原子衝突学会誌しょうとつ
Online ISSN : 2436-1070
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  • 熊木 文俊, 長坂 将成, 深谷 亮, 足立 純一
    原稿種別: 解説
    2025 年 22 巻 1 号 p. R001-
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/13
    ジャーナル フリー

    100 ピコ秒のパルス幅を持つ放射光を用いた時間分解軟X線吸収分光法 (TR-SXAS) は,溶液中の金属錯体や有機分子におけるスピン状態の転移や電荷移動,エネルギー移動などのピコ秒からマイクロ秒の時間スケールで起きる光反応の有効な分析手法である.TR-SXASでは,軽元素 (C, N, O) のK吸収端や3d遷移金属 (Fe, Co, Niなど) のL吸収端の吸収スペクトルの時間変化から光反応中の電子状態の変化を詳細に観測できる.我々は,簡便かつ広範囲な溶液試料を対象とした測定が可能なTR-SXASの実現を目指し,厚さ可変の軟X線吸収分光用セルにレーザーによる試料励起の仕組みを取り入れたシステムを開発した.本稿では開発したシステムの特徴や鉄フェナントロリン錯体溶液の光励起後の緩和過程を観測した実証実験の結果について解説する.

  • 齋藤 翔大, 沼館 直樹, 羽馬 哲也
    原稿種別: 解説
    2025 年 22 巻 1 号 p. R002-
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/13
    ジャーナル フリー

    多くの液相の飽和脂肪酸は,対流圏の太陽光の波長領域(295 nmより長波長)に弱い吸収帯をもつと報告されており,飽和脂肪酸の光反応は大気化学の分野で注目されている.しかし本研究では,既報の液相ノナン酸(CH3(CH2)7COOH)の250 nmより長波長の光吸収は,試薬に含まれる微量不純物(0.1%以下)に由来することを明らかにした.得た液相ノナン酸の吸収断面積から,対流圏における光分解速度の上限値を導出し,その大気化学的意義について考察した.本研究成果は,液相の脂肪酸をはじめとする有機分子の光反応について実験を行う際に,試薬内の不純物の影響を適切に評価する必要があることを示す.

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