけを受けずとも成立し得る変化を表す>は,現代に至っても変わらないが,他動詞として存立するための条件〈非情物または非情物と有情物の両方が変化主体となり得る変化を表す>は,現代に至ると厳しくなり,非情物が変化主体であっても自律性の高い事象は他動詞で表せなくなった。結果,多くの自他両用動詞が自動詞専用化した。このような変化が起きたのは,漢語動詞が日本語への定着度を増すなかで,和語に倣い自他を分化させる方向へ力が働いたためと考えられ,それを可能にしたのが,他動詞化接辞として機能する「-させる」の存在だとみられる。一方,自動詞化接辞が日本語になかったことが,他動詞専用化した動詞の少なさの背景にあるとみられる。

抄録全体を表示

PDF形式でダウンロード (1438K)
語彙史・語構成史上の「よるごはん」

橋本行洋

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 33-48
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_33

ジャーナルフリー

抄録を表示する抄録を非表示にする

<夕食>を意味する「よるごはん」は、現在若年層を中心に使用される新語と見なされているが、その成立は少なくとも第二次大戦前後にまで遡ると見られる。当初は児童が用いる稚拙な印象の語であったため、文字資料に残されることが少なかったが、近年では夕食時間帯の遅延や朝食の欠食という食環境の変化に伴い、これが妥当な表現という意識が生じて使用が拡大し、新聞記事や国会発言および小学校教材等でも使用されるという、《気づかない新語》としての性格をも有するに至っている。「よるごはん」の成立要因としては、<夕食>時間帯表現における「よる」の使用があげられるが、さらにその遠因に、二食時代の「あさ」-「ゆう」の対応に「ひる」が加わった結果、「ひる」-「よる」という対応意識の生じたことが存すると考えられる。「よるごはん」の出現は、食事時間帯語彙に「よる」が加わった点で新しいものであるが、旧くは存在しなかった「よる」を前項要素とする複合語という点においても特筆すべき存在で、語彙史・語構成史の両面から注目すべき語と言える。

抄録全体を表示

PDF形式でダウンロード (1197K)
江口泰生著, 『ロシア資料による日本語研究』, 2006年2月20日発行, 和泉書院刊, A5判, 336ページ, 10,000円+税

中島由美

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 49-55
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_49

ジャーナルフリー

PDF形式でダウンロード (646K)
国立国語研究所編, 『方言文法全国地図6』, 2006年3月28日発行, 国立印刷局刊, B4異型判, 地図80枚, 解説778ページ, 54,000円+税

田中宣廣

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 56-62
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_56

ジャーナルフリー

PDF形式でダウンロード (614K)
丹羽哲也著, 『日本語の題目文』, 2006年1月25日発行, 和泉書院刊, A5判, 392ページ, 10,000円+税

益岡隆志

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 63-68
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_63

ジャーナルフリー

PDF形式でダウンロード (507K)
岡田袈裟男著, 『江戸異言語接触-蘭語・唐話と近代日本語-』, 2006年3月20日発行, 笠間書院刊, A5判, 684ページ, 14,000円+税

櫻井豪人

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 69-75
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_69

ジャーナルフリー

PDF形式でダウンロード (632K)
多門靖容著, 『比喩表現論』, 2006年2月28日発行, 風間書房刊, A5判, 996ページ, 28,000円+税

はんざわかんいち

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 76-81
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_76

ジャーナルフリー

PDF形式でダウンロード (545K)
近世後期上方語における"ちやつた"の扱いについて

増井典夫

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 82-85
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_82

ジャーナルフリー

PDF形式でダウンロード (348K)
『英和対訳袖珍辞書』初版および改正増補版の草稿(資料・情報)

櫻井豪人

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 86-93
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_86

ジャーナルフリー

PDF形式でダウンロード (1583K)
高橋五郎『[和漢/雅俗]いろは辞典』の資料性

根本真由美

原稿種別: 本文
2007 年 3 巻 4 号 p. 106-94
発行日: 2007/10/01
公開日: 2017/07/28

DOIhttps://doi.org/10.20666/nihongonokenkyu.3.4_106

ジャーナルフリー

抄録を表示する抄録を非表示にする

本稿は、主に「語を単位」とした語釈が配置されていると考えられる『[和漢/雅俗]いろは辞典』(以下『いろは辞典』)を観察し、明治期語彙研究資料としての『いろは辞典』の有用性を述べることを目的とした。和語・漢語項目共に最も多く観察できた「語釈」のかたちは「見出し項目-漢字列(=漢語)-和語釈義」であった。これは漢語には和語を、和語には漢語を配置しているとみることができ、書名の「和漢」につらなる方針と考えられる。また、漢字列に「漢語」が配置されたということは、明治期においてはそれが最も自然なかたちであったからと考えられる。明治期非辞書体資料に現れる漢字列と振仮名をそれぞれ語と認めたとき、『いろは辞典』の「見出し項目」と「語釈」として「循環」することが見いだせた。これらは「結合」を有していた二語であると考えることができ、明治期の語(や語彙)を考える際に『いろは辞典』が有用であると考えられる。

抄録全体を表示

PDF形式でダウンロード (958K)

J-STAGEへの登録はこちら（無料）