アニーリング処理を施した水素化非晶質シリコン膜の特性は,アニーリング時間の経過と共に膜内での欠陥とかトラップの分布状態が変化するとか,膜内に含まれる水素量が減少する事が原因となって変化する.そして,その特性変化の傾向は,アモルファスシリコンの網目構造とか,Siと水素との結合様式に大きく依存していると考えられる.
この考えを立証する目的で,種々のスパッタ条件で製作したa-Si:H膜を,150℃から350℃まで50℃置きにアニーリングし,各段階での累積効果を測定した.アニーリングの初期段階では水素濃度と光学的バンド幅が次第に減少する.そして,この傾向は不安定に結合している水素がアニーリングによって基板から逸脱することによる影響が低温基板の場合ほど大きいので,基板温度が低くなるほど顕著となる.
アニーリング過程での電気的ならびに光学的特性変化の測定から,アニーリング処理の効果は中温アニーリング領域の基板温度近辺の加熱では,膜自体の特性あるいは構造によっているばかりでなく,また膜中の欠陥とかトラップの再配置にも依存している事が観測された.
更にアニーリングの最終段階の高温アニーリング領域では,ほとんど全ての水素が膜から逸脱するため未結合手が増加し,それにともない局在準位が急増する効果が見られる.
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