理学療法のための運動生理
Print ISSN : 0912-7100
8 巻, 2 号
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  • 大町 かおり, 岩月 宏泰, 岡戸 真由美
    1993 年 8 巻 2 号 p. 67-70
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    片麻痺患者18例を対象に3分間の自由歩行をさせた際の心拍数の変化からphysiological cost index (PCI)を算出し、10m歩行の所要時間、立ち上がり動作時の心拍数変動との比較を行った。
    (1)PCI値は片麻痺群が健常群より有意な高値を示し、立ち上がりの回数、10m歩行終了直後の心拍数と安静時心拍数との差(ΔHR1)と有意な負の相関を認めた。
    (2)10m歩行の所要時間は片麻痺群が健常群より有意な延長を示したが、ΔHR1では健常群が片麻痺群より高値を示した。
    (3)立ち上がりの回数は健常群68回、片麻痺群55回と健常群が有意に多かったが、心拍数の変化は両群間で差を認めなかった。また持久指数は健常群が片麻痺群より有意な高値を示した(P<0.05)。
    (4)10m歩行の所要時間は各運動負荷で測定された指標と有意な負の相関を認めた。
    以上のことから10m歩行、立ち上がり動作が実用的な運動種目であり、所要時間、立ち上がり回数および心拍数の変動が指標として有用であることが認められた。
  • 岩月 宏泰, 石川 敬
    1993 年 8 巻 2 号 p. 71-74
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    慢性期脳血管障害患者(CVD)62名と健常者20名を対象として、Holter心電図を装着し、24時間の心電図RR間隔、QT比の日内変動を検討した。両群ともRR間隔は日中が短く、夜間にかけて延長の傾向を認めた。QT比はCVDが全ての時間帯で健常者より有意な高値を示し、正午にピークを認めた。QT時間の延長は致死的心室性不整脈発生の前兆と考えられており、運動によって誘発されることから、早朝から正午にかけてCVDに運動を行わせる際には、充分な観察が必要であることが示唆された。
  • 堀 秀昭, 島田 政則
    1993 年 8 巻 2 号 p. 75-78
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    呼吸筋トレーニングの有効性を調べるために、健常人30名と頸髄損傷者3名の、深呼吸訓練、スーフル訓練及び腹部重錘負荷訓練の横隔膜筋電図と呼吸パターン(Ttot、TI、TE、TI/Ttot)を測定した。深呼吸訓練時よりスーフル訓練時の横隔膜筋活動は、頸髄損傷患者で増加傾向を示し健常人で有意に増加した。腹部重鍾負荷訓練の横隔膜筋活動で、頸髄損傷患者は健常人より有意に低下していた。またTtotは、健常人及び頸髄損傷患者とも安静呼吸と比べ、深呼吸訓練で延長していた。TIは、頸髄損傷患者のスーフル訓練時で延長しTI/Ttotが50%以上となった。
    以上の結果より、頸髄損傷患者の場合、呼吸筋トレーニングとしてスーフル訓練が腹部重錘負荷訓練より有効であった。
  • 篠原 英記, 市橋 則明, 吉田 正樹
    1993 年 8 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    伝導性温熱療法手段が生体の筋の伸張性に効果があるか否かを検討するため、健常人16名の大腿部後面に湿性ホットパックを施行し、他動的SLR時の股関節角度を測定した。その結果、今回の温熱療法手段では筋の伸張性に対する効果がみられなかった。ホットパックの臨床使用にあたっては、その使用方法の簡便さから安易にそれを使用する傾向にあるが、その効果をより明確にするとともに、他の物理療法手段との効果の比較を検討する必要性が示唆された。
  • 吉村 茂和, 関根 正幸, 岡本 浩美, 林 泰史
    1993 年 8 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    健常成人8名に片脚立位で膝折れ状態を生じさせ、できるだけ無意識的に制動をかけ、動作を制止させた。その時の膝関節の経時的な角度変化と膝伸展筋力で体重を支持するという観点から膝折れ状態を分析した。膝折れ開始時点から膝折れ終了までの時間が、422 ±4.2 msec、終了時点の膝角度が58±5.4°という非常に短時間で、ほぼ一定の経過時間と膝角度を示していた。また膝折れ終了角度は、膝伸展筋力が強く、筋活動が最も活発な膝角度と一致していた。
    膝折れ中の制動は、膝折れ開始から150msec,膝角度が30°以上で認められ、その時の膝角速度はほぼ280DPSであった。膝伸展筋の等速性筋力は、膝折れで制動が開始される角速度と膝角度で相対的に高いトルク値を示し、膝折れに制動をかける上で好都合であることが示唆された。
  • 篠田 規公雄, 岩月 宏泰, 新井 祥司, 石川 敬, 金井 章
    1993 年 8 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    転倒によって骨折した高齢者(78名)を対象に骨折の特徴、転倒時の状況を調査し、転倒を誘発する因子について検討した。
    1)対象者の男女比は1:2.8と女性が多く、骨折部位別では、大腿骨頸部が52.6%と最も多かった。
    2)循環器、神経、運動器疾患などの合併症を有した者は85.0%であった。
    3)転倒原因は段差があった、他に気を取られた、滑ったなどの周囲環境に対する注意力低下によるものが多かった。
    以上のことから、高齢者の転倒発生率を低下させるには、日常の活動性を高めることと、環境設備を行うことが重要と考えられた。
  • 寺本 喜好, 臼井 永男
    1993 年 8 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    直立・二足歩行をとるヒトの姿勢は、身体の中心部に位置する骨盤と腰部の設定の仕方によって、前後、左右、上下に重心変動が生じ不良姿勢を招く一要因になることが考えられる。
    本稿は、過去2.5年間の通院患者を対象に、腹臥位の骨盤、腰部の縦横傾斜角を計測して、不良姿勢のうち、その捻転傾斜の発生頻度と要因に関して検討した。その結果、骨盤、腰部捻転の発生頻度は高く、共に右捻転が多く、捻転には有意な関係がみられた。また加齢によって骨盤、腰部は共に水平位が減少し、左捻転の増加する傾向がみられた。形態的には、仙骨の捻転傾斜による仙腸関節での関節変位が一つの要因として示唆された。
  • 神先 秀人, 依岡 徹, 中村 実, 高木 寛, 飯田 寛和
    1993 年 8 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    脚長差が歩行パラメータに及ぼす影響を,主に運動力学的手法を用いて検討した.4名の健常成人を対象に,左側下肢に1cm~5cmの補高を行い,フォースプレート上を歩行させた.得られた速度因子,時間因子,床反カデータ,およびそれらから算出される重心移動幅,重心動揺体積,進行距離当りの重心の仕事量に関して二元配置分散分析を行い,脚長差と個人差による影響を調べた.
    歩行の速度因子や時間因子は,脚長差の影響を受ける可能性が示唆されたが,変化率は少なかった.
    脚長差の重心移動に及ぼす影響が明らかと考えられたのは垂直方向のみで,移動幅は脚長差5cmの増加に対して約3cmの増加を示した.進行距離当りの重心の仕事量は脚長差4cm以降で著明な増加を示した.脚長差3cmまでは,歩行の機械的効率性への影響は極めて少ないと考えられた.
  • 安藤 正志, 黒澤 和生, 丸山 仁司, 小坂 健二, 山西 哲郎, 磯崎 康明, 金子 好文
    1993 年 8 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、歩行速度を最も速くする歩幅を探ることと歩幅を変化させたときのエネルギー消費量を確認することである。最大速度となる歩幅の検出には健常男子10名(mean age 23.1歳,平均身長172.7cm)を対象とした。10m直線路を、(1)歩き易い歩幅(free step) (2)歩幅を短く(short step) (3)歩幅を長く(long step)の課題に従わせて全速力で歩行させた。歩行速度は、free stepが最大値であった。%歩幅(step length/height)と速度との関係では、歩幅を長くすると速度も早くなるが、身長の約70%以上では速度は一定であった。以上のことより最も早い速度で歩行するためには、身長の約70%の歩幅が適することが確認できた。一方同じ速度であっても歩幅を大きくすればするほど酸素摂取量は増加し移動の経済性としては効率の悪いことが確認できた。
  • 山田 彰, 稲田 里美, 斎藤 恵美, 増田 芳之, 豊倉 穣, 村上 恵一
    1993 年 8 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    今回我々は、健常者を対象にLEMを用いた等尺性体幹伸展筋トルク値(以下トルク値)の測定を行い、性差・腰部屈曲角度(以下角度)の影響、さらに6週間の体幹伸展筋筋力強化訓練を通して、そのトルク値の変化を継時的に検討した。結果は以下の通りである。
    (1)女性より男性の方が、また腰部屈曲角度が大きいほどトルク値が大きくなる傾向が認められた。
    (2)6週間の訓練終了時、トルク値は有意に増大していた。この時も(1)と同様、屈曲角度が大きいほどトルク値は大きかった。しかし、トルク値の増加率はかなり個人差があり、測定角度との関係は必ずしも明確でなかった。
    (3)訓練終了6ヶ月後に再検すると、全ての角度で有意に減少していた。
  • 柴田 義貴
    1993 年 8 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 1993年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    医学雑誌論文の読み方について解説した。査読の有無に関わらず、医学雑誌に掲載された論文は批判的に読む必要がある。構成抄録は読み方の手がかりとして重要である。文献評価とは論文の表現におけるバイアスをみきわめながら、一次データと二次データの収集、評価、統合過程においてバイアスがないかをみきわめることであり、同時に評価する側のバイアスをもみきわめ、軽減する努力である。
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