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西澤 千惠子
セッションID: 2P-7
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
大分県は北側と東側は海に面し, 西側と南側は山地が連なっているので食材に恵まれている。またかつては天領や多くの小藩が存在し, 地域毎に独特の食文化が発達していた。しかし近年、全国的に食の均一化が進んでおり, 大分県も例外ではないように思われる。そこで郷土料理について考えていく上での資料にするために, 県下の小学5年生とその保護者および大学生の, 現時点における郷土料理(汁物)の実態を調査した。
【方法】
2007年1月に全県的に児童と保護者に, 2008年1月に本学学生にアンケート用紙を配布し, 自己記入方式により記入してもらった。保護者と学生については, 県内出身者と県内に10年以上住んでいる人について解析を行った。
【結果と考察】
(1)年代別 「だんご汁」と「けんちん汁」はどの年代においても認知度が高かった。児童が「だんご汁」「かに汁」を「最近食べた」割合は大きく, これらは学校給食や行事で取り上げられることが多いことから, それらの効果と考えられる。「ほうちょう」「ごまだしうどん」「かも汁」では年代が下がるほど認知度は小さくなった。(2)地域別 「だんご汁」はどの地方でも食べられていた。「無塩汁」と「ごまだしうどん」は従来豊後水道沿岸で, 「かに汁」は宇佐平野で, 「ほうちょう」は大分近郊で作られていたものである。「ごまだしうどん」は豊後水道沿岸で現在でも作られているが, 「ほうちょう」「かに汁」「無塩汁」は, 従来作られていた地方において保護者は知っているが児童は知らない。以上のことから, 学校給食等で目にしている郷土料理は知っているが, 家庭で作らなければならない料理は伝承されにくいことが示唆された。
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-家庭における野菜の利用状況―
原 知子, 林 利恵子, 本多 佐知子
セッションID: 2P-8
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
野菜は食生活の中で重要視される食材であるだけでなく、季節や地域による特徴も大きく食生活のあり方や時代によっても利用状況やニーズが変化する可能性が大きく、食文化を反映する食材でもある。しかし、多様な種類や利用方法も個人によるところが多いため、その使用実態や利用状況は明確でない。そこで本研究では、日本調理科学会近畿支部 食文化分科会の野菜研究の一環として、兵庫県在住者を対象としたアンケート調査によって、日常家庭で使用している野菜の種類、利用状況、嗜好の変化、調理方法、地域の違いなどについて明らかにすることを目的とした。
【方法】
調査対象:兵庫県在住者(県庁所在地とそれ以外の地域)の調理担当者、調査時期:2007年10~12月、調査方法:直接記入法(留置法)による。有効回答数140部、回収率83.3%であった。調査内容は、居住地域や年齢等の属性、健康志向意識、野菜の嗜好・摂取意識、入手方法、選択基準、家庭で食べる頻度、調理頻度、季節感、調理方法などの質問項目によった。
【結果】
アンケート対象者の約90%が調理頻度がほぼ毎日で、健康に気を配るという意識をもっていた。野菜の入手は店舗からが73%と多いが、今回の対象者のうち約20%が自家栽培を用いていた。購入時は、鮮度、国産か輸入か、によって選択する人が多かった。野菜の嗜好に関して、過去嫌いな野菜145件、現在嫌いな野菜68件と野菜嫌いは経年変化で少なくなる傾向が認められたが、日常の摂取野菜皿数では、1日2皿が最も多く、推奨されている1日5皿以上は9.4%のみで、野菜摂取を意識していない人には5皿以上摂取はなかった。家庭で年間を通じてよく食べる野菜はたまねぎ、にんじん、青ねぎ、キャベツ、旬の時期によく食べるものはえだまめ、筍、白菜、ほとんど食べない野菜にはつるむらさき、缶づめアスパラガス、くわい、じゅんさい、うどなどがあげられた。
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駒田 聡子
セッションID: 2P-9
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
各家庭における食教育能力の低下してきている今日、子どもを預かる保育所の食育実践が非常に重要になってきている。しかしその一方で食育というと何か特別なことを行わなければいけない、何をしたらよいのかわからないという声が保育士から聞かれる。そこで、保育所職員に対しアンケートを行い食育実践の現状・ニーズ等を調査した。
【方法】
三重県T市公立30園1,2,3,4,5歳児担当保育士と調理担当者の代表を対象とした。配布総数180、回収数154(回収率85.6%)。調査時期は平成17年1月。
【結果】
食育実践は、約8割が行っていた。食育実践上困難と感じていることには、「食育の内容がわからない」「職員間の意識の差」「クッキング保育が制限されること」などがあがった。食育実践上ほしい情報は、「他園の取り組み」が最も多い。自由記述では、「1歳児からすでに菓子類を食事にしたりして、家庭の食事は簡易・簡単にすませられている(おかずとはパックに入ったものと思っている子がいる)」実態や「子どもの食べる意欲が感じられない」実態、「園の働きかけが理解されない家庭が多い」などの問題と、0-157事件以来、「園での調理体験や収穫物を食べることが行政より禁止され、子どもに生きた食体験を積ませることが困難になった」ことに対する不満・怒りの声が上がった。今後は、園全体で保護者の意識を変容させることに取り組むことや、クッキングから子どもを遠ざけるのではなく、食体験を様々に積む中で食品衛生に対する知識・技術を身につけさせていけるような取り組みを行政も含め考えていく必要があることがわかった。
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成田 亮子, 加藤 和子, 長尾 慶子
セッションID: 2P-10
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
我々は女子大生を対象に、正月に欠かすことができない雑煮に使われている餅の摂取状況を2年前の本大会で報告した。今回はそれに関連して、“だんご”に関するイメージ観と行事との関連をみるためにアンケートによる意識調査を行った。
【方法】
本学家政学部栄養学科並びに同短期大学部栄養科1、2年生計217名に授業時間内にアンケートを配布し回答後回収した。調査期間は、2008年4月から5月である。
【結果】
“だんご”の嗜好:好きとの回答が92%を占めた。“だんご”に使用する粉:上新粉と白玉粉が49%を占め、次いで上新粉のみ23%、白玉粉のみ13%、だんご粉、小麦粉、道明寺粉も些少みられた。“だんご”から連想する料理名:49%以上が“みたらしだんご”と回答し、他に“ごまだんご”“白玉だんご”がみられた。これらは店頭販売され簡単に購入できるおやつとして食されていると思われる。“だんご”から連想される食材:73%が?あんこ”と回答し、次にきなこ、醤油の13%であり、よもぎ、大豆、枝豆も些少みられた。“だんご”から連想する語:花見・月見38%であった。だんご三兄弟・花よりだんごといった現代的な回答が33%みられた。次いでお彼岸、お盆、お墓参りといった回答も些少みられた。月見をするかどうか?:月見をする家庭が26%、月見をしないが70%以上を占め、〔仲秋の名月とだんご〕は現代では忘れられていく行事のようである。“だんご”の郷土料理:しみてん、だまこもち、笹だんご、草だんご、ムーチー、けいぞくだんご、やせうま等の珍しい回答がみられた。本学女子学生の“だんご”のイメージとしては伝統的、田舎的、丸い、白い、柔らかい、おいしいであった。
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熊谷 貴子, 花田 玲子
セッションID: 2P-11
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
国民健康・栄養調査では、若い女性の食生活に関する問題点として低体重者の増加や各種栄養素・食品群の摂取状況の過不足が挙げられており、また、栄養士・管理栄養士を目指す者は女性が多い。そこで、栄養・食生活に関する知識を学び、将来、生活習慣病予防や食教育活動に従事する専門家として栄養士・管理栄養士を目指す女子大生の食意識と栄養摂取状況を調査する事とした。
【方法】
調査対象者は栄養士養成校に在籍する女子大生36名とした。食物摂取頻度調査(以下、FFQg)および食生活アンケートを実施した。FFQgより栄養素等摂取量、食品群別摂取量から主食・副菜・主菜等に分類し、食事バランスガイドの“つ(SV)”を求め、食生活アンケートによる食意識と食事バランスガイドのコマを用いて栄養摂取状況を比較検討した。
【結果】
対象者のうち低体重者は11%であった。一方で、個人の身体活動レベルから算出した、エネルギー必要量を充足した者は28%であった。栄養摂取状況は、食品群で菓子類と油脂類の摂取量が多く、また、種実類、海藻類、果実類は摂取量が著しく少なく日常的にほとんど食べられていなかった。食生活アンケートでは、主食、主菜、副菜を整えて食事をするようにいつも心がける者は14%しかなく、食事バランスガイドの基準に基づいた評価では、コマでは副菜、果物による傾きの違いが見られ、菓子・嗜好飲料のヒモが太くなりコマが回らない状態であった。日頃から栄養に関する知識の習得の他に、調理学実習や献立作成などで栄養素レベルあるいは食品レベルで各種栄養素等を評価していても、実際には良好な食生活を続けるための行動変容には結びついていない事が示された。
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平島 円, 堀 光代, 磯部 由香, 長野 宏子
セッションID: 2P-12
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
近年,多様化する中食および外食産業により,日常的に家庭で調理をする機会が減少している。そのため,食材や調理法を知らずに食べている場合も多くある。食育を推進するためには食材や料理について知ることも大切なことである。そこで,大学の新入生の料理名に関する知識について調べ,その知識と調理技術の関連性があるか検討した。
【方法】
アンケート調査は,2007年4月に入学直後の大学生71名と短期大学生133名の計204名を対象に実施した。料理名は日本・西洋・中華料理の64品目,切り方は24項目について調査した。
【結果】
料理の質問項目のうち,「できる」と答えた割合が高かったものは,「サンドウィッチ」や「スクランブルエッグ」であった。これらの料理は,ほとんど切る操作を必要とせず,手軽に作れるものである。また,「ハンバーグ」や「ギョウザ」のように切る作業を必要とするものもあげられた。これは種々の切り方のなかで,「できる」と回答した割合が最も高かったものが「みじん切り」であったことと関連していると考えられる。一方,「できない」と回答した割合の高い料理は,「肉まん」,「シュウマイ」,「アップルパイ」や「シュークリーム」であった。これらは手作りされることはほどんどなく,加工品として購入することが定着している料理だと考えられる。また,「さばの竜田揚げ」,「ぶりの照り焼き」,「あじの塩焼き」などの魚料理も「できない」料理の上位に挙げられ,これまでに報告した魚に関する知識が低いという結果と一致していた。「ぬた」,「ブラマンジェ」,「果汁かん」は料理名を「知らない」と回答した割合が高く,最近では食べられていないことが推察された。
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小竹 佐知子
セッションID: 2P-13
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
『アンネの日記 -研究版-』(深町眞理子訳、文藝春秋社、1994、12月)(オランダ語版“De Dagboeken van Anne Frank”, Uitgeverij Bert Bakker社、英語版 The critical edition of “The Diary of Anne Frank”, VIKING社)は、アンネ・フランクが書き残したオリジナル日記原稿の全てを網羅・編集して出版された版であり、それまでに出版されていた、オリジナル原稿から一部削除された版との比較や、アンネ自身が書き直した箇所の把握が可能となった。そこで、この研究版に記載された食物関連事項を調査することにより、アンネがもともと書き残した“食べ物”を探り、これまで筆者が行ってきた「隠れ家」での食生活の様子の検討の補足を行った。
【方法】
従来筆者が調査していた『アンネの日記 -完全版-』(深町眞理子訳、文藝春秋社、1994、4月)の食物関連事項と『アンネの日記 -研究版-』のそれとを比較検討し、両者の間での相違を検討した。
【結果】
調査の結果、従来検討してきた「隠れ家」生活の食糧を取り巻く経過(平穏期→悪化期→困苦期)に大きな変化はないが、研究版には、これまでに抜粋してきた食品には見られなかったもの(うなぎ)や、以前は製品のブランド名などが削除されて書かれていたもの(チョコレート会社ドロステ社)のあったことがわかった。また、「隠れ家」の表の顔であるヒース商会への戦中の胡椒の注文内容などが見られた。
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-親・子・孫の世代間調査をとおして-
田原 美和
セッションID: 2P-14
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
沖縄県は国内でも亜熱帯性気候に属し、また琉球王朝時代には中国、東南アジアとの交易、第二次大戦後の27年間は米国統治下におかれる等の歴史的背景から、日本本土とは異なる独特な伝統食もみられる。そこで本研究では、沖縄県内の親・子・孫を対象とした伝統食に関する意識・実態を調査し、親から子、孫へと継承されている料理、継承に対する今後の意識等を把握する事を目的とした。なお、前報(日本調理科学会平成19年度大会)では、孫世代の高校生を対象にその一部を報告した。
【方法】
沖縄本島・離島地域在住の600組の親・子・孫を対象に、沖縄の伝統食に関する質問紙法による調査を2006年12月~2007年6月に実施した。各地域の普通科を設置する県立高等学校の学校長、家庭科教諭、PTAと連携しながら、高校生は留置法、親・祖父母は郵送法による調査を実施し、有効回収率は高校生85.2%(511名)、親11.5%(69名)、祖父母5.8%(35名)であった。統計処理にはSPSS15.0Jを用いた。
【結果】
本報では調査対象者である親、子、孫(高校生)世代の質問紙調査の有効回収率に差があるため、伝統食の継承に関する意識・実態等の結果はその傾向について述べたものである。沖縄の伝統食を実際に作れると回答した者は、親>子>孫の順に多かった。特に祖先供養の際に重箱に詰められる重詰め料理は、いずれの世代も継承に対する意識は高いものの、実際に作った経験のある者は親91.2%、子75.4%、孫13.3%と差がみられた。継承の必要性に関しては、どの世代もその意識は高いものの、子、孫世代は一緒に料理する機会や時間がない等の回答も多かった。孫世代の高校生が実際に作れると回答した伝統食は、家庭で習った経験があり、油脂類を用いるものが上位を占めた。
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大迫 早苗, 川上 純子
セッションID: 2P-15
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
近年、食育教育の推進および食事バランスガイドに示唆される心身ともに健康で豊かな食生活の実現に向けた普及・啓蒙が進められている中、中食、外食の利用頻度の増加より、食事作りに関わる時間が減少しており、次代を担う女子大生の食生活の関心を高める機会が失われつつある。このような食環境の中で、早い時期に健康に繋がる食物の選択が確立することが望ましい。そこで女子学生に食生活に関する意識調査し、解析して、食行動および食嗜好の問題点を明確にすることを目的とした。
【方法】
調査対象は本学食物栄養学科学生1年生150名、5月にアンケート調査を実施し、その場で回収した。アンケートの内容は食生活状況、食生活の留意点、食生活の自己評価、食事の内容、食に対する嗜好、中食および外食の利用状況などについて行った。
【結果】
「健康に心がけた食生活をしている」と、食生活の自己評価で「普通」と回答した学生は5割以上であった。食事の摂り方では、「朝食をとる」は6割のものが気をつけるとしており、朝食の必要性を感じていると思われた。次に割合の高かった項目は、「間食を控える」、「食事を楽しむ」等があげられた。一方、「特に気にしない」という学生も1割以上認められた。食事の内容では、「栄養のバランス」、「野菜をとる」等があげられた。食嗜好では、主食類の飯類、麺類で「パスタ」が8割以上好まれたのに対して、「赤飯」は「嫌い」の割合が高く、学生は小麦粉嗜好であることを示唆している。外食の利用では、「ファミリーレストラン」、「ファーストフード」の利用が多く、「友達とのつき合い」、「すぐに食べられる」の理由から挙げられた。食事の摂り方に気をつけながら健康に配慮している傾向が覗えた。
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山口 真由, 山口 尚子, 谷口(山田) 亜樹子
セッションID: 2P-16
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
団子は米粉に水または湯を加えて捏ね,蒸煮または茹でてその餅を小さくまるめた菓子である。米粉は米を非加熱もしくは加熱糊化後,乾燥して製粉したもので,米粉原料のウルチ米およびモチ米の差やβ-デンプンおよびα-デンプンの差によって性質が異なる。本研究では,この米粉のウルチ米およびモチ米の違いに着目し,ウルチ米とモチ米の混合比の違いによる団子を作製し,その物性の変化を調べるとともに女子学生の団子の嗜好調査を行い,団子の官能評価を報告する。
【方法】
団子は米粉50gと熱湯40gを混ぜ合わせ,まとまるまで手で捏ね,10等分に丸めた後,沸騰水中にて表面に浮き上がる4分まで茹でたものを試料とした。なお,米粉はウルチ米のみ,モチ米のみ,ウルチ米およびモチ米の混合比を3:1,1:1,1:3の5段階で製造した。団子の物性測定は試料直径1cm,厚さ1cmを用い,英弘精機(株) Texture Analyser TA-XT2i,8mmプランジャーによって破断測定を行った。官能評価は5点法にて行い,調査対象者は,19~21歳の女子大生115名を対象にアンケート調査を実施した。
【結果】
米粉の異なる団子を製造し官能評価試験を行った結果,ウルチ米およびモチ米1:3の団子の評価が高く,全体の63 %を占めた。次にモチ米のみが27 %,ウルチ米およびモチ米1:1が9 %,3:1が1 %,ウルチ米のみは0 %であった。物性測定を行った結果,ウルチ米およびモチ米団子の物性に差異がみられ,ウルチ米およびモチ米の物性特性が官能評価に大きく影響を及ぼすことが推察された。
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井川 佳子, 谷川 美紅, 芦田 かなえ
セッションID: 2P-17
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
米粉の用途を拡大するためには、種々の製品と米粉特性との関連についてデータが蓄積される必要がある。その一環として、本研究では米品種や米粉特性とクッキーの性状との関係を中心に研究を行った。
【方法】
米粒の性質が異なる2種の市販精白米、あきろまん(広島県産)ときらら397(北海道産)を使用した。洗米後乾燥させた米を超遠心粉砕機((株)Retsh、ZM-200)で製粉と同時に、孔径の異なるスクリーンを通過させて粗粒と細粒を得た。粒径分布はレーザー回折式粒度分布測定装置で、損傷程度は酵素法(Megazyme社キット)で測定した。米粉懸濁液の熱糊化過程の粘度特性をRVAで測定した。米粉、グラニュー糖、卵、ケーキ用マーガリンを用いて、油脂割合(対米粉)40%、50%、60%の型抜きクッキー生地を作成し、170℃で12分焼成した。クッキーの重量、形状、表面色などを測定し、破断強度を調べた。別にクッキー生地の物性を測定した。油脂50%のクッキーを使用して評点法による官能検査を行った。
【結果】
粗粒、細粒共にきらら397の粒径が小さい傾向であった。細粒の損傷度は大きく、粘度特性は4種の米粉間に違いがあった。粗粒では、きらら397クッキーの直径と比容積が大きくなり、破断強度が小さかった。細粒ではクッキー生地の物性を除いて、品種間の差が少なかった。官能検査より、粗粒きらら397クッキーはあきろまんに比べ、よりくずれやすく柔らかいと判定された。
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地域に伝わる米料理
北山 育子, 真野 由紀子, 中野 つえ子, 安田 智子, 今井 美和子, 澤田 千晴, 下山 春香, 鎌倉 ミチ子
セッションID: 2P-18
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
前報では地域性のある米の伝統料理が以前ほど家庭や地域に伝わっていないことを報告した。その伝統料理の伝承をたやさないために、今回は津軽地域と南部地域に伝わる米料理の調理方法や伝承の仕方などを調査した。
【方法】
平成18年12月~平成19年1月に青森県在住の調理担当者399人(40~50才代が79.7%)を対象に選択肢法と自記式でアンケート調査を行った。その中から家庭や地域に伝わる米料理についてまとめた。
【結果】
津軽地域は津軽平野を有した米作地帯であり、豊富にとれるうるち米のほかに、もち米や米粉を使用した米料理が作られていた。一例としてはうるち米ともち米を使い、たっぷりの砂糖を入れた太巻き寿司、米粉と砂糖を練ってかまぼこ形にしたお菓子のうんぺいなどがあった。干し餅は寒さの厳しい冬に寒気を利用して切り餅を乾かして作られるこの地方独特のものである。また、沿岸地方ではコンブの若芽で包んだ若生(わかおい)おにぎりなどがあった。南部地域はヤマセのために稲作に厳しい土地柄で、昭和の中頃までは雑穀や粉食が多かった。そのため、米の不足を補うためにかぼちゃを加えて食されていたかぼちゃ粥が今も作られていた。また、ウニやアワビを使った炊き込みご飯や茹でた長芋とごはんを混ぜた味噌餅などがあった。カワラケツメイ(マメ科の一年草)を乾燥して作るお茶を使った茶粥は上北郡野辺地町独特の料理である。米料理の多くは母親、祖母、義母(姑)から教わっており、家庭における世代間で伝承されていた。その他に地元や近所の人など、地域の交流が伝統料理の伝承の場として大切になってきている。
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江上 いすず, 加藤 治美
セッションID: 2P-19
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
我が国では、人口の急激な高齢化とともに、要介護者等の増加が深刻な社会問題となっている。高齢者のQOLを高め、健康寿命を延ばすことが急務の課題である。本研究では、要介護状態にならないための、咀嚼やえんげに配慮した形態的、あるいは低栄養、骨粗鬆症予防のための機能性を考慮した食パンの開発を行うことを目的とする。
【方法】
1.N社のホームベーカリーを使用し、早焼き法にて、基準食パンに対して、各種添加材料を加えて、形態性、機能性を考慮し、なおかつ高齢者が楽しみながら簡単に作ることができるパンの開発を実施
2.でき上がり食パンの高さ、重量、比容積の測定
3.食パンの物性(硬さ、凝集性)として、Y社のクリープメーターにて測定
4.食パンの機能性(イソフラボン、ポリフェノール、ビタミンK他)として栄養分析の測定
5.高齢者教室において官能検査の実施(栄養改善教室の高齢者約30人を対象)
【結果および考察】
基準パンに対して稲沢市の特産物であるあしたばをはじめ、各種添加物を配合したところ、機能的、形態的に良好な結果を得ることができた。また、高齢者教室での官能検査において、食味、物性ともに高齢者にとって好ましい評価を得ることができた。
また、高齢者が楽しみながら簡単に食パンを作ることで、QOLの改善にも効果があることが推測され、今後、高齢者教室での食パン作りを提案していきたいと考える。
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原口 朋子
セッションID: 2P-20
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
かりんとうを好む年齢層が高くなる傾向にあり、摂食機能が低下した高齢者にとっては、食べ物を咀嚼し、嚥下するまでの一連の過程において、食べ物のテクスチャーを意識せざるを得ない。そこで本研究では、播州駄菓子「かりんとう」を使用して、物性測定、唾液分泌量の測定、官能評価より、高齢者の嗜好性を満たし、食べやすいかりんとうの手がかりとした。
【方法】
試料は、糖変木、ひねり、二色そば、うずまきの4種類のかりんとうを使用した。破断測定では、砂糖がけ前のものを使用し、唾液分泌率測定、咀嚼時間と咀嚼回数測定、官能評価では、製品としてのかりんとう(常盤堂製菓製・姫路)を使用した。
【結果】
8mmのプランジャーによる最大破断応力は、ひねり>糖変木>うずまき>二色そばの順に大きく、官能評価の「硬さ」の順番と一致していた。唾液分泌率は、二色そば>ひねり>うずまき>糖変木の順に高く、官能評価の「4種類の中で最もおいしいと感じたもの」の順に一致していた。硬いかりんとうほど、咀嚼回数が増加し、咀嚼時間も増加した。さらに、咀嚼回数の多いものほど、官能評価で「飲み込みにくい」ことがわかった。
以上の結果から、二色そばが、物性的にやわらかくて食べやすく、かつ咀嚼時間も短く、咀嚼回数が少なかったうえ、唾液分泌率が高く、飲み込みやすかったため、おいしいと評価されたことにより、嗜好性を満たすかりんとうであることが推察された。
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近藤 みゆき, 片山 詔久
セッションID: 2P-21
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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近赤外分光法を用いて、道明寺粉の加水加熱による分子構造の変化を調べた。加熱過程における近赤外スペクトルの変化の検討からは、加熱時間の増加にともない4770cm
-1にみられるデンプン由来のOH基に関連するバンド強度が弱くなる様子が観察された。これは、アミロペクチン分子の水和状態が道明寺粉の加水加熱とともに変化したためと考えられる。一方、充分に加水加熱した道明寺粉の冷却過程ではスペクトル変化は観察されず、モチ米から製造される道明寺粉では老化がおこりにくいことが、分光学的手法による分子構造観察により示された。
一方、じゃがいもデンプンや小麦デンプンの糊化・老化現象を同様の方法で測定し、水和状態に関する分子構造変化の詳細について考察した。
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杉山 寿美, 國永 悠希, 石永 正隆
セッションID: 2P-22
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
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【目的】
凍り豆腐はグリシニンとβ-コングリシニンの蛋白質ネットワークによってスポンジ状構造を形成しており,その加熱調理はスポンジ構造を維持したまま柔らかく仕上げることが重要とされている。また,凍り豆腐中で脂質は,蛋白質ネットワーク中にオレオシンとオイルボディを形成し存在している。本研究では,加熱調理による蛋白質および脂肪の溶出,物性について検討した。
【方法】
凍り豆腐を1%NaCl,5%スクロース含有50-200mM緩衝液中(pH3-7)で加熱し,緩衝液中に溶解した脂肪および蛋白質を定量,SDS-PAGEパターンを比較した。物性測定はくさび型治具を用いて行った。さらに180℃の油中で乾式加熱も行った。
【結果】
加熱による凍り豆腐の蛋白質溶解の程度はわずかであったが,溶出量は緩衝液のpHが高いほど多かった。pH3では緩衝液の濃度が高いほど,pH7では低いほどほど多くなった。また,脂肪の溶出量はpH6よりもpH7で有意に多く,蛋白質の溶解が影響していることが示唆された。SDS-PAGEパターンからpH6ではグリシニン(11S)のアシディックペプチドが,pH7ではよりベーシックペプチドおよびβ-コングリシニン(7S)のβサブユニットの溶出が確認され,pH7では蛋白質ネットワークが崩壊溶出していると考えられた。物性測定の結果,pH3よりもpH6およびpH7で有意に柔らかかった。これらのことから,蛋白質ネットワークを崩壊させることなく,アシディックペプチドを溶解させることが加熱調理において重要であると考えられた。なお,湿式加熱調理後の凍り豆腐を180℃で乾式加熱した場合の脂肪溶出はわずかであった。
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長澤 幸一
セッションID: 2P-23
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
本研究では、小麦タンパク質を用いた製パン用の新規品質改良剤を創製することを試みている。これまで、グリアジンに単糖や二糖をメイラード反応により修飾させた複合体が、市販グリアジンよりも優れた製パン性向上効果を発揮することを報告してきた。今回は、修飾糖の分子量の影響を調べるために、オリゴ糖を修飾させたグリアジン-オリゴ糖複合体を調製し、その添加による製パン性の改変について検討することを目的とした。
【方法】
修飾糖には、グルコースから成るオリゴ糖でマルトトリオースが主成分であるオリゴトース(三菱化学フーズ)を用いた。複合体の調製は、グリアジンとオリゴ糖をpH4.0、55~65℃でメイラード反応させて行った。反応物を透析、凍結乾燥して精製複合体を得た。パンの焼成は、ホームベーカリー(日立HB-3C)で室温、粉温、水温一定の条件で行った。添加サンプルには、グリアジン-オリゴ糖反応物(未精製物)、精製物を用いた。食パンの評価は、体積、比容積、官能検査、物性測定で行った。
【結果】
強力粉を用いた製パン試験の結果、グリアジン-オリゴ糖複合体の製パン性向上効果はグリアジンより優れていた。対粉2%添加においてグリアジン添加の1.11倍の比容積であった。また、クラムの官能検査、物性測定より複合体添加が柔らかいと判断された。グリアジン-グルコース複合体添加、グリアジン-マルトース複合体添加のパンの体積、比容積との比較より、製パン性向上効果には修飾糖の分子量の違いは大きく影響しないと考えられた。その他、全粒粉配合や米粉配合、国産小麦粉の使用など製パン性に劣る条件で検討した結果も報告する。
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平尾 和子, 神田 聖子, 井上 葉子, 反町 秀子, 藤谷 朝実
セッションID: 2P-24
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
米粉を用いて60℃で供する高粘度のとろみを対象とし,物性,官能評価よりとろみ剤として適する米の品種と濃度を検討した。また誤嚥の原因となるスプーン等に付着した唾液アミラーゼによる粘度低下を抑制するため,増粘多糖類の使用についても検討した。
【方法】
米粉はタカナリ,ミルキークィーンの2種と製粉過程の異なるコシヒカリ2種の計4種とした。増粘多糖類はキサンタンガムおよびタマリンドシードガムを用いた。測定はラピッドビスコアナライザーによる加熱過程の粘度変化, 同一円筒型回転粘度計による糊液の粘度,マルトース生成量および物性の変化によるアミラーゼ耐性値を求めた。官能評価は7段階評点法により特性評価と嗜好について行い,パネルは本学学生38名とした。
【結果】
アミロース含量の高いタカナリは降伏応力や粘稠性の低い糊液となり,低アミロース米のミルキークィーンは逆に粘りのある糊液となった。コシヒカリの物性値はこれらの中間に位置した。コシヒカリのアミラーゼ耐性はタカナリ,ミルキークィーンに比べ,有意に高く示された。製法の異なるコシヒカリは粒度分布の範囲が狭く,細かい粒が多く,大小の粒が混在するコシヒカリと比べて粘稠性の低い糊液となった。官能評価では,コシヒカリは製法が異なった場合でも粘りが少なく,透明性があり,舌触りがなく,飲み込みやすさの項目で好まれた。増粘多糖類を用いた場合,キサンタンガム添加の米粉糊液はその添加量が増すに従って粘稠性の大きな糊液となった。タマリンドシードガムでは米粉だけのとろみ剤と物性に差は認められず,糊液の特性を残しながらアミラーゼ耐性を向上させることができる点でとろみ剤の補助素材として有効と考えられた。
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三宅 紀子, 酒井 清子, 倉田 忠男
セッションID: 2P-25
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
生活習慣病の予防にビタミン、ミネラル、食物繊維などを豊富に含む野菜の摂取の重要性は高まっている。浅漬けはご飯を中心とした日本型食生活によく合う野菜の調理・加工法である。昨年度本学会において漬物製造過程でビタミンC(VC)を添加することにより積極的にVC含量を高め栄養性を向上させた浅漬けについて報告した。一方、葉酸はとくに若い女性において必要性が高まるビタミンであるが、不足しがちなためサプリメントも多く出回っている。本研究では製造過程でVCおよび葉酸を添加した高付加価値の浅漬けの可能性について検討した。
【方法】
市販のキャベツを漬け液(食塩濃度;5%)に4℃で約18時間漬ける浅漬けモデル系を用いた。漬け液に0.5~16mg/100mlの葉酸を単独で添加して浅漬けへの移行を検討した。さらにVCと葉酸を漬け液に同時添加した場合の浅漬け中のVCと葉酸量を調べた。浅漬け中の葉酸およびVC量はHPLC法で測定した。
【結果】
漬け液中の葉酸濃度を0.5~16mg/100mlと段階的に変えたときの浅漬け中の葉酸含量は約50~9500μg/100gであった。1日あたりの浅漬けの摂取量(20~50g)と食事摂取基準から考えて漬け液の葉酸は1~2mg/100mlが妥当であると考えた。さらにVC(1g/100ml)と葉酸(1~2mg/100ml)を漬け液に同時添加したところ、浅漬け中のVC含量は約130mg/100g、葉酸含量は約160~520μg/100gであった。1日あたりの浅漬けの摂取量を30gとすると、この浅漬けにより45mgのVCと45~155μgの葉酸の摂取が可能であることが明らかになった。
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堀江 秀樹, 平本 理恵
セッションID: 2P-26
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
野菜の消費拡大のため、野菜をおいしく調理する方法を開発し、その要因を科学的に解明する。過熱水蒸気オーブンを用いた焼きナス調理について考察した。
【方法】
2008年1~2月に量販店で購入した長ナスを試料とした。果皮にあらかじめ傷をつけたナスを家庭用過熱水蒸気オーブン(シャープ製ヘルシオAX-HC3)でウォーターグリル加熱した。試料中心が100℃に到達してからの加熱時間を変えたもの(「5分」、「10分」、「15分」とする)を評価に用いた。物性の評価にはクリープメーター(山電)を用い、直径8mmの円筒型プランジャーの貫入試験により硬さをもとめた。エキス量は20mmにカットしたナスをティッシュペーパーの上に置き、直径20mmのプランジャーで一定荷重をかけたときに分離されるエキスをティシュペーパーにしみこませて重量変化により測定した。ナス果実及びエキス中の糖はキャピラリー電気泳動法により測定した。平行して9~11名をパネルとして官能評価を行った。
【結果と考察】
5分区と比べて10分区では「とろりとした食感」、「甘味」、「ナスらしい旨味」が向上し、15分区では「とろりとした食感」が10分区に勝った。ただし、15分区では重量減少率が40%に達するため、10分が調理条件として好ましいと結論された。貫入試験の結果、加熱時間につれて軟化することは確認できたが、物性試験により「とろりとした食感」については評価できなかった。果実に荷重をかけて得られるエキス量は「10分区」では「5分区」よりも有意に多く、またエキス中の糖濃度は4.5%程度であり、加熱による甘味の増加はエキス量の増加に関係するものと考えられる。
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守田 律子, 原田 澄子, 深井 康子, 盛永 宏太郎
セッションID: 2P-27
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
富山県黒部川流域で栽培される特産のジャンボ西瓜は、桟俵と荒縄で縛った独特の荷姿で、7月20日~8月16日の間に生産された一番成り西瓜(13kg~23kg)、二番成り西瓜(12kg~17kg)の特別厳選された西瓜である。しかし、規格外の西瓜は販売されることも食されることもなく廃棄される。そこで規格外の西瓜を用いて「ジャンボ西瓜」の嗜好性を生かした新加工製品が出来ないかを考え、その試作を行なった。
【方法】
使用西瓜の大きさ、重量、廃棄率、部位別糖度、搾汁量などを測定し、搾汁を用いてジュース、ゼリーを試作した。ゼリーは寒天、ゼラチン、カラギーナンの3種類のゲル化剤で、3段階濃度の添加率で試作し、破断強度試験および官能評価を行なった。
【結果】
西瓜の糖度測定は、果肉の種子の位置より外側は5.1~7.7%、種子の位置より外側は7.6~10.2%と果肉中心部が端部より高かった。廃棄率は約50%であった。また、西瓜ジュースでは西瓜として食した時には感じない野菜特有の青臭い不快臭があった。ゼリーを3種類のゲル化剤で、3段階濃度で試作し、破断強度試験を行なった結果、濃度が高くなるにつれ最大荷重も高く、時間の経過とともに強度が増した。官能評価では寒天が好ましく、濃度としては0.4%が西瓜ゼリーとして一番好まれた。
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山崎 歌織, 外西 壽鶴子
セッションID: 2P-28
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
前回、味噌と味噌漬カツオ肉のプロテアーゼ活性について報告した。今回は、このプロテアーゼ活性の変動の要因について味噌漬後最もプロテアーゼ活性が高くなった味噌漬10日後の味噌および味噌漬カツオ肉について調べた。さらに、味噌と味噌漬カツオ肉間における機能性成分とビタミンの変動についての検討を行った。
【方法】
切り身にしたカツオ肉を同量の味噌で覆い10日間5℃で冷蔵保存したものを試料とした。漬込み期間終了時に漬味噌を外し、漬味噌と味噌漬カツオ肉をそれぞれホモジナイズし、3,000rpmで10分間遠心分離した上清を添加してプロテアーゼ活性を調べた。また、機能性成分の測定は、高速液体クロマトグラフ法で行った。
【結果】
プロテアーゼ活性がほとんどみられなかったカツオ肉の活性は、味噌漬10日後にpH7で高くなった。この活性は味噌成分によるものか否かを検討した。味噌の上清を添加したカツオ肉にはほとんど活性が認められなかった。従って、味噌漬カツオ肉の活性の増加は、味噌の酵素が味噌漬中にカツオ肉に移行した可能性が示唆された。そこで、味噌に含まれている機能性成分およびビタミンが味噌漬したカツオ肉に移行するのではないかと推測し、イソフラボン(ダイジン,ダイゼイン,ゲニスチン,ゲニステイン)及びビタミンK1について、味噌及び味噌漬カツオ肉中の各々の含有量を測定した。味噌漬によりカツオ肉に僅かではあるがダイジン,ゲニスチンが検出された。しかし他の成分はカツオ肉に検出されなかった。今後、味噌にビタミン類を添加し、味噌漬した場合の変動を検討する。
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中澤 弥子, 鈴木 和江, 小木曽 加奈, 吉岡 由美
セッションID: 2P-29
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
海のない長野県では、コイはかつて重要なタンパク質源であった。長野県内、特に佐久地方では「正月」や「お年取り」などの行事にコイ料理はかかせない行事食であった。佐久の清流で育った「佐久鯉」は、身が引き締まっていて臭みがないのが特徴といわれ、現在でも「佐久鯉」は県下全域にわたり利用されている。本研究では、「佐久鯉」の特徴について明らかにすることを目的とし、コイ刺身の匂いや味などの食味やテクスチャーについての官能検査及び機器測定を行った。
【方法】
試料は、「佐久鯉」として養殖されているコイを養殖場(佐久市)から生きたまま直送して用いた。比較試料として福島県産のコイを郡山市内の養殖場から同様に輸送して用いた。コイ重量は約1.5kgであった。コイ肉を約3mm厚の刺身に成形し官能検査に供した。物性測定の試料は、背肉の中心部分を生のまま同様の刺身(厚さ約3mm)に成形して測定した。官能検査の被験者は、予め五原味試験を行い、かつコイ刺身を用いて訓練を行った短大生及び教員41名とし、外観、食味およびテクスチャーについて評価を行った。物性測定は、クリープメーター(山電RE-33005)を用い、直径3mmの円筒形プランジャーを使用した。
【結果】
「佐久鯉」と福島産のコイの二点比較の結果、外観の「透明感」および「ざらつき」で有意差が認められ、福島のコイがより透明度が強く、「佐久鯉」の方が「ざらつき」があると回答された。食味の「旨み」で有意差が認められ、福島産のコイがより旨みが強いと回答された。また、有意差は得られなかったが「口当たり」は「佐久鯉」の方がよい傾向がみられた。物性測定では、傾向としては「佐久鯉」の方が硬い結果がみられ、身が締まっているとの一般的評価と一致した。
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大野 佳美, 大木 佐知子, 岡本 真祐子, 堀本 美幸
セッションID: 2P-30
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
キャベツ重量の5%の食用油を使用して強火、2分間炒めたキャベツの仕上がりが良好であったので、さらに下処理方法を変えて行ったキャベツ炒めを比較・検討した。
【方法】
市販のキャベツを放射状に切断して芯を除去後4 cm角に切り、70gを1回の炒め物の分量とした。炒め油は材料の5%を使用し、IH調理器対応のなべ(なべ底の厚さ1.6 mm、直径18 cm)で、IH調理器(KZ-PH1、ナショナル、家庭用)の目盛り、強火で炒め調理を行った。下処理の一つに電子レンジ(NE-M410、ナショナル、家庭用)を使用した。炒めたキャベツの水分量および重量減少率の測定、キャベツに付着した炒め油を有機溶媒で抽出して得た脂質のカルボニル価(COV)、アニシジン価(ANV)および脂肪酸組成を測定した。
【結果】
キャベツ炒めの出来上がりの見た目は、使用した炒め油の違いよりも下処理方法の違いにより異なった。予熱をせずに120秒間炒めたものは加熱時間90秒を越えるあたりから焦げ色がついた。下処理に塩ゆでしたものは出来上がりの色が最もきれいであったが歯ざわりが悪かった。電子レンジ処理したものは全体に出来上がりはよかった。キャベツ炒めの水分量は生キャベツより3~6%減少した。炒め直後の重量減少率は3~8%であったが、冷めるとさらに減少した。重量減少率は下処理なし、予備および炒め加熱各60秒が最も少なく、塩ゆでしたものが最も多かった。炒め油のCOVおよびANVは下処理および予備加熱なしで120秒加熱したもの以外は油単独の加熱よりも高値の傾向がみられた。
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長尾 慶子, 松田 麗子, 喜多 記子, 土屋 京子, 千田 真規子, 三神 彩子
セッションID: 2P-31
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
2004年度より東京ガスと行ってきた共同研究によりエコ・クッキングの教育効果が認められたことから、次のステップとして調理過程での行動項目ごとの教育効果およびエコ・クッキングによるCO
2削減効果および環境負荷の低減に関しての効果検証および定量的解析を行った。本学学生を対象とし、行動項目ごとにチェックシートを用い、ガス・水・ごみの使用量の計測を行い、この結果からCO
2削減効果を計測した。
【方法】
実験対象者は本学栄養学専攻教職課程履修者40名とし、測定対象に和洋中の代表メニューとして、豚汁、シチュー、八宝菜の3種類を選択した。各献立ごとに、1回目は通常の調理法による実習を行い、次にエコ・クッキングの教育を実施した。その後、2回目としてエコ・クッキングによる実習を行った。また3回目として、半年~1年経過後に同様のメニューで実習を行った。ガス・水の使用量は調理台ごとに敷設されているガス・水測定流量計を用いて、行動項目ごとに使用量を計測記録し、生ゴミ量はチラシのゴミ入れを使用し計量した。この結果を元に、CO
2換算量を算出し、エコ・クッキングによる行動別CO
2削減効果について分析した。
【結果】
いずれの献立においても、ガス・水・ゴミのすべての項目において、各行動別ごとにそれぞれCO
2削減効果が得られた。具体的には、「手洗い」や「食材の洗浄」には「ため水洗い」をする。「調理」では、火加減の調節をする、野菜は皮ごと利用する、アクの少ないものから茹で一つの鍋で調理する、「調理道具の洗浄」には汚れを古布でふき取る、チラシのゴミ入れを使うといった工夫がみられ、行動別ごとにエコ・クッキングによるCO
2削減効果が明らかとなった。また、半年以上経過後の3回目の実習でもこの効果は継続していることから一定の教育効果が認められる。
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橋本 瞳, 神 さやか, 小林 三智子
セッションID: 2P-32
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
フリー
【目的】
本学の位置する埼玉県N市ではにんじんが特産物である。にんじんはβ‐カロテンが多く各種ビタミンなども豊富に含み、栄養の面からも利用方法が注目されている。N市では向陽2号という五寸にんじんが栽培されている。日持ちが良く芯まで赤いのが特徴で、市内の学校給食にも多く導入されている。本研究ではこのにんじんを、より多くの人々に味わってもらい、おいしさを知ってもらいたいと考え、にんじんを添加したスポンジケーキを考案した。
【方法】
ケーキ全重量に対する材料の比率は、卵白28%、卵黄14%(卵白:卵黄=2:1)、砂糖24%、薄力粉24%(卵重量の57%)、バター6%とした(無添加ケーキ)。にんじん添加量は15.4%、25.0%、32.7%の3段階とした。本大学女子学生24名をパネルとし、にんじん添加スポンジケーキに対して官能評価を行った。
【結果】
順位法による嗜好試験の結果、「香りの好ましさ」において、にんじん添加量の最も多い32.7%が好まれず、「しっとりさの好ましさ」「にんじん風味の好ましさ」は、にんじん添加量25.0%が最も好まれた。「外観の好ましさ」「やわらかさの好ましさ」には有意な差は認められなかった。「総合的な好ましさ」はにんじん添加量25.0%が3つのうちで、最も高い評価を得ることが出来た。以上の結果より、スポンジケーキににんじんを添加する際には25.0%が総合的に好ましいと判断された。
今後は官能評価による識別試験と物性測定等を行い、にんじん添加スポンジケーキについてさらに詳細に検討を加えていく必要があると思われる。
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(1)起泡と排液
柘植 光代, 大越 ひろ
セッションID: 2P-33
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
微細な気泡であるマイクロバブル(MB)は、食品分野では殺菌や排水処理において利用が進められているが、調理・加工での利用は未だ行われていない。本研究はMBが有する特性を生かした食品の調理・加工法の開発を目的として、MBを利用した起泡食品を創製した。得られた気泡泡沫の特性を測定し、MBの起泡性と泡沫の安定性を検討した。
【方法】
市販の無調整豆乳に市販トロミ調整食品(グアーガム系)を0、0.10、0.25、0.50%添加して試料豆乳液とした。試料豆乳中にMB発生器を設置して、MBを3、5、10、15分間発生させた。得られた気泡泡沫を容積既知の容器に入れて重量を測定し、気体体積分率を算出した。また得られた泡沫の一定重量をロートに静置し、経過時間2、5、10、30、60分後に泡沫から滴下した排液をメスシリンダーに受けて排液重量を測定した。排液重量から排液率および排液速度式を求めた。
【結果】
トロミ調整食品の全ての添加濃度においてMB発生時間10、15分の泡沫は3、5分より気体体積分率が高かった。またMB発生時間にかかわらず添加濃度0.5%の試料は他の濃度試料より気体体積分率が低かった。すなわちMBの発生時間が長く、添加濃度が低いほど起泡性は高いことが明らかになった。気泡泡沫の排液率は添加濃度にかかわらず経過時間が長くなると増加し、2、5分後と30、60分後の間には有意な差が認められた。排液速度式を求めた結果、MB発生時間にかかわらず添加濃度0.1%以上では排液速度定数の絶対値が小さく、泡沫安定性が高いことが、またすべての添加濃度においてMB発生時間が長いほど泡沫安定性が高いことが示唆された。
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金 娟廷 , 岩崎 裕子, 宮下 博紀, 高橋 智子, 大越 ひろ
セッションID: 2P-34
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
フリー
【目的】
従来、咀嚼・嚥下力が低下した高齢者でも安全で、しかもおいしく食べられる食肉製品開発の研究を続けている。先行研究では、高齢者向け食肉製品としてのミンチした食塩添加の有効性を明らかとした。今回は減塩を目的とし、無塩みそ粉末である、酵豆粉(伊那食品工業製)の添加による性状への影響を、若年者および高齢者を対象として、検討した。
【方法】
豚ロース肉を用い、脂肪を除き、ミンチ状にしたものをコントロール試料Cとした。Cに食塩を0.5%添加したものをCSとし、Cに3%の酵豆粉を添加したものをCKとした。これらの3試料について、若年者・高齢者を対象とし、食塊のテクスチャー特性および唾液分泌率、筋電図測定、さらに食べ易さの官能評価を行った。
【結果】
若年者の食塊のテクスチャー特性および唾液分泌率においては、食塩を添加した試料CSと酵豆粉を添加した試料CKに比べ、食塩を添加していないコントロール試料Cは硬さが高く、唾液分泌率は低かった。また、筋電図測定結果においても、試料CSと試料CKに比べ、食塩を添加していないコントロール試料Cは、筋活動量が高かった。若年女性をパネルとした官能評価の結果、分析型においては、試料CSとCKは、Cに比べ、有意に、やわらかく、飲み込みやすく、残留感が少ないと評価された。同様に、嗜好型においても、試料CSとCKは、Cに比べ、風味がよく、好ましいかたさとされ、総合的にもおいしいと評価された。さらに、高齢者をパネルとした官能評価の結果、食塩を添加した試料CSは、分析型で、有意に飲み込みやすく、残留感が少ないと評価された。同様に、嗜好型においても、試料CSは、風味がよく、好ましいかたさとされ、総合的にもおいしいと評価された。
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藤田 加恵, 長山 舞, 藤井 わか子
セッションID: 2P-35
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
トレハロースは三大栄養素であるデンプン、たんぱく質、脂質の安定化効果に加え、ミネラルとの相互作用、SOD様活性安定化作用などを有する多機能糖質である。加工食品に利用が広がっている。特にでんぷんの老化抑制効果により、和菓子には多く利用されている。ここでは、それらのトレハロースの特性を生かし、調理操作の下処理に使用することで料理のおいしさに寄与することが出来ないかと考え、トレハロースで下処理した野菜を使用した手作りチップスやノンオイルのチップスを作成し、食材によりその嗜好性と物性の違いを検討した。
【方法】
試料のいも類(2種類)、野菜(4種類)を2mmの厚さにスライスし、下処理は、_丸1_水につける(添加なし生)、_丸2_水+トレハロースにつける(添加あり生)、_丸3_水で茹でる(添加なしゆで)、_丸4_水+トレハロースで茹でる(添加ありゆで)、の4つのパターンで行う。トレハロース添加は10%とした。140℃の油で野菜を3分間揚げ、出来上がったチップスの物性測定はレオメーター(サン科学(株))による切断応力試験で行い、官能評価は、評点法により19名をパネルとして行った。
【結果および考察】
じゃがいも、れんこん、ごぼう、にがうりを試料とし、その切断強度を測定したところ、それぞれの試料においてトレハロース添加ゆでが添加なしゆでに比べ、軟化していた。それらを油で揚げてチップスにしたところ、トレハロース添加ゆでをチップスにした試料が最も切断強度が高くなり、パリッと仕上がっている。官能評価は4種類の試料に有意差(p<0.05)があり、硬さ、パリッと感、味においてトレハロース添加ゆでがもっとも評価がよかった。このことはトレハロースを調理の下処理に使用することがその出来上がりに良好な効果を上げると考えられる。今後、ノンオイルのチップスを作成し、さらにトレハロースの効果を検討する。
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名嘉眞 奈月, 望月 晴美, 藤井 わか子
セッションID: 2P-36
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
フリー
【目的】
トレハロースは特性の一つとして、味に対してその味の増減に影響があるとされており、その中でもコーヒーやビールなどの苦味に対して抑制されると報告されている。この研究では野菜、特ににがうり(ゴーヤー)の調理操作の下処理に使用することで料理のおいしさに寄与することが出来ないかと考えた。そのために下処理時にトレハロースを用いることによってゴーヤーの苦味が抑制されるかを検討する。さらに、学生を対象にトレハロースの認知度や苦味に対する嗜好性を聞くことにした。
【方法】
試料はゴーヤーとし、トレハロースに浸積し下処理として塩揉み・下茹でにトレハロースを使用する。塩揉みでは1%食塩で塩揉み、10%トレハロース水溶液に10分間浸漬後1%食塩で塩揉み、塩揉みなし(生)の3サンプルとし、下茹では1分間茹で、1分間10%トレハロース水溶液で茹でたもの、下茹でなし(生)の3サンプルとした。パネル16名で官能評価(評点法)を行い、分散分析で検定した。
【結果】
官能検査の結果、苦味と青臭さの項目で有意差がみられた。塩揉みの苦味は、塩揉みと塩揉みなしに有意な差がみられた。塩揉みの青臭さについては、塩揉みと塩揉みなし、トレハロース浸漬と塩揉みなしに有意な差が見られた。塩揉みとトレハロース浸漬とのあいだに有意差は認められなかった。これらから塩揉みの苦味についてはトレハロース浸積では大きな効果はなかったが、青臭さはトレハロース浸積で抑制されたということができる。下茹での苦味については、トレハロース茹でと下茹でなしに有意な差がみられたが、水茹でとトレハロース茹でとの間に有意差は認められなかった。下茹での青臭さについては、水茹でと下茹でなし、トレハロース茹でと下茹でなしに有意な差がみられた。下茹でではトレハロース茹では下茹でなしに比べて苦味と青臭さを抑制した。これらの結果より食べにくい野菜の摂取増進に寄与できると考える。
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江別産小麦粉を用いた菓子作成と色彩について
菊地 和美, 古郡 曜子
セッションID: 2P-37
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
フリー
【目的】
冷涼な気候と自然、豊かな大地とともに海に囲まれた北海道は、生乳などの農産物が豊富であることが知られている。北海道では近年、道産食品独自認証制度など食の安全・安心の取り組みを積極的に進めている。そこで、北海道産食材の特徴を活かした食育として、江別産小麦粉を用いた調理について検討を行うことにした。
【方法】
調査方法は、2008年1月~2月の『第3土曜日道産DAY』に大学生対象として色彩に関するアンケート調査を実施した。さらに、江別産小麦粉を用いた調理体験を大学生ならびに高校生を対象として、官能検査や菓子作成に用いた色彩について考察を行った。
【結果】
大学生を対象にした色彩に関するアンケート結果はクリームの色がプラスのイメージでは白色、黄色であり、マイナスのイメージでは黒色、青色の出現傾向にあった。江別産小麦粉を用いたどら焼き調理体験におけるクリームに混ぜたジャムなどの種類は抹茶が多く、次いで大学生ではキャロットジャム、高校生ではアロニアジャムの順であった。ジャムなどの平均種類数は高校生が5.3±3.2種類、大学生が3.1±0.8種類であり、高校生が多く、有意差がみられた(p<0.05)。調理体験における官能検査結果では焼き菓子は「風味がよい」という回答がみられ、どら焼きのトッピングであるジャム入りクロテッドクリームは総合評価や風味、外観が高かった。また、クロテッドクリームについて、抹茶とキャロットジャムでは官能検査の結果、外観や総合評価はキャロットジャムが高くなり、食感や風味は抹茶が高く、有意差がみられた(p<0.01)。以上より、北海道産食材を用いた食育の展開を今後も地域において継続したいと考えている。
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どら焼き調理体験における食育の視点
古郡 曜子, 菊地 和美
セッションID: 2P-38
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
食育では、子どもたちに食べることへの関心をもたせることが必要である。この研究では、学習者が北海道産の食材を知って調理体験を行なうことにより、どのような点に関心をもつのかを探り、食育を実践するための資料とするものである。
【方法】
大学生と高校生を対象に、北海道産の小麦粉とクロテッドクリーム、北海道産ジャムを使用し、どらやきの調理体験をおこなった。調理体験の様子をVTRに記録し、授業分析の方法を用いて学習活動としての面から分析を試みた。
【結果】
1味への予想―ジャムのにおいをかいで味の予想をした。2ジャムへの関心―色として人参ジャム、未知からアロニアジャム、においからミルクジャム、身近な食材としてじゃがいもジャムに興味をもった。3トッピングの構想―絞りだし袋を使うことで絵を描く感覚で考えた。4皮作りの楽しさ―「もっと難しいと思った」と予想外に簡単だということが分かった。5クリームの扱いへの着目―「もっと柔らかいと思った」とジャムとの混ぜ方に関心をもった。6トッピングの試行錯誤―トッピングを思いつかない学習者が、他の人のつくり方を見て自分の発想を持った。7クリームの扱い方での失敗―皮に温かいうちにクリームをおくと溶けることで失敗感を持ったが、そこから考えを変えて完成させた。8出来上がりの充実感―身近な北海道産の食材を知り、知らなかった食材への関心をもった。調理が予想外に簡単で、創造的なトッピングに楽しさを感じた。以上から、食育において、学習者に食材の特性をふまえて提供することと、学習者にとっての意外性と創造性に配慮することから、「北海道産食材への関心をもたせる」可能性が示唆された。
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中村 眞理子, 後藤 葉子, 廣田 真由子, 濱中 香也子 , 小林 和幸
セッションID: 2P-39
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【はじめに】
女性の日常生活に大きな時間を占める「調理・料理」は、障害者の家庭内役割としても注目される.小川ら、Allenらは家事行動をよく行う者に日常生活活動維持傾向があることを指摘しており,生活適応の重要な項目である.調理器具では電磁調理器(以下IH)は,火を使わず,温度設定が可能なことから,火災や火傷の心配が少なく安全とされ,障害者が料理を実施する場合に導入を検討されることが多い.しかし,長年使い慣れた器具とは使用方法や注意点が異なる為,躊躇するケースも多々ある.そこで、障害者の生活適応の項目と手段としての料理とIHに着目しイメージ調査を行った.
【対象】
片麻痺10名(男性3名、女性7名、平均年齢62.7±9.7歳、IH使用経験者4名、日常平均調理頻度週4.4日),本学3年生21名(男性6名,女性15名,平均年齢21.1±1.7歳,IHの使用経験者7名,日常平均料理頻度週5日).
【方法】
記入方法を説明した上で,料理とIHのイメージについて,反対の意味を持つ形容詞のペアからなるSD法を実施した.IHについては,片麻痺者では実際にIHを使用体験した前後で,学生では障害者を想定した調理実習(IH使用)の経験前後で調査を実施した.【結果と考察】料理・IHのいずれも,片麻痺者の方が学生に比して肯定的イメージが強かった.使用体験前のIHのイメージでも,片麻痺者は学生よりも肯定的なイメージが強く,自らの料理活動に対するIHへの期待が伺われた.片麻痺者では、使用体験後には、「優れた」・「有能な」というイメージが強くなる一方で、「自立的」という項目では若干ながら否定傾向に傾き、多機能・高性能であることに対する印象の反映と考えられた.
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廣田 真由子, 濱中 香也子, 小林 和幸, 中村 眞理子
セッションID: 2P-40
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【はじめに】
調理活動は,生活に欠かすことのできない食を生み出し,家族のために作るなど家事活動の中でも重要度が高いとされ,障害者の家庭内役割獲得としても重要な位置を占める。調理活動の獲得はそのほかのADL能力の向上やQOLの向上につながり生活適応の一助となるという報告も認められる。電磁調理器(以下IH)は,火災や火傷の可能性が低く安全であり、作業面が平らであるなどの特性から、今回対象であるリウマチ患者では使用しやすいとされる。しかし、長年使い慣れた器具とは使用方法や注意点が異なることなどから受け入れが悪い事も見受けられる.このような背景から,生活適応の一項目としての料理と,手段としてのIHに着目し,料理活動導入の検討資料とするためSemantic Differential(以下SD)法を用い調査を行った.
【対象】
慢性関節リウマチ(以下RA)女性10名(平均年齢55.4±5.1歳,Steinbrokerのclass分類2が9名,3が1名,うちIHの使用経験者1名,日常の平均料理頻度週5.8日)であった。
【方法】
対象者に記入方法を説明した上で,自らの料理とIHのイメージについて,反対の意味を持つ形容詞のペアからなるSD法を用いた. <BR/>【結果と考察】料理・IHについてのいずれも,正のイメージが強く認められた。中でもきれい、生産的というような調理の結果として得られるものをイメージするものやうれしい、幸福という感情を示すようなイメージが高くなる傾向が見られた。IHについては,進歩的、魅力のあるというイメージが強く,IHへの期待が伺われた.
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崔 益錫, 柳沢 幸江
セッションID: 2P-41
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
2次元圧縮測定方法を用いて、咀嚼機能が低下した高齢者の咀嚼感覚に対応する物性測定方法を検討することを目的とした。
【方法】
物性特性が異なる7食品を選択し、1次元圧縮による破断力に加え、2次元圧縮測定が可能なWWT-2を用いての破断力測定を行った。咀嚼感覚は官能検査によって求め、被験者は高齢者67名(61~89才、平均68.9才)と、若年者59名(19~26才、平均20.8才)とした。煮椎茸を基準食品とし、始めの3回咀嚼で評価する「かみ切りにくさ」「硬さ」「歯への付きやすさ」と、嚥下後に評価する「まとまりにくさ」「飲み込みにくさ」「噛みにくさ」をそれぞれ評価した。併せてデンタルプレスケールによって咀嚼機能を測定した。
【結果】
高齢者を上下歯の咬合が確保されていることを示す機能歯を用いて3分割し、高齢者I群(31名)と、高齢者II群(12名)、高齢者III群(23名)とした。歯の接触面積や咬合力は3群間で差があり、咬合状態に対応した群分けであることが確認された。官能検査の結果では、高齢者3群間に著しい違いは見られなかったが、高齢者III群は、食パンとほうれん草が噛み切りにくく感じた。また「噛みにくさ」では高齢者III群は食品間差が小さい傾向にあった。官能検査値と物性値の相関は高齢者用食品の測定方法では、「硬さ」とよく対応するものの、「噛みにくさ」とは相関係数が低かった。一方WWT-2では、「噛みにくさ」との相関性が高まることが示された。さらに、臼歯でのすり切り運動を模したWWT-2による2次元圧縮を行うことで、高齢者III群の「噛みにくさ」と極めて高い相関性(r=0.916)を得ることができた。
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植田 泰子, 須田 有実子, 並木 望, 小林 三智子, 山本 誠子
セッションID: 2P-42
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
本研究では電気味覚計による電気味覚閾値の測定と味溶液の濃度差識別テストを行い、月経周期と味覚感受性の関連性を求めることを目的とした。
【方法】
健康な19~25歳の女子学生16名を対象とし、口腔内には口内炎やう歯による痛みのないこと、食後1時間以上経過していること、非喫煙者であることを確認した。電気味覚計閾値の測定は電気味覚計(リオン社:TR-06)を用いた。刺激部位は舌尖より2cmの茸状乳頭領域の左舌縁と、舌縁後方葉状乳頭領域の舌根に近い左の部分の計2箇所とした。測定時期は月経周期を月経期、卵胞期、黄体期の3区分とし、月経中を月経期、月経終了から排卵日前までを卵胞期、排卵から月経が始まる前を黄体期と考え、パネルそれぞれについて測定した。
味溶液の濃度差識別テストは甘味(スクロース)、塩味(NaCl)、酸味(酒石酸)およびうま味(MSG)の4味について行なった。測定時期は電気味覚計と同様とした。
【結果】
電気味覚計より求めた閾値の平均値は、黄体期は茸状乳頭-4.92dB、葉状乳頭-3.63dB、月経期は茸状乳頭-4.71dB、葉状乳頭-3.00dB、卵胞期は茸状乳頭-4.25dB、葉状乳頭-3.13dBであった。いずれの測定時期においても茸状乳頭の閾値が葉状乳頭よりも低く、舌尖の方が舌後方よりも味覚感受性が高いことが示された。さらに、黄体期において茸状乳頭、葉状乳頭ともに他の2期に比べて味覚感受性が高くなった。
味溶液の濃度差識別テストでは、甘味に関しては黄体期、塩味と酸味に関しては月経期、うま味に関しては卵胞期が最も味覚感受性が低くなるということが明らかとなった。
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小林 三智子, 小高 悠紀, 坂本 果奈子, 萩原 千穂, 吉永 知世
セッションID: 2P-43
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
味覚感受性の閾値の測定において、全口腔法と電気味覚検査が多く使用される。本研究では、両測定法により求めた閾値に、どのような相関があるのかを検討した。
【方法】
非喫煙者の本大学女子学生23名を対象とし、測定の際には、食後2時間以上経過していることを確認した。5基本味は、甘味(スクロース)、塩味(NaCl)、酸味(酒石酸)、苦味(硫酸キニーネ)およびうま味(グルタミン酸ナトリウム)を用い、上昇系列全口腔法により、5基本味の検知閾値と認知閾値を求めた。電気味覚閾値は、電気味覚計(リオン社製 TR-06)を用い測定した。刺激部位は、舌尖より2cmの茸状乳頭領域と舌縁後方葉状乳頭領域の舌根に近い部位の左側、計2箇所とした。全口腔法より求めた検知閾値および認知閾値と電気味覚閾値を比較し、これらの関係を検討した。
【結果】
電気味覚検査の結果、茸状乳頭の閾値-5.57dBは葉状乳頭の閾値-4.70dBよりも有意に低く、舌尖の方が舌後方よりも味覚感受性の高いことが示された。全口腔法により求めた検知閾値は、認知閾値よりもかなり低い値を示した。
電気味覚計による2部位(葉状乳頭と茸状乳頭)の電気味覚閾値と、全口腔法による5基本味の認知閾値の間にそれぞれ相関があるか検定を行い、相関係数を求めた。その結果、苦味の認知閾値と電気味覚閾値には、茸状乳頭および葉状乳頭ともにやや相関があった。また、うま味の認知閾値と電気味覚閾値には、茸状乳頭においてやや相関があった。
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荒木 葉子, 笹原 麻希
セッションID: 2P-44
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
コンブは代表的な呈味成分を豊富に含んでおり、だし汁に用いられるが、産地の違いや採取時期により味に差が見られる。そこで、本研究では産地の異なるコンブの遊離アミノ酸含量を調べ、その比較を行った。また、特にグルタミン酸ナトリウムに依存した味作りがなされるラーメンスープについてコンブだし汁の影響を検討した。
【方法】
国産5種(日高・利尻・真・厚葉・長コンブ)、中国産1種(福建産)の計6種のコンブを試料として用いた。各試料の熱水抽出液を調製し、アミノ酸自動分析機(Amino Tac JLC-500/V2)により遊離アミノ酸含量を測定した。また、官能検査では、コンブ・豚骨・鶏ガラ・野菜・干し椎茸・鰹節等の天然素材から抽出して調製したラーメンスープ(抽出品)と、グルタミン酸ナトリウムを高含量含む市販粉末スープを使用したラーメンスープ(市販品)の2種を用いて二点比較法を行い、どちらが好まれるか、またどちらの旨味が強いかについて調査した。
【結果および考察】
コンブの代表的なアミノ酸であるグルタミン酸は、694~1365mg(無水物100gあたり)と豊富に含まれたが、特に真コンブや利尻コンブが高値を示したため、だしを取る旨味材料として有効であると考えられた。ラーメンスープのグルタミン酸含量は、抽出品よりも市販品の方がはるかに高値を示したにもかかわらず、官能検査では抽出品の方が旨味が強いと評価され、市販品よりも有意に好まれた。これは抽出品が市販品と比べてグルタミン酸以外にもアスパラギン酸やアラニンを多く含んでいるため、風味が複雑になるとともに、旨味の相乗効果も現れていると考えられた。
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阿部 芳子, 石渡 仁子, 大石 恭子, 高崎 禎子, 中村 恵子, 原 知子, 松田 康子, 杉山 久仁子, 渋川 祥子
セッションID: 2P-45
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
大量調理では、「大量調理施設衛生管理マニュアル」により、微生物による中毒を防ぐために75℃1分間の加熱が義務付けられている。肉類は、最終到達温度によりその出来上がりが大きく異なることから、肉類の焼き調理において、加熱終了後の温度上昇を見込んだ場合、品温を何度まで加熱することが安全でかつもっとも品質のよいものになるかを検討することを目的として、その基礎データーを得るための実験を行った。
【方法】
試料は豚ひれ肉をもちいて5cm直径のものを厚さ1.5cmにカットし,クッキングペーパーをしいたオーブン皿に9個を格子に置き,対角線上の3個の中心温度を測定する事とした。オーブンの設定温度は230℃と250℃以上で行なった。加熱条件は温度測定の3個のうち2個の温度が75℃に達してから1分間の加熱とした。これを直ちにオーブンより取り出し,そのまま30分間放置をして温度履歴を測定した。また,オーブンの設定温度250℃以上については70℃1分間,65℃1分間の加熱も行なった。破断強度試験を行い,加熱後の肉の物性を調べた。
【結果】
測定対象とした試料にムラは見られたが,230℃のオーブン加熱において75℃到達後,1分間加熱した試料は,取出した後の余熱中も含め最高温度が101℃前後に達した。250℃以上のオーブン加熱において75℃以上を保持した時間は,70℃到達後1分間加熱の試料は平均280秒間,65℃到達後1分間加熱の試料は平均270秒間であった。また,65℃1分間の試料は,75℃1分間のそれに比べると有意に軟らかいことが認められた。
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伊藤 正江, 坪内 美穂子, 龍 祐吉, 柵木 義和, 岡田 明美, 桜井 美智子, 河合 清, 石川 覚也
セッションID: 2P-46
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
医療法人聖会石川病院では、10年前から糖尿病の治療として 「目ばかり、手ばかり、腹ばかり」という食事会形式の糖尿病教室を行っている。糖尿病では、食事療法は非常に重要であり、無理のない実践的な教室は療養指導として非常に有効と考えられる。本研究では、目ばかりに重点を置き、1日の総エネルギー摂取量の把握について認識させ、実施内容の問題点と今後の課題について検討することを目的とした。
【方法】
医療法人聖会石川病院にて、10年前から月に1回糖尿病教室を継続的に実施している。指導内容[1]自己管理ができるような食事の提示と試食[2]テーマに沿った講義。同時に、血液検査データ(1)HbA1c(2)随時血糖値(3)検尿(4)身体計測を行った。食事に関する意識調査と在宅における摂取エネルギー調査も行った。
【結果および考察】
意識調査では、長年教室に参加することにより、食事の見た目のエネルギー把握が可能となったとの意見が多く、講義形式の指導では、栄養素の働きや運動の有効性に関する知識が深まったとの意見がみられた。その結果、継続的な運動の実施へと行動変容が見られた。また、身体測定の実施においては、自己を顧みるきっ かけとなり、より食事の重要性に気づかされるという意見があった。教室に継続的参加時には、HbA1cの変動にあまり差が見られなかったが、教室非参加時には、ややHbA1cの上昇傾向を示した。これにより、継続して参加することにより、動機付けが有効に行われていることが示唆された。行動変容に至る集団的な栄養カウンセリングや、健康学習の手法も取り入れた教室を運営して行く必要があると思われる。
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坪内 美穂子, 岡田 明美, 龍 祐吉, 柵木 義和, 河合 清, 石川 覚也, 伊藤 正江
セッションID: 2P-47
発行日: 2008年
公開日: 2008/08/29
会議録・要旨集
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【目的】
今日の医療では、患者のQOLの向上や医療費の有効利用などの観点から、栄養管理に関する高度な知識と技術が非常に重要視されている。高度な臨床栄養管理を実施するためには、栄養サポートチーム(NST) による支援が非常に重要と考えられる。本研究では、うつ症状を有する糖尿病患者の食欲不振におけるNSTの介入症例について、その問題点と今後の課題を検討することを目的とした。
【方法】
症例:81歳、男性。糖尿病・うつ病(症状:脱水・食欲低下・体重減少)。医療法人聖会石川病院に入院(平成20年2月)。項目は、臨床所見、血液検査データ(1)TP(2)ALB(3)Hbを測定した。同時に栄養摂取量等の推移、モニタリング、身体計測を行った。
【結果および考察】
入院当初の生化学検査値は、(1)TP6.2g/dl(2)ALB2.5 g/dl(3)Hb9.5 g/dlと標準値以下であった。また、BMIが19.1と低値であったため患者の嗜好を加味した食事を選択し、NSTの介入を行った。
NST介入後、(1)TP (2)ALB (3)Hbは横ばいであった。大きな改善は見られなかったが、食事の形態の工夫と摂取量の照合により総合的な摂取状況の把握が可能となり、摂取状況のムラが減少し、エネルギー摂取量の安定が見られた。退院後は、在宅指導を行っているが、継続的な支援を通して生化学検査値および栄養摂取状況の改善が見られた。訴えを表出できない患者への支援は、食に対するニーズを把握し、模索検討することで食の改善につながることと思われる。そのため介入は、在宅指導においても状況に応じて継続的行っていくことが大切であることが示唆された。
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