地震工学研究発表会 報告集
Online ISSN : 1884-8451
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  • 石澤 友浩, 國生 剛治
    2005 年 28 巻 p. 1
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    地震による斜面安定は, これまで滑り土塊の力の釣り合いにより評価されてきたが, 大規模な崩壊が起こった後の土塊の変形量や流動量を評価することは困難である. そこで, 本研究では震動エネルギーを用いて, 斜面変形量を定量的に評価することを目指し, 振動台を用いた模型実験の手法を新たに開発した. 今回は振動台の振動数を変化させた模型実験を行った. これらの試験結果より, 入力波の振動数が違っても斜面変形量は震動エネルギーによって一意的に評価できることがわかった.
  • 井合 進, 飛田 哲男, 今井 淳一郎
    2005 年 28 巻 p. 4
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, 液状化地盤中に設置されたマンホールの浮上りについて遠心力載荷模型実験を通じた検討を行った. 遠心力載荷模型実験では, 地盤の密度および加振加速度を変化させ, 延べ6ケースの実験を実施した. 遠心模型実験により, マンホール模型浮上りの際に測定した過剰間隙水圧の値を基に, 現行設計基準類などに示されている簡易法による浮上り安全率を算定したところ, この安全率と浮上りの挙動とは矛盾する結果となり, 有限要素法などによる変形解析の重要性が改めて確認される結果となった.
  • 塩尻 弘雄, 丸山 拓也
    2005 年 28 巻 p. 11
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    構造物と地盤の相互作用解析においては、構造物のスケールに比し、半無限に広がる地盤の取り扱いが問題となる。非線形解析等の遂行には時間領域での解析が必要となるが、時間領域で有限要素法と境界要素法等を組み合わせるサブストラクチャー法は、安定性の確保に必ずしも容易でない。一方、差分法の一種であるFDTD法では高性能のPML境界が実用的に使われており、また、人工的に粘性を付加した後、その影響を除去するdamping-solvent extraction法も提案されている。ここでは、これら2つの手法の有限要素法への適用について、実用的なアルゴリズムを示し、簡単な数値例でその特失を示す。
  • 松本 浩幸, 三ケ田 均
    2005 年 28 巻 p. 14
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2004年紀伊半島沖地震にともない発生した津波は, 高知県室戸岬沖約100kmに設置してある高精度海底津波計でも観測することに成功した. 本稿では, この津波の沖合観測の報告と数値シミュレーションとの比較・検討を行う. 海底津波計の直近にある室戸岬検潮所よりもおよそ20分前に観測された沖合の津波の振幅は4cm (前震) と7cm (本震) 相当であり, 検潮所で観測された津波の1/10程度の大きさであった. リアルタイムで津波の沖合観測を行うためには地震動によるノイズを除去することが不可欠で, 簡便な60sのリアルタム移動平均を施せば沿岸到達の20分前には津波の検知が実現可能であることを示した.
  • 甲元 克明, 米澤 康夫, 鈴木 威, 竹井 賢二, 本田 利幸
    2005 年 28 巻 p. 26
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    阪神高速道路東大阪線P20~25の木津川橋梁は, 5径間連続桁の中間支点にロッキング柱を有する特殊橋梁である. 既設橋梁の耐震補強を行う場合, 免震支承に取替え支承の変形によって減衰を得る免震設計を行うことも多いが, 本橋ではロッキング橋脚ピボット支承の回転可能角度から決まる桁の変位量内で免震設計を行った. 本橋の特殊性から耐震設計思想の特異性, 機能分離支承の採用, 横支材の補強, ロッキング橋脚のピボット支承逸脱防止など, 他橋にはない耐震補強を行っている.
  • 鶴来 雅人, 香川 敬生, 入倉 孝次郎
    2005 年 28 巻 p. 27
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    強震動予測を精度良く行うには, 高周波数領域の地震動特性を明らかにすることが必要である. 経験的グリーン関数法を用いた大地震記録の再現解析では高周波数領域において過大評価される事例が報告されている. そこで本検討では, 1995年兵庫県南部地震のシミュレーションを行ない, 大地震記録に見られる高周波数領域におけるスペクトル減衰特性を検討する. その結果, 複数の地点に対して共通の高域遮断フィルターを施すことで, 観測大地震記録を再現できることが明らかとなった. 得られた結果は経験的グリーン関数法や統計的グリーン関数法による強震動予測に際に有益な情報を提供するものと期待される.
  • 石田 栄介, 磯山 龍二, 塚本 博之, 末冨 岩雄
    2005 年 28 巻 p. 32
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    斜面情報, 大規模盛土地盤情報, 人工改変地盤情報等, 地震災害への影響が大きいと考えられるがこれまであまり整備されてこなかったデータについて, 効率的かつ一定の精度で整備していく手法を開発する. 都市については土地条件図等の地形分類情報が整備されているが, 郊外や地方ではこれらの情報に乏しい場合が多く, 新たに整備する必要がある. 盛土位置を大まかに把握しようとした場合, 旧地形との比較が必要となるが, 旧地形を全面的にデジタル整備することは容易でなく, 絞り込みが必要である. 本論では, 市販DEM等, 全国的に安価に入手可能なデジタル情報を用いて大まかな人工改変地盤情報の整備必要領域を絞り込む手法, および, 斜面危険度を面的に整備する手法について検討を行う.
  • 飛田 哲男, 井合 進, 上田 恭平
    2005 年 28 巻 p. 37
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    原地盤を飽和砂質地盤とする盛土に関して動的遠心模型実験, および有効応力解析プログラム (FLIP) による数値解析を実施した. 実験および解析においては, 原地盤の相対密度と入力波の加速度振幅に対する盛土および周辺地盤の変形形態と天端沈下量に着目した. 本研究により明らかになったことは以下のとおりである. (1) 入力加速度振幅にほぼ比例して, 盛土天端の沈下量が増大した. (2) 液状化地盤では自重による沈下が卓越し, 非液状化地盤では慣性力による変形が卓越する. (3) 飽和緩詰め地盤上の盛土沈下は, 原地盤要素が地震時のせん断力により鉛直方向に収縮, 水平方向に伸張することで生じる.
  • 森尾 敏, 加登 文学
    2005 年 28 巻 p. 41
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    不整形地盤の地震応答解析は、通常、薄層要素法、境界要素法を含めた有限要素法解析により行われる。しかし、この種の解析法では実体波と表面波を一体として取り扱っているため、両者を区別することが困難と考えられてきた。このため、その重要性は指摘されながらも、表面波の寄与に関する研究はほとんど実施されていない。筆者らは、不整形地盤の地震応答解析において、実体波と表面波の寄与率を定量的に評価する研究を進めている。本報告では、評価手法の根幹をなす成層地盤 (1次元問題) の複素固有値解析を詳述し、波動論との比較から本解析法の検証例を示す。又、表面波 (レイリー波、ラブ波) と実体波の固有振動との関係を提示する。
  • 佐藤 清, 中村 敏晴, 竹内 幹雄, 森崎 啓, 小西 康彦, 佐伯 宗大
    2005 年 28 巻 p. 43
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    地中構造物の地震時挙動を考えるとき、周辺地盤との摩擦の影響を考慮する必要がある。しなしながら、滑りや剥離現象の発生過程や、それに伴う外力の変化について具体的な部分は不明確である。筆者らは地中構造物の周面せん断力の影響について構造物の大小による影響の違い、すなわち寸法効果に着目し, 応答震度法による検討を行った。対象としたのは円形断面構造物で、異なる4種の径、φ500mm、1500mm、 3000mm、10000mmを有する構造物とした。地盤条件は粘土 (N値=2、10) および砂 (N値=10、30) を想定した。応答震度法による検討では、まず一次元重複反射解析によって地盤の最大加速度分布を求め、これを構造物と周辺地盤をモデル化した 2次元有限要素に慣性力として作用させた。解析ではJOINT要素や地盤の非線形性によって管路と地盤との境界での滑り・剥離現象を考慮し, 管路寸法の違いによる応答の違い, すなわち寸法効果について考察を行った。
  • 永田 聖二, 川島 一彦, 渡邊 学歩
    2005 年 28 巻 p. 44
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本文は, 現在までに行われた逆L字型橋脚模型の繰返し載荷実験およびハイブリッド載荷実験を対象としてファイバー要素解析を行い, その解析精度を検討した結果を示すものである. 偏心が無い場合, 偏心量が0.5D, およびD(D : 橋脚の幅)の場合, 計3種類の橋脚を対象として, 水平2方向地震力を同時に作用させた場合の地震応答を解析した. その結果, 実験による偏心方向の地震応答特性を, 解析により精度良く再現できるのに対して, 偏心直角方向では, 実験による復元力特性や残留変位特性を, 解析によりうまく再現できないことを示した.
  • 森崎 啓, 佐藤 清, 竹内 幹雄, 小西 康彦, 佐伯 宗大, 中村 敏晴
    2005 年 28 巻 p. 46
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    地中構造物の地震時挙動を正確に再現する場合, 構造物と地盤間のすべり・剥離などの相互作用を的確にモデル化することが重要である. しかし, 比較的小口径の円形断面に対する合理的な耐震計算方法は必ずしも確立されていないのが現状である. そこで筆者らは, 下水道管 (φ500mm, 800mm, 1500mm, 3000mm) を対象に, 地盤条件, 寸法, 埋設深度, すべり・剥離効果の有無, 等に関するパラメータスタディを実施し, 管径の大小による影響の違い, すなわち寸法効果の解明 (特に, 地震時周面せん断力の影響) を試みた. その結果として, 径の大小によるすべり・剥離効果の寄与度と応力転化のメカニズムに対する知見を示した.
  • 本田 利器, 岡元 良輔
    2005 年 28 巻 p. 48
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    入力波形を構造物の非線形応答特性値に基づいて評価する方法として, 構造物などの不確定性なども考慮した上で入力波を非線形応答値を座標に有する特徴空間へ写像し, 同空間上で比較する方法論を提案する. この空間は非ユークリッド空間となるがカルバックライブラー距離をノルムとして用いることで入力波形を評価することが可能となる. 本報告では, この入力波形の評価法を, ウェーブレット変換とフーリエ変換の設計用入力波の表現方法としての適用性の比較に用いた場合について述べる. 解析結果は, ウェーブレット表現の優位性を示す結果となった.
  • 森田 年一, 大和田 祐加
    2005 年 28 巻 p. 58
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究では、地盤の土層構成に着目し、地盤の土層構成の違いが地震時の挙動にどのような影響を与えるかについて、4種類の仮想地盤を対象に模型振動実験および有効応力解析を実施した。さらに、ここで対象とした仮想地盤と同様の実地盤を対象に、有効応力解析により実際の地震時の挙動をシミュレートするとともに、液状化が発生した場合における地盤の軟化の程度について言及した。その結果、上載圧が大きく液状化抵抗の大きい土層の存在が、地盤全体としての液状化の抑制に寄与しているという知見を得た。
  • 西山 誠治, 室谷 耕輔, 大嶋 義隆, 河西 寛, 伊東 守
    2005 年 28 巻 p. 63
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    矩形地下構造物の地震対策工として, 構造物への相互作用力を低減する手法の効果を検討する. 対策工として, 免震材, 発砲スチロール (EPS) および地盤改良に着目し, 軟質, 硬質および岩着地盤に適用させた場合の各対策工の断面力低減効果を検討する. 各対策工を同一の条件で評価することにより, それらの適用性や特徴を明らかにする. この際, 免震材等の配置や材料物性値は, 今後の材料開発の方向性にも資するように, 幅広く変化させる. さらに, 現実的な既設構造物の対策工として, 非開削の場合, 上床面まで開削した場合および下床版面まで開削した場合を想定し, いくつかの対策工を組合せた効果も検討する.
  • 國生 剛治, 石澤 友浩
    2005 年 28 巻 p. 65
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    斜面上の剛体ブロックモデルをエネルギー的に解釈することにより、斜面の残留変位δrを斜面滑りに寄与する地震波動エネルギーEEQから算定する簡便な式を導いた。この理論式と乾燥砂の模型実験結果は、適切な摩擦係数を用いた場合には、両者の破壊モードの違いにも関わらず高精度で一致することが分かった。さらに築館町地滑りに適用したところ、崩壊土塊の持つ位置エネルギーが地震の振動エネルギーや液状化による内部減衰エネルギーに比べて支配的であることが分かった。理論式により逆算された斜面の滑り面にそっての摩擦係数μは、現地の不撹乱採取試料による液状化時の非排水せん断強度と整合していることが確認され、剛体ブロックモデルに基づいたエネルギー法により、実際の地震時斜面崩壊での流動的変位を評価できる可能性が示された。
  • 高村 早織, 盛川 仁, 松田 稔樹
    2005 年 28 巻 p. 77
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    1995年の阪神・淡路大震災以降、個人・地域レベルでの防災活動の重要性が強く認識されるところとなり, 地震防災教育に関する取り組みがいっそう盛んに行われるようになった。しかし, 18歳以上を対象とした地震防災教育においては, 防災訓練への参加意欲が低いなど課題が多く残されている。本研究ではこのような状況を改善するための一つの手段として, 一般市民を対象とした地震防災教育のための自習用 web教材を開発した。教材の開発では, 時間や場所の制限を少なくすること, 学習効果を高めるために学習の理解度を確認出来るようにすることなどに留意した。また, 開発した教材を複数の被験者に試用してもらうことで教材の学習効果を確認した。
  • NASSER Rami, TAKAHIRO Iwatate
    2005 年 28 巻 p. 78
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    In order to implement the proper design of structures in Damascus, the seismic behavior of soil and structure was examined numerically, and the seismic characteristics of both of them were determined. The study is carried out through two major steps; first, examining the seismic response of ground due to strong and weak earthquake motions; second, examining the soil-structure interaction due to the same motions. All seismic characteristics of both ground and structure will be determined from these analyses such as shear forces, displacements, bending moments, stresses ...etc. strong nonlinear properties were displayed, which proved the equivalent static method used in Syria insufficient.
  • 安中 正, 香川 敬生, 石川 裕, 江尻 譲嗣, 西岡 勉
    2005 年 28 巻 p. 80
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    地震による構造物のリスクや期待損失 (被害額期待値) を評価することを目的として, 確率論的地震ハザードに適合した生起確率付地震動波形群の設定方法について新たに提案した. ハザード曲線の各区間ごとに貢献度の大きさに応じた比率でシナリオ地震を割り当てた後, 各シナリオ地震による断層破壊メカニズムを考慮した地震動波形の群を, その生起確率とセットで提示するものである. さらに, 神戸地域を対象として具体的な評価例を示した.
  • 古本 吉倫, 杉戸 真太, 細木 洋輔
    2005 年 28 巻 p. 85
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    盛土や工学的基盤が傾斜している不整形地盤では, 地震動伝達関数を求める際に2次元, 3次元によるモデル化を必要とし, 等価線形化法等を用いて解放基盤波形から地表波形を解析することが難しい. 本研究では, 傾斜基盤面の上端と下端における地盤モデルから1次元的に地震動伝達関数を求め, それらを重ね合わせることにより傾斜基盤上の堆積地盤面における伝達関数を推定する手法を提案する. ここに, 1次元伝達関数は周波数依存型等価線形化法 FDELを用いて算出し, 傾斜基盤上端からの距離と傾斜基盤の長さをパラメータとして重みをつける. 提案法により求めた伝達関数は, 有限要素法を用いた解析結果と比べ矛盾のないことを確認した.
  • Amir Ahmad SADR, Kazuo KONAGAI
    2005 年 28 巻 p. 88
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    The 1999 ChiChi-Taiwan and Kocaeli-Turkey earthquakes, did great damage to a number of bridges along the trace of the surface rupture. With fault motion and induced deformation on surface deposit, consequently an embedded foundation will be shifted from its original location, and deformed even though it is located off the major rupture zone. Understanding the important factors of soft surface deposit shearing is an essential step for investigating its effect on the adjacent structure. In this paper with considering nonlinearity nature of problem, a simple conceptual model is introduced, then essential dimensionless groups are extracted. Using Material Point Method (MPM) together with plasticity, the validity of derived groups are checked by 2D numerical case studies. The derived similarity law is useful for understanding the effect of factors like elastic, strength distribution among depth and deposit thickness. Then the effects of horizontal and vertical fault motion are separately studied and later with proposed framework the effect of material dilatancy, initial stress, Normal-Reverse type and dip fault motions are explained.
  • 馬場 美智子, 東原 紘道
    2005 年 28 巻 p. 89
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    医療機関は緊急時、平常時にかかわらず、人命に関わる重要な役割を担っているが、特に災害時においてその機能を保つことは、救急・災害医療の最低条件となる。医療施設は医療活動を行うために様々な機能を備えており、医療機能はこれらの要素や機能に依存関係している。本研究では、その関連関係を分析し、医療活動が継続可能となるリスク要因を抽出する。また、広域的な救護活動も検証し、被災地における災害医療について総合的に考察する。今後の医療施設計画と救急・災害医療支援システム検討に役立てることをめざして、新潟県中越地震の被害と救急・災害医療活動調査を通して検証を行う。
  • 細川 直行, 菜花 健一, 中根 宏行, 中山 渉
    2005 年 28 巻 p. 91
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2004年新潟県中越地震における都市ガス事業者の被害状況, 復旧状況について報告する. 地震の影響により6事業者で合計約56,800戸の需要家へのガス供給を停止した. 本地震におけるガス導管被害の特徴は, 主な損傷部位はガス導管のねじ接合部に集中して発生, 被災事業者の所有する低圧ガス導管の約25%を占めていたポリエチレン管については激しい地盤変動にもかかわらず損傷した事例は確認されていない点であり, 1995年兵庫県南部地震における被害状況と似ていることが確認できた. 都市ガスの復旧は多くの人手と手間のかかる作業であるため, 県外からの多数の応援者により復旧が行われ, 供給再開までに2~4週間を要した.
  • 酒井 久和, 吉田 望, 澤田 純男
    2005 年 28 巻 p. 94
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究は, 地震応答解析において, 入力地震動のデジタルデータ間の補間方法の違いが応答値に及ぼす影響を検討するものである. 補間方法は, 区間線形補間と3次スプライン補間の2種類の方法を採用し, 1次元非線形地盤モデルに対する数値解析例を通じて検討を行った. 応答値に対する影響は, 入力地震動そのものの周波数特性, 地表の加速度応答, 地中のひずみ分布等を指標として評価した. 解析の結果, 数Hzより低振動数側が問題となる構造物に対しては, 区間線形補間と3次スプライン補間の補間方法の違いが構造物の耐震性に及ぼす影響が小さいことが確かめられた.
  • 辻原 治, 庄司 孝志, 澤田 勉
    2005 年 28 巻 p. 95
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 和歌山県の南部平野において常時微動観測を実施し, 地盤震動特性を推定することである. 南部平野は南部川に沿って形成された日高地方では第2の規模を持つ沖積平野である. しかし, その地盤震動特性についての調査は, 一部を除きほとんどなされていない. 本研究では, 南部平野において89点で常時微動観測を実施し, 推定された表層地盤の卓越周期のコンターマップを作成した. また, ボーリング調査資料も参考にして, 全域について工学基盤深さを推定し, これのコンターマップも作成した.
  • 高橋 千明, 蔡 飛, 鵜飼 恵三
    2005 年 28 巻 p. 97
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    液状化地盤における土構造物の耐震設計では円弧すべり計算に基づくΔu法が用いられてきたが, 近年, 動的有効応力解析の残留沈下量による精査が行われるようになってきた. しかしながら, 土構造物の液状化による崩壊パターンとしてクラックやすべり破壊なども考えられるため, 安定計算の有意性も残されているものと考える. 本研究では, 1971年2月9日のSan Fernando地震において被災した2つのダムを対象に, 浸透流解析, 動的有効応力解析およびせん断強度低減法を適用した弾塑性解析を行った上で, 残留変形と安全率の低下を表現できる合理的な土構造物の液状化時安定性評価手法を提案した. 提案した手法を地震時崩壊が生じたLower San Fernandoダムに適用し, 崩壊を良く再現できることを示した.
  • 常田 賢一, 渡邉 武, 平石 浩光
    2005 年 28 巻 p. 98
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    近年, 活断層調査の結果が公表されつつあるが, 橋梁などの事業プロジェクトにおいて地表地震断層に関係する事例が見られ始めている. しかし, 我が国では活断層, 特に地表地震断層に起因する断層変位に対して明確な対応方針を示して対策を検討した事例は皆無である. 今後, 活断層に係わる事業の増加が予想される中にあって, 活断層に起因する変位の対策方法を明確にすることが必要である.
    本文は, 既往の地表地震断層対策に対する工学的な基本姿勢に基づいて, 新設の道路橋を横断して発生すると予想される地表地震断層の変位および関連する震源断層の地震動に起因する変位を考慮した対策 (=活断層変位対策) の検討結果を報告する。本事例は、我が国で最初に橋梁の活断層変位対策を検討した事例であり、事前対策に加えて事後対策も考慮した総合的な活断層変位対策であることが特徴である。
  • 安中 正, 森田 大, 相京 泰仁, 原田 光男
    2005 年 28 巻 p. 99
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    日本全国の高密度強震観測網 (K-Net, KiK-net, 気象庁95型震度計観測網) によるデータを用い, 距離減衰勾配の震源深さ依存性を考慮した式を用い, 減衰 5%の加速度応答スペクトル推定式の係数, 震源補正, 地点補正を決定した. 推定式は, 最短距離を用いた式と等価震源距離を用いた式の2つを設定した. 地震タイプを, A-1(深さ60km未満のプレート間地震), A-2 (深さ60km未満のプレート内地震), B (深さ60km~120kmの稍深い地震で主にプレート内地震, 関東の下で一部プレート間地震), C (内陸地殻内地震) の4タイプに分類し, 震源補正の地域的特徴を検討した. その結果に基づき, 地震タイプを考慮した推定式を提案した.
  • 神山 眞, 長内 優也, 松川 忠司
    2005 年 28 巻 p. 101
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    震度計の設置環境における計測震度の差異を地盤と建物内での変動に注目して, アレー観測記録を用いて考察したものである. ここでは, 過去15年にわたり観測が実施されている東北工業大学6号館の地震記録を用いて統計的な観点から自由地盤と建物1階, 4階の計測震度の変動が分析される. さらに, 同じ設置条件による常時微動アレー観測を実施して地震動と常時微動における周波数特性の特徴などが比較される. 計測震度の変動が回帰式として導かれるとともに, スペクトル解析によるスペクトル比が算定されて, 計測震度変動の原因が周波数特性における観点から分析される. アレー観測によれば, 建物1階では自由地盤に比較して, 計測震度が約0.2小さくなる.
  • 安田 進, 深谷 成司
    2005 年 28 巻 p. 103
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    地盤が液状化するとその上に建っている直接基礎の構造物は沈下する。ただし, 住宅地など構造物が隣接して建っている場合, 単に沈下するだけでなく, 相互干渉的な作用によりお互いに内側に倒れ込むような不同沈下をしたり, 逆にのけぞり合うような傾きをすることがある。トルコ・コジャエリ地震や鳥取県西部地震の際, そのような現象が見られた。そこで, 筆者達は被災箇所の事例の調査を行い, さらに振動台実験を行ってそのような事が起きるかどうか再現してみた。その結果, 実験でもそのような現象が生じた。本論文ではそのような被災事例と振動台実験を述べた。
  • 建物被害推定手法の精度検証
    山口 直也, 末冨 岩雄, 後藤 洋三, 岩崎 智哉, 水越 熏, 岡野 創, 山崎 文雄
    2005 年 28 巻 p. 105
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    震災総合シミュレーションシステムは, 大地震が起こったとき迅速に被災地域の被害推定等を行い, 災害対策本部が立ち上げられた際に意志決定のための情報を提供することを目的の一つとしている. そのシステムで用いる建物被害推定手法として, 限界耐力設計法を用いて個々の建物ごとに地震被害を評価する手法を構築した. この手法では加速度応答スペクトルを用いるので, 地震動および建物の周期特性を考慮した応答推定を短時間で行うことができる. また, 兵庫県南部地震における建物被害調査結果等の実地震データを用いて, 建物の耐震力を決定する限界変形角と降伏ベースシア係数の検証を行うなどして, 本手法の推定精度の検証を行っている.
  • 桐生 郷史, 澤田 亮
    2005 年 28 巻 p. 112
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    杭基礎構造物の液状化対策工としては, 周辺地盤の強度を増加させる地盤改良といった広範 囲を対象とした対策工が多い. しかし, 鉄道構造物は線状構造物であり, また, 都市部では狭 隘な箇所が多く, 施工性, 経済性を考慮すると周辺地盤全体を対象とした改良は合理的ではない. そこで, 薬液注入工法あるいは深層混合処理工法による杭周面のみの限定した範囲を改良 する対策工を考案し, その効果等を1G場の模型振動実験より検証した. その結果, 提案する液 状化対策工の妥当性を確認した.
  • 中村 豊
    2005 年 28 巻 p. 115
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    2004年新潟県中越地震では営業運転中の新幹線列車が初めて脱線したが, 種々の事前対策が功を奏し, また幸運にも恵まれて災害とはならなかった. 新幹線には地震対策のひとつとして, 不測の事態が発生したときに災害の程度をできるだけ軽減させるための早期検知システムが設置されている. 今回の地震でも, 上越新幹線に設置されたコンパクトユレダスが, 震央地域でP波検知後1秒で警報を発し, 震央域の全列車を緊急停止させた. 脱線列車に対しては, 警報から本格的な地震動が到来するまで3秒弱しかなかったが, 被災したかも知れないところを130m近く走行せずにすみ, 対向列車突入の危険性も大幅に低減した. 直下に発生した地震に対しても, コンパクトユレダスは想定どおり効果を発揮することが実証された. また, 今回の脱線現象を分析した結果, 主要な脱線は特定の高架橋ブロック間の著大な相対変位によって順次発生したと推定され, 地震後, 脱線車輌がレール上を胴体着陸状態で滑走して著大な摩擦熱が発生し, 列車通過とともにレールの変形・破断が発生したと想定された.
  • 篠田 昌弘, 室野 剛隆
    2005 年 28 巻 p. 120
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    現行の耐震設計法によれば, レベル2地震を想定した設計入力地震動に対して, 構造物が十分な耐震性能を発揮できることを応答解析等を行って照査する必要がある. その際に、地盤の変形特性を考慮する必要があるが、レベル2地震動を採用するにあたり、地中深くの地盤材料の変形特性も考慮する必要がでてきた。本研究では、低・高拘束圧下での代表的な地盤材料の変形特性 (せん断剛性-せん断ひずみの関係、減衰率-せん断ひずみの関係) を明確にすることを目的として, 非排水三軸圧縮繰返し試験を行った。また, 上記検討で得られた結果を実務で容易に利用できるように, 簡便な算定式を示した.
  • 佐藤 清, 佐伯 宗大
    2005 年 28 巻 p. 121
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    地中構造物の周辺地盤が液状化すると, 浮上り現象が発生する可能性がある. 本研究では幅5.85m, 高さ3.15mのボックスカルバートをモデル化し, 遠心模型実験によって地中構造物の浮上り挙動と, 鋼矢板による対策工法の効果について検証した. 実験は25gの遠心重力場にて実施し, 実験モデルは未対策モデルとシートパイルによる対策モデルとした. 構造物模型は硬質塩化ビニル製で, 比重を0.75に調整した. 実験の結果, 地中構造物の浮上り挙動と対策工法による浮上り低減効果に関するデータが得られた. また, 未対策モデルおよび対策モデルのそれぞれに浮上り量の評価式を適用し, 実測と予測値の比較を行った.
  • 井上 修作, Anil C WIJEYEWICKREMA, 関口 徹
    2005 年 28 巻 p. 122
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    2004年12月26日インドネシアスマトラ島沖でM9の地震が発生し, それによって引き起こされた津波がインド洋周辺諸国に多大なる被害を及ぼした. 我々は, 地震発生から4日後にスリランカに入国し, スリランカ南西部で現地調査を実施し, 現地の目撃証言から得られた記録を元に津波到達時刻を推定した. その結果, スリランカ南西部では, 最大波高を示す津波の前に, 一波, ないし二波の津波があり, 最大波高を示す波は9時~11時にかけて南東から南西に沿って伝播していた.
  • 高橋 良和, 日比 雅一, 家村 浩和
    2005 年 28 巻 p. 123
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    近年数多く採用されるようになってきた滑り型免震支承は摩擦現象により減衰効果を期待するものであるが, その摩擦現象(摩擦係数)は面圧や滑り速度に依存することが明らかとなってきている. 著者らはこれらを数値的にモデル化するために, トライボロジー分野における凝着説および支承材料特性に基づく面圧・速度依存型モデルを提案している. しかしながら提案したモデルは定常状態の摩擦挙動を対象としており, 地震が発生して滑り開始直後の摩擦係数の減少を説明することはできない. そこで本研究では, なじみ現象に着目し, 温度依存性を考慮した数値モデルを提案・検証するものである.
  • 天見 正和, 鈴木 猛康
    2005 年 28 巻 p. 135
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    平成16年新潟県中越地震における地方自治体の情報共有の実態について, 地震直後に災害対策本部に対するインタビュー, 約3ヶ月後に災害対応職員を対象としたアンケート調査, ヒアリング調査を行った. これらの調査結果を分析し, 住民に対する災害対応の中心となる地方自治体の職員にとって, 必要とされる情報の項目, 量, 質, 入手経路, 時間等について, 減災情報共有システム構築の観点から考察を行った.
  • 伊藤 克也, 野村 敏雄, 岡野 素之
    2005 年 28 巻 p. 141
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    柱の耐震補強工事を行う際, 高架橋の下を店舗等として利用している箇所では, 柱全面の補強が困難であり, また, 作業スペースが無いなどの制約が多い. そこで, 補強部材を柱の一側面にパンタグラフ状に配置して, 既設RC柱の耐力や変形性能の向上を図る新しい補強工法を開発した. これにより, 従来の鋼板を用いた補強工法と比較して部材の小型化が可能となり, 狭隘部での施工性の向上や工期短縮が期待できる. 補強効果を確認するために, RC柱の交番載荷実験を行った結果, 以下のことが分かった. (1) 補強試験体は主筋降伏後, 曲げ耐力まで荷重が増加する. (2) 補強により良好な変形性能を示す. (3) 補強部材がせん断力を軸力として伝達する.
  • 北原 武嗣, 梶田 幸秀, 西本 安志, 香月 智
    2005 年 28 巻 p. 149
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    桁間衝突用ゴム製緩衝材の衝撃力低減効果を検討するため, 2本の鋼材による水平衝突実験を行った. この際, 桁間衝突は固有周期が異なる橋梁間, すなわち上部構造重量が異なる橋梁間で発生しやすいことを考慮し, 2本の鋼材質量が同じ場合と違う場合で鋼材に作用する最大衝撃力がどのような影響を受けるか, また, 重いものが軽いものに衝突する場合と軽いものが重いものに衝突する場合で, 差異が生じるかどうかを確認した. さらに, 実験パラメータとして緩衝材厚さと鋼材の衝突速度を選び, 鋼材に作用する最大衝撃力と緩衝材厚さ, 鋼材の衝突速度, および鋼材質量の間の関係について考察した.
  • 西山 誠治, 川満 逸雄
    2005 年 28 巻 p. 155
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    地下構造物の FEMを用いた静的解析として応答震度法がよく用いられる. 応答変位法のような地盤ばねの不明確さがなく, 地盤を含めた解析モデル全体に震度を与えるという荷重作用方法も比較的簡便で, 有用な手法である. その震度は, ある時刻の加速度分布から算定されるのが一般的である. しかし, 減衰の影響が大きい場合では, 加速度から求まる震度では十分な解析精度が保てないことがある. そこで, 地盤ひずみに着目した修正震度を定義し, この修正震度による応答震度法によれば精度が向上することを示す. さらに, 修正震度により求まる地震時荷重を, FEMを用いた他の静的解析手法の地震荷重と比較して, その位置付けを確認する.
  • 松田 隆, 佐藤 清
    2005 年 28 巻 p. 156
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    管状地中構造の液状化による浮上量予測を, 動的有効応力解析で行った. 解析対象は, 深さ25mの液状化層に埋設され, 土被り9.5m, 直径5mの円筒管体である. 解析の結果, 周辺地盤の過剰間隙水圧比が0.8を超えると浮上が開始し, その後, 加振加速度・変位・過剰間隙水圧の変動に大きく影響されず, 浮上が進行することがわかった. この浮上現象は, 周辺地盤が管体の下部に移動することによって生じ, 管体直下の液状化抵抗が重要であることがわかった.
    浮上対策工として周辺地盤の液状化対策工と管体とネイリング工を接合する方法を検討した. 地盤の液状化対策は, 上半より下半に行ったほうが効果的であり, 改良範囲の拡大によって浮上量を低減できることがわかった. ネイリング工も浮上低減に効果的であり, この場合も, 下半に打設したほうが効果的であること, ネイリングの剛性も浮上抑止効果に関与すること, などがわかった.
  • 福島 康宏, 石田 栄介, 細倉 摂央, 磯山 龍二, 中山 渉, 山崎 文雄
    2005 年 28 巻 p. 168
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2004年新潟県中越地震における被災地域の地盤情報, 地形情報を収集し, 地盤データベースを構築した. ボーリング地点について表層地盤の地震動増幅特性の評価を行い, これを補間することにより増幅特性の面的な評価を行った. この面的な増幅特性分布を考慮して中越地震の観測地点地震動を補間することにより, 面的な地表面地震動分布を作成した. また, 地形情報と地盤情報を基に地層断面図を作成し, 地震動分布と地層断面図の両面から, 地域の揺れの激しさの違いや被害程度の違いについて考察を行った.
  • 強震記録から地下構造物に被害をもたらす地盤ひずみを算定する方法
    鈴木 崇伸
    2005 年 28 巻 p. 169
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    地下構造物の耐震性評価には, 振幅と波長を工学的にモデル化した地盤振動が仮定されことが多いが, 既設のメンテナンス・補強のための耐震性評価となると, 過度の安全余裕は不経済となり, 現実に見合った地盤振動モデルが必要とされる. またリアルタイム地震防災の点からも, 地盤データベースとあわせて, 強震記録から地盤ひずみが算出できることが期待されている. これらの観点から, 本研究は, 地盤振動モデルと地盤ひずみの関連性について分析している. この報告では, 地中のひずみの周波数特性と増幅特性, Love波のエアリー相の周期と波長を計算する近似式について述べている. 最後にこれらの活用例について示している.
  • 佐藤 公平, 神山 眞, 谷井 恵
    2005 年 28 巻 p. 172
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    強震記録の初動部分におけるP波位相に注目して地盤の増幅スペクトルを抽出する方法について検討したものである. ここでは, 震央方向の水平動と鉛直動におけるP波位相にコサインテーパーのタイムウインドウを掛け, それぞれに対してMEMスペクトルを求めて, それからH/Vスペクトルを算定する. さらに, このようなH/Vスペクトルが理論増幅スペクトルと整合するように基準化を施す. 以上のような増幅スペクトル算定法をKiK-netの仙台観測点における強震記録に適用して, その地盤構造から求められる理論増幅スペクトルと比較したところ, 卓越周期, 増幅度ともによく一致することが確認された.
  • 篠田 昌弘, 澤田 亮, 松丸 貴樹
    2005 年 28 巻 p. 176
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    近年, 多くの研究機関で許容応力度法を用いた設計法から性能照査型の設計法への移行が進められている. ある限界状態の下で構造物の性能を照査する際には定量的な評価が必要となる場合があるが, それには現象を定量的に上手く表現でき, 且つ入力パラメーターの少ない実務的な構成則が不可欠となる. 本検討で用いた構成則は鵜飼・若井モデルを参考に骨格曲線と履歴曲線双方にHDモデルと同様な双曲線を適用した. また, 塑性ポテンシャルには鵜飼・若井モデルと同様にRoweのStress-dilatancy則を適用した. 構築した構成則を用いて非排水単調載荷と非排水繰返し載荷を行い, モデルの妥当性を検証した.
  • 吉川 卓, 大木 太, 浦川 洋介, 角本 周
    2005 年 28 巻 p. 177
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    我が国には多数の内陸活断層が存在するため, 全ての橋を内陸活断層を横断しないように建設することは事実上困難である. しかしながら, 活断層から発生する強震動に対する橋の耐震性能については多くの研究が行われているが, 活断層で生じる変位そのものに対する橋の耐震性能およびその向上策については十分な検討は行われていない. 本研究では, 中央径間100mのPC連続ラーメン橋を対象とし, 面内方向の断層変位と橋の損傷程度との関係を静的強制変位解析を用いて検討を行った. ここで, PC連続ラーメン橋の境界条件として, 橋脚基礎を固定とした場合と直接基礎の浮上りによる非線形性が生じる場合とを設定し, 基礎寸法等のパラメータが断層変位による損傷に与える影響について比較検討した.
  • 若松 加寿江, 松岡 昌志, 坂倉 弘晃
    2005 年 28 巻 p. 180
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本報告では, 筆者らが今回新たに構築した新潟地域の地形・地盤分類250mメッシュマップについて報告する. このマップを用いたハザード評価適用例として, 2004年新潟県中越地震を対象としてメッシュごとの液状化の発生危険度を計算し, 実際の液状化発生地点の分布と対比した. まず, メッシュマップに含まれる微地形区分などから, 深さ30mまでの地盤の平均S波速度 (AVS30) の分布を求め, さらに, 最大地動速度 (PGV) の増幅度に変換する. そして, 距離減衰式から求まる硬質地盤でのPGVに増幅度を乗じることで, 地表でのPGVを計算した. 液状化危険度予測は, PGVに基づいた微地形ごとの液状化発生クライテリアを用いた. その予測結果は, 2004年新潟県中越地震の際の実際の液状化分布地点の分布と概ね対応した.
  • 森 伸一郎, 和仁 晋哉
    2005 年 28 巻 p. 183
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2004年10月23日にマグニチュード6.8の新潟県中越地震が発生し, 初めて新幹線が脱線した. その原因を振動という立場から検討するために著者らは脱線区間に沿う地盤の常時微動測定を行った. H/V比による地盤の卓越周期と表層地盤の層厚の関係を明らかにした. 沖積層の卓越がH/V比の2次ピークに相当することがわかった. また, これらの点で1次元の地盤モデルにより地震応答を評価し, 加速度, 変位, 線路に沿う曲率などの応答を求めた. さらに, 被害の生じていない高架橋の応答も1質点系により評価した. 地震時の列車の位置を, 列車運転規則や乗員乗客の証言により推定した. これらに基づき脱線原因を考察した.
  • 富永 真生, 澤田 亮
    2005 年 28 巻 p. 184
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    液状化による盛土被害の大部分は, 盛土の支持地盤が液状化することによる盛土全体の沈下に代表される. 既存の対策工では液状化地盤に対して広範囲で大規模な対策が必要であり, 供用後の鉄道盛土に対する適用は困難な場合が多い. 本研究では既存の対策工に比べて鉄道近接条件における施工性, 対策範囲の自由度などで有利な薬液注入工法による対策を中心に, 小規模で効果的な対策工を検討することを目的としてせん断土槽を用いた模型振動実験を実施し, 液状化程度の指標として盛土支持地盤のせん断剛性の低下に着目した沈下抑制効果の評価を試みた.
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