デザイン学研究作品集
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選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
  • 木村 知世, 高村 是州
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_2-1_7
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    本研究ではティーンのファッションに対する関心を高めるため、ティーンをターゲットとしたファッション画入門書の企画、開発を行なった。従来の被服造形の知識を必要とするファッション画教育を踏襲しつつ、それらの知識を有しない初心者でも取り組むことができるよう、多角的にファッションを捉えその表現方法を体系化していくところに新規性を見出した。全体を通して図版を多用することでプロセスを段階的に提示し、更に能動的なデザインワークも取り入れることでティーンが楽しめるような構成でまとめた。制作した作品は実際に出版されるに至った。また本書の内容を用いて実施したワークショップでは肯定的な評価を得ることができ、今後の発展が十分期待できると捉えている。

  • 藤木 淳
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_8-1_13
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    任意の立体モデルに対して鑑賞者が見る方向に応じて立体モデルの表面色が変化してみえる表現手法を開発した。立体モデルの表面に設けた窪みに視線方向を考慮した着彩を施し、全球レンズを埋め込むことで、全球レンズのレンズ効果により窪み内の視線方向に応じた一部分が拡大して見える原理である。本表現手法を効率的に任意のモデルに適用可能とするために、モデルの3Dデータに全球レンズを埋め込むための窪みを空け、視線方向に応じたイメージ画像から色情報を付与するプログラムを開発した。この3Dデータをフルカラー3Dプリンタで出力し、窪みに全球レンズを埋め込むことで、上記の効果を持つ立体モデルが得られる。球型のモデルと人型のモデルに対して本手法を適用した結果、意図した効果が得られることを確認した。

  • 空間スタディのためのARアプリケーション
    赤羽 亨, 今谷 真太朗
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_14-1_19
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    「Kiosk AR」は、既存の仮設空間デザインツールをベースとした空間設計の過程で使用するARアプリケーションである。このアプリケーションを用いることによって、実寸大での空間的スタディ=「ARスタディ」を行うことができる。このアプリケーションを用いた対象空間で繰り返されるARスタディを通した設計プロセスは、使用目的に応じた空間構築を実現するという、Kioskデザインシステムが持つ利点を、さらに強化する。
    本論では、この「Kiosk AR」の基本的機能と使用方法を示すとともに、このアプリケーションを使用した展示設計のワークショップとシェアオフィス設計の事例について記す。これらの事例から得られた考察を通して、模型や3DCGなどのスケールモデルでのスタディでは困難だった、フルスケールモデルによる「ARスタディ」が実現され、実際の設計プロセスに適用可能であることを示す。

  • まちづくりを空間化する建築
    伊藤 孝紀, 高橋 里佳, 福島 巧也
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_20-1_23
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    愛知県蟹江町に位置し、土木資材であるカルバートを用いて公園のように、まちに開かれた建築をデザインした(図1)。地元の子育て団体などとWSをおこない必要とされる機能を抽出し、ベーカリーやカフェ、コインランドリーに加え、砂場など子ども達が集い、自由に遊び回れる空間を提案した。
    建設会社のサテライトオフィスとしての役割を担い、周辺住民との交流や子ども達に土木の技術を知り、体験してもらう場にもなる。若手パン職人の独立支援となるシステムや近接する河川環境との共生する仕組みなど、まちづくりの活動に寄与する建築を目指している。
    with/after コロナで望まれる、店舗(民地)の賑わいが軒先から歩道や公園(公地)に滲み出す、まちづくりの空間(ウォーカブル推進)のように、土木環境を建築空間に転化する試みである。

  • 万 年, 山﨑 宣由
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_24-1_29
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    竹の成長力が周辺環境を蝕む問題である「竹害」も深刻化している。伝統的な竹工芸品は単なる生活道具だけではなく、長い歴史を経て伝承されてきた文化でもある。竹材の加工技術は主に手芸産業であり、編む技術も人類の手のできる範囲に限られている。
    本研究は、伝統竹工芸をユニット化して基本構造を抽出し、レーザー加工技術を使って継ぎ手(パーツ)をデザインすることによって編む技術の必要性を省いている。竹編みを簡単に、また自由に、組み合わせたり、外したりすることができるフレキシビリティを実現することで、さらに創造する自由性が得られると考えられる。本来用途が限定されていた竹編組だが、より多様な可能性を得ることになる。
    この研究は現代の生活経験における竹の新しい価値を追究する。

  • ジャロンキットカジョン ポッサナン, 中野 仁人
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_30-1_35
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    現代の親が抱える一つの問題は、子供たちが長時間ガジェットに向かい、コミュニケーションが希薄になることである。落書きは子供の発達に役立つだけでなく、家族との交流の機会を増やすことができる。本研究では、子供向けに落書きができる壁紙として設計された「クリクリおめめ」というデザイン手法について解説する。本手法においては、消費者の嗜好を分析するためのワークショップを実施し、その結果に基づいて作品プロトタイプを制作した。最終的に、このデザインは「サンゲツ壁紙デザインアワード2021」において優秀賞を受賞した。授賞式の審査において、商品化される可能性があるデザインであることが証明された。

  • 反射光色によるキネティックライトアート
    児玉 幸子
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_36-1_39
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    格子の裏側に取り付けたフルカラーLEDを奥行き方向に照射して、LEDからの反射光の色と輝度を制御するキネティックライトアート「格子窓シリーズ」のデザインと制作を行った。オブジェとしての格子はLEDからの反射光と結びつき、オブジェであると同時にイメージを表示するメディアとなる。窓の奥の空間を雲のようなイメージが動く《雲の路》、異なる光色を幾何学的に配列し、周期的に変化する《Meeting》、シンボルがゆっくり現れては消える《Invisible Heart》《うさぎ》《髑髏》などの作品を制作し、国内6つの展覧会で展示し、格子の裏側からの反射光を利用した動くぼやけたイメージと、光と物質、空間とを結びつけるメディアアートの可能性を示した。

  • 生活創生に寄与するコミュニティドキュメンタリー映画
    孟 晗, 青木 宏展, 植田 憲
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_40-1_45
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    ドキュメンタリー映画「もうひとつの明日へ」は長野県上田市の市民団体蚕都くらぶ・ま〜ゆはじめ、千葉大学デザイン文化計画研究室の学生、映像制作の専門家、上田市の行政など多様な主体が協働的に推進した「コミュニティドキュメンタリー」のデザイン実践の成果品である。本稿は、当作品の企画、撮影、編集、宣伝、集金、上映の各段階において得られた知見を報告するとともに、上映会において収集した質問紙調査の結果の分析を通じて、本作品制作における実践を評価し、内発的生活創生に寄与するコミュニティドキュメンタリー映画制作の指針を導出することを目的とする。

  • 杉本 美貴, 城川 真実
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_46-1_51
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    「『侘び』を表現するための造形手法に関する研究」の第1稿で導出した造形手法に基づき、工業製品の外観デザインとして電気ケトルを、ユーザインターフェース(以下、UI)デザインとしてスマートフォンの画面を製作した。本稿ではそれらの作品を用いて、侘びの美意識を表現する造形手法の妥当性や応用可能性を確認した。
    有識者へのインタビュー調査と、ユーザへのアンケート調査を行った結果、本作品によって、導出した造形手法を利用することで工業製品の外観だけでなく、侘びとは結びつきにくいイメージがあるUIデザインでも侘びの美意識を表現できることが示された。一方、ユーザの侘びの理解度により侘びの美意識の感じ方に差が出たが、侘びの理解度に関わらず日本らしさは伝わることがわかった。

  • 杉本 美貴, 本松 優花, 嶋村 由莉亜, 柴田 真衣, 武谷 歩美, 張 端壮, 大友 聡, 岡本 和士, 手槌 りか
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_52-1_57
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    本作品は、地域企業、地域活性化に向けた様々な活動を行なっている大手企業(株式会社良品計画)、大学による産学連携授業の成果である。学生たちが、地場産業や伝統工芸の技を活かし、無印良品のものづくりの考え方を取り入れ、地域企業が無印良品を巻き込みながら販売・訴求できるデザインを実現した。
    本作品は2022年6月に「無印良品 天神大名」(福岡市)で行われたイベントで展示し、商品化されたものについては販売も行なった。本プロセスは、地域企業にとっても、地域との連携を進める大手企業にとっても、大学の実践的なデザイン教育の場としてもメリットがある。また、地場産業の伝統技術に無印良品のものづくりの考え方を取り入れ、自由な発想の学生がデザインすることで、地域企業が訴求力のある商品の企画から販売までを実現できるモデルを提示した。

  • 「関与」の形を探る実験的デザインリサーチ
    柴田 吉隆, 金田 麻衣子, 白澤 貴司, 神崎 将一, 的場 浩介, 大石 諸兄
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_58-1_63
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    地域で使われるインフラは、その実証において技術的な特徴ばかりに注目をしてしまうと、実証後に地域に定着させていくことが難しくなることがある。本作品では、インフラが地域に定着していく上で必要な要素として、インフラが利用者に直接的に提供する機能ではなく、利用者自身に変化をもたらす「関与」の考え方を参考にして、これからの地域のインフラが担うべき役割について探索した。神奈川県三浦地域で、地域の方との交流から得られた「関与」についてのインサイトを体験可能なプロトタイプとして表出し、そこからフィードバックを得る実験的デザインリサーチを継続的に行った。3年間の活動で、一人の農家、農家とレンタカー事業者、鉄道事業者と共同で3つのプロトタイプを制作・実証し、結果としてインフラが地域に「関与」をもたらす3つの型を得た。

  • 繁里 光宏, 島 英紀
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_64-1_69
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    スーパーマーケットにおいてPB(プライベートブランド)商品は、地域における顧客の要望を反映させやすい、価格設定が自由に行なえ粗利益率が高いなど、多くのメリットがあり、その市場規模は年々拡大している[注1]。
    中京エリアでスーパーマーケットチェーンを展開する本プロジェクトのクライアント(A社)は、自社PB商品を顧客の要望反映や安心安全へのこだわりを持って展開してきたが、PB商品に対する顧客の認知度は高くなく、そのため商品も単なる低価格商品と見られており、PB商品のデザイン刷新による商品・ブランドイメージ向上が求められていた。
    本プロジェクトで私は、ディレクターとしてデザイン戦略を監督すると同時に、共著の島と共に全てのグラフィックデザイン実務を担当しながら、ブランドイメージ向上と商品の品質を適切に顧客に伝えるために、PB商品群全体のデザインをブランド価値の明確化と顧客調査を基盤に実施した。そしてその結果として商品の売上げ向上と共に、顧客のブランドやPB商品の認知度とイメージ向上に貢献した。

  • 蛭田 直, 中村 友音, 金井 千花野, 手塚 舞衣, 日本放送協会 長野放送局
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_70-1_75
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    本作品は、信州大学とNHK長野放送局の産学および地域連携の共同研究として実現したNHK長野放送局開局90周年記念ロゴマークのデザインである。開局の節目を記念しながら、継続的かつ発展的な使用ができる地域放送局のロゴマーク開発を目的としている。
    開発方法として、5段階から成る制作方法を考案し実践した。結果として、3つのデザイン案の制作をおこない、長野県を象徴する雷鳥と水引をモチーフとしたロゴマークの完成に至った。
    本作品の実践により、関係者とデザインの経験が浅い学生を中心としたデザインプロセスにおいても十分なオリジナリティを発揮した作品制作である知見を得たので、本稿にて詳細を述べる。

  • 金 尚泰, SHAO Bochao
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_76-1_81
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    近年、COVID 19の世界的流行によりオンライン授業やテレワークが一般化される中、長時間のVDT作業による様々な健康への悪影響が大きな社会問題として浮上している。先行研究からは、長時間VDT作業による筋肉や骨格系の損傷に対する研究や集中時の静的時間と正しくない姿勢の相関関係・筋骨格障害リスクへの影響に関する研究がなされており、その危険性を示唆している。本研究では、VDT作業による身体への負荷の軽減・正姿勢への誘導支援を軸としたリアルタイムサポートシステムを試みた。本研究で開発したシステムは、普段のVDT作業で使っている計算機上、作業画面内に透明レイヤーとして常駐させることでユーザの動きを検出、適切な指示を促す役割を果たす。特徴としては、必要な時のみ出現する認知負荷の低いHCIと機械学習による傾向把握によって普段の仕事に違和感なく、ユーザに対し、気軽に姿勢認識・改善を促す。ウェブカメラとAPPインストールのみで使用可能状態にすることで、低コストのVDT症候群対応デジタルセラピーシステムとしては有効であると考えている。

  • 倉地 宏幸
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_82-1_87
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    本稿は、筆者と順天堂大学医学部 総合診療科学講座 森博威准教授の共同研究『医療機関で使用できる低コストの簡易フェイスシールドの普及に向けた研究および開発(2020年)』において、筆者が行った設計およびプロトタイピングから製品化までのプロセスを報告するものである。
    2020年3月頃からのCOVID-19感染症拡大の影響で、日本国内で医療物資の供給が滞る状況下、筆者は、当時注目された3Dプリントによるフェイスシールド制作の問題点を克服するために、従来の技術やリソースを活用した安全かつ短期間で安価に大量生産できる設計を考案し、ラピッドプロトタイピングを繰り返して短期間で製品化につなげた。
    本稿では、専門家や医療関係者の指摘をもとにデザインを改良して製品化に至った一連の動向を報告し、更に医療現場で今も必須のPPEであるフェイスシールドのバリエーションに対する需要について述べる。

  • 久保田 陽子, 山田 香織, 田中 隆充
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_88-1_93
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    株式会社北舘製麺の蕎麦パッケージに関する研究である。2020年に20~30代の女性をターゲットとしてリニューアルした蕎麦等5製品のパッケージデザインを基に、2021年に高価格帯2製品「八割そば」「更科そば」のリニューアルを行った。先行5製品のパッケージデザインを踏襲しつつ、贈答用の高価格帯製品に相応しいパッケージにすることと、2製品の区別化を図ることが課題であった。その為、毛筆ロゴと配色について実験を重ね、結果を基に製品パッケージを制作し、最後にSD法による評価を行ったところ、制作者と購買者のイメージが一致し、課題を解決するに至った。

  • 工芸における共創と10年の変遷
    山口 光, 松沢 卓生, 藤田 洪太郎
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_94-1_99
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    日本国内の伝統工芸・伝統産業を維持するためには、受け継がれてきた素材とその製法を保全することが必要である。本研究では、日本産の素材(以下 国産材)を活用した伝統工芸に着目し、異素材のコンビネーションによる相乗効果を狙って、食器のデザインをしている。
    2012年4月より2022年8月現在まで、国産材を使用している浄法寺漆(岩手県二戸市)と萩ガラス(山口県萩市)の連携による工芸品、Urushito Glass(ウルシトグラス)をデザインした。2013年度の発売以降、同年にグッドデザイン賞を受賞し、2016年には、日本の地方産品を世界へ発信するThe wonder 500にも選定されている。
    社会動向と販売実績を考慮しながら新商品を検討し、デザイン活動を継続している。本稿は、開発開始から10年間のデザイン・ディレクションにおける、開発・展示・販売などの記録である。

  • 鶴野 幸子, 秋月 勝久, 生島 あみ
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_100-1_103
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    本作品は、高性能で環境にやさしい靴用の脱臭グッズで、株式会社博有が開発した新素材の脱臭フィルターを使用し、近畿大学(福岡キャンパス)鶴野研究室が依頼を受け、デザインしたものである。両者が所在する旧炭鉱地帯への地域貢献を念頭に、地域内の障害者施設、就労継続支援施設で生産が可能になるように製造工程に配慮している。特徴として、本品は1形状1サイズのみであるが、簡単に形状(巻き方)を変えることで、幼稚園の年中クラス程度から成人男性の靴まで対応している。さらに形状が可変であることで、脱臭効率も良くなる。靴用であれば半永久的に使用できる脱臭フィルターなので、子供が成長してサイズが大きくなっても、長年の間に使用者が変わり靴のサイズが変わっても問題なく使用できる。造形的には不必要なものをすべて取り除き、極めてシンプルで、機能性だけを残した。

  • 日本初の雨水飲料
    近藤 晶, 笠井 利浩, 三寺 潤
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_104-1_107
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    本作品あまみずドリンクは日本で初めてとなる雨水を原料としたボトル飲料である。
    本作品開発の目的は雨水が持つ汚いなどの印象を変化させ雨水を水資源として新たに捉え直す機会を与えることである。そのため、試作や検証を繰り返しターゲットユーザーにふさわしいラベルデザインの開発や海外展開も見据えた訴求力の向上に努めた。
    その結果、図1のあまみずドリンクが完成し、広報を行った結果として複数のメディアに取り上げられた。SNS等の評価も合わせて十分な話題性や雨水の信頼性向上につながる取り組みである。

  • 見立て観察と協創を連動させたアイデア生成経験学習プログラム
    福田 大年, 荒俣 蓮
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_108-1_113
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    本作品は、デザイン初学者の創造力向上を目指し、見立て観察と協創を連動させたアイデア生成経験学習プログラム「まちもじハント」である。「まちもじ」とは、身の回りにある文字もしくは文字に見立てられる全ての物を指す。「まちもじハント」は、野外の風景から平仮名を見立てて採集する「見立て観察」と、観察結果を他の参加者と見せ合い、互いの視点の違いを協創的に学び合う「発表会」を繰り返す。
    本稿では、見立て観察の過程で発生する現象に着目して、学生らが採集した「まちもじ」を分析した。その結果、「まちもじハント」は観察と協創を繰り返すことで、既存の要素の収集と再構成を経験的に学習する過程であることが分かった。したがって「まちもじハント」は、アイデア生成経験学習の初期段階に寄与できることが示唆された。

  • 「子どもの権利」に根ざしたデザイン
    田北 雅裕, 原田 祐馬, 高橋 めぐみ
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_114-1_119
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    里親家庭で暮らしている里子や実子、そしてこれから里親家庭で暮らす子どもを支えるためのツール「フォスタリングカードキットTOKETA」は、子どもが里親家庭を理解する過程において対話の機会を創り、子どもと支援者との信頼関係の醸成および安心できる場の形成を目指したカードキットである。3種類のカードおよびその手引き等から構成される。カードキットとしてデザインした理由は、子ども家庭福祉の観点から、子どもの意見表明権に代表される「子どもの権利」の保障を目指したことによる。近年、福祉分野において、課題解決を目指してデザインが活用される局面が少なくない。その際に、当事者の権利から如何にデザインを実装していくのか、その手法的事例を示せたと言える。

  • 田上 知之介
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_120-1_123
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    福岡県東峰村の基幹産業である小石原焼・髙取焼は、伝統を守りながらも変化を柔軟に受け入れ、新しい取り組みに挑戦し続けてきた陶磁器産地である。そうして350年以上もの間、産地として継続してきた。窯業と暮らしが融合する特有の産地構造において、器に用いる素材はどうすべきか、生産方法や生産技術はどうするのか、何をつくるのか、誰がつくるのか。そして、それらの選択が産地の将来にどのような影響を及ぼすのかを見据え、デザインに取り組んだ。本作品は、福岡県東峰村の地域再生計画事業の一環として2021年度に参画したプロジェクトの成果である。小石原焼陶器協同組合による窯元の共同ブランド「Co-ishiwara」を立ち上げ、家族をテーマとした新製品「小石原百碗」を、同組合の7窯元と共に完成させた(図1)。また、成形技法に「型おこし」を用いたプレートのデザインを提案し、今後の産地の方向性を提示した。

  • 村井 陽平, 川島 洋一
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_124-1_129
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    福井県坂井市に本社がある株式会社三和商会(後に本事業のために株式会社ネクアスとして分社化)から依頼を受け、2021年度に同社と共同でイベント用トレーの商品開発を行った。主に山間部で盛んに開催されている大型野外音楽イベントなどで、食事のために用いるトレーである。イベントの開催後に、観客によって野山に放置されるゴミを社会問題として扱ったニュースが本商品着想の出発点となった。本商品は、酢酸セルロースをベースとした生分解性樹脂を使用しており、土中でも水中でも生分解することから、現代社会で要求される環境問題に対応したイベント用トレーとすることを商品開発上の目的とした。先行商品の研究を経て、できるだけ使用する樹脂の量を減らす形状を追求し、環境負荷と原料コスト削減の両方の課題に応える解決策を見出した。

  • 池田 美奈子, 田上 健一, 秋田 直繁, 石井 達郎, 伊原 久裕, 大井 尚行, 尾本 章, 工藤 真生
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_130-1_135
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    35年にわたりアフガニスタンとパキスタンで医療・人道支援に尽力し、2019年12月に銃弾に倒れた中村哲医師(1946-2019)の業績を象徴的に伝える展示空間「中村哲医師メモリアル・アーカイブ」(以下「メモリアル・アーカイブ」)が、2021年3月に九州大学中央図書館内に設置された。九州大学が推進する「中村哲先生の志を次世代に伝える九大プロジェクト」(以下「九大プロジェクト」)の一環で構想され、中村医師の著作などの文献を収集・デジタル化して保存・公開する「著述アーカイブ」と教育プログラム「中村哲記念講座」とともにプロジェクトの3本柱を構成している。
    本論は「メモリアル・アーカイブ」について、設置の経緯とコンセプトを解説するとともに、展示空間を構成する映像、グラフィック、プロダクト、照明・音響の各要素のデザインを記述し、最後に各デザイン分野が融合して創出された展示空間が「著述アーカイブ」および「中村哲記念講座」とどのように相互作用し、活用されているかを踏まえ、総合的な展示空間デザインのあり方を考察する。

  • 村田 真美, 大町 彩依, 矢野 凌佑, 大草 真弓
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_136-1_141
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    日本国民の選挙への参加率は低い。特に若者の政治への無関心・政治家への不信感は著しく、2021年の衆議院議員総選挙での20代の投票率は約36.5%と、60代の約半分まで低下している。若者が政治に興味や関心を持ち選挙へ足を運ぶきっかけが必要である。
    私たちは、日頃「政治家の不祥事」報道にばかり触れていることが若者の政治不信の要因の一つなのではないかと捉え、政治家の多様な活動と国民との対話に注目してワークショップをデザインした。「①知る活動」ではファシリテーターの説明で政治や選挙に関する問題意識を共有し、ロールプレイの下準備としてオリジナルの政治家を考えてもらう。「②感じる、楽しむ活動」では政治家と国民の双方の本来あるべき関係性をカードゲームで体験してもらう。「③考える活動」ではテーマを設定して各政党の政策を提示し、自分自身の考えに近い政党を選んでもらう。一つのワークショップで政治家、国民、自分自身の三者を体験できる構成である。
    プロトタイプによる5回の模擬ワークショップで調整を重ねた後、完成したプログラムで大学生と高校生を対象に2回の本番ワークショップを開催した。アンケートの結果、過半数以上が政治に興味を持ったことが分かった。持投票に行くきっかけになったと答えた人が68.8%と半数以上であったことから私たちのワークショップは政治への関心を高めるために効果的であると考える。

  • -豊かなあそびを促すためのデザイン-
    小宮 加容子, 細谷 多聞
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_142-1_147
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    「誰もが楽しむことができるあそび」に必要な6つの条件を満たしたあそびとして「けいとでおえかき」がある。これは参加者がネットに毛糸を絡めるあそびである。本論文では、あそびを作品に展開することの可能性を検証するために、異なる展開手法によるあそびを実施した。夕張市(2021年12月)では、あそびの痕跡を作品制作の素材として活用する“あそびを作品へ展開する手法”を実践した。それに対して、札幌駅商業施設paseo(2022年6月)では、作品自体をあそび場として活用する“あそびを作品へ展開する手法”を実践した(図1)。その結果、あそびの時だけでなくあそびの後も、楽しかった気持ちや作品への想いを自分自身で振り返ったり、他者へつなげることができ、よりあそびを豊かにすることがわかった。これらの手法を応用することで、時間を隔てた参加者の交流を設計することができると考える。

  • 原 寛道, 浦上 貴一, 北嶋 将人, 北沢 真理愛, 鬼澤 美雪, 佐藤 宏樹, 宮前 太一, 今泉 博子
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_148-1_153
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
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    人々の暮らしにおいて働くことは極めて重要な行為である。近年、暮らしを充実させる創造的な働き方がつよく求められている。しかし、そのための家具は十分に開発できていない。本デザイン開発では、働く場において創造的活動は、主体的に自分の環境をよりよく変えることで可能性が高まると捉え、空間を変化させ自らが活動しやすい場を生み出す家具のデザイン開発を行った(図1)。
    1年以上にわたる利用検証では、デザイン提案した家具を活用することで、多様な創造的状況が発生することを確認できた。このことで、可搬性が高い家具による場づくりの効果が高いことが示された。

  • 萩原 大棋, 氏原 陸大, 黒見 駆, 髙野 修治, 禹 在勇
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_154-1_159
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル 認証あり

    近年の傾向として国内の主要観光地では飽き足らず、地方部の自然鑑賞や文化体験などの「コト消費」を求めるインバウンド観光客が増加している。このような観光客に対して、免許も不要で地方部の観光を目的に応じて移動できる移動手段を提供し、2次交通の利便性を向上させることが考えられる。
    本稿では、山梨県北杜市と湘南工科大学の官学連携プロジェクトにより、山梨県と長野県に跨る中部高地に点在する縄文史跡を周遊するツアーの移動手段として開発した「自然環境の保護やカーボンニュートラルに貢献し、自然環境の中でゆったり楽しみながら安全でかつ移動に疲れにくい電動アシスト四輪自転車」について紹介する(図1)。

  • 議論の回想を鮮烈にするORAPHICレコーディングの試み
    横溝 賢, 高畠 栞
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1_160-1_165
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/15
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    多様な専門家の協働によって複雑化する社会問題を解決する機会が増えている。この協働における経験や出来事、議論を視覚化する手法としてグラフィックレコーディング(以下、GR)がある。参加者の発言や行為、その時の表情を視覚化したGRは振返りの道具として活用されてきた。共著者の高畠は、映画やゲームの体験において消化しきれない一瞬の心の動きを殴り書きで記録し、体験後に見返す習慣があった。高畠にその動機を尋ねると、リアルタイムで描かれた殴り書きには、出来事を見た瞬間の感覚や情感(以下、情動)を鮮烈に喚び起す効果があるという。筆者らはこのような情動を見える化する殴り書きの記録手法が協働的な活動の振返りに活かすことができるのではないかと考え、行政や学術団体での協議の場において、殴り書きレコーディングの実践を試みた。その結果、この手法には〈場面の鮮烈な回想〉〈議論の内省的な理解〉〈文脈の協働的な自他理解〉の効果があることがわかった。本稿では一連の記録実践の省察からオラレコの効果を分析し、情動の殴り書き記録を用いた社会的なデザインの知恵と技を明らかにする。

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