デザイン学研究作品集
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26 巻, 1 号
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  • 高村 是州, 木村 知世, 笛木 愛美
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_2-1_7
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
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    電子付録

    衣服は2Dのファッション画をもとに製作するが、3Dとの次元の矛盾を補正する必要があるため絵の通りに仕上げるのは難しい。そこで本研究では、3Dソフトを用いてファッションデザインを行い、発想した通りに衣服を製作する手法を開拓することを目的とする。まず3Dソフト「ZBrush」でモデリングすることでデザインを発想し、そのデータを出力して立体的にデザイン検証を行なった。続いてアパレル3D着装シミュレーションソフト「CLO」を使いモデリングデータからパターンを展開することで、発想したデザインと近似性の高い衣服を製作するという手法を開拓した。これにより衣服製作において新たな可能性を示した。

  • 現実の「色」をマトにしたシューテングガン
    櫻井 亮汰, 勝部 里菜, 内山 俊朗
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_8-1_13
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    ガンシューティングゲームはアナログ式の玩具から、モニターに映し出したマトを撃つもの、VRを利用したものなど、様々な形式で楽しまれているコンテンツであり、今後も技術の進歩とともに多様化すると考えられる。新しいシューティングガン「COLOR BLASTER」は、特定の弾や標的、環境を必要とせず、現実空間の色をマトにして遊ぶことが可能である。色を撃つ体験は年代を問わず受け入れられたが、体験者からは達成感や爽快感がないという指摘を受けた。特定の弾や標的を必要としないシューティングが可能になった反面、的中の目視ができない不明確さにより、楽しさがない結果になっていると予測された。そのような目に見えない情報を表現する手段として、聴覚・視覚・触覚情報のフィードバックを加えることで、COLOR BLASTERの楽しさを向上させることができると考え、新しいモデル「COLOR BLASTER Pro」を開発した。

  • 張 彦芳, 吉村 彩果, 秋田 直繁, 下村 萌, 近藤 哲男
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_14-1_19
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
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    電子付録

    デザインの力によって、社会が抱えているSDGs関連課題を解決するための提案を行うことが最終的な目標である。そのゴールに向け本研究では、新素材であり、持続可能なグリーン素材であるナノセルロースを活かし、その材料デザインを実施し作品化を試みた。この企画により、生みだされる環境への負荷を軽減することが可能と期待される作品を取り上げ、さらに社会実装までを目的とする。実際には、ナノセルロースの特性である総表面積の大きさを活かし、土の保水性を高めた、植物が枯れにくい器の制作を実施した。今後、このような持続可能な循環素材が活躍の場を広げることが期待される。

  • 世界を豊かに感じるためのIoT機器のデザイン
    秋田 直繁, 屋並 陽仁, 西原 尚宏, 鳴島 啓介, 有吉 啓介, 竹内 啓行, 内村 謙也, 菅崎 拓真, 眞田 龍志, 堂本 竣平, ...
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_20-1_25
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    IoTはこの世界をセンシングし、情報を集約・解析・連携させ、我々に何かを提示する。この技術により生活はより便利になり、分かりやすい情報提示が行われる。しかし、我々のこの世界は曖昧で複雑なものである。筆者らは情報を切り取り縮約することで失われるものがあるのではないかと考えた。本研究ではIoTを用いてこの世界をより豊かに感じることができるような仕組みとプロダクトをデザインすることを目的に、九州大学のデザインエンジニアリングの専門家と複雑系システムデザイナー、株式会社タカギのプロダクトデザイナーと設計者、久留米工業高等専門学校の電気電子工学の専門家が学生たちと共同プロジェクトを実施した。デザインとエンジニアリングの両者の視点から6つのプロトタイプを創造することができた(図1)。

  • 京都大学東南アジア地域研究研究所リサーチコモンズのインテリアデザイン
    太田 裕通, 北村 拓也
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_26-1_29
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
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    電子付録

    本プロジェクトは、京都大学東南アジア地域研究研究所の東棟改修に伴って、教職員や学生、留学生や訪問研究者など多様な人材が日常的に意見交換や交流ができるオープンスペースとして設置された、リサーチコモンズのインテリアデザインである。歴史的建造物である煉瓦造りの図書館と中庭への方向性を意識させる最小限の木造作を挿入し、カウンターテーブルや棚としての機能を充足させるだけでなく、この地に重層する時間が感じられる豊かな環境を顕在化させ、屋内外に一体感を与え、窓辺に光を受ける魅力的な中間領域をつくり出した。本稿は、実際に改変する物理的環境を超えてデザイン対象を捉え直し、場所や人々が抱く潜在的な価値を読み取り、それらをより高め顕在化するように秩序立てる建築的思考を応用したデザインプロセスを詳細に記述したものである。

  • 動物の視覚を学ぶVRを用いた場のデザイン
    春日 遥, 大橋 真智子, 山本 将隆, 小西 祐輔, 北村 春菜, 池田 宥一郎, 村井 貴
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_30-1_35
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
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    電子付録

    「アニマルめがねラボ」は小学3年生から中学3年生までを対象にした、バーチャル・リアリティ映像作品を用いたサイエンスコミュニケーションイベントである。子どもには難しい「動物の視覚」を題材に、バーチャル・リアリティによる直感的理解だけではなく、場のデザインにより教育効果を高める工夫を行った。多様な動物に実際に会える動物園という場の相乗効果を狙った開催場所の選定や、架空の研究所「アニマルめがねラボ」としてディティールにこだわった場の演出を行った。イベントに参加した子ども達は「リクガメとヌマガメの視力」、「イヌとネコの色覚」、「ヤモリとカエルの動体視力」の3つのブースを通して、多様性に富む生き物の視覚を学習し、更なる学習への意欲や動物への関心を得た。

  • 福井市芦見地区「限界集楽A43」を題材とした映像による観光プロモーション
    松原 かおり, 池田 岳史
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_36-1_39
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
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    電子付録

    「地域資源を活かした暮らしの記録」をテーマとして取材を続けている福井市芦見地区は、自然豊かな限界集落である。同地区において、炭焼き小屋「芦炭窯」における炭焼きを通して、都市部の住人と限界集落の住人をつなげる活動を続ける「一般社団法人限界集楽A43(Ashimi)」の代表である藤井啓文氏の活動をサスティナブルな取り組みとして捉え、映像作品を制作した結果、SDGsクリエイティブアワードにおいて高い評価を得ることができた。
    藤井氏や地区の取材から、今後持続的に活動を行っていくためには、地域外への認知の拡大が課題として挙げられる。そこで、前述の作品の評価を踏まえ、これまで得た素材を自然豊かな里山においての体験を中心に、観光プロモーションを目的とした映像作品として制作することとした。

  • 短編映画『Missing』の制作
    髙橋 紀子, 川島 洋一
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_40-1_45
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
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    電子付録

    本稿の第一著者は、脚本家である自身の専門性から発想し、地域資源の記録とその魅力の発信を目的とした映像制作を研究テーマとしている。本稿で省察の対象とする短編映画「Missing」(図1)の制作にあたり、二度にわたる大災害により伝統的な風景を喪失した福井県を舞台にする上で、ドキュメンタリー映像の手法による景観の描写は、魅力ある景観資源の映像化を目指す立場にとっては不利な選択であった。むしろ「今ある福井県の景色をモチーフにしながら、失われた風景を想う映像を記録する」表現を試みることが効果的と考え、その表現手法として「物語」を導入した短編映画の形式が有効であると判断した。そこで「喪失と再生」をテーマとしたストーリーを作成し、現実と虚構が入り混ざる「時間」が映画の中で幾重にも重なる多層的な時間構成の映像表現により、地域資源の映像化を試みた。

  • 杉本 美貴, 張 路, 城川 真実, 岡松 もえ, 冨森 崇文, 髙杉 遥, 永嶋 拓仁, 宮田 和弥, 王 曦, 豊田 真央, 酒井 笑, ...
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_46-1_51
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
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    本作品は九州大学芸術工学部・芸術工学府と中国の大連理工大学建築芸術学科との約4か月間の国際連携授業の成果物である。福岡県南部の小規模企業者9社の協力を得て中国向けの製品デザイン開発を行った。「FUJISAN」は、サイズの違う輪ゴムが一体成型された富士山型の輪ゴムである。「花咲く風呂敷」は、結び目にメッセージカードを添えることで5片の桜の花びらとなるようデザインした。「DARUMA」は、だるまの形を模した選び取り用の玩具である。「巣みつのパッケージとロゴ」は、ギフト商品として現代の中国市場で求められる高級感を表現したデザインとなっている。いずれも中国人のニーズにフィットした魅力的な商品となった(図1)。日本と海外の学生の国際連携授業を活用したデザイン開発は、教育の質の向上のためにも、小規模企業者の海外向けの製品開発の手段としても有効であることが示された。

  • 杉本 美貴, 城川 真実, 宇山 明穂, 寺﨑 薫, 平沢 洸
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_52-1_57
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
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    本作品は、総合印刷会社の株式会社三光と九州大学との学生参加型の共同研究での成果物で、2017年度グッドデザイン賞を受賞したノートシリーズの第二弾である。第二弾も2020年度グッドデザイン賞を受賞した。第二弾では第一弾の存在を前提に、ブランド戦略等の条件が加わった中でデザインしなければならない大変さがあったが、学生達の既存のノートへの不満や工夫から、学生が本当に欲しい勉強用ノート3種類が商品化された(図1)。3㎜LEAF3⁄4と3㎜LEAF2⁄1は第一弾で開発した罫線が3㎜幅のルーズリーフシリーズで、B5用紙の3⁄4サイズ、2⁄1サイズのノートである。第一弾の3㎜LEAF1⁄1と3㎜LEAF1⁄4と組み合わせて使えば様々な勉強の仕方ができる。FILENOTEは2枚のページの下端がミシン目で閉じられ袋状になったページに授業のプリントを挟め、袋を切り離せば通常のノートとして使用できる。

  • 原 寛道, 高橋 明里, 今泉 博子
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_58-1_61
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
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    近年、植物工場の技術が一般化しつつあるが、レストランに併設されたものでも、鮮度に着目したものはない。本研究では、植物工場を併設したレストランで、食材となる直前まで栽培を可能とする什器をデザインし、来店客に付加価値の高い食体験が得られることを実店舗で提案した。そして、鮮度の高い食材が来店客にとって高い評価があることを明らかにし、レストランでの実現可能性を見出した。

  • 生徒のライフスケープをデザインするための家具の開発
    秋田 直繁, 辻 浩, 平山 泰, 野間 巨樹
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_62-1_67
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    2020年4月に2つの中学校が統合・再編され大川市立大川桐英中学校が開校した。福岡県大川市は筑後川の上流から運ばれてくる木材の集積地であったことから、木工の町として発展してきた。そのような地域で育つ子どもたちが町の産業に誇りを持つことができるような空間を創るために、新たな中学校用家具を開発した。既存の中学校の観察を通して学校の空間が抱えている課題を見つけ出し、それらを解決し、生徒たちの様々な活動をサポートするために、使いやすさや安全性に配慮し、シンプルかつ機能的な家具をデザインした。また、質の高い空間はそこで過ごす生徒たちの所作や考え方やライフスケープ(生活風景や生活者の情景)にも影響を与えると考え、木材の素材感を効果的に生かし、生徒たちの感性に訴えかけるような造形を目指した。

  • 心地よい子ども用便器
    橋田 規子, 徳本 達郎, 佐伯 祐樹, 遠藤 滝弥, 加藤 將則, 上野 雄世
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_68-1_71
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    子ども用便器のデザインは、子どもが1人で便器に座って排便できるようになるための、重要な器具である。子どもがすすんで座りたくなるような心地よい便器をデザインするために、衛生性の確保、排泄のしやすさ、心地よい意匠性の3つの点を検討した。衛生性の確保では、汚れにくく掃除しやすくするため凹凸の少ない形状を検討した。排便のしやすさでは前傾姿勢がとれるよう、便座に傾斜を加えた。また、意匠性では曲面を持った柔らかい形状を検討した。近年、子ども用施設にインテリア性を求める幼稚園経営者や保護者が増加しているが、こうした声にも応えられる製品を目指した。

  • 廖 滿麗, 許 言
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_72-1_77
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    この作品は“纏花”をブーケデザインのインスピレーションとしたものです。実際の作業の際、工法の分野だけに留まっていたら、デザインコンセプトのプロセスを具体的に表現することができず、作品に込められた意義がおろそかになってしまい、ただのビジュアルディスプレイになってしまいがちです。そこで連想によって“Five Stages of Shape Context”(FSSC)へと発展、変化させました。以上のデザインコンテキストを形作る中で、造形的要素を具体的に実現して最終作品“silk, blooming ornament, hope of blessing”(図1)を完成させました。同時に“FSSC”がデザイン思考を実践する過程で思考を現実化する際に創作過程において具体的に述べることができない問題を解決しました。

  • 大友 邦子
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_78-1_83
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    本作品群は、国内でも稀有な規模で多様な繊維関連事業者が集積する群馬県桐生市で実施された、繊維製品(ストール類)ブランド化事業の試作開発事例である。本論は、当該事業のデザイン提案から製品試作までの展開を主題としている。前年度に実施された同産地の調査事業の結果から課題傾向を考慮し、事業者独自の技術の強みの活用、集積型産地ならではの協働的生産を試行する提案が目的に掲げられた事業であった。本事業では地域内外の人材で組織された専門委員会によって、世界でも同市内の鳴神山のみで自生する、絶滅危惧種植物のカッコソウがキービジュアルに選定された。統括的な産地ブランディングへの初段階として、複数事業者との実験的な製品試作を実施し、筆者は8製品の図案と色調を設計した。その過程において各人材が解決に取り組むべき項目が把握された。本試作事業の実施結果から、今後の展開に向けた課題点を考察した。

  • 上綱 久美子, 山田 弘和, 辻 康介, 田﨑 冬樹, 稲津 あや子, 山内 奏, 石井 千春, 牛頭 久美
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_84-1_89
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    横浜美術大学は、来校者と学生を中心とした在校者のどちらにも等しく明瞭に案内できるキャンパスサインのデザイン開発として2011年度に学内共同研究チームを編成し、研究を開始。2013年度に「横浜美術大学キャンパス内サインシステム・デザイン基本計画」(以下、「キャンパスサイン基本計画」)を策定した。そして、2018年度からは、学内で設計ワーキングチーム(以下、ワーキングチーム)を編成して「横浜美術大学キャンパスサインデザイン計画・設計」(以下、「キャンパスサイン実施設計」)を進めている。今年度で計画・設計を全て完成させる予定であったが、COVID-19感染拡大防止対策等により、キャンパスの屋内サインは来年度以降に留保となった。
    本稿は、2019年度までに完了した当大学キャンパスの屋外案内サイン、誘導サイン、施設記名サインのデザインプロセスとその成果を述べるものである。

  • 道路空間再編に向けた愛知県岡崎市の地域デザイン
    伊藤 孝紀, 岩崎 翔太, 山本 雄一, 西田 智裕
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_90-1_93
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    本作品は、愛知県岡崎市康生通りにおいて、株式会社まちづくり岡崎が道路空間再編に向けて実施した社会実験である。まず、岡崎のシンボルである岡崎城をモチーフとして白と黒を基調としたストライプのロゴマークを設定するとともに、市民の要望を把握するためのワークショップをおこなった。そこで得られた要望を反映させた社会実験をおこなった。
    公共空地に白と黒の什器を設置し、キッチンカーを誘致することで、康生通りと一体的な空間を創出した。また、沿道店舗の軒先を活用することで、歩道上に多様な行為を誘発した。加えて、パークレットを設置することで、車道上に憩いのための場を創出した(図1)。
    通過するだけの人が多かった康生通りに、多様な行為を含む滞留が生じた。康生通りにロゴマークを展開することで、通りのデザインを統一し、市民が誇りを持った街づくりを演出することができた。

  • 「やまだばし思い出テラス」
    羽野 暁
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_94-1_99
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    子どもや高齢者は公共空間整備におけるマイノリティユーザーであるが、共生社会の実現に向けて多様なニーズを体現するリードユーザーであり、公共空間のデザインにおいては子どもや高齢者に優しい多様なアプローチが求められる。本作品は少子高齢化地域における橋梁架け替え後の道路残地を対象に、多世代共創の取組みにより地域の風景の記憶をつなぐとともに、新しい生活景を育むオープンスペースを創出したものである。プロジェクトの推進において、地域の生活景に対する価値の気付きと醸成に着眼し、歴史紙芝居の制作と実演や、風景の記憶を振り返る灯篭づくり、橋上のオープンスペースにおける交流時間の体験など多角的な世代間交流の場を創出した。完成した残地のポケットパークは、地域の歴史遺産を保存・利活用し、また、地域の心の記憶をつなぐとともに、子どもや高齢者を含め多くの世代にとって優しく居心地のよい空間となった。

  • 冨本 浩一郎, 平井 康之, 日髙 真吾
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_100-1_105
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    日本の視覚に障がいのある人全体の点字の習得率は12.7%であり、点字や触知記号を主体とした現状の触地図は、案内情報提供の有効な手段とはいえない。
    本稿では、誰もがアクセスしやすいユニバーサルミュージアムの実現を目的に、国立民族学博物館の展示場に設置した触知案内板の詳細とそのデザインプロセスについて述べる。
    これは、視覚に障がいのある人とない人が同様に館内情報にアクセス可能なインタラクティブな触地図システムである。タッチパネルディスプレイ上に設置したフィンガーガイドによって触りながら経路を判別することができ、同時に音声案内と連動することで、館内の位置情報や展示案内を得ることができる。

  • 鈴木 拓弥, 生田目 美紀
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_106-1_111
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    茨城県小美玉市と筑波技術大学が協働し、参加型デザインによってJR羽鳥駅東西自由通路北側壁面のデザインを行なった。小美玉市は市民交流を軸にした都市計画マスタープランを策定しているという背景を受け、本研究ではコンセプト立案の段階から最終的な制作段階まで一貫して参加型デザインを実施する工夫を行なった。コンセプト立案の段階では、市民意識調査に基づいたタグライン調査からデザインコンセプトを決定し、壁面のグラフィックデザインを行なった。制作段階では、誰もが手作業でモザイクタイルアートを創作できる手法を考案し、子供から大人まで延べ120名の参加による制作WSを経て、壁面デザインを完成させた。本稿では、デザインコンセプト立案から最終制作に至る過程と市民共創によるデザイン実践について報告する。

  • 工藤 真生
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_112-1_117
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    2021年東京オリンピック・パラリンピックを目前に控え、我が国においては、誰もがわかりやすい環境整備が喫緊の課題である。その一助となるのが、どこに何があるのかを示し、人を目的地へ誘導するサインである。本作品は、知的障害を有する高校生の「わかりやすさ」に着目したサインデザインを制作し、2019年3月教育施設に設置・竣工したものである。調査から、ピクトグラムの形態、ルビの表記について「わかりやすさ」の指標が示唆された。今回のような取り組みを重ねることで、障害者のわかりやすさを踏まえたデザインの波及と、障害特性を踏まえたデザインに関する調査方法を確立させたい。障害者の認知特性上の困難を軽減させ、デザインに反映することで、より多くの人が快適に情報収集できる社会づくりに寄与したい。

  • 三野宮 定里, 原田 泰
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_118-1_123
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    本作品論文は数千件のアイコンデータを管理するアイコンデータベースシステムである。「コミュニティの中に入っていき、現場で必要とされるアプリケーションを現場でつくる」という視点から実践したデザインプロジェクトの成果の1つである。デザイン事務所S社をフィールドに、アイコン制作の仕事の流れを観察する中でアイデアを着想し、アイコンデータベースシステムのデザインをはじめた。はじめはアイコンを一覧するために試作したアプリケーションだったが、現場の中で使われる中で進捗管理のための道具として使われはじめた。アイコン制作の仕事が進んでいくと、次に特定のアイコンを比較し、仕上げの確認をするための道具として使われはじめた。プロトタイプが現場で使われ続ける中で少しづつ機能を増やし、役割を変えていったデザインプロセスが特徴である。本作品は現場が必要とする機能を過不足なく備えた道具が形作られていくデザインプロセスを示す。

  • 田中 佐代子, 小林 麻己人, 三輪 佳宏
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_124-1_129
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    研究者がビジュアルデザインを実践的に学ぶeラーニング教材を、筆者等によるこれまでの研究成果をもとに開発した。教材は研究発表のためのスライドやポスター、論文・申請書といったビジュアル資料を、センスよく、わかりやすく表現する方法が学べるよう工夫した。教材のビジュアルデザインの要素は、描画、配色、グラフ、図解、表、書体と文字組、レイアウトである。実践的に学ぶため、学習者は解説映像を視聴後、演習課題、確認テストを行う。
    本教材を大学院の授業で評価した。その結果、94%が研究のビジュアルデザインに関する知識や技術が向上し、93%が自身の納得できる研究発表のビジュアルデザインができるようになったと思うと回答していた。また、特に役立った内容は「レイアウト」(66%)、「配色」(56%)だった。
    完成したeラーニング教材はWEBサイトで一般公開している(https://visual-skills.studio.design)。

  • 中野 仁人, 岩本 あかり, 安東 毅, 井上 郁
    2020 年 26 巻 1 号 p. 1_130-1_135
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル 認証あり

    飲酒は社会生活や習慣の一部である一方、アルコールに関する知識の不足が導くアルコール依存症の状態にいる人口の増加は世界的な問題となっている。社会の関心の低さは時代に応じた教材の開発を妨げる。世間一般に根付いたアルコール依存症の誤ったイメージ(暴力や患者の怠惰な性格等)で表現された現行の教材は、患者のアルコール依存症でないという意識=否認を強める恐れがある。今回、患者の正しい理解と当事者意識を促すことを目的としたアルコール依存症を学ぶ教材一式を制作した。また、医療側と患者側の双方における有効性を検証した。

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