日本認知心理学会発表論文集
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ポスター(知覚・感性)
  • 新妻 文香, 牧岡 省吾
    セッションID: P_D11
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    時間情報処理は,中央実行系や注意資源を用いる課題,視覚刺激記銘時の処理水準の違いにより影響を受けることが明らかになっている。本研究でも時間情報処理を妨げる課題を発見することを目指す。中断されたタスクの名前は完了したタスクの名前よりも記憶に残りやすいというツァイガルニク効果が知られており(Zeigarnik,1927),この効果はアナグラム課題の解答を妨げられた場合においても確認されている。時間情報処理を妨げる課題を調べた先行研究から,アナグラム課題の解答を妨げることが時間情報処理を妨げると推察されるため,アナグラム課題と2秒の時間作成課題の二重課題を用いて実験を行った。その結果,アナグラム課題を妨げられると時間知覚が伸長する傾向がみられた。このことはツァイガルニク効果が時間情報処理に影響を及ぼすことを示しており,その関係を調べることで時間情報処理の仕組みを解明することにつながり得るといえる。
  • 郷原 皓彦, 入戸野 宏
    セッションID: P_D13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    オノマトペの言語音と意味との間には自然な結びつき(音象徴)が存在する。例えば,粗さ・重さ・大きさの印象は第1モーラが有声音の方が無声音よりも高いといわれる。本研究では有声性に加え,オノマトペの既知性が粗さの印象に及ぼす影響を検討した。「すらすら」「ずのずの」のように,第1,3モーラの有声性 (無声/有声)と既知性 (既存/新奇) を独立して操作し,オノマトペ音声の響きから感じる粗さの印象(粗い―なめらかな) をオンライン実験 (N = 62) で評定させた。その結果,有声音は無声音よりも粗いと評定され,先行知見が確認された。さらに,新奇なオノマトペは既知のオノマトペよりも粗いと評定され,有声性と既知性の交互作用は認められなかった。これらの結果は,新奇オノマトペの処理流暢性の低さが粗さの印象に影響を与えた可能性を示している。
  • 小濱 颯人, 安田 龍平, 岩佐 芽吹, 佐々木 恭志郎
    セッションID: P_D14
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    製品パッケージには,その製品の画像がたびたび配置される.こうした製品パッケージの印象は,製品画像の位置と製品のカテゴリにある程度左右される.具体的には,菓子などの重いほうが望ましい製品は下側・右側に配置されると好ましく評価され,日用品など軽いほうが望ましい製品は上側・左側に配置されると好ましく評価される.本研究では,この選好にまつわる現象が日本在住者でも確認されるかを検討した.実験では,菓子あるいは日用品の製品画像を枠内の上下左右に配置した模式的なパッケージを呈示した.参加者の課題は,これらの刺激の印象を評価することであった.実験の結果,製品カテゴリーに関係なく,製品画像が下側や右側に配置されているパッケージが好ましく評価されることが明らかになった.これらの結果は,製品と重さ印象の対応関係とそれに伴う選好変化は,限定的な効果であることを示唆する.
  • -若年評価者と中高年評価者の比較-
    畑中 駿平, 伊師 華江, 本郷 哲
    セッションID: P_D15
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    対人的な安心感の要因の一つに相貌が挙げられる。相貌の見た目の印象は多様な特徴を手掛かりとして判断されるが,その手掛かりは観察者の年代によって異なる可能性がある。本研究では,データ駆動型アプローチによって他者に安心感を与える顔の見た目の印象と相貌特徴との関係をモデル化し,観察者の年代による比較を行った。研究ではまず,若年および中高年層各20名を評価者とし,コンピュータで生成した顔画像に対する主観評価実験を実施して各顔画像が安心感を与える程度を測定した。次に,主観評価データおよび顔の形状・色情報を用いた計算処理により両者の関係をモデル化し,安心感を与える相貌特徴を評価者の年代ごとに可視化した。その結果,両年代に共通して,高安心感の特徴は顔の目元および口元に大きく表れること,中高年層は若年層に比べてより女性らしさが高く,年齢の低い顔に対して高い安心を感じること等が示された。
  • 畑 美緒, 山本 莉子, 三嶋 博之
    セッションID: P_D16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    VR空間におけるユーザー同士の快適な距離(パーソナルスペース,以下PS)はユーザー個人の特性に依存する可能性がある。本研究は個人特性である「自意識の強さ」がVR空間におけるPSの大きさに与える影響を検討する。実験対象者25名に対し,自意識尺度により自意識の強さを測定し,ストップディスタンス法でVR空間におけるPSを測定した。VRアバタは,男性と女性の2体を,正面,左右30度前の3方向で移動させた。公的自意識・アバタの移動方向・アバタと実験参加者の性差の3要因混合計画分散分析を行った結果,公的自意識低群において,性差が同性よりも異性の方がPSが大きかった。これは,VR空間においても異性に対する抵抗感が異なることを示している。同様に私的自意識において,3要因混合計画分散分析を行った結果,私的自意識の主効果が有意であり,高群の方がPSが大きかった。これは,私的自意識高群の猜疑心がVR空間に反映されたと考えられる。
  • 伊師 華江, 赤松 梨子
    セッションID: P_D17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    対人距離は,相手との関係性や性別など様々な要因によって影響を受けることが知られている。本研究は,衛生マスク(以降,マスクと表記)の着用有無および着用するマスクの色の違いが正面方向の対人距離に及ぼす影響を実験的に検証した。実験では,マスクの着用有無及びマスクの色(市販の不織布カラーマスクの色を参考に選定した5色)を操作した男女の顔刺激をモニタに表示した。椅子に着座し,相手と対面して会話する場面を想定して適当な位置と判断できる地点までモニタに接近することを参加者に求め,参加者が停止した位置からモニタまでの距離を測定した。測定した対人距離を分析した結果,マスク非着用の顔刺激に比べてマスク着用の顔刺激に対する対人距離が有意に小さいこと,また,女性参加者において黒マスク着用の顔刺激に対する対人距離がその他のマスクの色に比べて有意に大きいことが示された。
  • 山本 一希, 松林 莉子, 矢野 佑明, 笹原 聡一郎, 松永 龍弥, 島田 慶司, 中尾 敬
    セッションID: P_D18
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    自分の身体であるという感覚 (身体所有感) はフルボディ錯覚(FBI)等によって検討されてきた。身体所有感を感じにくい離人症傾向者は,偽身体を自己身体であるとトップダウンに認知させるとFBIが生起しにくくなることが示されている。離人症の事例研究では,自己身体への否定的なトップダウンの認知により身体所有感が低下していると考えられているが,実証には至っていない。本研究では偽身体を否定的な自己身体と思わせる教示を加えたFBI手続きにより,自己身体への否定的な認知が身体所有感に与える影響と離人症傾向との関連を検討した。その結果,否定的な認知が身体所有感に影響しているという証拠は認められなかった。しかし離人症傾向が高い程,否定的な認知を持たせた際に視触覚刺激が非同期で呈示されると,重心が前方に移動していた。この反応は離人の症状に近い状況において,身体所有感を取り戻そうとしていることを反映している可能性がある。
  • 福井 晴那, 青木 佐奈枝
    セッションID: P_D19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,心的イメージの鮮明性を測定する多感覚イメージ尺度のイメージ体験について検討した。従来の多感覚イメージ尺度では,質問項目としてある対象(例:自宅の玄関ドア)を提示し,その対象についてのイメージ想起を回答者に求め,回答者の想起したイメージがどの程度明瞭であったかについて評価を求めていた。しかし,回答者が尺度に回答した際に,実際にどのようなイメージ体験をしたかは不透明のままであった。そこで,本研究では,多感覚イメージ尺度であるPsi-Qの視覚項目を提示した際に生じるイメージ体験を探索的に調査し,KJ法を援用してイメージ体験を複数の要素に分類した。その結果,イメージ体験において以下の3要素が見出された――「視覚イメージの特徴(動き,ソース,写実的リアリティ,臨場感,視点,想起対象範囲の6軸に分類された)」「視覚以外の感覚モダリティイメージの想起」「イメージ想起に伴う感情体験」。
  • 髙橋 純一, 齋藤 五大, 大村 一史, 安永 大地, 杉村 伸一郎, 坂本 修一, 堀川 友慈, 行場 次朗
    セッションID: P_D20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    心的イメージは日常の様々な課題解決の場面で用いられているが,イメージを生成することに困難のあるアファンタジアの当事者が,どのような場面で困難を感じ,どのように種々の課題を解決しているのかはわかっていない。本研究はアファンタジアの人々が抱える困難や対処法を理解するために,視覚イメージ鮮明性尺度の評定点が32点以下の39名を対象に,当事者の日常生活場面におけるエピソード(自由記述)を分析した。結果から,イメージをできないことが原因で困難であると考えている者では,顔や出来事のシーン,地図などの視覚イメージの想起に困難が見られた一方で,それを写真やメモなど外部記憶の活用によって補っていたり,見たものを概念や言葉に置き換えて記憶したりする対処法も報告された。社会がアファンタジアの存在を知り,その認知特性の理解が進むことで,イメージ多様性を含めたインクルーシブな環境の構築に近づくものと考える。
  • ~事象関連電位P300からの検討~
    鳥山 悟, 江口 愛実, 門地 里絵, 曽根 千晶, 細川 勝, 左達 秀敏
    セッションID: P_D21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    スキンケア化粧品の愛着形成には、肌への効果といった機能的側面だけでなく、感触や香り等の五感入力による使い心地の良さといった感性的側面が重要である。本研究では、血行促進などの機能的効果を有することが知られる炭酸配合美容液の泡の質感が長期の愛着に及ぼす効果を検討した。参加者(成人女性45名)は炭酸を配合した炭酸泡処方と炭酸を配合していない液体処方とをそれぞれ1か月間ずつ連用し、各連用前後において、各処方に対する愛着スコアを評価するとともに、顔に塗布する前後の感覚的印象語に対する脳波を測定した。その結果、液体処方の連用条件よりも炭酸泡処方の連用条件において、愛着スコアが有意に増加し、”なじみが良い”に対するP300電位が有意に増加した。これらの結果から、同じ美容液処方であっても炭酸を配合することで愛着形成が促進されること、炭酸泡を顔に塗り広げる段階での塗布感覚への注意が愛着に寄与する可能性を示した。
  • ~潜在的態度からの検討~
    江口 愛実, 鳥山 悟, 門地 里絵, 曽根 千晶, 細川 勝, 左達 秀敏
    セッションID: P_D22
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    炭酸泡美容液には血行促進作用といった機能的効果を有することが報告されている。一方で炭酸作用が長期連用によって愛着に及ぼす影響は不明である。本研究は主観的愛着と併せてIAT (Implicit Association Test) を用いて,炭酸美容液に対する潜在的愛着について測定した。炭酸泡処方と炭酸を配合しない液体処方をそれぞれ1か月間ずつ連用し,各連用前後において,各処方に対する潜在的愛着と主観的愛着を測定した。結果,過去に炭酸泡美容液を使用したことのなかった人においては、炭酸泡処方でも特に炭酸持続度の高い処方において連用前の潜在的愛着が高いほど有意に連用後の主観的愛着が高かった。以上より,炭酸配合量の違いが長期の愛着変化に影響を及ぼしたことが示された。
  • 大前 裕佳, 齋木 潤
    セッションID: P_D23
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    マルチクラス散布図は、複数群のデータをコンパクトに表示できる利便性から、実社会で広く活用されている。しかしながら、点群間に干渉が生じる事例が報告されている (Madison, 2015)。本研究では、同一の空間に2つの散布図を重ね合わせることで相関の知覚にバイアスが生じるかについて心理物理学的手法を用いて検討した。2クラス散布図における特定の色の点群(Target)の相関の強さは、異なる色の点群(Distractor)の相関の強さの方向にバイアスを伴って知覚される傾向が見られた。点群(Target)の相関の強さの知覚量については、相関の強さが1クラス散布図(Distractor非表示)と同等と感じられる場合の1クラス散布図の相関係数(PSE:主観的等価点)を測定し評価した。PSEは、 2IFC(two-Interval Forced Choice)課題を用いた恒常法によって測定した。
  • 今泉 修, 柿沼 瑠奈, 池原 優斗, 鈴木 啓介
    セッションID: P_D24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    健常者において,水平線分の主観的二等分点が実際の二等分点よりも左側に偏ることを擬似的空間無視という。身体運動を伴う視知覚判断において,錯視が弱まることが知られている。本研究では,身体運動を促す把持可能な物体(例えば棒)ならびに視知覚判断を行う際の身体運動が,疑似的空間無視を弱めるという仮説を立てた。実験では,机上の水平方向に置かれた棒と線分の主観的二等分点が,調整法と単一刺激法で測定された。調整法では,実験参加者の左右方向の上肢運動によって二等分点が報告された。単一刺激法では,刺激上の数水準の位置に提示された目印が,刺激中央から左右どちらに偏っているかが二肢強制選択で報告された。その結果,線分に比べて棒では主観的二等分点の左側への偏りが有意に減った。測定法の主効果と交互作用は認められなかった。これらの結果は,把持可能物体が擬似的空間無視を弱めることを示唆する。
  • 鈴木 悠介, 永井 聖剛
    セッションID: P_D25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    高ピッチ音に対する高位置キー反応は,低位置キー反応よりも速く実行される(Rusconi et al., 2006)。また刺激と反応の特性を入れ替えた,高位置刺激に対する高ピッチ発声も,低ピッチ発声と比べて,実行が速い(鈴木・永井, 2020)。これらは刺激-反応間で位置-ピッチ対応が生じることを示し,入出力モダリティに依存しないレベルでの表現を示唆する。本研究では手指運動とピッチ発声という異なる運動反応間でも本対応が生じるか検討した。参加者はキューにしたがって,一致条件では高/低位置への手指運動と高/低ピッチ発声を,不一致条件では高/低位置への手指運動と低/高ピッチ発声を同時に行った。結果,一致条件では不一致条件と比べて,どちらの運動反応も素早く行われた。これは入出力モダリティに依存せず高次レベルで対応が表現され,両運動反応に処理重複が生じることで相互に運動反応を促進することが示唆された。
  • 津田 裕之
    セッションID: P_D26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    近年の視覚科学の研究から、人間の情景認識や質感認識は比較的単純な画像特徴量(スペクトル特性やフラクタル次元)の計算に基づいて処理されている可能性が示唆されている。同時に、それらの画像特徴量は視覚的な快さなどの美的(感性的)処理にも関連している。本研究ではそうした画像特徴量を美的画像特徴量と呼ぶ。本研究は、印象派を代表する3人の画家(モネ・シスレー・ピサロ)を対象に、彼らの絵画作品が持つ美的画像特徴量がどのような値を持ち、そしてどのような時系列変化を示すのかを検討した。その結果、美的画像特徴量の時系列変化は、美術史分野で知られている知見(各画家が生涯の中で示した絵画表現の時代変遷)とよく対応することが明らかになった。この結果は、絵画様式の時代変遷の指標として美的画像特徴量が有効であることを示すとともに、美術の歴史を人間の知覚や感性の特性という観点から基礎づけることができる可能性を示唆する。
  • 井上 和哉, 石井 梨花
    セッションID: P_D27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/18
    会議録・要旨集 フリー
    記憶の非流暢性効果とは,読みにくい(非流暢な)書体で提示された情報がそうではない情報よりも記憶されやすい現象である。この効果の生起に重要な要因として,流暢な情報の中に非流暢な情報を突発的に導入することが指摘されている。しかし,このことは十分検証されていない。本研究では,孤立効果のパラダイム(等質な刺激の中に異質な刺激を導入し,記憶成績を高める方法)を利用し,突発的な非流暢性が記憶を促進するかを検討した。実験参加者には,12個の単語を一つずつ系列的に提示し,自由再生することを求めた。単語は流暢な書体または非流暢な書体で提示され,試行の半分で一つの単語のみが異質な書体(流暢な書体の中に一つだけ非流暢な書体,またはその逆)で描画されていた。その結果,孤立効果は生起したが,その効果は書体の影響を受けなかった。この結果は,突発的な非流暢性は非流暢性効果に重要ではないことを示している。
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